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タカさんの読書日記索引に戻る


猫と庄造と二人のおんな    谷崎潤一郎      新潮文庫    

 

ダメ男の庄造を奪い合うおんな二人と、庄造が可愛がる猫の物語。

文豪谷崎の代表作の一つとも言われる本作だが、ストーリー的にはなんとも他愛のない、どうでもよいような話なのだけれど、この短いストーリーの中に実は、谷崎の他の作品に描かれている彼の美学に基づく男女の性とそれが生む人間喜劇がしっかりと描かれており、読後、何でこんなに他愛のない(というよりは下らない)ストーリーなのに、何故心に残る印象が強烈なのだろうかと不思議な思いに囚われる。やはり文豪の魔力という奴なのだろうか。

庄造の前妻である品子は、ふがいないダメ男の庄造をたきつけた姑と、今や庄造の妻の座にある福子に庄造のところを追い出された。その品子は、追い出されたことが彼女の自尊心を傷つけたのか、あるいは庄造に未練があるのか自分でも分からないが、いつか福子を追い出し自分が元の鞘に納まることを夢見ている。

そのために彼女が案じた一計は、庄造が異常に可愛がっている猫リリーを自分に呉れという申し出である。

福子は庄造が自分以上に猫を可愛がることに嫉妬心を持っており、品子の申し出を受けるか、自分を取るかを庄造にせまる。

優柔不断な庄造は、どうにか猫を手放すことに同意するも、その猫が恋しくてならず、遂に品子の住まいに忍び込んでしまってーーーーーといったストーリだ。

谷崎がここで描こうとしたのは愛というものは、常に従属関係の上に成り立つということのようだ。

おんなたちに対して優位にあるかに思える庄造の愛は、猫に従属している。そしてそのような従属的な関係でしか成り立たない人間の愛情というものが、人間自身を破滅へと導いていかざるを得ないーーーーー。

まあ、そんな破滅的なところへ向かいたがる人間ほど面白い存在はないということなのだろう。

(51年8月発行)


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