〔翻訳〕
子どもの歯と老人の骨に対する
   フッ素の有害性の新たなる証拠
 
              オークランド大学教育学部名誉研究員
                    ジョン・コフーン*
                   歯学士,文学士(歴史学),博士
  
           翻訳 小川みさ子* *  村上 徹***
                  監修 村上 徹
 
(このテキストは医学論文を解りやすく編集し直したものです。厳密な原著をご希望の方はE-メールで村上までご連絡下さい。)
 
概要
 水道フッ素化と腰部骨折の発生率との関連が最近の研究で報告されており、フッ素化飲料水がその危険因子の1つであると示唆されている。ニュージーランドでは1950年代から腰部骨折が3倍以上も増え,なお増加中である。骨粗鬆症へのフッ素療法の後で起こる腰部や他の部位の骨折、地方性フッ素症、フッ素化都市に住む老人の骨などについての研究結果を総合して考えると,水道フッ素化と骨の脆さの間に関連性のあることが示唆される。
人間が摂取するフッ化物の約半分は骨に蓄積する.児童や腎機能に障害がある成人は排泄されるフッ素がより少なく、蓄積される量はさらに多くなる。フッ素の摂取の増加と共に歯牙フッ素症の発生頻度が増え、その重篤度が増しているが、これは子どものフッ素の摂取が過剰になっている兆候である.これらの子どもが老齢に達した時には、骨折はますます増加するだろう。フッ素の利益は誇張されており,有害性は過少評価されている.保健問題の専門家はこれらの証拠が圧倒的な事実となる前に、フッ素化の中止を勧告すべきであろう.
 様々なフッ素の害作用が論争されているが、フッ素によって害を受けるのが歯と骨の2つの組織である事は異論がない。歯に関するフッ素の利益はよく話題に上るが,害について殆ど聞かない。まして,骨に害があることについては尚更である。これが,この論文のテーマである。
 
成人の骨に関するフッ素の作用
 
 1990年のアメリカ医師会雑誌{1}の報告によれば、フッ素化飲料水は、その他の要因とともに、65 歳以上の女性の腰部骨折を増加させているようだという。この腰部骨折は、骨粗鬆症に罹っている人には共通する災難であるが、女性にとってはしばしば致命的だ。最近の別の研究も、骨折と飲料水中のフッ素濃度との関係を報告した。{.2,3 } ニュージーランドではこのような骨折は1950年代から3倍以上も増えてきており、 現在もなお増加しつつある。{4}
 
{1}の研究は十分な計画の下で、「その基準とし、65歳以上のアメリカの全人口」ついて調査された。そこには、4年間にわたるアメリカのすべての腰部骨折(50万件以上)が記録されている。腰部骨折とフッ素化水との間の「弱い」相関性は、その他の危険因子について統計的な補正を行うと「強い」ものになった。アメリカの水道フッ素化30年後に行われたこの大規模な研究がもたらした情報は、長期間にわたるフッ素の骨に対する有害性を示唆するものであったが、「フッ素化は安全である」と主張した初期の研究がこのような情報の提供ができなかったのは、それが天然フッ素地域におけるごく少人数の母集団の研究だったためだろう。
 イギリスにおける同じような研究の論文の著者{5}によれば、データを再検討したところ、腰部骨折と0〜1ppmのフッ素濃度を有する飲料水との間には、正の有意の相関性が明らかであった。
 さらに別な証拠がアメリカ疫学会雑誌で発表された{3}。それによると、飲料水中のフッ素濃度が4ppm の地域に住んでいる女性の骨折は,1ppm 地域の2倍である。また,さらに濃度が高い地域では, 骨量の損失 がより多い。4ppm は安全限界であり、1ppmは至適濃度であるとも言われているものである。フッ素の安全幅は従来主張されているものより明らかに低いのである。
 
