『走れ! タカリュウ』
「名古屋→金沢,さくら道2001編」
2001年4月30日〜5月2日,0泊3日
著:高田龍二 tsurunuma@jcom.home.ne.jp
2001年5月20日
*無断転送,転載厳禁*
★さくら道ウルトラマラソン★
故佐藤良二さんが,名古屋から金沢まで沿道に桜の木を植え続けたと
いう「さくら道」をたどるウルトラマラソン大会.酒井忠彬さん,海宝
道義さんが呼びかけ人となり,今年で8回目.
コースは,名古屋スタート,岐阜から長良川沿いを国道156号を北
上,ひるがの分水嶺,世界遺産の白川郷,五箇山峠を越えて国道304
号を金沢まで下る266km.衣類など自分のものは自分で背負って走
る.
4月30日午前7時スタートから,48時間後の5月2日午前7時ま
でにゴールの金沢にたどりつくことを目指す476脚のドラマ.
★登場人物★
タカリュウ:元マラソンランナー
自称,鶴沼ウルトラマラソニアンクラブ主宰
★第1章 プロローグ★
4月29日(日)朝,初めてのさくら道を明日に控えて,コース地図を
入念にチェックするタカリュウ.横に置いた携帯電話に目をやる.
そう,あれはちょうど1年前.
2000年3月31日,有珠山爆発.北海道往復の日々が始まる.
2000年4月28日(金)深夜,茨城県の自宅に帰り着く.翌29日
(土),初めてのさくら道前日朝.携帯電話が鳴る.有珠山の現場にいる
某大手ゼネコンのA氏から.
「昨日の無線機の件なんですが,すぐに準備してくれますか」
こうして,タカリュウの「さくら道2000」は,「有珠山復興の道2
000」となったのであった.
それから1年,今日は電話が来ない.火山が爆発したというニュース
も無い^^;; 今年はさくら道に参加できるぅぅぅぅ〜〜
★第2章 さくら道2001春★
2001年4月30日(月)午前6時半,JRバス名古屋営業所.佐藤
良二さんが植えた一号桜がここにある.ここから266kmのさくら道
の旅路が始まる.238名の参加者が集まっている.知った顔,知らな
い顔,久しぶりの顔,ウルトラマンな顔・・・・
持って走るものの最後のチェック.
・走るウェアー:
半袖シャツ,ハーフタイツの下にランパン.
・コース地図は,ビニール袋に入れて,丸めて常に手で持って走る.
・ザックに背負う荷物(一部はウエストポーチに):
長袖シャツ,ウィンドブレーカー上下,帽子,小型懐中電灯,電池,
ピットインゼリー3個,デキタブ約30粒,アミノバイタル13本,
ティッシュ,バンドエイド,ワセリン,タイガーバーム,胃薬,現金,
セゾンUAカード
他の荷物はバスに預けて,金沢まで運んでもらう.
小雨が降っているが影響無さそうなので,雨対策はせずにスタートす
ることにする.
*JRバス名古屋営業所,4月30日AM7:00スタート*
あちこちで雑談しているうちにスタートの7時に.ゾロゾロと238
名が一号桜を後にする.初参加のタカリュウ,これからの長丁場に緊張
しているのか,未知の世界との遭遇をワクワク楽しみにしているのか,
はたまた何も考えていないのか,自分でもよくわからないうちにスター
ト.あと266km・・・
★第3章 どこまで続く156号と陽射しとビールとタカリュウ★
コース地図とにらめっこしながら,ゆっくりゆっくり走る.名古屋城
を回ると,「おっ,こんな所にウェスティンホテルが」と思うと早くも
10km地点で1時間7分.あと256kmだ.^^;;;;
*一宮裁判所27.3km,30日AM10:01(3h01m)*
慎重に慎重に足を進める.後半への不安から,足の負担をわずかでも
減らそうと,木曽川を越えるちょっとした上り坂などでも,少し歩きを
入れたりする.
岐阜市内から国道156号に入る.これから210kmの五箇山トン
ネル下まで,延々と156号を走ることになる.
