約束手形と小切手の基礎講座

はじめに

「手形や小切手」は、経理や財務の仕事をしていなくとも、たとえば営業マンなどがお客さんから回収してくる場合もあるかと思います。そこで、出来るだけ簡単に理解していただけるようにと書き始めました。それでも分かりにくかったらごめんなさい。(^^;

小切手とは?

現金、それも何千万円・何億円などと多額で大量の現金を持ち運ぶのは大変だし、いろいろと危険が伴いますよね。そんな時、小さな紙一枚であれば運びやすいし、しかも盗難などの危険に対しても安心な仕組みがあれば便利ですよね。それが「小切手」なんです。お金の代わりです。ですから小切手を作成して相手に渡す(振り出す)時には、当然その金額に見合うだけの資金を、いつでも支払える状態にしておかなければなりません。

手形とは?

手形は小切手と違い、作成して支払う時点では金額に見合った資金がなくとも、手形を振り出す会社等の信用力で、将来の特定日を定め(たとえば120日後とか)、その日に支払うことを約束して、現実の出金を先に延ばす手段として使います。ですから手形には代金の支払い信用取引という二つの機能があることになります。そのかわり手形は定めた期限(支払期日)にはかならず支払わなければなりません。万が一期日に資金を用意できなかった場合など(不渡り)は、当然その信用を失うことになりますし、6ヶ月以内に2回不渡りを出すと銀行との取引が出来なくなり(銀行取引停止処分)事実上の倒産です。またそんな手形を使わせた銀行も信用を失いますから、誰もが使えるものでもないのです。

手形・小切手を振り出すには?

法律(手形法・小切手法)では誰でも、どんな用紙であっても必要な情報(手形要件・小切手要件)を漏れなく記載してあれば有効に振り出すことができますが、現実には銀行で交付する手形用紙(統一手形用紙)や小切手用紙しか振り出せないようになっています。そこで手形・小切手を振り出したい時は、まず銀行に行って取引(当座勘定取引)の申し込みをし、口座(当座預金口座)を作ることになります。銀行は当座勘定取引の申し込みを受けると、不渡り事故を未然に防ぐためにも、信用を調査し取引の資格を確かめます。調査の結果問題がなければ、必要書類を提出して手形用紙や小切手用紙を銀行から直接購入し、初めて振り出すことが出来るようになるのです。

小切手を作成するには?

始めに、銀行から小切手用紙を購入します。その用紙には法律で要求している小切手要件のうち、ほとんどの要件が予め印刷されていますので、あとは金額、振出日(通常は作成日)、氏名(または会社名・代表資格・代表者名)を記入し、銀行届出印鑑を押すだけです。ただし、ふつう銀行へ取引を申し込む際、住所を含んだゴム印を使用して届け出るでしょうから、その場合は、当然住所も必要ということになります。なお、法律では本人の手書きの署名(自署)があれば印鑑は押す必要がありませんが、現実には銀行の小切手帳の表紙の裏側などに印刷されている注意事項(小切手用法)に従って作成しなければなりません。なお、金額の記入は手書きの場合は漢字を使用し、アラビア数字を使用するときはチェックライター(印字機)を利用し、加えて漢字での記入(複記)はしないで下さい。(下記の小切手見本を参照のこと)

小切手の安心な仕組みとは?

小切手自体がお金の代わりですから、盗まれたものでも、誰かに拾われたものでも、そのまま支払銀行へ持っていけば(支払呈示)、基本的に現金が支払われます(持参人払い)。しかも偽名などを使った場合には、現金と同じようにあとから不正を行なった人を特定することは出来ません。そこで、小切手用紙の右上隅などに斜めに二本の平行線のみを引く、または線の間に銀行渡りないし、銀行またはBANKと記載する(一般線引)ことで、その小切手を持っている人が継続して取引している銀行に限り支払われますので、不正に現金化しようとしても、誰に支払われたかの追求が容易なため、不正を未然に防ぐことが出来ます。その意味で安心というわけです。またさらに、○○銀行などと特定の銀行名を二本線の間に記入することも出来ます(特定線引)。これは特定された銀行のみでしかも継続した取引がある人だけしか支払を受けられず、一般線引に比べさらに安心といえます。しかし、普通は一般線引にします。つまり必要があれば、受取人が後で特定線引に変更可能だからです。そこで、小切手で支払を受けた際は、その内容もさることながら線引の有無を確認し、もしなければ、すぐその場で二本線を書き入れるとよいですね。(上記の小切手見本を参照のこと)

小切手はいつお金になるのか?

