帝都を目指して
ビザンツ帝国の解析結果
ビザンツ帝国の64%は欲望で出来ています
ビザンツ帝国の28%は株で出来ています
ビザンツ帝国の5%はマイナスイオンで出来ています
ビザンツ帝国の3%はお菓子で出来ています
「なんだこれは?」
「今、流行の成分解析という奴ですね」
「欲望と株が高いのが、この国を表していて、いい感じね」
「残りは全くの意味不明ですが」
「今回はその欲望と株がこうじて、本気で危機に陥ってしまうんですけどね」
「マヌエル1世の息子は案の定、従兄弟のアンドロニコスに殺されてしまいました。
また、彼こそビザンツ帝国において最後に皇帝専制の復活を試みた人物でもあります。強力な貴族を暴力でもって弾圧し、不正役人を端っこから処刑しました。
彼らを取りしまるさいにこんなことを言い出しました」
「不正をやめるか、生きるのをやめるかを選べ」
「バシレイオス2世みたいなことをしたかったのね」
「残念ながら、彼にはバシレイオス2世のような指導力はありませんでしたし、対抗すべき貴族は彼の時代とは比べ物にならないほど強力になっており、どうにもし難い相手だったんです。とはいえ、一定の成果があがったことも事実で、不正はなりを潜めましたし、国庫も少しは豊かになったそうです」
「その手段はどこからどう見ても公安テロじゃないですか」
「我の言うことを聞かない雑種どもにはいい薬だ」
「いいわけないでしょ」
「しかし、シチリアからノルマン人が攻めてきた際には貴族を弾圧していたせいもあって、軍事力は低下しており見事に負けまくりました」
「どうしょうもありませんね」
「こういう粛清を統率の低いやつがやると失敗するのよね。彼は多分、知力と魅力の高い扇動家タイプ。他に例をあげるとすればポルポトみたいなやつね」
「散々な言われようですね」
「だけどスターリンは統率が限りなく100に近いから、自分の組織を強固にすることが出来るのよ」
「それもどうかと思いますけど」
「貴族に対抗するためにシリアで勢力を伸ばし始めていたサラディン
手を借りようとしましたが、拒絶されました」
「いよいよ来ましたね悪の帝王サラディン」
「そこまで言うか」
「むしろ穏当なほうだと思いますけど」
「サタンがイスラム幇助のために使わしたベルゼバブの化身、くらいは言うと思いました」
「それ、いい表現ですね。今度の埋葬機関総会で使うようナルバレックに言いましょう」
「おいおい、それでいいのか」
「確かに……サラディンは一言で表せない悪党ですからね。言葉を尽くしたほうが、彼の存在を表せます。
彼はうまく時流に乗って出てきた幸運な人です。君主が無能だから、出てこれただけです。その冷酷で残忍な本性を巧みな宣伝で覆い隠すのは得意だったようですが、彼の政敵が上手いタイミングで何度も消えているところに、彼の人物の本性が垣間見えますね。
カトリック三帝王が途中で独りになったから持ちこたえられたんです。大体、自分の王朝も安定化させられない愚物が聖なる軍に挑むのが無理があったんですよ。聖地のことなんて忘れて、エジプトの古臭いピラミッドで寝てればいいんです。そのほうが彼にとっても世界にとっても幸運な結果をもたらしたのは疑いありません。
人格、能力、ともに分不相応な愚かな人物がサラディンという民度の低いアラブ人らしい英雄なんです」
「まあ、確かに彼の作り上げたアイユーブ朝は控えめに言ってもしょぼいですし、彼が必要とあればかなりどぎつい手を使っていることも否定できませんからね。さすがにエルサレムを取り戻さない、という選択肢はありえないと思いますが」
