公衆衛生から現代への警告
その4 松果体に蓄積するフッ素について
松果体は、その名のとおり松かさのような形をして、脳の両半球の間に位置している。
この小さな腺組織は、ながい間、科学者や哲学者の興味をひき続けてきた。デカルトはこれを"魂の座"呼んだ。あまり詩的ではないが、"脳のペニス"とも呼ばれている。
松果体が位置している図解は、 http://www.fluoridealert.org/nrc-final.pptにアクセスすると 、このスライドショーの81番目のスライドでみることができる。
この松果体は、アミノ酸のトリプトファンから二つの重要な物質、すなわち神経伝達物質のセロトニンとホルモンのメラトニンを産生する。ある生き物においては、松果体は第三の目のような働きをし、光りによって制御される。メラトニンは夜間光りが弱い時にだけ産生される。このホルモンは生体時計のような作用をする。このホルモンの放出や血漿中の濃度は、睡眠のパターンや思春期の開始や老化などの生体の様々な出来事やサイクルのタイミングをコントロールするものと考えられている。
ジェニファー・ルークは歯科医師として訓練を受け、1990年代の大半を松果体とこれに対するフッ素の作用の研究に過ごした。この小さな腺組織がルークを魅了したことは3つあった。1)血管脳関門に守られていないこと。2)血液の灌流が腎臓に次いで非常に高いこと。3)これが最も重要なのであるが、松果体は石灰化組織であり、歯や骨と同じカルシウムハイドロオキシアパタイトの結晶で敷きつめられていることである。もし、この臓器を指でこすってみればザラサラするような感じがし、しばしば"脳砂"と言われることがある。
この3つの観察に基づいて、ルークは、この腺は高濃度にフッ素を貯留するにちがいないと仮説をたてた。そして11体の屍体を調べてみる、まったくそのとおりであることが分かった。結晶のフッ素濃度の平均は約9000ppmであり、これは極めて高い濃度である。実際にあるケースでは、21000ppmもあるものがあった。この平均濃度の高さは、佝僂性の骨フッ素症の患者の骨のものと同様である。ルークが調べた腺組織全体では300ppmであったが、1ppmであっても酵素の障害がおこるのである。この研究は、学位論文の一部(1997)としてなされたものであるが、今では印刷され公表されている。ルークはこれを「カリエス・リサーチ誌」(訳注:日本語に訳せば"う触研究雑誌"という意味になる。歯科では有名な雑誌である)で発表しているので、活発な歯科医師ならこの論文があることは知っているはずである。
彼女の論文の第二部は、動物のメラトニン産生におよぼすフッ素の作用である。ルークは、もし松果体におけるフッ素濃度がこのように高ければ、トリプトファンからメラトニンができる過程で関与する4つの酵素のうち1つは障害(毒)するのではなかろうという疑いを抱いた。彼女はこれを松果体研究では世界をリードしているギルフォードのサレイ大学で追求した。そこで彼女が発見したのは、メラトニン産生が減少するばかりか(もう少し精密にいうと、尿中に排出される水溶性のメラトニン代謝産物が減少するのである)、予想されたように、動物の初潮の早期化が起こったのであった。最高濃度のメラトニンは若い動物(人間を含めて)によって産生され、子どもが成長するにつれてその濃度が低下し、この低くなった時点で性ホルモンの産生にシグナルが送られ、かくて思春期が開始すると考えられている。彼女のこの部分の仕事はすでに論文として公開されており、飲料水の規制にあたるアメリカのどの役所でも手に入れることが可能である。ごく最近に(2003年8月)彼女の学位論文のコピーが、アメリカ環境保護庁の飲料水中のフッ素の最高許容濃度(MCL)を検討する全米研究協議会のパネルの委員一人一人に配布された。
ルークの研究の重要な点は、フッ素が蓄積する組織は骨格系(骨と歯)だという観念を否定したことである。さらに彼女の研究は、フッ素は、酵素を阻害するような濃度では軟組織には到達しないという考えを否定した。明らかにフッ素は高濃度で松果体に到達し、動物実験ではメラトニンの産生を低下させ、全体で酵素を阻害することと一致したのである。さらに彼女の観察は、思春期の早期化がメラトニンのレベルの低下と一致していることを示している。
