目次
レイチェル・カーソン 『失われた森』 リンダ・リア編集 集英社 (2000)
ゲイリー・グラム 『暴露エイズウイルスは細菌兵器だった』 林督元訳 KKベストセラーズ (1997)
シーア・コルボーン 『奪われし未来』 ダイアン・ダマノスキ、ジョン・ピーターソン・マイヤーズ 長尾力訳 翔永社 (1997)
エリック・シュローサー 『ファストフードが世界を食いつくす』 楡井浩一訳 草思社 (2001)
ジョン・ハンフリース 『狂食の時代』 永井喜久子訳 講談社 (2002)
E・C・ピルー 『水の自然誌』 古草秀子訳 河出書房新社 (2001)
ジョン・フェイガン 『遺伝子汚染』 自然法則フォーラム監訳 (1997)
ジェームズ・ラブロック 『ガイアの復讐』 竹村健一訳 中央公論新社 (2006)
ジェレミー・リフキン 『バイテク・センチュリー』 鈴木主税訳 集英社 (1999)
ジェレミー・リフキン 『脱牛肉文明への挑戦』『BEYOND BEEF』 ダイヤモンド社 (1993)
『失われた森』 レイチェル・カーソン著 リンダ・リア編集 集英社
(2000)
レイチェル・カーソン遺稿集。彼女の自然への深い思い、洞察は感じられるが、ちょっとつまらなかったので読了せず。
『暴露エイズウイルスは細菌兵器だった』
ゲイリー・グラム 林督元訳 KKベストセラーズ (1997)
話にはかなり信憑性がある。これが本当なら人間はどこまで残酷かつエゴイストな存在なのだろう。
著者によると、エイズウイルスはこれまでの生物兵器を超えた遺伝子操作を駆使して作られたという。この話は著者が担当した末期癌の患者、政府の情報筋の人間から聞いた。現在著者はイギリスへ移住し、行方をくらませているという。この名前は偽名だろう。
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エイズは生物兵器としてメリーランド州フォートデトリックとニューメキシコ州ロスアラモスにある最高機密施設、米国化学細菌兵器研究所(CBA研究所)で意図的に作り出された。
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エイズウイルスの起源はロングアイランドのコールドスプリングハーバーの研究施設。
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ウォーターゲート事件の後、つまり、CIAのMK−Ultraマインドコントロール計画の実行後10年以上経ってから、CIAが何も知らない何千人もの国民に“兵器”である薬剤を投与していたというニュースが明るみに出た。逮捕された科学者シッド・ゴットリ−ブは、議会で質問に答える代わりにインドに逃亡した。
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新しい「合成ヘロイン」が生成された。従来のヘロインの四倍の威力。凍結乾燥後カプセル封入されたそれをエアゾール化して、六ヶ月にわたり有名な麻薬中毒者の溜り場に散布した。報告書には「非常に効果的」と記されている。その後、この新ヘロイン代用薬は普通のヘロインに混ぜて麻薬密売組織に供給された。新ヘロインが添加された麻薬を試した人は、たった一度の使用で一生中毒から抜けられなくなった。同じ技術を使って、エイズウイルスをヘロインやコカインに混入し、麻薬中毒患者の間で急速にエイズを流行させ、一般の人々にはエイズ感染の心配はないと思い込ませた。他方「ゲイや麻薬中毒の連中は自分たちのせいでこの疫病にかかったのだ」と思い込ませた。
・
1904年のちに「実験的進化研究所」という名で知られることになる施設が設立された。マスサスの「人口抑制」論に心酔しているアンドリュー・カーネギー、コーネリウス・バンダービルト、J・P・モルガン、ジョン・ロックフェらーらの寄付によってこの研究所は設立され、民族の相違に関する実験が行われた。研究目的の一つは、いかにして黒人を含む有色人種の急激な出生率の伸びを抑えるかということにあった。
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1910年、鉄道王ハリマンの夫人はロングアイランドのコールドスプリングハーバーに所有していた80エーカー(約32万平方メートル)の土地と30万ドルの現金を「実験的進化研究所」に寄付し、「優生学記録所」が設立された。
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ハリマン夫人は、「完璧な民族を作り上げる」ために、心身に欠陥のある人々に不妊処置を行うキャンペーンを世界的に繰り広げたいと考えていた。
