金魚
Carassius auratus

 金魚については、いまさら説明する必要も無いでしょう。夏の風物詩であり、古くから飼育されている観賞魚です。スイレンと金魚を組み合わせるのは実に風流で、そうした楽しみ方に興味のある方も多いことと思いますが、実際にやろうとすると問題が多々あります。
 金魚はけっこう大きくなるためスイレン鉢に相応のスペースが必要となりますし、エサも多く食べるので水を汚しやすいという問題があります。
 そしてなにより、金魚の草食性が強いという性質がやっかいです。
 水草はもとより、大きく健康に育った金魚は、ときとしてスイレンの葉も食べてしまうからです。
 この性質のため、メダカと比べるとスイレン鉢飼育の敷居は高く、二の足を踏む方も多いようです。
 が、いくつか注意することで、これらの問題はクリアできます。その要点を書いていきましょう。


1.飼育数を絞る
 数が多ければそれだけ水がよごれやすくなりますし、濾過無しエア無しの環境なので、飼育数は絞る必要があります。目安としては50cmスイレン鉢で1〜2匹、60cmで2〜3匹程度を上限と見ておいたほうが無難でしょう。金魚が大型化した場合、50cmスイレン鉢では手狭でしょうから、将来的に60cm以上への移動も考えたほうが良いと思います。このくらいに飼育数を絞れば水質悪化はあまり深刻になりませんが、それでも相当うまく管理できていないとメンテフリーとはいきませんので、とくに水がよく出来ていない初期は、定期的な水替えを行っておきましょう。

3.金魚の種類を選ぶ
 金魚は品種によって性質がずいぶん違います。一般に和金やコメットのようなフナ型金魚は強健で飼育しやすいですが、一方で乱暴でどん欲な面があります。スイレンにとっては危険な存在なので、避けたほうがいいでしょう。
 いわゆるランチュウ型といわれる金魚は、ある程度性質が穏やかで、しかも上から見るのに適しているので、スイレンとの共存に向いています。
 また、水泡眼、デメキン、蝶尾、頂天眼といった魚は、性質がとくに穏やかで、水草にも手を出しません。出目の魚は眼が弱いか、ほとんど見えていない個体が多く、そうした魚は飼育し難い反面、スイレンにとっては安全です。

4.あまりエサを減らさない
 金魚にエサを多く与えるのは禁物ですが、いかんせん腹が減るとスイレンを食うことがあります。水泡眼や頂天眼ならともかく、ランチュウ型は飢えるといささか危険です。実際、筆者は江戸錦にスイレンをざっくり食われました。なので、セオリーには反しますが、エサはやや多めに与えておきましょう。

5.生物メンテナンス
 スイレン鉢を美しく保つには、生物兵器によるメンテナンスは欠かせません。しかし、最大威力を誇るミナミヌマエビは、金魚の良いエサとなってしまうため、事実上投入は不可です(頂天眼など品種によっては食われないこともあるが・・)。そのため、金魚スイレン鉢での主戦力はヒメタニシに頼らざるを得ません。しかし、それでもなお生まれたばかりの稚貝は食われてしまうことがあります。これは個体差が大きいようで、まったく手をつけてないスイレン鉢もありますので、ある程度は運頼みにならざるを得ません。大きな個体にはさすがに手が出ませんので、繁殖用の容器を別に確保しておいて、ある程度育ったものを移すのが一番でしょう。

6.青水について
 金魚飼育、とりわけらんちゅうの場合、飼育のコツを聞くと、なにはともあれ青水飼育と言われます。青水すなわち植物プランクトンや浮遊性シアノバクテリアが繁殖して緑色になった水ですが、スイレン鉢飼育でこれを使う必要はまったくありません。青水飼育は良いらんちゅうを育成するために必要なのであって、単に鑑賞するだけなら魚がよく見えず邪魔になるだけです。植え込んだ水生植物にも悪影響を与えますし、第一管理が難しく濃くなりすぎると金魚の状態が悪化し、最悪死なせてしまうこともあります。
 青水は良い魚を作りたいと思っていて、なおかつ適正に管理できる技術があってこそ導入する意味があるものです。安価な金魚を飼って楽しみたいという人にとっては、有害となる可能性のほうが大きいので、普通に透明な水で飼育しましょう。


