Unbunny「Snow tires」


すべての「しょんぼり」の旗印の下に、僕らは

集まろう。町の地図を広げ、いくつかの想い出

にしょんぼりの印をつけながら、今日もまた夢

を見よう。フロムアセンズ、セピア色ジャケが

郷愁溢るるUnbunny君のアルバムは、これが

もう5枚目。ゆったりと朴訥なリズムに、ピア

ノやコーラスが肩を寄せあい、メロディは泣く

のをグッと堪えてる。ローファイの極みのよう

だったサウンドの頃から卓越していた音のセン

スは、遂に穏やかな詩情をたたえた大傑作に結

びついた。聴けば胸いっぱいに暖かく、しみじ

み広がる小さな幸せ。

East River Pipe「Garbageheads On Endless Stun」


手に入れてから、何気なく引っぱりだしてはず

っと聴いているEast River Pipeの新作。ニュー

ヨークの片隅にあるアパートの一室での宅録、

ローファイなネオアコサウンドから、人生の成

熟を感じさせる音の仕上がりに。マージらしい

って言うか、やっぱココにも、場末の酒場の片

隅で、何度も繰り返されるよな話に宿るちょっ

とした真実がある。さりげなく押し付けがまし

さがなくやるせなく、じんわりうたが染みてく

るんだよなぁ。アコーディオンやビブラフォン

のアレンジも優しく、ゆっくりとたゆたう時間。

Pedro the Lion「ACHILLES HILL」


夕陽に向かってワオーンと吠える、その後ろ姿。

背中の曲線センチメンタル。ジッとただ動かず

に何かを待つ。まだ来ない物語を待っている。

しわがれて、くたびれて、ざっくりギターとヨ

レた唄メロ。それもまたロックと呼ぶのかも知

れないし、何にせよこの茜色に光るたてがみの

ようなサウンドが示す器のデカさ!今作もやっ

ぱりスローにグダグダと抜けきらない叙情が

しみじみと胸に迫ってくるのでした。ワオーン。

Matt Marque「Nothing Personal」



これが出たのは春の日のこと。シカゴの唄うた

いマット・マーキーが紡ぎ出すシンプルな叙情

冴え渡る一枚。[nothing personal]だなんて意

味深なタイトルでも、やっぱりその唄はどこ

か軽やかに佇んでいて、よく見れば寝癖もつ

いたまま。ツボを押えた音作り、ポクポクと

朴訥なグレン・コッツエのドラミング、絶妙

に配置され唄に寄り添う、ピアノやノイズの

さじ加減!それはゆっくりゆっくりと染みて

くる徒歩のリズム。花曇りの空に響き渡って、

風の匂いを運んでくるよう。

U.N.P.O.C「fifth column」



雲を掴むような音。陽光の端をかすめるよう

に流れる雲を一日中見つめていたくなるタイ

ム感。モクモク膨らむ音像に、人生なんてモ

ラトリアム!なスキップからメロディが零れ

ていきます。並んでるのは60'sサイケオムニ

バスに入っててもおかしく無い曲ばかりで、

ライブじゃ決して再現できそうにないギミッ

クやコーラス・口笛もまた素敵です。そうい

やグラスルーツに「今日を生きよう」って名

曲があったけど、U.N.P.O.Cのこれはさしずめ、

「今日はもういいや」となる名盤なのです。

CHIB「moco」



東京郊外から、Fatcatへ。隣では猫が寝てる。

静まり返って更新されない掲示板。真夜中の

遠景を喚起させる、ツジコノリコの音世界を

夏草の香り漂う一本道に配置したかのような

サバービアな音の連なり。選び抜かれたサン

プルやノイズの間に、アコースティックな響

きがこだまする。遠くの方にぼんやり漂う光

はいつだって届かない原風景であったことよ。

いつも個人の呟きのような音に満たされてい

くのはどうしてなんだろうなぁ、と。

BOYRACER「CHECK YR FUCKING HI$TORY」 [EP]



ギターポップ・エクスプロージョン!とい

ってもはインディーポップルールはきちん

と守って走る優しいBOYRACER、アコーステ

ィックの22曲入りカセットと同時にこのEP

が出ました。満載のアノラック感と、干し

たての洗濯物のような日なたの匂いを振り

まきながら、ノイジーなギターにぽこぽこ

と飛び跳る甘いメロディは決して洗練に向

かわない!まだ夏は始まっても居ないのに、

ずっと夏は終わらない!ってそんな気分。

うわー、久しぶりだけど、やっぱ凄いイイ!