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第二次世界大戦が勃発するまでの数年間、ハリマン夫人の優生学記録所はナチス・ドイツの優秀な遺伝学者たちに解放されていた。その後、帰国したドイツ人たちは研究所で得た知識を生かし、ヒトラーの計画に基づいて「支配民族」をつくり上げるために医学的な実験を進めていった。
・ 1978年以前の米国にはエイズは存在しなかった。
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CIAによれば、黒人女性は白人女性に比べてエイズに罹患する確率が13倍も高く、ラテン系の女性は11倍。さらに「若い黒人女性及び黒人小児の罹患率が高いため、エイズウイルスの伝播が抑えられなければ、2010年には黒人人口の増加率はゼロになるだろう」
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さらに毒性の強い新しいタイプのウイルスが登場しはじめたらしい。偽陰性の検査結果が出た何千もの症例でこれが見つかった。また、新しいウイルスは呼吸器を介して迅速に波及していく傾向を持つらしい。
・ 1960年代、エイズの実験が始まった。
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「アルフレッド大王計画」オリンポスの神々と呼ばれる財閥が人口削減を企図。それは何種類かの致命的なウイルスを使って2000年までにアメリカにおける黒人の出生率の伸びを抑えるというものだった。アメリカにおける全てのエイズ感染は「アルフレッド大王計画」を打ち出した国家安全保障会議以後に起こった。
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「アルフレッド大王計画」では、アメリカ政府が地球上のあらゆる国民の血液を集め、そのサンプルをフォートデトリックと英国のウイルス学者に送られていたことが暴かれた。これらのサンプルから黒人は白人よりもウイルスに感染しやすいことがわかった。英国の化学細菌研究所ポートンダウンズのウイルス学者の研究により、「黒人及び黒人と白人の混血はGc1遺伝子を持ち、白人はGc2遺伝子を持つという結論が引き出された。つまり、アフリカ及びブラジルはエイズの流行が最も起りやすい地である。」ことがわかった。この報告が、エイズを発生させる場所としてアフリカとブラジルが選ばれた主な理由。
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アフリカとブラジルにエイズウイルスを感染させる手段として世界保健機構の「人道的」大キャンペーン、「永久に世界から天然痘を根絶する」運動であった。この種痘にはエイズウイルスが混入された。
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1984年にはすでにフランス、バチカンの諜報機関、旧ソ連のKGBやリビアの諜報機関はこの情報を入手していた。
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アフリカでは西洋と違って男性と女性が同程度に感染していること、中央アフリカの5歳から11歳の小児には感染の兆候があまり見られないこと、エイズ感染が最も広がっている地域は、天然痘予防接種が徹底的に行われた地域と一致している。
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1980年代後半になって、慢性疲労症候群が突然米国で広まった。エイスウイルスHTLV−U(ヒト細胞白血病ウイルス)が検出された。これもフォートデトリックでの仕業。
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はたしてエイズウイルスはハイチで発生し、そこで感染したゲイによってアメリカに持ち込まれたのか?なぜ隣国のドミニカ共和国では殆どエイズ感染が見られないのか?―ハイチはアメリカのゲイたちの保養地として非常に人気があった。
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UCLAのダニエル・ベンソン博士は「エイズは血液が主な感染経路である」という。性交によっても感染しうるというだけの話。淋病などの本物の性病と比べると性交による感染率は低い。インフルエンザも性交によってもうつる。
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1989年のモントリオールの学会では何人かのウイルス学者がキスによってエイズが感染する可能性を明確にした。
