−QCサークル活動の活性化に向けてー 『100%良品主義実現への挑戦』
トヨタ自動車株式会社 取締役 佐々木真一氏
トヨタのマネジメントの中で、最も重大な部分としてTQMがある。
当社のTQMは、図−1に示すように「お客様重視」「全員参加」「絶えざる改善」の3つの柱を中心に、トップから第一線の職場のメンバーまで、それぞれの立場で「人と組織の活力向上」「仕事の質の向上」を期して諸活動を展開している。
その中で、QCサークル活動は、人材の育成、組繊の活力を高める活動(組織細胞の活性化)として、重要な位置を占めている。
図−1 トヨタのTQMコンセプト図

今回の事例は、まさにそのQCサークル活動の持つ「個人の能力を伸ばす力」と「組織の活性力」が発揮され、その結果これまでの品質保証の常識を大きく変えたものである。
暇場の方向とQCサークル活動の方向が統合性を持てば、全員参加・個人能力の向上・やる気の高揚など、QCサークル活動の活性化に大きな有効手段となる。
又、QCサークル活動の活性化が業務に対して、大変大きな成果をもたらしてくれることを改めて確認することができた。
1)これまでの品質保証
トヨタの生産方式の柱は、自働化とジャストインタイムである。
自働化とは、異常が発生したら仕事を止めて、原因を突き止め対策処置をして、仕事を再開する仕組みであり「100%良品主義」「品質は工程でつくり込む」の考え方と同じである。
当社の工程設計は、この原則に従い、個々の工程の担当者がその工程で保証されるべき品質の特性・レベルを承知しており、問題があると判断したら、直ちに作業を中断し、原因を取り除いた後、作業を再開する事を前提としている。しかし、品質特性によっては、その作業工程で品質の良否が判らない物もあり、それらは通常、検査工程でまとめて検査される。
自働化の原則から外れるが、業界の常識としてどのメーカーも同じような品質保証がとられている。
図−4 製造現場の一般的品質保証の体制

2)検査重視の品質保証の問題点
この様な検査に頼った品質保証では、次の様な問題点がある。
@作業者にとっては、決められた通り作業したつもりが、後になってダメと言われても、どうしたら良いか判らない。又、昨日の事を言われても覚えていない。
A検査員にとっては検出した情報を提供しても有効に使われず、達成感が損なわれる。
何百の中で、一つあるかないかの不具合を見逃さないよう緊張を維持するのは難しい。
B何百の問題の無い製品を検査する事は・結果的に無駄な作業をした事になり、検査で保証す
る事の本質的な非効率性が、品質の向上とともに明確となってきた。
この様な問題を内存させながらではあるが、不具合は過去に比べ非常に減ってきている。しかし、前よりも良くなっているという達成感はあるが、不具合0にはなっていない。このことはまれにお客様に迷惑をおかけする事もあり、この方法での品質保証では真のお客様満足度100%の達成が難しいと考えられる。
3)日本の物づくりを守る為に
欧米・アジアに比べ、5〜20倍の高労働費の日本が国際競争を勝ち抜くには、価格差を超えて断然トップの品質(圧倒的品質)でお客様の信頼を勝ち取る事が−つの重要な方法であると言える。しいてはこの事が日本国内の雇用を確保し、ものづくりの技を守り、国内空洞化に歯止めをかけることとなる。
自動車メーカーが長年頭を痛めながらも、検査に頼り品質保証をしてきた典型的なものに雨漏れの問題がある。「100%良品主義実現の第一歩としてこの問題に取り組むことにした。
「雨漏れ0への挑戦」である。
1)原因の多岐性、追求に時間がかかる
莫大な時間と工数を掛け原因を追求しているが、車を造り始めてから最終検査のシャワーテストまで2日間掛かることと、プレス精度・溶接・塗装シーラー・組立部品の単品精度・組付け精度等、作業工程が長く多岐に渡ることで、原因の追及が困難で責任工程の特定に手間取る。
2)雨漏れ検査の環境
検査はシャワーテスターと呼ばれる自然界で降る雨の何倍もの水量を、車両の雨漏れしそうな部位にノズルで噴きつけるもので、大量の工業用水や水切りの為のエアーブローで、1ライン当たり年間工業用水10トン・CO2排出量140トンの大量消費設備を使いながら実施している。
3)お客様により良い品質の提供と満足を目指し
上記の様な厳しい検査を実施しているが、ボデー溶接の際に出る、ピンホールと言う微妙な穴を通じ、車室内に雨を浸透して、お客様にご迷惑を掛ける事がある。これを100%保証するには、現在の検査態勢ではムリである。
現場の状況を考えてみると、作業者は一生懸命に標準作業を守り、品質を造り込もうとしているにも関わらず、多種混流のラインの工程設計のまずさ、取付け部品の横造や精度の問題が、円滑な作業の妨げになっており、これが原因で不具合を発生させる事が多い。
この事は、作業者のポテンシャルは十分にあるのに、それを十分に引き出していないという事である。
それなら、これらの外的要因を取り除いて、作業環境の整備をしてやれば、検査に頼らず工程内で十分に品質を保証できるのではと考えた。
これを「自工程完結」と名づけ、全員参加のもと、工場一丸でチャレンジすることにした。
<現状>