「彼は多分、知力と魅力が極めて高いタイプの英雄ね。統率と政治がそんなに高くないから自分の国を個人商店みたいにしてしまうという欠点があるわ。その点、バイバルスは魅力がサラディンに劣るけど統率と政治が高いから、自分の国を強固に出来るのよね。
そんなわけで、私はバイバルスのほうが上手だと思うわ」
「またも一部の人以外には意味不明な話を」
「あんな男、ただの食い詰めの戦争馬鹿です。貪欲きわまる権力への欲望から聖なる拠点アッコンを奪い去ろうとした血塗られた悪の帝王です。奪い取るまえにおっちんだのは神がこの下郎にこれ以上の罪を背負わせたくないと判断したからです。
モンゴルに勝ったといいますが、運がいいだけです。多勢に無勢なら勝てて当然です。まあ、虚言と恫喝を使い分ける才能があったからタタールに潰されないで済んだんですよ。まったく、それを英雄だとは、アラブ人どもの民度が低い証拠です。
息子が自分の副官に二度も退位させられ、信頼した副官に国をのっとられているのが神の裁きなんです。きっと地獄で息子たちともどもカラーウーンへの恨みごとをぼやいているに決まっています。まあ、カラーウーンもすぐに行ったと思うので、一緒に自らの誤りを痛感しているに違いありませんが」
「十字軍を撃破したのがそこまで憎いか」
「当然です。まあ、今日の我々の優位を考えれば、報復は十二分に果たせたんですけどね」
「ただ、バイバルスはモンゴルの西進を食い止めたのを武力と知力のどちらで表現するかが、評価の分かれ目ね。武力で表現するなら90越えは確実。知力でも90は確実。
まあ、サラディンもその名声が宣伝によるもの、と考えれば政治を高くするというのもありかもしれないわね」
「もはや理解し難い領域ですね」
「アンドロニコスに戻っていいですか?」
「ああ、御免御免、喋りすぎちゃった」
「苦境に立たされたアンドロニコスはヴェネチアの手を借りようとしたのですがやっぱりマヌエル1世のせいで関係が悪化していたのか、手をかしてくれませんでした。ノルマンはそのまま進撃を続け、まさにコンスタンティノープルに迫るほどの勢いでした」
「城にでも立て籠もる?」
「そういう選択をしようとする前に、各方面の不満を買っていたアンドロニコスは殺されました。これでビザンツ帝国最後の皇帝専制への試みは完全に頓挫しました」
「迫り来るノルマン人はどうなったの? いつものように金品と空手形でお帰り願うの?」
「これは普通に追い返しました。略奪で満足しきってましたし、疫病が流行っていたので。ついでにハンガリーとも講和して、その十歳の娘を妻にして平和を買い取ったそうです」
「超ロリですね」
「犯罪だな」
「さすがに手は出さなかったと思うのですが……」
「アンドロニコス代わって即位したのがイサキオシス・アンゲロスです。彼はアンドロニコスに代わって即位しただけあり、彼の政策の全てを否定しました。税金は鰻登り、官位の売買も復活し、再び腐敗がはびこるようになりました」
「駄目ね」
「こういうときにはもう少し、出来のいい人物に出てきてもらいたいのですが」
「そのせいで、バシレイオス2世が併合したブルガリアで反乱が起きました。イサキオスは反乱の鎮圧に全力を尽くしましたが、アンドロニコスが貴族を多数殺害したこともあり、その軍事力は低下していたので、鎮圧することは出来ませんでした。
こうしてバシレイオス2世が全力をかけて制圧したブルガリアは再び独立。ブルガリア帝国が復活しました」
「また下り坂ね」
「もう、日は昇りませんけどね」

「そんな時、神は聖地における悪の帝王サラディンの行いを罰するべくフランスの尊厳王フィリップ2世を中心とした第三次十字軍、別名『帝王十字軍』を派遣されました!!!!
目的は勿論、異教徒の奪い取ったエルサレムの奪還です!!!!
