



| 余は少年の時より老死に至るまで一切の秘密なく交際したる友は賀古鶴所君なり |
| こゝに死に臨んで賀古君の一筆をわづらはす |
| 死は一切を打ち切る重大事件なり |
| 奈何なる官憲威力と雖此に反抗するを得ずと信す |
| 余は石見の人森林太郎として死せんと欲す |
| 宮内省陸軍省皆縁故あれども生死分かるゝの瞬間にあらゆる外形的取扱ひを辞す |
| 森林太郎として死せんとす |
| 墓は森林太郎の外一字もほる可からず |
| 書は中村不折に委託し宮内省陸軍省の栄典は絶対に取りやめを請ふ |
| 手続きはそれぞれあるべし |
| これ唯一の友人に云ひ残すものにして何人の容喙も許さず |