 相関性が弱かったために、フッ素化水と腰部骨折とを関係つけるためには、さらなる証拠が必要だと議論されている。{.6,7}しかし,現在言われているフッ素化水とウ蝕との「逆比例」の関係は、ここで報告された腰部骨折との「正比例」の関係よりはるかに有意性が弱いものでしかない。また、主張されているフッ素化地域におけるウ蝕の発生率の低さは、DMF(穴のあいた,抜歯された,充填された歯または歯面の数)という、不正確なウ蝕の測定方法を使用した研究に基づいたものでしかないのである。これは極めて主観的な方法であり、検査者の偏りに影響を受けやすいのである。{.8}フッ素化の効果とされるウ蝕の減少{9} は,このような「DMF」のパーセンテージで表現されると非常に印象的なものとなるが、実のところでは、これらの減少は児童1人あたり0.5本以下であり、ある場合には歯面{10}でいっても、0.5 面以下でしかない。そしてこの診断は主観に左右されるため,臨床的に意味がないことはもとより統計的にも全く意味がない。もとより、腰部骨折の診断が主観的なものでないことはいう迄もない。 フッ素と骨折との間の因果関係を指摘する証拠は, この他にも沢山あるのである。
 
 最近のニュー・イングリッシュ・メディカルジャーナル{11}や「骨とミネラル代謝」誌{12}十分な研究計画の下に行われた「骨粗鬆症に対するフッ素療法の副作用」に関する臨床的研究{13-15}などによれば、フッ素は骨を強くするどころか実際には脆弱化させ骨折を増加させているという。これらの論文の著者らはフッ素はもはや推奨さるべきではないと結論しているのである。また、これより以前にスイスで行われたフッ素療法後の両側性の腰部骨折の症例研究は、「これらのデータは,腎不全の患者においては、 フッ素と骨折との間に因果関係があることを示唆している」と結論している{16}インドで行われた地方性フッ素症の研究も、フッ素に侵襲された骨の張力の弱化を報告している{17,18}。   
 これらの研究は、フッ素量が極めて多いという理由からフッ素問題とは無関係であると言われるが,こうした主張はフィンランドで行われた研究を前にすると説得力を失うものとなる{19-22}それによると、 フッ素化地域に住んでいた一部の高齢者の骨中のフッ素濃度は, 骨粗鬆症のためのフッ素療法による結果と極めて近似していた. フィンランドでは現在フッ素化は中止されている( アーナル博士よりの私信 1991年)。オーストラリアやニュージーランドでは、英語圏の大部分の国家と同様に、このような高齢者の骨の調査が行われないままフッ素化が強力に推進されているのである.
 
 1980年代に,フィンランドのクオピオ大学の医学者とほかの分野の科学者が,人間の骨に対するフッ素化水の影響についての調査結果を発表した{19-22}。. 1959年以来、彼らのクオピオ市は、 フィンランドで唯一の人工的フッ素化が行われてきた都市であった(最高1 ppm まで)。 彼らは次のように報告している。 「クオピオ市以外の住民の骨の標本には比較的変化が少なかったが、クオピオ市の住民の骨のフッ素濃度は年齢ととともに著しく増加した.。重症の骨フッ素症に罹患していた女性の骨の灰の中からは、最高値のフッ素濃度が検出された. 」腎機能障害をもち、晩年の10年以上をクオピオ市で生活した老人の骨中のフッ素濃度は3890ppm にまで達している{21}その値は, 今までに報告されている骨粗鬆症でフッ素療法を受けた患者と同じくらいである{23}。 骨中のフッ素濃度は、フッ素の大量投与に伴う2つの組織学的な病変(骨フッ素症または骨格性フッ素症)に関係する。それゆえ、フッ素化地域では長期間になればなるほど、後者の病変の全てが起こると言えるのである。
 