と思ってたら、一昨年にアルバム出してた

事を知らなかった不届きな僕は、走って買い

に行きたいデス。ルールは守って。笑顔で。

the hang ups「〃」



もし、アナタが朝、自転車で陽気に歌を口

ずさむ怪しい男を見つけても、そっとして

おいて欲しい。それは、the hang upsのニ

ューアルバムを聞いている僕かもしれない

のだから。と、いうワケで、瑞々しいそよ

風ハーモニーで青春の甘酸っぱさ、ホロ苦

さを奏でるこのバンド。等身大に見えても

アレンジの切り口は実に鮮やか。折り畳め

ばきちんと収まるポケットサイズながら、

堂に入ったポップソングが溢れてる。路地

から街へ、ボクからキミへ。そっと胸を駆

け抜ければ、おはよう、なんてスズメ達と

もご挨拶。

Britta Phillips & Dean Wareham
「Sonic Souvenirs」



「ロマンチカ」。それは、新メンバーとし

て加入したBritta PhillipsがDean Wareham

と絆を深め、ルナとして作り上げたアルバ

ムに冠された名前。その後デュオとして届

けられた傑作が“冒険”(L'Avventura)

だった。そんな彼らに小さな祝福を寄せる

かのように、リミックス盤が登場。Sonic

boomが神秘のベールを被せドローンな仕

上がりを見せれば、Tony Viscontiも負け

じとヴォコーダー使いで蒼く染めあげる。

今、暗くて長いメランコリックの河を一緒

に渡りゆく二人。そこで生まれた退廃的な

夜の滴り。

BOBBY CONN WITH THE GLASS GYPSIES
「THE HOMELAND」



来たー!シカゴ1のリアクション芸人!

じゃなかった、正真正銘(自分にとって)

のロックスター・ボビーコンのニュー

it's a ロックンロールアルバム!70'sロッ

ク、グラム、ニューウェーブにディスコ。

全てを従え、笑いながら全速力で追い掛け

てくるあの感じ。ブッシュ政権についての

皮肉を歌いながら、これほどまでに興奮と

笑いをもたらしてくれる奴は他にはいない!

