QCサークル誌 2002年4月号 No.489 

一人サークル活動で成果を上げている事例

体験事例1 物流費業務の改善』

    ■構成人員:女性1名

    ■メンバー年齢:35歳

    ■結成:2000年4月

    ■テーマ歴:1件

活タ川電機業務改革推進本部生産技術グループ「ザ・セイサンギジュツサークル」 杉井千春

  ●こんな事例です

 一人サークルで活動した事例です。これはQCサークルの拡がりを示す一例と言えるでしょう。定年で退職した前任者の物流費業務が今までの業務に上乗せされるようになり,困った杉井さんは改善を重ねて,ついに業務処理の軽減化に成功しました。

1.テーマに取り組んだ背景

私は業務改革推進本部生産技術グループに,紅一点として所属しています。私の業務は,秘書とグループメンバーの補助業務が主ですが,いくつかの業務は私に任されています。今回の改善ステップは【図1】に示すとおりで,上司や前任者のアドバイスと参考書の勉強で改善を行いました。

                          1 改善のステップ】

                  

このテーマに取り組んだ背景には,昨年の3月に,同じ職場のベテランのSさんが定年退職されたことがあります。私はSさんに花束を渡しながら「第2の人生を楽しんでくださいね」と送る言葉を述べました。その時は,まさかSさんの仕事が自分にまわってくるなんて,想像もしませんでした。
 ところが、送別会が終ったある日,グループ長が大きなファイルを抱えてやってきました。そして「杉井さん,物流費,お願いね!」とにっこり笑って言ったのです。それを聞いて,私は「ギョギョッ」となりました。今でも仕事が手一杯で,5時過ぎには子どもを保育園に迎えに行かないといけないのに「何で私がするの」と思いました。しかし,「人の補充がないから頼む」とグループ長に口説かれたのです。
 
実際,物流費業務をやってみたところ,あっちに電話,こっちに電話,ファイルを調べればあっちのペーシ,こっちのページと,タバタです。これではとても納期に問に合いません。このままでは,ほかの仕事を手抜きするか,残業するかしかありません。しかし,私の性格上,仕事の手抜きはできません。残業もまた,子どもがいるのでできません。それに子どもの授業参観にも行けないし,熱を出した時なんかも,休めないと困ります。そこで,この物流費業務を何とかしたいとこのテーマに取り組みました。

【コメント】
 3人の子どものお母さんである杉井さんは,日々の忙しさの中で新しく習得した技術・白動プレゼンテーションを活用して,この発表を一人で行いました。自動プレゼンテーションとはパワーポイントの設定を,一定の時間が経つと白動的に画面が切り替わるようにした機能です。セリフ原稿を読み上げる時間を計り,それに合わせて時間ききを設定すれば,パソコンを操作する人がいなくても発表できます。

2.物流費業務改善への取り組み

 物流費業務は以下のように3種類の業務から成っています。  

<物流費業務の内訳>

1.地域運賃負担配分表
  毎月20日締め後、物流センター4部門の地域運賃と物流費出荷状況表のデータを
  もとに作成するもので、23日までに支店など
6部門に報告する。

2.物流費の伝票処理
  毎月20日締め後、L社から配分報告をもらって製品出荷高比率を計算し、
  S社とN社に連絡。23日まで にL社と合わせて請求書の伝票処理をする。

3.物流費集計
   毎月、支店・工場など13部門から物流費報告を受けて集計し、物流費と
  物流比率を各部門に報告する。

最初に「地域運賃負担配分表作成」と「物流費伝票処理」を引き継ぎました。ところが,この業務はN電機の担当者に電話をしたり,同じ時期に流通センタから報告がきたりと,あちこちとやりとりが必要でした。大きなパイプファイル5冊を調べたり,上司に聞いたりと,バタバタです。しかし,それでもよくわかりません。この仕事は20日過ぎの一番忙しい時に23日までに片づけなければなりません。私が持っている考案や生産性の仕事もこの時期に重なります。あれも,これもと,頭の中はパニック状態となりました。
 
次は「物流費集計業務」です。
現状は工場・支店など13部門から報告をもらってデータを集計し,結果を出すまで31日かかっていました。グループ長の希望は20日までです。しかし,集計がものすごく面倒で時間がかかります。今のやり方では26日に報告するのが精一杯。しかもベテランになるまでには少なくとも半年以上はかかります。
 
そこで,物流費業務を短縮しようとシステムづくりに取り組みました。
まず最初に取り組んだのが,1冊で何もかもできるマニュアル作り,次が集計方法の改善です。マニュアルを作るにあたっては,上司や前任者のSさんなどたくさんの方に教えていただきました。また,家でパソコン雑誌を読んだりして,一生懸命勉強しました。

ついに総ページ数57ページの,1冊で何もかもわかるマニュアルが完成しました。表紙でいつ頃何をするのかがわかります。ページを開くと物流費業務全般の図式が出てきます。
 
フローチャートには,物流費業務の伝票処理に関係する3社との業務手順のフローが書いてあります。フローチャートに書いてある各項目については,詳細な作業手順が別にあります。マニュアルに沿って作業をすると,誰でも3ヵ月くらいで一人前になれます。このマニュアルのおかげで,物流費業務は時間が大幅短縮され,納期にも余裕で間に合うようになりました(図2,表1参照)。

