海はエネルギーの宝庫
<1999年7月19日、日本工業新聞に掲載された記事の原稿です。>
 1966年の晩秋、フランスはブルターニュ地方のランス川河口で、時のドゴール大統領が出席して、ランス潮汐発電所の開所式が行われた。海洋エネルギーを利用した世界最大の発電所(出力24万`h)がここに完成した。その後30年、発電所は順調に運転を続け、いまは順次メンテナンス中で今後も使用が続けられる。潮汐発電は干満の大きい湾や入り江を堰き止め、内側と外側の水位差を利用して水車タービンを回して発電する。ランスの場合、水平カプラン水車・発電機(1万`h)を24台連ねている。その他、ロシア、中国、韓国、カナダなど、干満の大きな地点を有する国々で潮汐発電所が建設されている。残念ながら日本は潮汐エネルギーにはあまり恵まれない。
 それでは日本でもっとも有望な海洋エネルギーは何か?それは波エネルギーを空気の流れなどを介して電気に変換する波力発電であろう。ある試算によれば幅1m当たり、約7`hの波エネルギーがあって、総延長5200`bの折れ線で囲めば、日本全体では3600万`hにも及ぶ。波エネルギーの豊かな国だけに波力発電への取り組みの歴史は古く、これまでに実際に海で実験を行ったものに絞っても10数例ある。
 写真1<省略。参照:波力発電>は福島県原町市で東北電力鰍ェ1996年から実証試験を進めている「水弁集約式波力発電システム」(出力130`h)だ。防波堤の高くなった部分(幅20.85m、奥行き24.32m)には四つの空気室とタンデム式衝動型タービン、横軸かご型誘導発電機などからなるシステムが組み込まれている。波の大小によらずに波エネルギーを有効に利用できるほか、異常時には水弁の特性で安全性が確保されるなどの特徴をもつ。
 写真2<省略。参照:波力発電>は三重県の五ケ所湾沖で海洋科学技術センターが1998年9月に実験を開始した「マイティーホエール」と呼ばれる浮体式海洋構造物だ。幅30m、長さ50mの“クジラ”の頭側には三つの空気室と、タンデム式ウエルズタービンと三相誘導発電機3台(計120`h)、ディーゼル式補助発電機、蓄電池、空気圧縮機などが組み込まれている。係留は、沖側4本、岸側2本の6点弛緩係留システムを採用し、異常時には、安全弁が自動的に空気の流入を遮断する仕組みだ。波エネルギーを効率よく電気エネルギーに変換するだけでなく、圧縮空気を作りそれを利用して海域環境を改善することをも狙っている。
 その他、海洋エネルギーを利用した発電には海洋温度差発電、潮流発電、海流発電などがある。海洋温度差発電は太陽によって暖められた表層の海水と深層の冷海水との温度の差を利用して発電を行う。佐賀大学や電子技術総合研究所などで研究が行われている。また潮流発電は、日本大学、徳島大学、中国工業技術研究所などが手掛けている。日本は干満差には恵まれないものの、海峡など流れの速いところが多いため、その利用が検討されているものだ。
 海からエネルギーを取り出すこういった研究開発は、徐々にではあるが人々の知られるところとなってきている。日本で新エネルギーというといまは太陽や風力を指すものと一般に思われているが、その一角を、海洋エネルギーが担う日がそう遠くないことを期待したい。

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