今作はジョン・マッケンタイアの御存じ

Somaスタジオにてレコーディング。ボビー

も今、静かな熱狂と共にいつもより高く飛

びたとうとしております!手作りの翼で。

そう、初めてのイカロスはいつだって笑わ

れてきたのだ。

hymie's basement「〃」



2ターンテーブル&マイクロフォン、さえ

あれば確実にモテる!と勘違いしていた思

い上がりを包み込むように鳴っているメロ

ディ。それは霧の5次元スクラッチャー、

FOGことAndrew Broderと、Jad Fair顔の

WHY?ことjonathan wolf、彼等二人の仕業。

生音と電子音が丹念に織り込まれ染め上げ

られると、布団の中のハイテンションと実

験が見事に結実し、エレクトロニカとヒッ

プホップとやるせなさを行き来する。肩の

力が抜けきったコラージュと満点の歌心に、

クラブでの体育座り感を助長されるような

優れたシロモノ。

SUFJAN STEVENS
「 Greeting from michigan the great lake state 」



夕映えする鉄塔や高台から一人で見てた景色。

ふる里について想うのは、いつだってこそば

ゆくもほんのりウレシイ。スティーブンスが

自らの故郷ミシガンについての15の考察を

まとめあげたのがこのアルバム。色とりどり

の楽器構成ながらも、口笛みたいな暖かさと

懐かしさに満ちた曲達。こっそりと地図に新

しい印を付けてちょうどよい想い出をでっち

上げるかのようなアヴァン・フォーキーさが

ステキ!やっぱりこの一枚は、差出人不明で

誰かのポストにそっと届けられるのが良く似

合う。全曲試聴と供に彼の青春グラフティま

で丸分かりの公式サイト(*ジャケをクリッ

ク)もご覧あれ。

The French
local information」



フレンチだなんて少しオシャレな名前になっ

て、これはあの、21世紀妄想先行少年少女

感涙のギターポップ、ヘフナーの続編なので

あります。やっぱりtoo pureからで、ヘフナー

後期からのお約束通りギターは少なくなって

ふわふわと浮き上がるラウンジ風味のアレン

ジが施されているのだけど、そこはやっぱり

ダレン・ヘフマン、タヒチ80みたいに爽やか

な咽越しを期待しても、あの切羽詰まった歌声

に胸焼けが残る夏祭りのラムネ水。甘酸っぱ

くて胸キュンだけど、どうにも拭えない緊張

感が立ち上る。揺れる気泡にはたっぷり泣き

笑いの音色が詰まってて、飲み干せば新しい

夢を見そう。

Daniel Johnston
「The Early Recordings Volume 1:Song of Pain」



ハイ!ハウアーユー??ってことで、御機

嫌です!だって初期のカセット音源がこう

して2枚組で出ちゃってるんですもの!最

近聞き始めたダニエル初心者のような自分

にはこうして彼の足取りが過去からズッと

聞けるのは嬉しい限り。っていっても今も

変わらない彼のピュアな歌の塊がたくさん

詰まってるんだけどね。ブックレットが全

編に渡って彼のイラストで埋め尽くされて

いるのもステキ。どうしてこんなに素敵な

歌なの?このねじまがった心にもどうして

こんなにストレートに届くの?聞いても彼

はやっぱりニコニコ微笑んでピアノを踏ん

で歌うだけ。もうこれは、一家に一枚、一家

に一ダニエル、一日一善、一日一ダニエル

っていう位の名盤ですよ。買おうね。

Matt Eliott 「the mess we made」



マットエリオット?そうそれはサード・ア

イ・ファウンデーションの本名、帰ってき

た絆創膏のしたの三つ目の目。どのくらい

が果たして首を長くしていたのか分からな

いが、そういう人達はこの4AD・暗黒まっ

しぐらの曲群に目が無い筈で、冒頭の歪ん

だピアノから気付けば彼の部屋に招待され

てしまっているのだ。そこでは窓の外にじ

とじとと雨が降り続き、部屋の中の少女の

人形は片足だったりするのだろう。壊れた

オルゴールは、同じ小節を繰り返し、新し

い曲を奏でているかも知れない。屈折こそ

我が美学、と言わんばかりの暗黒絵巻8曲。

ストリングスや雨の音、古いピアノ。予兆

めいた符号。限りなく美しく暗く。

Xiu Xiu 「A Promise」



これ最強!ジャケの通りの丸出し加減!レ

ッツプレイ!エロなのか芸術なのか、芸術

なのかエロなのか。そんな毛一本に賭けて

いたどうでもいい熱い時代を思い起こす!

事も別にないが、とにかくジャケに反して

内容はひたひたと後ろから迫ってくるよう

な、あの世で残念会を開くような、後ろ向

きの形容詞が光り輝くような、妙ちくりん

なジャンクのフォーク。コーラスもボソボ

ソとうらめしいし、鞭打つようなSEやひゅ

ーどろどろな逆回転、ラップ現象のような

突然のノイズもナイス。何にしても西海岸

からこんな音が出来ているのは事実で、ジャ

ーマンサイケやディス・ヒートのクールさ

にUS・SSW、例えばブライト・アイズの

パーソナルな激情を配合した新しい音には

断固注目したい。このまま全裸でいてね。

真夜中にコレかけて語るなんてどうですか?

Arab Strap 「Monday at the Hug & Pint」



メイン・ストリームから零れ落ちるヌルヌル

とした情念を極上の詩情に変える魔法。魔法

というより口車にのせるようなイカシタ百戦

錬磨の手練。倦怠感も打ちひしがれた横顔も

おいてけぼりのやけっぱちのダンス。1曲目

なんてもうリグレット!本気を出したアラブ

ストラップは凄かった、果たしてエイダンと

マルコムは時代のアンチヒーローとなりうる

のか?そんな事より飲んだくれていた方がい

い。その実リアルな生活と、疲弊し傷つけあ

った後にも足下に転がるロマンスを見つめる

事のできる地に足のついた志が眩しい。何も

やり遂げず、何も始まらない、全ての騒ぎ

明かした夜明けのために。

Ooberman「Hey Petrunko」



帰り道にウーバーマンのCDを買ってきた。

おとぎの国のフリーソウル。部屋に流れだす

と、その郷愁あふるる歌の輝きは湖面に面影

を写し出し、アメンボ達もそれぞれに悲しい

夢を見た。大名曲ブロッサム・フォーリング

から不遇の自主レーベル時代、そしてまたし

てもイマジネーション魂漲るアルバム。例え

ばホリーズのバス・ストップ、あのアルバム

の夜の裏街道かもしれない。あの日乗らなか

ったバスの景色、古きよき遺跡や、湖面から

顔を出すカメと目を合わせながら…。夢想

するのはいつの日か。このアルバムが終わる

頃、季節もいつしか秋の始まりに到着なのです。

M.WARD 「TRANSFIGURATION OF VINCENT」



ハロー悲しみ。僕の懐かしい友人よ。マッ

ト・ウォードの新作は、端正で誠実につま

弾かれる歌に変わりは無く、うすぼけた酩

酊の世界の中にも悲しみを際立たせてる。

ボウイのLet's danceが、酒場で流れるワルツ

にそっと足踏むみたいで丸っきり形を変えて

奏でられるように。何気ない壁の落書きに心

震える時があるように。素直なトム・ウエイ

ツっていうか。それは一本のお酒にまつわる

漂流のストーリー。蒸留された30年もの。

じんわりマイルド。

CARMONA「NU」



まるで紫の履歴書、その似顔絵に惹かれて見

れば、今月の掘り出し物発見!こ、こ、これ

は、ポールと言うよりエミット・ローズ!!

「恋はひなぎく」!ギターの音、ピアノの音

まで生き写し。甘いと言うより憎めない甘っ

たれ。うつむき加減のポップ魂。ボーカル、

そのコーラスにもこぼれた虹のひとかけら。

やっぱり彼も、曇ったガラスに指で字を書く

のだった。ああ、あなた…。今日もランチは

大盛りです。

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