更新日 1998年 10月 12日  English is here.


宮澤賢治の宇宙から 野の花


 宮澤賢治の文学には、実にたくさんの野の花が登場します。
 そこで、吉野さんのオンライン賢治祭、今年1998年は野の花のPOV-Rayによる3D-CGで参加しました。彼の言葉のイメージ喚起力には及ぶべくもありませんが、一つの楽しみ方ということで御覧下さい。



Software : POV-Ray v.3.0
pov file : kwkikyo.txt
I used Mr. Chris Colefax's GALAXYFILES, thanks.
     そらのてっぺんなんか冷たくて冷たくてまるでカチカチの灼きをかけた鋼です。 そして星が一杯です。けれども東の空はもう優しい桔梗の花びらのようにあやしい底光り をはじめました。
     その明け方の空の下、ひるの鳥でも行かない高い所を鋭い霜のかけらが風に流されてサラサラサラサラ南の方へ飛んで行きました。
     実にその微かな音が丘の上の一本いちょうの木に聞える位澄み切った明け方です。 いちょうの実はみんな一度に目をさましました。そしてドキッとしたのです。今日こそは たしかに旅立ちの日でした。みんなも前からそう思っていましたし、昨日の夕方やって来た二羽の烏もそう云いました。
-「いちょうの実」より -

桔梗  45k / 1998.09 by Tsutomu Higo



Software : POV-Ray v.3.0
pov file : kwlily.txt
I used Mr. Chris Colefax's LENSEFFECTS, thanks.
     けれども窓の外では、いっぱいに咲いた白百合が、十本ばかり息もつけない嵐の中に、その稲妻の八分一秒を、まるでかがやいてじっと立っていたのです。
     それからたちまち闇が戻されて眩しい花の姿は消えましたので、ガドルフはせっかく一枚ぬれずに残ったフランのシャツも、つめたい雨にあらわせながら、窓からそとにからだを出して、ほのかに揺らぐ花の影を、じっとみつめて次の電光を待っていました。
     間もなく次の電光は、明るくサッサッと閃めいて、庭は幻燈のように青く浮び、雨の粒は美しい楕円形の粒になって宙に停まり、そしてガドルフのいとしい花は、まっ白にかっと瞋って立ちました。
-「ガドルフの百合」より -

白百合  56k / 1998.09 by Tsutomu Higo



Software : POV-Ray v.3.0
pov file : kwumeb.txt
I used Mr. Chris Colefax's LENSEFFECTS, thanks.
     うめばちそうはすなおなほんとうのはなびらをもっていたのです。そして十力の金剛石は野ばらの赤い実の中のいみじい細胞の一つ一つにみちわたりました。
     その十力の金剛石こそは露でした。
     ああ、そしてそして十力の金剛石は露ばかりではありませんでした。碧いそら、かがやく太陽、丘をかけて行く風、花のそのかんぱしいはなびらやしベ、草のしなやかなからだ、すべてこれをのせになう丘や野原、王子たちのびろうどの上着や涙にかがやく瞳、すべてすべて十力の金剛石でした。
-「十力の金剛石」より -

うめばちそう  43k / 1998.10 by Tsutomu Higo



Software : POV-Ray v.3.0
pov file : kwtsume.txt
     そして私たちはまっ黒な林を通りぬけてさっきの柏の疎林を通り、古いポラーノの広場につきました。そこにはいつものはんのきが風にもまれるたびに青くひかっていました。わたくしどもの影はアセチレンの灯に黒く長くみだれる草の波のなかに落ちてまるでわたくしどもは一人ずつ巨きな川を行く汽船のような気がしました。
     いつものところへ来てわたくしどもは別れました。そこにほんの小さなつめくさのあかりが一つまたともっていました。わたくしはそれを摘んでえりにはさみました。
-「ポラーノの広場」より -

つめくさ  31k / 1998.09 by Tsutomu Higo



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背景MIDIは 宮澤賢治 牧者の歌 / 演奏者:ちえりん