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エイズ研究者ウィリアム・オコナー博士は「血液、唾液、涙、汗など、ほとんどすべての人間の体液が感染経路になる可能性がある」と明言。
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赤十字ではいまだに危険なドナーの献血を除外する統一的なシステムを作り上げていない。
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アメリカ赤十字の収益は年間1億ドル。血液の商売で。国際赤十字は血液の大商人であり、世界中で年間40億ドル以上の収益をあげている。
・
パスツール研究所は「室温で15日間放置された後でもまだ、感染力のあるエイズウイルスが検出された。その感染性ウイルスは室温での乾燥状態で3日間放置された後も再活性化することができ、水分のある環境では15日以上生き続けた。」と発表。
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1992年までに五千人以上の歯科医師、医師、医療看護者がエイズに感染した。
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ランゲルハンス細胞は粘膜に密集しており、体中にそれ程密にではないが散らばっている。この細胞に皮膚の刺激を受容する機能があることは1914年、米国化学細菌兵器研究所で発見された。この発見から皮膚に触れると毒性を発揮するマスタード・ガスが発明された。エイズもこの細胞の働きで皮膚からも侵入することが突き止められている。
・
口腔粘膜、鼻粘膜に存在するデンディトリック細胞は刺激物や細菌にさらされても死なないことを発見した。死滅するかわりに、デンディトリック細胞はウイルスを運搬し続ける。エイズウイルスを継続的に運搬するベルトコンベアーのようなもの。デンディトリック細胞はランゲルハンス細胞と同様、人間の性器や肛門に存在する。これで同性愛による性行為が危険であることが説明できる。
・
エイズウイルスは免疫細胞T細胞が侵入できない場所、特に脳や骨髄内に隠れることができるとフォートデトリックの秘密研究報告は述べている。
・
ウォルターリード病院の発表した研究では、エイズウイルスは神経親和性傾向を持ち、発病するよりかなり前の、感染のごく初期に脳を冒すという証拠が示された。特にこの研究では、執拗な頭痛、集中力の低下、通常ストレスによって現れる一般的な不定愁訴などの神経学的問題は、エイズの症状が現れる前に、最新のエイズウイルスに感染した人々の86%に見られたと結論している。
・
四日間便座に放置されたエイズウイルスにも感染力があることがわかった。
・
化学細菌兵器に関する実験の一環として、ゴキブリを繁殖させてエイズウイルスに感染させようというもの。
・ 1978年国際ゲイ協会(IGA)が英国に設立。IGAにより同性愛者の権利を侵害することを厳しい処罰以って禁止する法律が作られた。強制的HIV検査は価値がない。有害ですらあると一般市民を説得した。(デイビッド・アクセルロッドはゲイ陳情団の協力者)
・
なぜ「オリンポスの神々」やゲイ陳情団は強制検査に反対したのか。彼らは、大衆にエイズがどれほど蔓延しているかを知らせたくなかったのだ。オリンポスの神々は、エイズが一部の性病ではなく、大衆に蔓延しているという正しい知識を得た大衆が適正な疫病抑制策を要求して、エイズの流行が沈下してしまうことを恐れたのだ。
・
1985年4月28日から5月1日にかけて、遺伝的に変化したウイルスと環境に関するバンべりー会議がバンべりー研究センターで開かれた。このセンターの前身は「優生学記録所」である。この会議の公式スポンサーは、IBM、ダウ・ケミカル、エクソン、プロクター&ギャンブル、グレース基金、テキサコ・フィランソロピック基金、シェブロン基金、フィリップ基金、ブリストル・メイヤー基金、ロックウェル・インターナショナル信託基金。この会議への寄付企業は、シェアリング・プラウ、アップジョン、ジェネティック、アメリカン・インターナショナル、バイオジェン、エリ・リリィ、ポール、アメリカン・シナミッド、セタス、ファイザー、CPCインターナショナル、三井東圧化学、スミスクライン・アンド・フランス研究所、モンサント、デュポン・デ・ニーマス、ホフマン・ラ・ローシュ、アグリジェニックス、ベクトン・ディクソン、ジェネティックス研究所、ジョンソン&ジョンソン
・
NIHのエイズ研究部門の最高責任者ロバート・ギャロ博士は、バンべりー会議で、人工的にウイルスの遺伝子を変えることで、自然界に存在しない新しい致命的なウイルスを作ってしまったと告白。
・
レスリー・ジェーン・イールス、キース・アンソニー・ピンチング博士等は、エイズに抵抗する遺伝子と抵抗しない遺伝子を分離する方法を発見した。これはノーベル賞に値する。しかし、その後データが改竄されていたとしてこの研究報告を取り消すことを強いられた。