再び、聖地を異教徒どもの血で潤すための聖戦が始まろうとしていたのです!!!!」
「また狂ったか」
「フィリップ2世
は中心ではないでしょうに」
「中心は私の後継者の一人、イングランドのリチャード獅子心王
ですよね」
「ちなみにこの時代は『蒼き狼4』でも描かれており、初期の史実将軍の忠誠心が軒並み低いというならまだしも、有能な将軍が後にニカイア帝国皇帝になるテオドロスのみという困った状況ですね」
「でも、あのゲームシステムだと時間が経てば経つほど有利になるから史実でのへぼさが出てこないのよね」
「コンスタンティノープルの文化レベルが高すぎるんですよ。おかげでシナリオ4だと下手をするとトルコに勝っちゃうんです」
「色々と問題のあるシステムよね」
「というより、この時代を扱った日本でこの時代を扱ったゲームが他に存在しないので」
「どうでもいいことだけど、イギリスとかフランスをプレイして、初期の段階で十字軍を率いてアイユーブ朝まで進撃した猛者はいないのかしら?」
「それは置いておくとして、主催者の一人神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世バルバロッサ
は海路を行く他の二人とは異なり、陸路でバルカン半島までいくことにしていたので、ビザンツ領内を通過することになりました。
これには以前から対立していたビザンツを威圧することも兼ねており、ビザンツ周辺の諸国と手を結んで反ビザンツ同盟を作りながら進んできました」
「真正面から喧嘩売ってるわね」
「流石はドイツです。この時代から侵略欲丸出しの悪の集団なだけのことはありますね」
「ビザンツはこれに対抗しようとサラディンに行軍の情報を送ったり、進路にある道の木々を切り倒して妨害しようとしましたが、相手の怒りを買い、間違えた道を塞いだりしたのであまり効果がなかったようです。
逆に首都近郊に艦隊を侵入させられるわ、都市を占拠されるわと散々だったようです」
「駄目じゃん」
「今までにも何回もあったことだと思いますけどね」
「しかし、フリードリヒ1世が渡河中に溺れ死んだために危機は去りました」
「溺死かよ」
「せめてサラディンと戦ってから死んでくれれば格好もついたのですが」
「実際に戦った相手にはサラディンがいませんからね」
「主催者の一人が馬鹿馬鹿しい理由で脱落したということもあり、フィリップ2世も途中で帰還。聖地で戦うのはリチャード1世だけとなってしまったわけですが……彼についての詳しいことは面倒なので、こちらを参照してください」
「丸投げか」
「長くなるのは本意ではありませんし、これにはそもそもビザンツ帝国が全く関わっていませんからね」
「十字軍の脅威が去ったのでイサキオス2世は先に復活したブルガリアなどと開戦しましたが、結果はあまり芳しくなく、国力をすり減らしただけで終わってしまいました。事態は全く好転せず、それどころかバルカン半島での勢力はさらに弱まってしまいました」
「一度転がるとなかなか止まらないものね」
「さらに、フリードリヒ・バルバロッサ亡き後に後を継いだ神聖ローマ皇帝はノルマン人のシチリア王国の併合してドイツとイタリアにまたがる帝国を形成していました。彼らの最終目的地は勿論、コンスタンティノープルです。
その口実は宮廷の陰謀で帝位を簒奪したアレクシオス3世の打倒。しかし、こんなことをされては教皇庁はただでさえ言うことを聞かない神聖ローマ帝国に対するコントロールがさらに弱まってしまいます。そのため、教皇庁の横槍もあって延期を余儀なくされ、神聖ローマ皇帝の死によって帝国は分裂、計画は完全に破棄されてしまいました」
「ここまで事態が悪化してても運だけはいいのね」
「本当に運がよければこんなことにならないと思うのですが」
「事実、今回起きたことは次回に回されたに過ぎません。神聖ローマ帝国が内部分裂によって弱体化したのを好機と見たのか、教皇は第四回十字軍の構想を打ち出しました。フランスの各諸侯による十字軍諸国の援助と、聖地エルサレムの奪還を主目的としています。
その輸送を担当したヴェネチアの統領エンリコ・ダンドロ
は策略に長けた人物で、これ以前にエジプトのイスラム勢力から十字軍をエジプトに送り届けないよう要請されており、十字軍の要求とイスラムの要求とを同時に満たすべく策略を巡らしていました」