ルークの研究の人間の健康に即する意義に関する限り、その可能性は計り知れない。とくに興味がもたれるのは、アメリカでは、思春期の到達が少女においてはとくに早くなっており、どうしてこのような事が起こっているのか誰にもわからないということである。その原因は色々と考えられるが、松果体に関するルークの研究に基づくなら、フッ素もその一因とすべきである。この関連性において、ルークが文献を渉猟して、フッ素化が思春期の早期化と関連している可能性を発見したのは重要である。すなわち、ニューバーグ・キングストン研究(これはアメリカにおける二番目のフッ素化実験であった)で、シュレージンジャーら(1956)が、フッ素化地域のニューバーグの少女の方が、フッ素化していないキングストンの少女より、平均して5か月初潮が早いということを報告しているのである。当時のこの論文の著者らは、その発見の意味するところを考えずにいたが、ルーク研究の文脈で見るならば、この観察は新しい意味をおびてくる。
さらに重要なことがある。ルークはセロトニンの産生については研究していなかった。これは私の見解では、もし、トリプトファンがセロトニンに変換する際に働く2つの酵素のうちの一つでもフッ素によって阻害されるなら、メラトニン以上に深刻である。セロトニンは脳を静かにさせる神経伝達物質である。世界中で何百万人もが、セロトニンの滞留時間を増加させるためにプロザックを飲んでいる。これはおそらく、彼らの脳が、十分なセロトニンを合成できないためであろう。
この研究にたいする政府機関、とくにフッ素化を容認している少数の国々の反応はどうか。これが皆無なのだ。一瞥もしないのである。私の見解では、この意味は、彼らがこの発見に挑戦できず、この方法に疑問を呈することすらできないということである。ルークはギャリー・ウィトフォードの実験室で組織中のフッ素の分析を学ぶという用心を行っていた。過去において、ウィトフォードはフッ素化の強力な推進派であり、1993年に全米研究協議会がアメリカ環境保護庁の飲料水中のフッ素の最高許容基準の検討を行った際のカギとなる委員であった。しかし、最近、この問題についての彼の発言は、絶えて聞くことがない。前述したように、ルークはまた、彼女の仕事の動物に関する部分を、松果体の研究では世界でも指導的な機関で行った。従って、彼女の研究にかんして、技術的な弱点があるということは殆ど信じられないのである。
深刻な疑問が多々沸き上がる。
人間の松果体にフッ素が蓄積するというルークの発見の確認には、政府資金による研究班なら長期間は要すまい。ならなぜ、それをしないのか。
2000年10月にアイルランドの"フッ素化フォーラム" で、私はルークの研究を詳しく紹介した。しかしながら、彼らの最終報告書には、これに関しては一行ものっていない。なぜなのか。
ルークが私に語ったところによると、彼女はイギリスの医学研究協議会(MRC)にこの研究を知らせたということであるが、彼らの最終報告書(MRC, 2002)には、フッ素が人間の脳に蓄積するということには何一つ触れず、この領域の今後の研究の勧奨もしていない。なぜなのか。
そんなことで得るものは、精々、子どもの口の中に128ある歯面のうちの一本の歯の6/10歯面(Brunelle and Carlos, 1990)を虫歯から救うだけである。こんな目的のために、ある政府はフッ素化を実施し続け、このよう深刻な警告にもかかわらず、以前にもまして強行しようとしているのである。
ポール・コネット
追記
上記に引用して文献は、すべて
http://www.SLweb.org/bibliography.html か http://www.fluoridealert.org/reference.htm
でアクセス可能です。
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ニューヨーク・セントローレンス大学教授
ポール・コネット
訳・訳注村上 徹
(2003年9月25日)