 クオピオ大学の科学者による研究が発表された時に、クオピオ市の保健官僚によるもう1つの研究が公表された。この研究によれば、逆にフッ素化は腰部骨折の予防に役立っているという{24}大学の科学者らは、この研究の多くの欠陥を指摘した。 例えば、 2つの都市だけや、異なった経過のフッ素化を比較しているのは妥当とはいえないという事などである{25} 彼らがフィンランド中の461例の腰部骨折についてさらに徹底的に調べたところによれば、骨折率と飲料水中のフッ素濃度の間には相関性は全く認められなかったと報告している。
 しかし、その後に行われたアメリカでの50万件以上もの腰部骨折に関する包括的な調査{1}と、女性をそれぞれ827人、684人えらんだアイオワ研究{26,3}などによって、高フッ素飲料水地域では骨折もより多いことが報告され、水中のフッ素は危険因子であることが示唆されるに至った。アイオワ研究の著者は,「水中フッ素が骨を強化する」という以前の研究でいわれた主張に対して次のように述べている。「その研究で用いられた母集団は、民族性、年齢、日光を浴びる時間などのフッ素と骨折率との関連性を攪乱する要因に対して不用意である。」{3 }
               
 現在,明白な証拠が強く示唆しているのは、長期間にわたる少量のフッ素の摂取は、短期間中の大量の摂取と同様に骨に障害を与え骨折を起こしやすくするということである。フッ素化水によって蓄積するフッ素量はごくわずかでしかないという従来の信条は、新しい証拠で割引いて考える必要がある、低量のフッ素を摂取しつづけた者が老齢に達した時には、おそらく、事態は一層悪化するにちがいないのである。  
 我々が摂取津するフッ素 の約半分は腎臓から排出するが、残りは骨に蓄積する{27,28}。 そして、一度骨に蓄積したフッ素 は、曝露が止んでも非常にゆっくりとしてしか放出されないのである(20年でその約半分)。腎臓の機能に障害がある人は、排泄能力が劣るために蓄積がさらに増加する。蓄積したフッ素は骨構造に障害を起こし骨塊(bone mass)が増加する(硬化症)。これとは反対に、骨粗鬆症(これは文字どおり多孔性の骨をいう)は骨量が減少する。大量のフッ素を投与してこの減少を元へ戻そうという試みがなされるのはこのためである。しかし、フッ素によって硬化した骨は、密度がより高くなるにもかかわらず、正常な骨より脆くなる。人生の初めの何年間かだけに形成される歯に対する影響とはちがって、骨に対する影響は一生続くのである。
 その他にも骨に対するフッ素の悪影響はあるのであろうか。
骨の障害がさらに進んだ骨フッ素症または骨格性フッ素症が,飲料水中の自然フッ素濃度が1ppm 程度の地区{29,30}でも報告されており、まれに人工的にフッ素化された国においても報告されている。 これは最終的にはX線で発見できるものの,前臨床段階の場合には様々な関節炎と鑑別するのが困難である{31,32}。これについてオーストラリアのある医学者は最近次のようにコメントしている。「前臨床段階のフッ素症が見過ごされてしまうのは仕方がない。我々は、リスクの高い人たちに対して組織的な調査がなされているのかどうかは全く知らないのだ。」{33} 少量のフッ素の長期間の摂取による別の害は、動物実験における骨ガンの発生という証拠によって示唆される。殆どの保健官僚はフッ素化のあやまちを認めようとはせず、このような危害が人間に起こる可能性については否定する。しかし、これらの証拠に関する最近の科学的意見{34}は、フッ素賛成派によって「疑わしい」と決めつけられたものとは全く趣を異にしているのである。  
 
 フッ素が骨を脆くする原因であるという証拠は「疑わしい」どころではない。しかし、フッ素化水と腰部骨折との間の相関性は、アメリカの大研究{1}も「弱い」のものでしかなく、より規模の小さなフィンランドの研究や最近のイギリスの研究でも最初は明らかではなく{22}、ニュージーランドで初めて行われた同様な研究{34}でも、まだ明白となるには至らない。疫学研究においては、このような関連性は、最近のアメリカの研究のように極めて多数の症例の記録なしには明白とはならないのである。しかし、フッ素化が続き人間が長い年月の間にわずかな量のフッ素を更に摂取し続けゆくのにつれて、老人の骨の中のフッ素は増加してゆく。この事は私をして次の一連の証拠を提示せしめる。その証拠とは,骨と歯の障害との関係である.
 