「こんな不穏分子がいなければまっすぐに聖地奪還のために邁進できたのですが」
「十字軍は集まったはいいいものの、予定よりだいぶ少ない人数しか集まらなかったので、輸送費用を払うことが出来ませんでした。その足りない分をカトリック国ハンガリーの沿岸都市を攻略することで帳消しにしてもらうことにしました」
「相手が違うだろ」
「十字軍も抵抗しましたが、金を払えないのではどうしようもありません。泣く泣く攻略して、ローマ教皇から破門されました」
「いきなり風向きが怪しすぎるんだけど」
「事情を説明して破門を解いてもらい、これでようやくエジプトに行けると十字軍は盛り上がりましたが、ダンドロは外国に亡命していたビザンツの皇族を擁立してコンスタンティノープルへの進撃を要求しました」
「なんでそこにビザンツの皇族が出てくるのだ?」
「前に述べた通り、宮廷陰謀でイサキオス2世が失脚していたので、その息子が帝位奪還のために西欧の王侯に力を借りに行った際、第四回十字軍という企画が立ち上がったという話を耳にしたころ『これは使える!!!』と思って近づいてきたんです」
「例のごとく、外国人の力で政敵をぶちのめしてやろう、てわけね」
「十字軍の諸将もいくらなんでもビザンツを攻撃するという暴挙には確かに反対したのですが、遠征費用を出せないとなれば立場がありません。それに皇族が帝位奪還の暁には足りない遠征費用を捻出するとも、この機に分裂していた東西の教会を統合するのに協力するとも約束しました。ビザンツが真面目に後方支援を行えば十字軍をこれまでより容易に遂行することが出来るという判断もありました」
「十字軍も最初はイスラムどもをぶちのめすために遠征するつもりでした。アイユーブ朝のスルタンに決闘状を送っていることからも、その意図は明らかです。
拝金主義者のヴェネチアの陰謀で、それが頓挫してしまったのは悲しいことです。そして、東西教会を統合できなかったことも残念です」
「どっちなのよ」
「こうしてコンスタンティノープルへの攻撃を決定した十字軍はヴェネチア艦隊とともに陸海から攻め立てて、これを陥落させました。何度もコンスタンティノープルに来ていたヴェネチア人は海の城壁は陸と比べると低いことを知っていたので、意外と簡単に落とすことに成功して亡命していた皇子を皇帝に即位させました」
「おや? いつものビザンツ海軍は?」
「大分前に消えています。このころはヴェネチアに頼っていた部分が大きかったので、障害なんてあってないようなものだったんじゃないですか?」
「このくらいまでなら、これまでにもよくあったビザンツの政変劇ということで片付いたのですが、ここから雲行きが怪しくなります」
「そういえば、帝位を争うのにいつも外国勢力と平気で手を組んでたわね。乗っ取られないのが不思議だったわ」
「それは彼らが常に周辺諸国が羨むような金銀財宝をもっていたことに由来します。それを駆使して周辺諸国をコントロールするというのが彼らの基本的な戦略です。
しかし、この時代のビザンツ帝国にはそんなことが出来るような金品はありませんでした。十字軍を招いた新皇帝は彼らに払うべき金を持っていはいません。それならまだしも、彼は十字軍の兵士なくして政権を維持する自信が無いのでイスラム世界に行かれると困るので、なんとか引き伸ばして十字軍の滞在期間を延長させました」
「どういう神経をしているのやら」
「十字軍も滞在中にコンスタンティノープルで乱暴狼藉を働いており、修道女に乱暴をしたり、娼婦が総主教座で破廉恥な歌を歌ったりと、いい感じに首都住民との関係を悪化させていました。
当然、彼らを手引きしたヴェネチア人も嫌われており、彼らがイスラム教徒の居住区を襲った際も首都住民はイスラム教徒につきました」
「こいつらもどういう神経してるのやら」
「右は馬鹿者、左は愚か者、か」
「そういうわけで十字軍を連れて来た新皇帝は嫌われており、クーデターで殺されてしまいました。
これで約束の金が絶望的になったと悟った十字軍は蟻の触覚の先っぽほども信用できないビザンティン人はもうあてにならないと判断して、コンスタンティノープルを占領することに決定しました」
「そうなの? てっきり、最初からビザンツの制圧を狙っているものとばかり思ってたんだけど」
「多分、それはないかと。仮にも当時の帝国は大言壮語癖があるとはいえ、それなりに強力な国家です。