<あるべき姿>

自工程完結を一言で言うと、
作業者が作業しているとき、又は完了した時、作業の結果の良否が判ることである。
*具体的には下記の4点である。
@作業者
作業者が自分の工程に関する知識と技能に十分な教育訓練を受け、自らの作業や設備、工具さらに作業の対象となる製品の異常・正常の判断が正確に出来ること。
A製品
製品が正しく加工されなければ、明らかに異常と分かる構造になっている。(または正常に作業が完了した事が判る)及び、精度が基準・規格の範囲内にあること。
B設備・治工具
その設備、治工具を使用した際の加工・組付け精度および信頼度が所期の狙いに整合していること。
C工程設計
誤品・欠品・工程飛びなど、作業者の錯誤を誘発する要素の有無、複雑さの度合いが評価の対象となり、作業者の錯誤を誘発しない工程設計になっていること。
@雨漏れの要因は複雑、多岐に渡っており、全てを検証し対策する事は大変なことであるが、工程単位で対策を進めることで、作業者全員の力が結集出来る活動として進めた。
即ち、作業者にとって工程は自分が働く職場そのものであり、要因の洗い出し・対策立案・効果の確認に主体的に取り組めるということである。
この進め方で、「自分の工程については自分が第一人看であるべき」というプロ意識が醸成された。
QCサークルでいう「一人一人が主役」という部分と合致し、後で述べる難しい課題の解決にQC
サークルが大いに活躍した事に結びついた。
A全工程に於いて具体的必要項目を洗い出し、それに対して評価基準を設け判定する事にした。基準に満たないものは、根本的に不具合の原因となっていなくても、関係部署を巻き込んで、必ず対策をする。つまり、課題達成型(要因絞り込み型)でアプローチを試みた。
評価基準の例として組立工場の雨漏れ工程完結度評価表を示す。
表2: 組立部工程完結度評価表
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発生要因 |
しくじりの診断 |
忘れの診断 |
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項目 |
作業の難易度 |
保証度 |
B診断判定 |
作業の忘れ |
保証度 |
B診断判定 |
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@難易度と保証の方法 |
締付 |
勘 合 |
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貼付 |
塗布 |
難易度合計 |
工具 |
締付方法 |
要素時間 |
自己チェック |
品質チェック |
保証度合計 |
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難易度合計 |
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ポカヨケ |
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保証度合計 |
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A評価点 |
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要素作業名 |
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*評価の方法
不良の発生要因を作業のしくじりと忘れに分けて、
@難易度と保証の方法を分類
A数値化
B判定 不合格 難易度>保証度 ⇒やりやすく改善し、保証の信頼度を向上する。
合格 難易度<保証度
⇒省略 2000年 第30回 全日本選抜大会 改善事例
トヨタ スクイザサークル 報文 改善事例2参照
市場クレームの画期的低減は図れたものの、100%良品を造り出す完全な自工程完結は道半ばである。
@全工程がより完全な自工程完結をめざす。
A完結している工程が崩れない工夫を行なう。
@自工程完結の要件を直接確認する工程監査制度の構築
*工程監査は見逃しがない、結果オーライがないので信頼性が高い
A監査項目のデータベース化
*工程変更や新製品の追加など変動時のシステムの崩れを防止
究極は全ての品質特性について自工程完結を展開し、工程監査による品質保証が出来る事である。
自工程完結の仕組みづくりを道具に活動した事で、QCサークルと職場の方向が統合し、職場にもQCサークル活動にも大きな成果をもたらす事ができた。
全員で自工程完結に取り組んだ事で、メンバー一人一人が、自分の工程の成り立ちを理解し、プロ意識が醸成された。
さらに、自分の作業(品質保証)に自信が持てるようになり、自分の仕事にやりがいを見出す事が出来た。
これは、QCサークル活動の原点である、一人一人の達成感、自己実現に繋がり、全員参加での活動とあいまって,QCサークル活動の活性化の一方向を示してくれたものと考える。
QCサークル活動の推進者として、サークルに対して何が出来るか、何をすれば活性化が出来るか
を今回の体験をもとに考えたとき、それは、職場の取り組むべき課題を明確にし作業者の全員が評
価・対策のステップを理解し主体性を持って活動できる環境を作ることが大切である思う。
以上