宮澤賢治の宇宙から 野の花
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その明け方の空の下、ひるの鳥でも行かない高い所を鋭い霜のかけらが風に流されてサラサラサラサラ南の方へ飛んで行きました。 実にその微かな音が丘の上の一本いちょうの木に聞える位澄み切った明け方です。 いちょうの実はみんな一度に目をさましました。そしてドキッとしたのです。今日こそは たしかに旅立ちの日でした。みんなも前からそう思っていましたし、昨日の夕方やって来た二羽の烏もそう云いました。 -「いちょうの実」より - |
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それからたちまち闇が戻されて眩しい花の姿は消えましたので、ガドルフはせっかく一枚ぬれずに残ったフランのシャツも、つめたい雨にあらわせながら、窓からそとにからだを出して、ほのかに揺らぐ花の影を、じっとみつめて次の電光を待っていました。 間もなく次の電光は、明るくサッサッと閃めいて、庭は幻燈のように青く浮び、雨の粒は美しい楕円形の粒になって宙に停まり、そしてガドルフのいとしい花は、まっ白にかっと瞋って立ちました。 -「ガドルフの百合」より - |
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その十力の金剛石こそは露でした。 ああ、そしてそして十力の金剛石は露ばかりではありませんでした。碧いそら、かがやく太陽、丘をかけて行く風、花のそのかんぱしいはなびらやしベ、草のしなやかなからだ、すべてこれをのせになう丘や野原、王子たちのびろうどの上着や涙にかがやく瞳、すべてすべて十力の金剛石でした。 -「十力の金剛石」より - |
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いつものところへ来てわたくしどもは別れました。そこにほんの小さなつめくさのあかりが一つまたともっていました。わたくしはそれを摘んでえりにはさみました。 -「ポラーノの広場」より - |
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