それを滅ぼそうなどと考えていなかったでしょう。十字軍は先輩の言った通り、エジプトに行く気満々でしたし、ヴェネチアとしてはマヌエル1世以来、微妙な関係であったビザンツとの関係を強化して、ライバルであるジェノヴァを出し抜こうとしていただけだと思われます。
それがまさか、このような結果になるとは夢にも思っていなかったはずです。皇帝が出来ない約束をしなければ、こうなったとは思えません。少なくとも、当コンテンツではそのような見解をとっているのは、これまでのことから分かると思います」
「つまり、偶然だ、て言いたいの?」
「もっと分かりやすく言うと、ビザンティン人のあまりの変節振りに十字軍は怒り、腹黒ヴェネチア人は呆れ顔、てところです」
「即ち、今回の事例は散々人々の心を弄んで自分の懐を潤していた異端どもへの神からの正義の鉄槌なのです」
「まあ、確かに今までのことを考えると自業自得のような気もしますけどね」
「これに対する新々皇帝は徹底抗戦を考えていたようですが、再び海から侵入されたので、逃げ出しました。
この期に及んでも徹底抗戦を訴える貴族はくじ引きでコンスタンティノ11世を皇帝にしましたが、ここまでこられてはさすがに勝ち目がないので、一晩で首都から逃げ出しました」
「逃げるな!!!」
「いわゆる一夜皇帝です。彼を皇帝と認めないとする見解もありますが、恐らく世界の在任期間の短い国家元首ということなら、結構いい線にいくでしょう」
「不名誉すぎます」
「こうして、1204年12月にコンスタンティヌス大帝による遷都以来、いかなる外敵をも寄せ付けなかった無敵のコンスタンティノープル大城壁はよりにもよって同じキリスト教徒に屈することになりました」
「脱線しますが、作者はこの事実から一つの仮定を思いつきました」
「どんなの?」
「と、その前に一言。ここからは型月を知らない人はしばらくスルーしてくれても構いませんよ」
「誰に話してるんです?」
「まず、コンスタンティノープルが陥落したのは1204年です。つまり、八百年前です。
このサイトの考察によると、アルクェイドさんとロアが生まれた時代も大体においてその辺りです」
「この時代は我らが栄えある神罰の地上代行機関たる埋葬機関の前身、埋葬教室の設立した年代でもありますね」
「ロアが設立に関わっていたような描写があるため、容易に推察できます」
「何が言いたいんです?」
「率直に言うと、作者はこのコンスタンティノープルの陥落こそ、埋葬教室の設立に一役買っていると考えているんです」
「ハァ?」
「考えてもみてください。
埋蔵機関は一応、ローマ教皇庁の組織です。つまりは西欧のです。そんな連中が様々な聖典を最初から元から有している、ということがあると思いますか?
キリスト教の本場は仮にも東方なのですよ? 彼らがその手の概念武装を当初から有しているとは考えにくいと思われます」
「推測に頼っているところがあるけど、仮定としてはOKなんじゃない?」
「それでいいんですか?」
「この当時の西欧は農業改革で農作物の生産高はすでにビザンツを上回っているんですけど」
「あくまで推測ですよ。
型月世界における教会がどのような歴史を歩んだのか、具体的には分かりません。この八百年前以前の西欧の教会にそのようなものを有していたり、作り上げるだけの技術があるのなら、問題ないのですが、そうでないならありえるはずです。
そういうわけで、作者は埋蔵機関、教室の設立シナリオとして以下のものを考え出しました。教会は十字軍以前にそれほど多くはなかった聖典を筆頭とした概念武装をそれほど有していなかった教会はこの一連の軍事活動から聖地にあったその手のものを大量に手にしたのです。歴史的な真偽はさておき、事実、十字軍は大量の聖遺物を聖地で発見しています。
しかし、何だかんだ言ってもその手のものは既にイスラム化した聖地よりも、コンスタンティノープルのほうにより多くあったと思われます。そして、今からおよそ八百年前の1204年にコンスタンティノープルは陥落し、その地に納められていた財宝の多くが西欧に渡ってしまいました。埋葬教室が設立したのはロアが生きていたと思われる年代からおよそ800年前です」
「ど、どういうことです?」
「ま、まさか」

「つまり、埋葬機関はコンスタンティノープルからの盗品を元にして設立した秘密結社だったのです!!!!」





「なんだってぇぇぇぇぇっ!!!!!」
「で、どこまで本当なの?」
