「アフター・ダーク(After Dark,My Sweet)」
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2005/06/04:「アフター・ダーク(After Dark, My Sweet)

Popular Libraryより1955年に出版される。49歳。

1990年には映画化「アフター・ダーク(After Dark, My Sweet)」(1990)
映画化「アフター・ダーク(After Dark, My Sweet)」(1990)
監督ジェームズ・フォーリー(James Foley)

ジェフリー・オブライエンの「ジム・トンプスン、安物雑貨店(ダイムストア)のドストエフスキー」収録

ビル(ウィリアム)・コリンズ・・・・・・・・元ボクサー、キッド・コリンズ
フェイ・アンダースン・・・・・・・・・・・・未亡人
アンクル・バド・・・・・・・・・・・・・・・元刑事
ゴールドマン・・・・・・・・・・・・・・・・医師
バート・・・・・・・・・・・・・・・・・・・バーテンダー
チャールズ・ヴァンダー・ヴェンダー三世・・・誘拐される子供

ビル(ウィリアム)・コリンズはハンサムで人当たりが良く、普段はとても礼儀正しい。一時はボクサーとして名を馳せた時もあった。しかし彼は軽度の複合神経症で、一度興奮すると非常に危険になるとみなされていた。

そして今彼は何度目かの療養施設を脱走。当てもなく逃亡していた。どこに行っても決して何も変わることがないという事を本当は知っているのにも係わらず、どうしても、どこかへ行かなければならないという衝動を抑えきれない。

辿り着いたバーで一息いれるビルの前に現れたのは美貌の未亡人フェイ。彼女のキャラクターは凄い。天から降ってきたかのようだ。夫を最近無くしたらしい彼女は酒びたりの生活を重ねていた。誘われるまま彼女の家に上がりこんでしまうビルだが。酒のせいなのか彼女は感情が不安定で、ちょっとしたきっかけで落ち着いて気品ある態度から粗暴な態度へと急変する。そしてその言動も彼に家にいて欲しいと思っているのか、出て行って欲しがっているのかも激しく揺れ動く。

そんなやり取りをしているところに一人の男が訪ねて来る。アンクル・バド。彼は初めて出会った人をまるで旧知の親友であるかのように接する親切な男だった。彼は元刑事でなにか曰くありげな事情で退職しているようだ。

実はこの二人は手ごろな流れ者がやってくるのを待っていたのだ。二人は町の富豪の幼い子供、チャールズ・ヴァンダー・ヴェンダー三世を誘拐して身代金を要求する計画を立て、それには顔を知られていない協力者が必要だったと言う訳だ。

強制されると反発し、出来る訳ないと否定されると、やってみせようとしてしまうビルは情緒不安定なフェイの言動とバドの挑戦的な態度で抜き差しならない方向へ進み始めてしまう。

流れ者の主人公が一人称で語るこの物語は、他の登場人物同士の人間関係の背景や経緯が極端に省かれている。当然読者もビルと同様の視線、何故こんな関係になっているのか、本当のところ、どう考えているのかが良く解らない状況に置かれる。

他人の目線での物語は、決して語られず、不明のまま。最期まで解決しない。一方ビルの物語は読者である我々は知る事が出来ても、他の登場人物には決して語られない。

要するにこれは物語ではなく、個々の人生であり、「死」が描かれていると思う。ジェフリー・オブライエンのトンプスンを安物雑貨店(ダイムストア)のドストエフスキーと呼ぶ所以には、こうした一般的には娯楽小説には相容れないテーマが苦もなく織り込まれている事。

そしてそれが故にトンプスンの作品は他に類を見ない速さと鋭さで胸に突き刺さってくるのだ。スティーブン・キングのトンプスン論「注意!注意!ヒッチハイカーは逃亡中の異常者の恐れあり」は本書を意識したものだろう。これは、「残酷な夜」に収められているのでこちらも読み逃せない。

映画について、こちらは残念ながら未見。
監督はジェームズ・フォーリー(James Foley)。演じるのは、
ビル・・・ジェイソン・パトリック(Jason Patric)
フェイ・・レイチェル・ウォード(Rachel Ward)
バド・・・ブルース・ダーン(Bruce Dern)

おぉブルース・ダーンじゃないですか。この人好き。「サイレント・ランニング」は傑作ですがなんと言っても「11人のカウボーイ」でしょう。ジョン・ウェインを背後から撃った男。クセのある映画にクセのある役で出てきますね〜。