45kmあたりか,昼も近くなり気温が高くなってきて蒸し暑い.コ
ンビニの外で,参加者数人がビール飲みながら休憩している.H池さん
らしき人が「タカダさ〜ん,ビールうまいよ〜」と誘惑の叫び.
うううぅぅぅうまそうだ〜!
が,我慢で通過.
ビール少しなら元気も出るし,良い給水になるであろう.しかし1個
飲んでしまうと,しばらく走ってまた1個,そしてまた1個,と飲むう
ちに,だんだん走ることがどうでもよくなって来てしまう・・・・
そんな自分の性格を知っているだけに後が恐い.
その後も,数々の私設エイドにビールが用意されているのだが,ガマ
ンガマンのタカリュウ.暑さをガマンするよりも,ビールのガマンがつ
らい・・・
#給水とビール
1991年東京世界陸上,男子50km競歩で7位入賞した
今村文男くん.スペシャルドリンクにビールを用意したという,
歴史的事実がある.
*美濃市役所66.4km,30日PM2:37(7h37m)*
70kmあたりからは長良川沿いを走る.足が疲れてきたような,ま
だまだ何でもないような,自分でもよくわからない.
所々の私設エイドが,いろんな食べ物,飲み物を用意してくれている
ので,本当に嬉しい.うどんがうんま〜い,甘いお菓子で元気もりもり,
コーラをグビグビ.おおおっ!スイカだ〜〜
数カ所,156号の旧道に入る場所がある.タカリュウが旧道に入っ
ても,すぐ後ろの人が新道のトンネルに入っていく.自己満足のウルト
ラマラソンの世界で,近道してもしょうがないと思うのだが・・・ ま,
人のことはどうでもいいや.
*郡上八幡駅95.5km,30日PM6:15(11h15m)*
郡上八幡の大きなエイド.牛乳がうんま〜い,一気に2本飲む.牛乳
で元気100倍,ついでに持参のアミノバイタルを飲んで元気1万倍,
これは効く.
夕暮れになり,すっかり涼しくなり走りやすくなってきた.100km
通過が12時間くらいか.これでもまだ166kmもある.
★第4章 佐藤くんと日本列島分水嶺と荘川桜とカレーライス★
*佐藤良二顕彰碑116.2km,30日PM9:17(14h17m)14番*
「さくら道」に桜を2000本植え続け,47歳で病死した佐藤良二
さん,岐阜県白鳥町出身.白鳥町で156号からはずれて,真っ暗闇の
急斜面を登っていくと佐藤さん顕彰碑.「佐藤さんの道を走らせてもら
っています」と心で語り,碑石にエッタして先に進む.
ここで14番目と,初めて順番を教えられる.意外と前を走っている
ようだ.
夜ですっかり涼しくなり,走りが快調になってくる.用心用心,ここ
で調子にのってペースを上げてはいけない.なにしろまだ半分来ていな
いのであるから.
123kmに長良川鉄道終点「北濃駅」,11時近くで駅も真っ暗.
元鉄道少年として,駅に入りホームにも出て視察.タカリュウは何をや
っているのか・・・
130km付近で旧道に入った集落で,地図に無い新しい道ができて
いて,違う方に進んでしまう.途中で気付き逆戻り,500mほどとは
言え,余計に走ってしまった.フニュフニュ.
このへんから「ひるがの分水嶺」に向かって,上りがきつくなってく
る.暗くて傾斜がよくわからないので,頻繁に後ろを振り向き傾斜を確
認.ある程度以上の傾斜は必ず歩く.上り坂には慎重なタカリュウ.
*ひるがの分水嶺139.6km,5月1日AM0:40(17h40m)*
コース最高地点海抜875m通過.あと126km,ようやく半分を
超えた.標高が高く風が冷たいので,ウィンドブレーカーを着る.
分水嶺を越えたら,高原のような軽い下りの地形で,走りやすい.な
んとなく快調になる.暗闇の中ひとりで走っていると,
「こんな感じでこのままゴールまで走れちゃうかな?」
なんて,大きな錯覚に陥りそうになる.いけないいけない,そんなこと
はあり得ない.暴走するな落ち着け落ち着け,タカリュウ.
*荘川桜154.7km,1日AM2:37(19h37m)8番*
大会呼びかけ人側が用意しているただ1カ所のエイド,8番目で到着.