「あくまで推測ですよ。作者がキノコ氏の脳内設定なんて知るわけないじゃないですか。
そもそも、ロアがどっかの蟲使いよろしく、散々生きた後で死徒になってしまったというのなら、この前提は完全に崩れてしまいます」
「しかし、微妙に時期が重なりますね……」
「そんなわけで作者の妄想脳内設定によると埋葬機関は聖地やコンスタンティノープルから略奪した様々な聖遺物をもとにして作られた組織、ということになっています。コンスタンティノープル制圧で設立の目処がたったのではないでしょうか?」
「…………」
「押し黙りましたね」
「自分達の組織がまさかそこまでやましいことで出来たと知ってショックを受けたのだろう」
「恥ずかしがることはありませんよ。
略奪で繁栄した国家、というのは古今東西いくらでもありますから」
「すっごい皮肉」
「いえ、問題ありません。我々の組織は異端と異教を滅ぼすためにあります。
その組織が設立からそれを成し遂げ、一時たりとも悪を滅することを忘れなかったというのは素晴らしいことです。私はますます自分が栄えある埋葬機関の一員であることに誇りを抱けるようになりました」


「…………」
「なんと恐ろしいことを」
「毛沢東思想、てこんな感じよね」
「ああ、バターの振りしたマーガリンどころか、実は唐辛子味噌、と言われた中国四千年史上最大の天災ですね」
「いい感じに嫌いぬいてるわね」
「それはいいとして、十字軍はどうなった?」
「ここまで来て満足したのか、新政権を打ち立てるのに兵力を割かなければならなかったのかは分かりませんが、ここで聖地奪還のことはとりあえず忘れることにしました。援軍が来ないことを知ったシリアの十字軍諸国はアイユーブ朝と講和することになりました。
ヴェネチアとて、棚ボタ的な成果とはいえ、これを生かさない理由はありません。利益になりそうな沿岸都市を片っ端からヴェネチアの
ものにして、地中海の制海権を掌握したんです」
「これで終わり? 1453年にはまだまだ遠いと思うんだけど」
「終わりではありません。ビザンティン人は西欧人の想像以上にしぶとくて執念深い人々でした。彼らはそれぞれ地方に散っていってコンスタンティノープルの奪還を志しました。もし、帝国が以前のように中央集権の形式をとっていたとすれば、この時点で各方面の抵抗運動もなく滅亡していたでしょう。
しかし、帝国はほとんど封建制の入っている国家構造に変質していました。だからこそ、中央政府が潰れても抵抗することが出来たのです」
「人生万事、塞翁が馬、というわけですね」
「ゾンビみたいな国ね」
「そんなラテン帝国の支配に抵抗するべく形成された勢力は以下の通りです」
アンドロニコスの孫がトレピゾンドを征服して建国したトレビゾンド帝国
イサキオス2世の従兄弟ミカエルが西岸の街アルタを首府として建国したエピロス専制侯国
小アジアのニカイアにコンスタンティノ11世とその弟テオドロスが建国したニカイア帝国

「こうして、彼らがバルカン半島に鹿を追う、帝位奪還レースがはじまります」
「さすがにスケールが小さすぎません?」
「それは言わないで下さい。
全勢力を一々説明するのは面倒なので、ニカイア帝国を中心に述べていきたいと思います。コンスタンティノ11世はこの勢力を弟に譲って退位。その後は弟の下で静かかどうかは分からないものの、余生を過ごしました」
「まあ、一日で逃げ出した男が皇帝じゃ、ちょっと具合が悪いですからね」
「弟のテオドロスは彼が少し早く皇帝になっていれば、と思わせるだけの人物でした。
優れた軍人であった彼は迫り来るラテン帝国の遠征軍を撃破。経済的にも西のトルコがさる勢力に圧迫されていたので、小麦が飛ぶように売れたそうです」
「さる勢力?」
「世界最強のモンゴル帝国です」
「モンゴルじゃあ、仕方ないわね。皆殺しにされなかっただけでも運がいいと思わないと」
「そこまで言うか」
「後ろに憂いはないなら、皆の力を集結させればすぐにコンスタンティノープルを奪還できそうですね」
「そうでもありません。
誰もが自分でコンスタンティノープルを取り戻そうとしていて、誰かに譲ろうという気持ちは露ほどもありません。ラテン帝国もそれが分かっているから、それを利用してなんだかんだ言って、六十年近くも保つわけです。
大体、コンスタンティノープルを取り戻した際にすら、彼らにまともな協調関係はなかったんですよ」
