熱帯スイレンについて

 ここでは、熱帯スイレンについての大ざっぱな説明をしていこうと思いますが、その前にスイレンについての基礎知識を書いておきましょう。
 まず、スイレンの植物学的な分類についてですが、スイレンとはスイレン科スイレン属に含まれる植物の総称です。スイレン自体は、池に葉を浮かべ、水面に赤や黄色、白など鮮やかな花を咲かせる姿を見かける機会も多いですし、モネがライフワークとして描き続けた一連の作品、「睡蓮」があまりにも有名なので、多くの人が、おおよそどんな姿の植物であるかはご存じだと思います。
 とはいえ、その一方で似たような姿をしたハスとスイレンの区別がつかない方は大勢いるでしょうし、ましてや馴染みのうすい熱帯スイレンに至っては、それは何?といった状態かも知れません。
 ここでは、そうしたスイレンの違いについて説明していきたいと思います。


 さて、スイレンといえばこの写真のような植物なわけですが、この”スイレン”にも、多くの種類があります。もともとスイレン属は熱帯地域から比較的寒冷な地域まで幅広く分布する植物で、北欧を含むヨーロッパやアジア、オーストラリアやアフリカ、南北アメリカ大陸など、地理的に隔絶した場所にまで生息域が広がっています。このように幅広い地域に分布するスイレンは、それぞれの地域に適応して分化し、さまざまな特徴を持つ原種が誕生しました。

 これら原種スイレンは大きく二つのグループに分けることができます。ひとつは、一般によく知られる温帯種です。耐寒性スイレンとも呼ばれ、北米やヨーロッパなど、冬のある地域に生息する原種や、そうした原種から作り出された改良種のグループで、花が水面に浮かぶように咲き、しっとりと落ち着いた雰囲気の品種が多いのが特徴です。モネのスイレンも、この温帯種ですね。これらは冬の寒さにも耐えられるため、屋外でも容易に越冬させることができます。あまり手間がかからないので、家庭でも育てやすいグループでしょう。
 スイレンの改良品種は19世紀に作られるようになりましたが、とくに温帯種の改良はフランスのマーリアックによって一代発展を遂げます。地味な原種しかなかったスイレンの世界に黄色や赤といった色鮮やかな品種を登場させただけでなく、小型種、色変わりするチェンジャブル、八重咲き、斑入りなど、およそ現代に至る改良種の基礎をほとんど作り上げてしまい、フランスで大流行を巻き起こします。この時期にスイレンの魅力にとりつかれた一人が、モネというわけですね。
 日本には明治にフランスから持ち込まれ、各地に広がったようです。逸出したものが野池にまで広まっているため、スイレンを日本の植物だと思っている人もいるようですが、日本には小型の原種スイレンである、ヒツジグサ一種しか自生していません。野池などにある華やかなスイレンは、すべて海外から持ち込まれた外来種が逸出して野生化したものです。


 二つのグループのもう一つは、このサイトで取り扱っている熱帯スイレンです。これは南米・オーストラリア、熱帯アジア、アフリカなど熱帯地域に産する原種や、そうした原種から作られた改良品種のグループです。こちらは花が水面から高く伸びて咲き、派手でいかにも熱帯的な雰囲気を持つものが多いのが特徴です。また、ほとんど無臭の温帯種に対して、熱帯種は強い芳香を持っています。
 熱帯スイレンはいわゆる熱帯植物なので、冬の寒さには耐えることができず、当然ながら屋外に放置すると枯れてしまいます。そのため、日本で栽培する場合は、冬の間は室内にとりこむなど、寒さ対策をする必要があります。これ自体は、バケツに水をはって室内に保存したり、あるいは掘り上げてバーミキュライトなどに埋めておけばよいだけなので、多少手間はかかるものの問題はありません。
 が、この熱帯スイレン、加温してあげれば越冬する必要がないどころか、しっかり花を咲かせることもできます。うまく育てさえすれば、一年中鮮やかな花を観賞することができるのです。
 実際に植物園では一年中花を咲かせていますが、家庭でもなんとか同じようなことが可能です。詳しくは別コンテンツにまとめますが、このサイトでは、熱帯スイレンを一年中楽しんでしまおうではないか!ということを目的にしているわけです。
 カンタンとはいいませんが、真冬に咲く熱帯スイレンの姿は格別のものがあるため、もし設備に余裕があるなら、一度挑戦してみるのも楽しいものです。

 なお、スイレンのもっと詳しい知識や栽培方法については、水生植物ホームページ睡蓮蓮連のような優れたサイトがあるので、このサイトでは取り扱いません。興味のある方は、ぜひそちらのサイトを訪問してみてください。


1*カボンバ

 和名はハゴロモモ。金魚藻として売られているので、目にする機会も多いと思います。

2*ハスについて
 ハスとスイレンはよく混同されますが、実物を比較すればその違いは明確です。スイレンは葉が水面に浮かび、その表面は撥水がありません。大型のハスは葉が水面から1m以上にも立ち上がり、表面に強い撥水があります。その姿は、フキに近いものがあり、水面に広がるスイレンとはだいぶ姿が異なります。
 また、ハスの地下茎には大きな穴があいてますが(いわゆるレンコン)、スイレンは中身が詰まっています。