小切手は、振出日当日はもちろんのこと、振出日の翌日から起算して10日目までに支払銀行へ持っていけば(店頭呈示)その場で現金化することが出来ますが、通常は自分の取引銀行へ持って行き(取立委任)、交換所経由で支払銀行へ支払呈示され、そののち自分の口座へ入金されて資金化します。この10日間には銀行休業日(土曜、日曜、祝祭日)を含みますので、遅れないようにして下さい。なお、10日目が銀行休業日の場合のみ翌日に延長になります。もしもこの期限を過ぎてしまった場合でも、振出人が銀行に対して支払委託の取消しをしない限り、現実には多少日にちが過ぎてしまっても、銀行から振出人に確認の上支払ってもらえます。これは通常振出人が何らかの代金支払のために振り出したものですから、そのまま支払ってもらった方が都合よく、従って多少の遅れは認められるというものです。しかし、場合によっては呈示期間満了後ただちに支払委託の取消しになるかもしれませんので、やはり早めに処理された方がいいですね。

手形を作成するには?

まずは、銀行から手形用紙を購入します。その用紙には法律で要求している手形要件のうち、ほとんどの要件が予め印刷されていますので、あとは金額、振出日(通常は作成日)、受取人、満期日(支払期日)、住所・氏名(または会社名・代表資格・代表者名)を記入し、銀行届出印鑑を押すだけです。手形においても小切手同様に法律では本人の手書きの署名(自署)があれば印鑑は押す必要がありませんが、現実には銀行の手形帳の表紙の裏側などに印刷されている注意事項(約束手形用法)に従って作成しなければなりません。なお、金額の記入は手書きの場合は漢字を使用し、アラビア数字を使用するときはチェックライター(印字機)を利用し、加えて漢字での記入(複記)はしないで下さい。また、上記の必要な記入事項のうち、受取人や振出日などは未記入のまま相手に渡しても、受け取った側で補充することが出来ますが、それ以外を空白のまま相手に渡してしまうことのないよう十分注意をして下さい。そして最後に、手形には収入印紙を貼り、文字か印鑑等で割印(消印)をすることになってます。印紙を貼っていなくとも、手形の有効性としての問題はありませんが、印紙税法上、その作成者が納税する義務がありますので、正しい金額の印紙を忘れずに貼り付けて、消印をして下さい。(下記の手形見本を参照のこと)

手形の裏書きとは?

手形用紙(統一手形用紙)の裏面には「表記金額を下記被裏書人またはその指図人へお支払いください」と印刷されています。つまり、手形を持っている人(譲渡人)は手形の裏に記名(住所も必要)・押印し、渡したい相手(被裏書人)の正式な会社名等を記入して、相手へ手形上の権利を移転させることが出来るのです。これを裏書き(裏書譲渡)といいます。あえて被裏書人を記入しないで相手に渡す(白地式裏書)ことも出来ます。この裏書きは次々に続けていけるのも特徴です(裏書きの連続)。つまり、第一裏書人のAさんからBさんへ、BさんからCさんへ・・・というようにどんどん続けていってかまわないのです。裏の紙面が足りなくなったら、白地の手形用紙の裏面をコピーして、下に貼り付けてさらに連続させていけます。このような裏書人が何人もいる場合は、たとえば振出人が支払いを拒絶しても、最終的な手形の所持人に対して、手形金額の支払いをする義務を持っていますので、かえって支払いが確実な手形といえるかもしれません。ただし、裏書きの続く手形での注意すべき点は、そのつながりが正しく連続していないといけないことです。不連続な手形は裏書不備という不渡りとして銀行から戻され、資金化されません。もし不連続に気付いたら、前の裏書人へ戻して、正しく連続するように直してもらいます。裏書きを訂正・抹消する場合は、その欄いっぱいに交差する斜線をひいて、訂正印を押印します。(下記の裏書き見本を参照のこと)

(正しく連続している場合)

(不連続を訂正した場合)

手形はいつお金になるのか?

小切手はもらったらすぐに現金化することも出来ますが、通常手形はそのままだと支払期日にならない限り資金化しません。その代わりに、取引先への支払手段として、手形の裏に記名・押印して渡す(裏書譲渡)ことが可能です。また、銀行に買い取ってもらうことで(手形割引)、期日までの利息分を引かれますが、資金化することもできます。しかし、通常はそのまま取引銀行へ持って行き(取立委任)、期日に自分の口座に入金してもらうことで資金化することが多いのではないでしょうか。なお、手形の支払呈示期間は支払期日を含めて3日以内(銀行休業日を含まず、最終日が銀行休業日の場合のみ翌日に延長になる)になっていますので、振出日から支払期日までは通常3〜4ヶ月程度あるからといって、安心して仕舞い込んでしまわないで、可能な限り早めに処理しましょう。それは小切手と違い、呈示期間を過ぎると、回収のために非常に時間や労力を消費することとなりますので、手形の期日管理は十分に注意して行なって下さい。

手形・小切手を訂正するには?

作成途中で間違ったときは迷わず再作成して下さい。それが一番いい方法だと思います。誰かに渡してしまった後になんらかの間違いに気付いた時には、現在その手形・小切手を持っている人の同意を得て再作成するか、またはあまり積極的にお勧めはしませんが、訂正印で訂正します。本来訂正にきまりはないのですが、ふつう間違ったところに二本線を引き、その上か横に正しい記載をし、訂正個所に銀行届出印鑑を押します。ただし、金額は訂正不可能とご理解下さい。銀行の手形・小切手用法にもありますが、銀行ではまず取扱ってくれません。

小切手の盗難・紛失への対応は?