スイレン鉢向きの金魚達
 ここでは、スイレン鉢に向いた金魚をいくつか紹介します。なお、掲載されている金魚はホームセンター等で500〜1000円程度で購入できる一般魚です。スイレン鉢では一般的でない飼育方法も行うので、高級金魚を入れる場合は度胸と根性が必要となります。


らんちゅう

 説明の必要も無い、金魚の代表格でしょう。上から見て楽しむ事を重視して改良されているため、スイレン鉢飼育にも適しています。難しい魚というイメージがありますが、品評会を目指すのならともかく、単に鑑賞目的で飼育するならとくに難しいことはありません。性質は比較的強く、案外泳ぎ回りますので、ある程度大きな容器のほうが向いていそうです。ホームセンターや観賞魚店でも普通に売られていますが、オークションでも安価によく出回っており、数匹まとめて購入すれば1匹当たり千円以下(送料も含めて)で、まずまずの魚が手に入ります。
 似たような品種に中国産のライオンヘッドがありますが、こちらは肉瘤が異様に発達し、顔全体がまるまるとふくれあがります。肉瘤好きにはたまらない品種ですが、尾びれはらんちゅうのような平付けではなく、普通の三つ尾四つ尾が多く、上から見るとバランスがいまいちです。


江戸錦(エドニシキ)

 らんちゅう型金魚の一つで、最近は人気が高くどこでも手に入ります。ただ、同価格帯のらんちゅうと比べると質は今一歩で、安い金魚の中からまずまずの個体を探すのはたいへんです。肉瘤は小さめのものが普通ですが、中国産江戸錦は豪快な肉瘤がついたものが多いようです。


蝶尾(チョウビ)

 人気の高い中国金魚で、デメキンの体型に、蝶のように広がる尾びれを持つ優美な品種です。この金魚も、本来上から見て楽しむものでしょう。写真は黒蝶尾ですが、更紗やパンダ模様など、いろいろあります。ただ、黒やパンダはいずれ退色して赤や白になる可能性大です。尾びれが大きく、蝶のように優美に開いている魚ほど上質ですが、良い蝶尾はそれだけ高価です。


頂天眼(チョウテンガン)

 中国には変わった金魚が多いのですが、その中でもとびきり強烈な品種のひとつです。眼が上を向いており横から見るとグロい魚ですが、上から見たときにかわいらしさは別格・・と私は思います。赤デメキンの突然変異という説が主流ですが、背びれは無く体型も独特で、出目以外にデメキンと共通する要素がありません。
 質についてはこれまた厳しいものが多く、なかなか良い魚に出会えません。写真の更紗はやっと見つけ出したものですが、普通は薄いオレンジ一色で、へろへろな体型のものが多く見られます。体型は細長いタイプと短いタイプがあり、長いタイプはさらに背中が切り取ったように平らなタイプが見られます。これについては好みで選んでよいと思いますが、体質は長い方が強いでしょう。
 飼育はやや難しく、餌取りが極端にヘタで、性質も弱いため、頂天眼のみで飼育するか、よほどおとなしい金魚とのみ混泳させたほうがいいでしょう。水流は苦手なので、止水のスイレン鉢は向いた環境と言えます。


水泡眼(スイホウガン)

 中国の変わり種金魚といえば、頂天眼とこの水泡眼が代表でしょう。水泡眼は人気も高く、頂天眼より流通量が圧倒的に多いため、それなりの個体も入手しやすい状況にあります。水泡はなるべく大きいほうが良いとされますが、成長に伴ってある程度大きくなりますので、極端に小さくなければ気にする必要は無いと思います。左右バランスは揃っているほうが望ましいですが、育てていると微妙に差が出てしまうことがあります。


出目金(デメキン)

 デメキンというと水槽で飼うのが一般的となっていますが、本来は飛び出した目玉を上から鑑賞して楽しまれてきた金魚のようです。色は黒と赤がほとんどで、黒が特に高い人気を持ちますが、スイレン鉢ではよく見えないので黒は避けたほうが無難でしょう。写真の更紗はデメキンではあまり見かけない色ですが、最近はぼちぼち混ざっているようです。視力が弱いと言われますが、実害は無いレベルのようで、性質は強健です。けっこう大きく育つので、飼育容器は余裕を見ておいたほうが良さそうです。