対談  
                   水道水のフッ素化をめぐる欧米の情勢



この記事は、「季刊 薬のチェックは命のチェックNo.16号(2004年10月20日発行)に掲載 されたものを、 一部訂正加筆した。したがって、雑誌に掲載された文章とは一部ことなっているところがある。
          村上 徹
発行所・医療ビジランスセンター
――水道水のフッ素化をめぐる海外の情勢をお聞
かせ下さい。


村上 何年か前、読売新聞が水道水にフッ素を添加するフッ素化はいいことだから、日本でもやれという社説を載せたのですが、この社説が如何に能天気かつ不勉強なものかは、私の著書「フッ素信仰はこのままでよいのか」に述べておきました
1)。近頃の欧米のマスコミの論調は、この読売の社説と違ってむしろ反対論が目立ちます。とくにカナダ、イギリス、アイルランドなどでです。
 
―― アメリカはどうですか?

村上 アメリカでは人口の半分より少し多くの人に、フッ素入りの水道水が供給されています。アメリカ政府の公衆衛生局と、その傘下の多数の研究機関がこぞって推進しています。宣伝文書では、フッ素化水道の割合は着実に増加しているといいますが、実態はむしろ逆。自治体(注1)の住民投票の7割程度でフッ素化条例が否決、もしくは廃止の決議をしています。だから政府はやっきになって、各州でフッ素化信任委託法を通過させようとしているのでしょう。
注1:市町村単位:住民の賛否の意思は市町村議会か住民投票で決められる。

――信任委託法というのは?

村上 端的にいうと、「フッ素の安全性は連邦政府が保証している。だから各自治体は、安全性の議論などせず、住民の意向にかまわずフッ素化しろ」ということです。

――ものすごく強引ですね。イギリスはどうですか?
 
村上 去年、ブレア政権が水道水へのフッ素添加の法案を通過させました。「地域住民が望むなら、水道会社がフッ素化するのを政府は支持する」という主旨です。今回の審議がきっかけで、野党の保守党はフッ素化廃止を党議としたので、保守党が政権をとれば、英国ではフッ素化が廃止されるかもしれません。

――英国内でフッ素化地域は多いですか?

村上 10%程度。イングランドの一部の都市だけです。スコットランドやウェールス、北アイルライドは皆無。政府はロンドンを中心とする首都圏をフッ素化したがっていますが、現政権支持者でも、フッ素化は支持しないという市民が多いために普及しません。ロンドンは代々市長自身が反対の中心のようです。

――アイルランドは?

村上 この国はフッ素化しないのは違法ですが、いくら違法でも、30パーセント程度の住民がガンとして拒否してフッ素化しない。実施している地域でも反対が強くて、複数の野党がフッ素化廃止を公約に掲げています。

――他の欧州諸国は?

村上 欧州でフッ素化している所は、今はどこもありません。オランダは憲法でフッ素化を禁止しています。これまで唯一の例外がスイスのバーゼルで、20数年間フッ素化をやっていましたが、反対する住民が多く、とうとう昨年(2003年)廃止しました。その理由がね、フッ素化したって、虫歯の数は別に変わらないということでしたよ。文献の上では、スペインのごく一部でまだフッ素化しているといわれていますが、実態がまるっきりわからんのです。

――旧ソ連や東欧諸国は?

村上 東西ドイツの統合で、東ドイツのフッ素化は全て廃止されました。西ドイツはカッセルという小さな都市でフッ素化の実験をしていましたが、統合のかなり以前に危険との判断で中止しました。ソ連時代は多くの地域で水道水がフッ素化されていましたが、ソ連崩壊とともにフッ素化も全部崩壊したようです。7〜8年前、北京で国際フッ素研究学会が開催された時にモクスワから来た医師が「フッ素化はみんな止めた」といって肩をすくめてみせたのが印象的でした。ベルリンの壁の崩壊以後、ポーランド、チェコなどでは、かえってフッ素の毒性研究が勃興しました。

――中国ではどうでしょうか?