受け取った小切手の場合には、まず真っ先に振出人へ連絡し、振出人から支払銀行へ届けをしてもらい、小切手の支払委託の取消しをして下さい。自分で振り出したものなら、最初から取引銀行へ届けます。盗難である場合は、当然警察へも届けをすることになります。そして、呈示期間内に善意の第三者が支払銀行へ呈示しなければ、振出人は小切手と関係なく直接支払うことが出来るので、あえて公示催告や除権判決は必要ないでしょう。かといっていいかげんに扱えというつもりは毛頭ありません。常々十分に注意して、盗難や紛失等がないように心がけましょう。

手形の盗難・紛失への対応は?

手形を盗難にあったり、紛失や火事で焼失した場合(喪失)には、善意の第三者に渡って裏書きされるとたいへんなので、まず最初に、振出人から支払銀行へ連絡して支払いの停止を依頼し、事故届けを提出します。次に警察へ届け(盗難届ないし紛失届)を行ないます。最後に喪失した手形を無効にするため、所轄の簡易裁判所へ公示催告の申し立てをしておきます。その後、官報へ掲載され、その間手形の所持人の届出がなければ、申し立てによって除権判決を受けることができます。この判決で手形が無効となり、判決正本によって、振出人等へ支払いを請求できることになります。この間はおよそ8ヶ月程度かかるようですから、くれぐれも盗難や紛失等には注意されることをお勧めします。

先日付小切手とは?

小切手はお金の代わりですから、呈示期間内にいつでも銀行へ持っていって現金にしてもらえるのですが、今日お金がなくとも、たとえば3日後には必ず用意出来るとして、支払いのため今日小切手を作成して渡すことがあります。つまり、互いの信頼に基づいて受取人に了解をとり振出日を今日ではなく3日後の日付(作成時点より先の日付)にして、3日後以降に呈示してもらうことを約束した小切手を振り出すということです。これを先日付小切手といいます。ただし、受取人が忘れずに3日後以降に銀行へ呈示してくれればいいのですが、そうでないと(振出日以前に銀行へ呈示すると)振出人の口座には資金がありませんから、不渡りという事態を招きます。小切手は先日付でも受取人が支払呈示してしまうと、直ちに口座から引き落とされることになりますので(一覧払証券)、振り出す側も受け取る側もよく注意をしなければなりません。なお、支払呈示に関しての上記のような約束(3日後以降に呈示する)は一覧払ゆえ無効と言えますが、当事者間の契約としては有効であるため、受取人がこの契約に反し、その結果振出人に損害を与えた時は、契約違反としての損害賠償の責を負うとの判例もあるようですので、十分注意して下さい。

手形のジャンプとは?

ジャンプとはつまり手形の支払期日をさらに先の日付に延長することです。方法としては、手形自体を書き換えるか、元の手形の期日の欄を訂正印で訂正する二通りありますが、一般的には書き換えることになります。どうしてこのようなことが行われるかというと、振出人がその日(支払期日)に用意出来るはずの資金が、取引先の倒産とかその他の突発的事故等で用意出来なくなった場合と、もともとの資金繰り自体に無理があったりして期日に用意出来ないような場合とあり、そこでなんとか不渡りを防ぐため、受取人に依頼することです。一時的な事故や災害によるものであるなら(会社の業績自体は順調に推移しているなら)気持ちよくジャンプに応じることで先方に感謝され、より強い結びつきへと発展する可能性もあるでしょうが、普通は、倒産の前兆として理解されています。ですから無条件に応じるのではなく、真剣に検討し、必要があれば保証人を付けさせたり、一部は現金でもらったり、何らかの条件をつけて承諾するのがいいでしょう。場合によってはジャンプに応じたために、かえって延長後の期日前に倒産し、回収不能になる場合だってあるのです。

手形・小切手が汚れたり、破れた時は?

手形・小切手を誤まって汚したり、破ってしまうことは時々ある事ですが、汚れ方や破れ方がひどくなく、多少不鮮明ではあっても、手形・小切手要件の記載が判読出来る程度であれば(破れた場合はテープ等でその程度まで修復可能であれば)そのまま通用します。ですから、可能な限り修復に努めて下さい。しかし、汚れを拭き取ったり、つなぎ合わせても到底記載事項が判読出来ないほどの状態であれば、紛失したのと同じ扱いとなりますので、小切手なら、振出人に説明して直接支払ってもらい、手形の場合は振出人にお願いして好意で再作成してもらうのが一番ですね。それがだめなら手形の支払地を管轄する簡易裁判所に公示催告の申し立てをして、除権判決をもらい、それで支払ってもらうことになります。


Created and Maintained by Yoshiaki Sato

Family graphics provided by Jelane Johnson