・子供の歯と骨に対する作用・
 
 フッ素化地域における今日の腰部骨折の症例は、人生のある期間にフッ素化水を飲用してフッ素が骨中に蓄積したことに出発する。ここで、「現在の子供たちが65歳に達する時までに、フッ素は骨にどのうように作用するのか」という疑問が生ずるが、これにはいまだに回答する事ができない.1984年1月に,私はオークランドの水道局に対し次のような手紙を送った。「私が検診した10歳と11歳のオークランドの子供たちは,永久歯の全てに斑状歯、つまり、牙フッ素症を有しておりました。生まれてからこのかた、この子供たちが過剰なフッ素を摂取したためです。人騒がせな人間が誇張していると非難するかもしれませんが、オークランドの子供たちは、ほぼ間違いなく骨格の障害も受けていると思われます。フッ素の摂取をただちに減らさないと,もっと多くの子供たちが危険に晒される,と私は信じております。」 
 
 その翌年,スェーデンの研究{36}で、小供は大人よりフッ素の排泄が悪く、骨に溜まる割合がより多いということが確証された。インドの研究者も次のように報告している。「フッ素に暴露される期間がより短かくとも、フッ素の害毒は大人より更に子供を苦しめる。それは子供たちの発育する骨の代謝がより活発で、フッ素がより多く早く骨に蓄積するからである。」{32}                      
 
 歯のエナメル質に白濁や斑点が生じる歯牙フッ素症は、歯の形成の障害であってかなり
以前からフッ素中毒の初期の敏感な兆候であると思われてきた。{37-39}フッ素化地域におけるこの蔓延は、フッ素が初めて水道に添加された時に予想されたものよりはるかにひどいものであることを多くの研究が報告している{40-46}
ニュージーランドの一連の研究によると、これはフッ素推進派がしばしば主張しているように「褪色」するどころか更に悪化して、一部の子供たちの歯は「不満足な外観」、すなわち、斑点は変色してザラザラしているのである。ある論文の著者は,斑状歯を減らすために現行のフッ素の摂取レベルを低くすべきであると提案している。
 
 1986年にネイチャーに掲載された論文は、次のように述べている。「今や、フッ素化の莫大な利益といわれるような法外な説は科学的に再検討すべき時である。」{48} その利益というような言い方には異議が多く,精々,よく言っても誇張されたものでしかない.{49}ヨーロッパ(フッ素化が実施されていない)のある歯学研究者は,その有害な副作用(歯牙フッ素症)を理由に、フッ化物のどんな全身的な応用にも反対している。彼らの指摘によれば、「局所」(歯にフッ素溶液を外用する)応用の方が虫歯の予防にはより効果的であるというのである。{39,50}オーストラリアやニュージーランド、ヨーロッパの多くの国々では子供たちは学校の歯科室に行くことができ、指示された時には、このような局所応用を受けることが可能である。フッ素の集団的全身的供給を続けねばならぬ理由は全く見当たらないのである。
 残念なことに医歯学の専門家は、ひとたび正統として受容されている説に対して挑戦することには億劫であり、フッ素化の為害性に関する新しい証拠には正面から向き合おうとはしないようである。変わりやすく、制御することが不可能な強制的フッ素投与で子供たちの歯が受ける悪影響は、これまで過小評価されてきた。新なる証拠は、骨に対する悪影響も過小評価されてきた、と示唆している。我々は、これらの有害性の証拠が圧倒的な事実となる前に、健康問題の専門家として期待される注意力と責任感とを以て行動し、フッ素化の中止を勧告すべきであろう。(完)

文献は省略
 
*   故人
** 主婦
***歯科医師・医学博士

連絡

ホーム・ページに戻る