村上 中国では食品などから摂取するフッ素の量が多いのに、広州市で水道水にフッ素を加えたものですから、一度に慢性中毒が蔓延して大事件になりフッ素化を中止しました(1983年)。この事件をきっかけに中国では大論争がもちあがって、衛生学者らの主張が歯科学者らに勝利するという形となってフッ素化とは一切絶縁することになりました。香港も、中国本土に返還されると同時にフッ素化を止めました。

――フッ素化は水道水があっての話ですが、水道の普及が不十分なアフリカやアジアのいわゆる発展途上国では議論にもなりませんか?

村上 いいえ、井戸水のフッ素で重いフッ素症が起き、深刻な問題になることがあります。チベットなどでは飲料水のフッ素は少ないのにお茶からのフッ素摂取で重い健康被害が起こるため、中国保健当局は生活習慣改善の努力をしているようです。一方、南アフリカやバングラデッシュなどでは、アメリカの勧めでフッ素化しようとするなど、実に混沌としています。

――ところで、「飲料水の」安全なフッ素の濃度は、どの程度ですか?

村上 0.1〜0.2ppmならよしとすべきでしょう。私が飲んでいる前橋市の水道水は、フッ素に限れば0.15ppmで、水道水として最上の部類ですが、問題なしとはいえない。母乳中のフッ素は、母体がどんなにフッ素の多い水を飲んでいようとも、それよりさらにヒトケタ下、0.01ppmが普通ですから。飲料水中のフッ素も、本当はこのあたりが安全なのでしょうが、水源自体のフッ素が高い場合は、低くするにはお金もかかります。0.1〜0.2ppmならよしとすべきと言ったのはそのためです。また、何をもって安全とするかは大問題ですが、ここでは「一生飲み続けても、そのために病気になることがなく、長生きする」という意味です。

――コレステロールや血圧と同じですね。動脈硬化学会が高脂血症といっているコレステロールが240〜260mg/dLくらいの人が一番長生きですから。ところで、アメリカの水道水はどうなのですか?

村上 アメリカの水道水中のフッ素の最大許容量は4ppmです。日本の上限は0.8ppmですから日本の5倍です。ヒ素も日本の5倍許されています。

――アメリカに旅行するときは、絶対に水道水は飲めないですね。

村上 だからアメリカでは、多少知識がある人は、水道水では料理しないし、勿論、飲まない。スーパーに行くと、蛇口のついた一斗缶のような大きなミネラル水を売っている。水道水はイギリス英語でタップ・ウォーター、蛇口から出る水のことです。水道水は飲まず、高い別な水道水(タップ・ウオーター)をスーパーで買う。これがアメリカ文明(笑い)。しかし、笑ってもいられない。大都会を中心に、日本でもそうなりつつある。

――ペットボトルの水や清涼飲料水もフッ素がはいっていることもあると聞いたことがありますが、あれは本当でしょうか?

村上 それは確かです。大体、ペットボトルの水質は、法的には何の規制もない。日本だってそうです。世界中の何百種類というブランドのペットボトルの水質についてインターネットで詳しく解説しているサイトや、逆に、フッ素を含まないからむし歯予防にならないボトル水はこれこれ、というサイトもあります
2)。アメリカでは5本に1本くらいが0.6ppm以上のフッ素が濃いものです。

――相当注意が必要ですね。ところで、日本では水道水のフッ素化の動きは下火になりましたが、学童や幼児がフッ素塗布や洗口のターゲットになってきました。行政指導で半強制的に洗口をさせる国はほかにもあるのでしょうか?

村上 日本のフッ素洗口の根拠は厚労省の局長通達で、本当は法的に強制力のあるものではありません。人権尊重の時代にインフォームド・コンセントなしの薬剤使用などありえませんよ。子どもにそんな事をさせたくない親ははっきりイヤだという意志表示をすべきです。横ならびの日本的社会では、そうはっきり意志表示をするといやがられるかもしれませんが、これは悪しき風習です。自分の健康は自分で守る姿勢をとらなくては。ところが、カンボジアに行った知人は、子どもがアメリカ軍によって有無をいわさずフッ素洗口させられているのを目撃したそうです。それを聞いた時、私は、アメリカ軍から頭にDDTを吹きかけられたことを思いだしました。戦中派のいやな思い出の一つです。オーストラリアやニュージーランドなどでも所によってフッ素洗口をやっているようです。

――やはり問題はアメリカですか?

