スイレン・ハスの害虫について
スイレンやハスは病害虫が少ない植物で、とくにスイレンやハスそのものを狙う害虫は少数です。そのため、バラのように防除に手間がかかる植物と比べると、放置に近い状態でも栽培できます。
しかし、まったく病害虫が無いかといえばそのようなことはなく、とくに食害を起こすようなものは庭の他の植物から移ってくることが多く、庭でさまざまな植物を栽培していると、それだけ害が大きくなります。
ここでは各種害虫のうち、「睡蓮と蓮の世界」で取り扱えなかった害虫について、紹介していこうと思います
スリップス(アザミウマ)
スリップスは多くの花につく害虫ですが、小さいことや植物によっては害が見えにくいことから、放置されている(というか気づかれない)ことが多いようです。しかし、ときに大発生することがあり、そうなると白や黄など淡くて花弁が薄い花にはシミが出るようになり、ひどくなると鑑賞に堪えない状態になってしまいます。また、ハスは花弁が厚いため被害がでにくいのですが、スリップス自体はつきやすく、これが繁殖源となってスイレンにも被害が拡大することがあります。
スリップスの吸汁によるシミ
スリップスの被害
スリップスは存在自体気がつかないことも多いのですが、大発生するとスイレンなら開花二日目、三日目あたりの花弁にシミがでますので、そうした状況が発生したら、花を軽くつついてみてください。花の中から小さな細長い虫がぞろぞろ出てくるようなら、スリップスの被害です。
スリップスは一度大発生すると手に負えない生き物で、しかも被害の出た株だけ対処しても、なんら改善に繋がりません。すでに庭の他の植物でも繁殖しており、しかも移動力が高いので退治しても容易によそから移ってくるからです。
そのためスリップスが大発生した場合は、庭全体で対処が必要となります。
ハスについたスリップスの拡大写真。体長は2mm以下
スリップス対策
まず単刀直入に言って、スリップスを効果的に駆逐する方法はありません。いやほんとに。薬剤耐性も発達していて農薬が効きにくく、また花の奥に潜んでいるため薬剤自体がかかりにくいという問題があります。そのため、物理的な対策が欠かせません。
まず真っ先にやるのは、花を徹底して摘み取ること。スリップスは花粉を食べて繁殖に利用するため、花が無いと繁殖が阻害されます。とくにバラやハスはスリップスがよく繁殖するので、注意が必要です。他にも、庭にある花を徹底チェックして、かたっぱしからつみ取っていきます。もちろん雑草の花も対象となりますので、雑草をすべて抜き取って処分することも忘れずに。
無農薬で対処するなら、これを夏の間中、徹底して続けるしかありません。
しかし、花を観賞するために育てているのに、花無しでは・・・というのもありますので、その場合はある程度花が咲いたところで摘む。たとえばスイレンなら二日目あたりの花を楽しんだら切るといった方法を行い(切った花は洗剤水を入れたバケツに即座に入れる)、同時に徹底した薬剤散布を行います。
しかし、この薬剤がやっかりで、スリップスの場合は薬剤耐性が発達しているうえに、その耐性の発現が「地域」によって異なります。種による差もありますが、地域でも違うのです。
そのため、この殺虫剤は良く効いた。という話を聞いて使ってみても、全然効かなかった。などということがあります。もちろんその逆に、誰かの庭で効果が無くても、自分の庭では効くといった場合があります。ネットで検索すると薬剤の効果について情報が錯綜していますが、こうしたことが原因でしょう。
はっきり言って、使ってみないとわからない。ということです。
その上で書いておきますが、まずメインとして使用するのはオルトラン粒剤やオルトラン水和剤などアセフェート系農薬。粒剤は草花に使用し、水和剤は樹木を含めて庭全体に散布します。浸透移行性があり、隠れたスリップスにもある程度効きます。抵抗性を持っている場合もありますが、何割かは駆除できるはずです。アセフェートは魚毒性が低いので、広範囲散布してもメダカ等に害が出ないというのもメリットです。
次に使用するのがネオニコチノイド系農薬。モスピラン、ベニカXなどさまざまな製品があり、スリップスにはよく効く・・・のですが、これに地域ごとの耐性差があり、効果に差があります。ネオニコ系もさまざまな製品がありますが、製品ごとに耐性に差があって、しかも地域でどの製品に耐性があるか異なるので、試してみるしかないというのが厳しいところです。
また、魚毒性が高めなので、散布剤は出来る限り使いたくはありませんが、アセフェートで効果が薄い場合は、なるべくスイレン鉢に入らないよう、またスイレンやハス自体には使わず、周辺防除を目的に使ってください。
粒剤は扱いやすいので、モスピラン粒剤、ベストガード粒剤などを散布するとよいと思います。くどいようですが、効くかどうかは使ってみないとわかりません。
また、スイレン鉢にエビを飼っていない場合は、脱皮阻害剤などのIGR剤も効果的で、またメダカに害が無いのでオススメです。が、エビがいる場合は絶対使わないでください。脱皮阻害剤やキチン合成阻害剤は、脱皮しない生き物以外にはなんら害が無い優れものですが、エビも脱皮する生き物であるため、微量で影響が出ます。
ともかく、スリップス対策には単一の農薬を連用しないことが絶対条件です。容易に耐性が出て、農薬が効かなくなってしまいます。また、根気よく対処を続ける必要があり、あらゆる害虫の中で、もっとも対策が難しいものでもあります。