「見事に互いの足を引っ張り合うわけね」
「だから首都落とされるんですよ」
「愚かな」
「で、そのある意味、最大のライバル、ラテン帝国はどんな感じなの?」
「ラテン帝国はその設立の過程だけで現地人の支持をえられるような政権ではありませんでした。
そのため、産業的にさほど裕福とはいえず、交易も前述したとおりヴェネチアに美味しいところをとられたので、あまり振るいませんでした。そのため、コンスタンティノープルにあった貴重な骨董品をヴェネチアに売り払って戦力を整えていました」
「つまり、最終的な滅亡の前に貴重なものはあらかた売られてた、てこと?」
「その代表的なものが『キリストの茨の冠』です。これはフランスのルイ9世の手に渡り、今日ではパリのノートルダム大聖堂に保管されています」
「これは盗品なのかしらね?」
「盗品より性質が悪いと思いますけど」
「な、なにを言っているんです。異端の総本山コンスタンティノープルが頭のおかしいトルコ人に制圧された際に数多くの財宝が破壊されたりしたんですよ。我々が占拠したことでそれらが安全に保管されたという事実は賞賛こそされ、非難されるようなことではありません」
「今更だけど、無茶苦茶言ってるわね」
「ここで、ニカイア以外のコンスタンティノープル奪還の動きを見てみましょう。
まずはニカイア以上の勢力を誇っていたトレビゾンド帝国です。当初は皇帝アレクシオス1世のもと、順調に勢力を拡大していましたが、それがニカイアやルーム・セルジューク朝の近くに来たため、彼らに警戒されていました。
この敵対勢力を一挙に片付けるためにルーム・セルジューク朝へ攻勢に出ましたが大敗。ルーム・セルジューク朝への臣従を誓わされて、その権威は地に落ちてしまいました。息子の代に服属を取り消すことに成功しましたが、そのために勢力は大きく後退し、帝位奪還レースから滑り落ちてしまいました」
「一番、手強い相手がいなくなったわけか」
「一方、エピロス専制公国も当初は順調に勢力を拡大し、一事はニカイアにも匹敵する力を蓄えて皇帝を名乗ることもありましたが、以前にビザンツから独立した第二次ブルガリア帝国と対決して、ブルガリアに敗退しました。テオドロス1世は捕虜となりましたが、ブルガリア皇帝の妃が亡くなったと同時に、自分の娘を嫁がせることを条件に釈放されると、本国で自分のいない間に権力を握っていた弟を追い出して、自分の息子を皇帝にしました。
しかし、その間に兄ミカエル1世の息子であるミカエルが勝手に独立していたのですが、こればかりはどうすることも出来ませんでした。テオドロス1世の死後、息子は専制公を改めてニカイアから与えられて、その宗主権を認めることとなり、レースから外れてしまいました」
「ちなみに専制公とはビザンツにおいて皇帝の嫡男など後継者候補に与えられる称号です」
「ミカエル2世はどうなったの?」
「努力して勢力拡大に励んでいますが、その詳細は次回に譲ります。
そういうわけで、ニカイアが各勢力で最もコンスタンティノープルに近い群雄となりました」
「これで終わりですか?」
「その前に、次回のために第四回以降の十字軍について語っておきたいと思います」
「第四回十字軍以降も、十字軍による遠征は続けられましたが、さすがに初期ほどの情熱はありませんでした。第五回十字軍は十字軍諸侯の手によるものですが、普通に失敗しました。
ここにきて神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世が即位しました」
「うわ、出てきましたね。異端皇帝」
「神聖ローマは内ゲバでは?」
「とりあえず、その決着がついてようやく動けるようになったと思ってくれれば結構です。しかし、フリードリヒ2世は控えめに言ってもかなりの変人でした。イスラム教徒と仲良くしすぎていたため、周りから限りなく白い目で見られていたんです。
しかし、その智謀は優れておりフリードリヒ2世はアイユーブ朝の苦境を鑑みて、外交でもってエルサレムを奪還しました。宗教的に寛容であった彼はイスラム教徒にも手を出さないで、まさに平和的に行われたようです。
他にもニカイア皇帝と自分の娘を結婚させて関係の強化を図ったのですが、それは皇帝が王女ではなく、その侍女に目が移ったのでそれほど上手くはいきませんでした」
「メイド萌えか」
「翡翠。念のために言っておきますが、この事実をもって」