カレーライスがある〜〜 \^0^/ 一気に2杯食べる.
サポーターの舘Yさん「タカダさん,ビールもあるよ」
タカリュウ「早くゴールしてビール飲むことに決めたから,いらない」
きっぱりと決意.ゴールしたら何をさておき,真っ先にビール飲むぞ!
サンドイッチを少しもらい,いざというときのためにザックに入れる.
食料を持っているという安心感は大きい.
が,1週間後自宅で手つかずのサンドイッチが発掘される.食料を無
駄にしてすまん.反省タカリュウ.
*御母衣ダム163.0km,1日AM3:47(20h47m)8番*
★第5章 白川郷と五箇山と福光とピンチタカリュウ★
朝がやってきた.しかしゴールする時はもう一度暗くなっているのだ
ろう,と思うと神々しくなる??? 48時間使ってゴールする人は,
さらにもう一度朝がやってくる・・・
夜中は快調に走っていたが,170kmあたりから,膝腰の関節がガ
クガクして非常につらくなってきた.いよいよきたか.タカリュウの弱
点,太股と腰の筋肉はまだ動くので,まだ走れるはずだと,自分をはげ
ます.
*白川郷入口179.7km,1日AM5:59(22h59m)8番*
楽しみにしていた世界遺産・白川郷の合掌造り.朝の静けさの中を通
過.合掌造りの民宿もある.なかなか来る機会もないが,ゆっくり訪れ
てみたいところだ.
いよいよ下半身が厳しくなってきた.ガンバレ,ガンバレ,と足を進
めるも,つらすぎる.
富山県に入って,198km道の駅「ささら館」で一人で休憩.あと
で聞くと,ここにエイドがあったようだが,この時間はまだ何も無し.
タイガーバームを足に塗ったくったり,またずれにワセリン塗ったり,
コーラ飲んだり,困ったときのアミノバイタル飲んだり,そばの若者が
タバコ吸い出して煙いなと思ったり,15分ほど休憩したか.
再び走り始めると,休憩で筋肉が固まってしまって,しばらくの間足
を動かすのがものすごくつらい.大休憩でこんなつらくなるなら,もう
大休憩しないぞ,と決意するタカリュウ.
200kmを越えても,あと66kmもある.今の脚の状態では,絶
望的に遠い地獄の66kmになるのか?
*平村下梨209.7km,1日AM10:05(27h05m)6番*
先人が36時間でゴールしたときの通過タイムを少し上回っているよ
うである.もしかしたら36時間切れるかも,と初めて欲を出す.
エイドのおばちゃんに「ここからの峠越えが大変なのよね」と言われ
るが,タカリュウは「心おきなく歩いても良い峠だ」と内心喜ぶ.
おいしい豆腐のお礼を言って,峠の上りに向かう.岐阜市内から走っ
てきた国道156号にここで別れ,金沢につながる国道304号に入る.
地図で予想していたとおりの急坂だ.心おきなく歩ける,嬉しい.こ
この手前で非常につらかったとき,「五箇山に登る峠で歩き続ければ,
身体の建て直しができるんじゃないか」と心待ちにしていたのである.
4kmで標高差235m登る.50分ほどかかったか,足が少し調子
戻った気がする.
全長3072mの五箇山トンネル.歩道?は幅50cmほどしかなく,
濡れて滑るところも多いので,かえって危なそう.右側車線の真ん中を
走り,向かってくる車に早めに気付いてもらうようにする.車とすれ違
うときだけ,端に寄る.
トンネル内に1カ所,人は外に出られる場所がある.絶壁にガードレ
ールもない狭い旧道が通っている.地図には「人喰谷」なっている.昔
からいっぱい落っこちたのであろう.
トンネルをぬけて,城端町への下りを慎重に下る.下半身がガクガク
になっているときの下りはつらい.
城端の街であと40km,もうすぐのような錯覚もするが,まだ40
km何が起こるかわからない.
シャッター降りた店先に座り込んで,缶コーヒー飲んだり,チーズ食
べたりしていたら,隣の店のおばちゃんがジロリとにらむ.