今までの改善工数をまとめますと,旧方法では,最初の1ヵ月目は74時間程度かかります。半年くらいで慣れてくるのですが,それでも43時間はかかります。私の方式では最初の1ヵ月は20時間くらいです。しかし,数ヵ月経つと12時間でできるようになります。 

                       【図2 物流費集計業務の改善】

                                    

                      【表1 改善効果の内訳】  

 

改善前

改善後

データインプット回数

370

17

ファイル起動回数

28

16

マウス操作回数

90

43

パイプファイル調査回数

17

マニュアル1冊

尋ねる回数

6

0

紙の枚数(A4)

18枚

2枚

納期がどのように改善されたかは【図3】,伝票処理についての改善は【図4】に示します。これで1日半休むことができます。 次に,物流費集計業務について【図5】に示します。改善前は,大きなパイプファイル5冊をあちらこちら調べていましたが,改善後はマニュアル1冊でOKとなりました。  

            【図3 納期の短縮@地域運賃負担配分表作成

                                

               【図4 納期の短縮A物流費伝票処理

                               

                                                【図5 納期の短縮B物流費集計業務

                                                  

3.工数削減と波及効果

工数削減を金額換算すると,最初の半年間は月当たり94,000円,慣れた後の半年間は62,000円です。また,紙代は月に266円の節約となります。1年間の効果をまとめると約94万円です。(図6参照)。
 
また,こんな波及効果もあります。みなさんに私の十八番である「杉井式スペシャルメール!」を紹介しましょう。これは「女性の心遣い」を私なりに考えてみた報告です。その一つ目が,最初に季節の挨拶を入れることです。毎月のことなので,「いつもお世話になります」ばかりでは,受け取る方も飽きるのではないかと思い,毎月,知恵を絞っています。文学的センスはありませんが,意外にも「心が和む」「ホッとする」といった感想をいただきました。
 
2つ目は,忙しい方がデータをパッと見ることができるように工夫しました。普通はデータを添付ファイルで送信しますが,その方法の場合,9つのグラフがあるとそれぞれをクリックする必要があり,いっぺんに見ることができません。そこで「キャプチャー」というソフトを使い,エクセルのグラフをメールに貼りつけるようにしました。こうすると,メールを開いた時にカラフルなグラフを一度に見ることができます。
 アンケートで担当者の満足度を調べてみました。報告書の見やすさ,時期についての結果は,ほぼ満足していただいています。

                               【図6 効果金額のまとめ

                                                                               
                             

【コメント】
この改善が成功した要因は,杉井さんの何とかして物流費業務を軽減したいとの強い思いです。パソコン雑誌を家で読んで勉強するなど,杉井さんの大きな努力が実を結びました。しかし,一人サークルといえども一人の意欲だけではなかなか成功するものではありません。このケースでも
,上司や定年退職した前任者Sさんのアドバイスと温かい励ましが,成功の大きな力になっています。

4.まとめ

以上が私の改善です。3人の子どもが待っているので定時に帰るため,必死に頑張りました。担当者にも喜ばれ,大きな自信もつきました。このテーマは,本社大会で最優秀賞,全社大会では「アイデア賞」を受賞しました。この時,会場の人気投票ではダントツで1位となったのです。そんなある日,専務から「CS改善のPRと自動プレゼンテーションを広めるため全国の工場・支店を回ってモデル発表をしてほしい」と頼まれました。「え〜」と驚きながらも,出張に出かけることが決まって,内心喜びました。会社では,初めてのことで,大変光栄なことです。【図7】は工場・支店を回った結果のアンケートです。発表を聞いた同じ立場の女性から「私も頑張る」と言われました。仕事をする中で,この時ほどうれしく感じたことはありません。
 
先日,眼科に行った時に自分の声のナレーション入り自動プレゼンテーションを見ました。私の知らない技術が使われており,「これだ!」と思った私はさっそく,それを作ったお医者さんのところに駆け寄って設定方法を教えてもらいました。上司からは「発表が下手1」といつも怒られていますので,現在「話し方」の通信教育を受けています。
 
今回の改善でも物流費の業務はパソコンの知識があれば,誰でもできるようになりました。一度「子どもの授業参観で,明日休みます。物流費の処理をこれでお願いしま〜す」とグループ長にマニュアルを渡したら,どんな顔をされるか,今から楽しみです。

             【図7 工場・支店を回ったアンケート結果】

【まとめのコメント】
活用など,高度なパソコン技術を習得しました。また,工場・支店を回って多くの人々と接し,その意見を聞くことができました。話し方通信教育の受講は,会社だけでなく,子育てなどいろいろな面で大きく役立つことでしょう。まさにQCサークル活動の基本理念「人間の能力を発揮し無限の可能性を引き出す」を実践しているといえます。さらに、全国の工場・支店ヘプレゼンテーションの出張を依頼した会社の幹部にはQCサークルを活性化させようとの強い意欲を感じます。

 


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