「この成功にも関わらず、フリードリヒ2世は教皇の怒りを買い、延々と対立してしまい、モンゴルのオゴダイ・ハーンがバトゥ率いる遠征軍を差し向けた時にはまともな対策がとれなかったようです」
「なんでそこまで怒るかな。とりあえず、聖地が取り返せたからいいんじゃない」
「異教徒を殺し足りないんじゃないですか?」
「なるほど」
「納得するな」
「その次の第七回十字軍はフランス・カペー朝屈指の名君であるルイ9世がエジプトに遠征しましたが敗退しており、次回の十字軍に備えて富国強兵に乗り出していたりします。ルイ9世はこの頃に十字軍を率いた人物としては珍しく、敬虔で信仰心の厚いまさにキリスト教徒の鏡のような人物でした」
「十字軍もあと一回か」
「狂信者どもの宴もまもなく終わりか」
「五月蝿いですね」
「それでは次回に最も関わりの深い国家の一つ、シチリア王国を解説して終わりにしたいと思います。
フリードリヒ2世の死後、後を継いだコンラート4世はそこそこ有能な君主でしたが、僅か四年で急死。教皇はフリードリヒのホーエンシュタウフェン家嫌いと、皇帝の息子コッラディーノが年端も行かぬ子供であったことから、神聖ローマ皇帝に即けるものがいなくなってしまいました。
これがいわゆる大空位時代です。これは1273年にハプスブルク家のルドルフ1世が即位するまで続きます」
「前から思っていたんですが、彼らは本当に神に遣えてる、て自覚はあるんですか?」
「あります!!!!」
「とりあえず、神聖ローマ皇帝位そのものはお流れになってしまいましたが、神聖ローマ皇帝を務めていたホーエンシュタウフェン家はシチリア王も兼ねていたので、その継承が問題となっていました。教皇の論理ではシチリア王は教皇の家臣だったのですが、現実はそうでもありません。
フリードリヒ2世の死を契機に、新たなシチリア王を探しましたが、ほとんどの国の宮廷が乗り気ではなく、話は遅々として進みませんでした。ルイ9世に至っては合法的な君主であるから問題ないと考えていたようです。そうしているうちにコンラート4世が死ぬと、フリードリヒの庶子マンフレーディが台頭してきました。
マンフレーディには妥協して時間を稼ぎつつ、イングランド王ヘンリー3世の息子、エドマンドをシチリア王にすることを画策しましたが、当時、王が十字軍のためにと称して集めいていた金をシチリア遠征に費やすのを多くの貴族が難色を示していたおかげで、とても役目を果たせそうにありません。
そんなこんなしているうちにマンフレーディは着実にシチリア王国の基盤を固めてコッラディーノをシチリア王に、自らは摂政に収まりました。1258年にコッラディーノが死ぬと、シチリア王となります。
これは誤報であると後に判明しましたが、マンフレーディは王位を譲らず、そのままシチリア王位に居座り続けることになります。ほどなく、教皇もエドマンドをシチリア王にすることを諦めます」
「それは教皇がマンフレーディを認めた、てことですか?」
「他の候補者を探す、ということに他なりません。大体、フリードリヒ2世以上にイスラム贔屓が激しく、『ルーチェのスルタン』とも呼ばれていた人物を認めるのは抵抗があったでしょう。そして、白羽の矢が立ったのが、ルイ9世の弟、ダンジュー伯シャルルでした。ルイ9世はマンフレーディの強引な行為をかなり不快に思っていたようなので、受け入れました。
それと同じ頃、ニカイアでもテオドロス2世が死に、息子のヨハネス4世が即位しました。この幼い息子の補佐を友人にして腹心のムザロンに頼んだのですが、これに不満を抱いた政敵が名門パレオロゴス家のミカエル
を後押ししてムザロンを追悼式のミサにて暗殺。強引に共同統治帝に収まりました」
「ミサの最中、て神をも畏れぬ男ね」
「これだから異端は」
「次回のミカエル8世の治世、いえ、正確にはユーラシア大陸西側は劇形式を導入することになっており、ユスティニアヌス大帝のそれよりもさらに長くて面倒な代物になっています」
「モンゴルとバイバルスも出るというわけか」
「今回はやけに西側の説明が多いけど、それは次回に備えてのこと、とみなしていいのかな?」
「この時期を外国の描写なくして語れ、というのは不可能だと思いますけどね」
「このためだけにモンゴル帝国編を作った、なんてことは……」
「ないと思うのですが……どうなんでしょ?」
「詳しいことは、予告のほうでお願いします」