白川郷で朝を迎えて快晴だったので,日中暑さが厳しくなると覚悟し
たのだが,気温が上がらず涼しい.疲れ果てた身体に,これは助かる.
*福光町福光橋231.7km,1日PM1:18(30h18m)6番*
福光の街を過ぎて,再びヘロヘロになる.今度はいよいよ厳しい.足
をちょっとずつしか前に出せない.残り30km強,いったい何時間か
かるのか?という走り(歩み?)になる.頼みのアミノバイタルも飲み過
ぎたか,あまり効く感じがしなくなった.
ピンチ! タカリュウ
最悪の状態の時,黒メガネ無しタモリさんが,すごい勢いで抜いてい
く.ヒェー,何という元気.と思いながらも,黒メガネ無しタモリさん
に刺激されたのか,少しだけ気持ちを奮起させる.
道端の水道で足に水をジャバジャバかけたら,足の筋肉も少し奮起し
て,走れるようになった.
走れ! タカリュウ
もうやけくそである.足が動くうちに走れるだけ走って,その後ばっ
たり動かなくなっても,そのときはそのときだ.
*富山・石川県境241.7km,1日PM2:43(31h43m)7番*
やけくそ走りがどこまで続くのか? いつまでも足が動く,自分の身
体が信じられない.いったいぜんたいタカリュウの筋肉はどうなってし
まったんだ?
★第6章 兼六園と佐藤桜とタカリュウと266km★
やけくそで走り続けて,とうとう金沢の街に入ってしまった.森本交
差点33時間02分,あと13km全部歩いても36時間以内だ!
市内は歩道の人も多い.信号待ちで立ち止まると,女子高生の視線を
感じる.「かっこいい〜」という視線ではなく,「何このヨレヨレの人,
気持ち悪〜」という視線であるのは言うまでもない.
*兼六園佐藤桜259.3km,1日PM4:44(33h44m)5番*
兼六園下を通過する道,車道を直進すると思いこんでいたのだが,斜
めに登る急坂の歩道がある.コース地図をどう見ても,この急坂を登る
ようである.しかしこの急坂を登って,もしコース間違いだったら,あ
まりにもショックが大きい.立ち止まり,急坂を登るかどうか躊躇する
こと23秒.意を決して登る.
登った先に,最後の佐藤桜.34時間のさくら道の感謝を込めて佐藤
桜にエッタ.
サポートの山口さんに「ここまで来たら終わったようなもんだね」と
声をかけられ,最後の6.3kmの走りに出る.
*ルネス金沢266kmゴール,5月1日PM5:33(34h33m)5番*
金沢市二口町の交差点を右折,最後の直線3km.短いようで,26
3km走ってきた身体には長く感じる3km.いよいよゴールだ,ビー
ルが飲める^^;;
ゴールの会場が見えてきた.とうとう266km走り続けてしまった.
なにか自然と涙ぐんでしまうタカリュウ.
5月1日午後5時33分,ルネス金沢正面玄関前,バンザイゴール.
34時間33分,5番目のゴール,夢にも考えなかったタイムで走りき
ってしまった.
★第7章 エピローグ★
ゴールだ,ビールだビールだ! ゴールの感激も,スタッフの方々へ
の感謝感激の挨拶もそこそこに^^;; 風呂も着替えもさておき,一目散
に休憩室へ.
「生ビールひとつ!」
ゴクッ,ゴクッ,ゴクッ,うんま〜〜〜〜いいいぃぃぃぃ
この一瞬のために,2日間我慢し続けてきたのだ.
風呂で34時間の汗とあかを流して,さっぱりしたぞ,さあビール.
うんま〜〜〜いいぃぃ
仮眠室で少し寝るが,身体が疲れすぎていてよく眠れない.眠れない
からとビール.うんま〜〜いいぃ
3時間ほど寝たか,寝起きでのどがカラカラ,即ビール.うんま〜い
ゴール19時間後の5月2日PM1,清算で生ビール11杯飲んだこ
とが判明.自分で自分にあきれるタカリュウ,さくら道2001春であ
った.
★2001さくら道ウルトラマラソン★
参加者:238人
完走者:102人(48時間以内)
完走率:43%
参加費:1万9000円
おわり
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