村上 世界中でフッ素化に狂奔しているのはアメリカ政府だけですから、アメリカが止めれば、「親亀こけたらみなこけた」になるのは必然でしょう。もし、アメリカでフッ素化政策がまちがっていたということにでもなれば、どのくらいの数の賠償請求の訴訟が起こるか、見当もつかないといわいわれています。 何しろアメリカ政府のフッ素推進の言い方がめちゃくちゃです。
いわく、「斑状歯は単なる美容上の問題にすぎない」
いわく、「アメリカには骨フッ素症なる病気は存在しない」
いわく、「フッ素化でガンが起こることなどありえない」
いわく、「フッ素化に反対する連中は奇人変人」
いわく、「フッ素が中枢神経に問題を起こす根拠など何もない」
そして最後の殺し文句、
いわく、「フッ素化は、虫歯予防のため安全かつ有効な唯一の手段だ」

――お互い話し合うということにはならないのですか?

村上 推進者は、反対するものと同じテーブルでデータを囲んで討論しようしません。アメリカではディベート(論争)が盛んですが、フッ素の問題ではディベートを絶対にしない。「独裁者のやり方だ」という批判があっても論争しない。ただ宣伝、誹謗中傷、データ改竄、人権無視、言論抑圧あるのみ。その上、やり方が非常にしつっこい。研究者がフッ素の害についての研究発表を妨害され、それでも発表したら解雇される。ある自治体でフッ素化条例が拒否されると、3〜4年後には同じ条例をまた提出する。また拒否する。また出す。こんな事を数十年間あきずにくりかえす。

――むし歯が減れば歯科医は患者が減って困るのではないですか。アメリカは連邦政府が強力に押し進めようとしているという、その理由は?

村上 一言で言えば、フッ素を推進することによって利益を得る人達がやはりいるということですね。アメリカでは原子力産業と軍需企業を中心とする重厚長大産業と、燐酸肥料製造産業、製薬産業、砂糖産業などです。これらの大産業はアメリカ経済を支えていますので、政府を背後から動かす力も非常に強い。歯科医業などもこの恩恵に浴していますね。アメリカの水道水は4ppmまで許可されていますから、斑状歯ができて醜くなる。セラミック製人工歯冠の需要が多くなります。むし歯治療よりずっと高額ですし、今やアメリカ、カナダの歯科医師の一大収入源になっています。ガンその他の疾病が増えれば、医業も患者の増加という恩恵を受けます。ガン医学も進歩するでしょう。これは皮肉でも何でもありません。

――フッ素の使用は原爆の開発と何かと関係があるという話をききますが、どういうことなのでしょうか。

村上  フッ素と原爆の関連については、あまりにも込み入った事情があるので一言では言えません。私のホームページの記事3)とそれにリンクしてある情報をお確かめ下さい。

――アメリカでの廃止の見通しは?


村上 フッ素の危険性に関する論点は出尽くした感があります。今は廃止させるため、いかに効果的な行動をとるかという段階です。つい先頃(2004年8月)全米の市民と科学者が一堂に会してフッ素化を廃止させるという、たった一つの目的のために数日間集会を開催しました。こんな事は、これまで一回もなかった出来事です。相手も強大ですが、廃止のための理論と行動の核となる集団も強力になりつつありますから、きっと変わると思います
4)


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参考情報
1) 村上徹著『フッ素信仰はこのままでよいのか』(績文堂・2003年)
2) http://kitkat.wvu.edu:8080/files/1439.1.Johnson_Sissy_ETD.pdf
  
,( 村上注・このサイトは最近削除されたとみえ、現時点ではリンクができない。) 
3) http://members.jcom.home.ne.jp/tomura/murakami/bryson.htm
http://members.jcom.home.ne.jp/tomura/murakami/abomb.index.htm
4)http://www.fluoridealert.org/conference/about.htm

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