・
コールドスプリングハーバーでは、皮膚にメラニン色素を多量にもつ人々に対して非常に感染力の強いウイルスを開発するための分子レベルの研究が現在行われている。
・
1951年、ハクスレーはロックフェラー三世、テイラー将軍、ドレイパーらと相談して、1952年に「人口抑制協議会」を結成した。
・
世界2000年計画の発案者でありチーフ・スポークスマンとしても活躍中のロバート・マクナマラには、「人口過剰」に反対する説得力ある演説によって、世界中の中流階級の人々に、人口増加のせいで溺れかかっている地球を救うためには多数の人たちが死ぬこともやむを得ないという意識を植え付けろと命令されている。
・
1985年以後、アメリカでは結核が二割も増えた。結核患者はエイズに感染しやすく、逆にエイズ患者も結核にかかりやすい。結核は貧困と関係がある。現在、非常に毒性の強い結核が発展途上国やアメリカの低所得者を襲っている。これも意図的か。
・
疫病パニックが起これば、国民は警察力による解決を求めるようになる。それこそオリンポスの神々の思うつぼだ。なぜなら、彼らは警察を掌握しているのだから。彼らが欲しているのは、すべてをコントロールできる力なのだ。
・
アフリカでエイズに効果をあげている治療法は、古代の薬草療法ただ一つ。薬草医の一人ジンバブエのグレース・チフリは自分ならエイズを治療できると断言し、実績も示している。
・
ガーナの薬草医ナナン・コフィ・ドゥロボのエイズ治療の成功率は非常に高い。使うのは薬草から抽出した物質だけ。彼の成功に驚異を抱いた医療機関や製薬会社はIMFを通してガーナ政府に圧力をかけた。政府はドゥロボの治療を認可しなかった。最後は自殺に見せかけ殺された。
・
唾液は性分泌液よりもはるかに感染力が強く、血液や血清は唾液よりさらに感染力が強い。
『狂食の時代』 ジョン・ハンフリース 永井喜久子訳 講談社 (2002)
殺虫剤、抗生物質、成長ホルモン等の環境ホルモン、遺伝子組み換え作物、狂牛病等々、現在食は毒に汚染されている。そのため
様々な影響が人間の体に現れている。著者はイギリスを中心にこの危険性を具体的に指摘し、警鐘を鳴らしている。
イギリス政府も日本と同様にこういった問題に対しては消費者よりも献金の多い企業側の立場にたっており、なかなか規制が行わ
れないことを指摘している。社会人として必読の書。
イギリスで最も尊敬を集めるジャーナリストの一人であり、BBCのラジオ4のニュース報道番組『トゥデイ』のキャスターでも
ある。放送人としてのキャリアは40年に及ぶ。BBCの特派員として世界中を飛び回り、その業績を表され、国民的な賞を数々
受賞し、「イギリスの宝」と称されている。
また、10年にわたって酪農に携わった経験があり、現在ウェールズに農場を持ち、ロンドンの自宅と往復する生活を送っている
。本書は出版されると同時に大きな話題を呼び、世界各国で出版されることになった。
・ イギリスの子どもたちが恐るべき速さで肥満への道をたどっている。2000年には15歳人口のおよそ半分が太りすぎか、
実質的に肥満と呼べる水準だった。20世紀始めの数字の三倍であり、この数字は、これまで一貫して高まっている。そのためイ
ンシュリン非依存型糖尿病にかかる若者がどんどん増え、それに関連した病気も増えてきた。腎臓や心臓の病気、脳卒中、手足を
切断する者さえいる。
医学の専門家は、長年、子供たちの食事を見直すべきだと警告してきたが、彼らの声はファーストフードや発泡飲料メーカーの宣
伝文句にかき消されてしまった。20年前、食品委員会の調査書の中で、ハンバーガーは塩分と脂肪が多すぎる―焼いた後でも、
まだ小さじ六杯の脂肪を含むものがある―しかも化学薬品が大量に含まれていると糾弾された。しかし、何も変わらなかったのだ。
・ 食品の化学薬品汚染は深刻な問題だ。何十年も前から、人々は何種類もの化学薬品を体内に取り込んで起こるカクテル効果や
、いわゆる「環境ホルモン」について心配してきた。因果関係を証明することは今でも困難だが、神経系の異常に苦しむ子どもの数
はどんどん増えてきて、殺虫剤との因果関係を疑われているガンも急激な増加を見せている。IQの低下を示す研究もある。
土壌から野菜や家畜の飼料に取り込まれた高濃度の硝酸塩の影響によって、食べ物から体の組織に供給される酸素が減っているの
ではないかという懸念も、ずっと以前からある。いまや、それについて疑う余地は全くない。
・ 毎年毎年、議会では次々に法案が提出されたが、上院議員や下院議員らは、献金と引き換えに守ってやらねばならない後援者
のために、それらを全部廃案にし続けた。だが1860年に、「食物及び薬剤粗悪化防止法」が成立したのが一つの転機だった。歴
史上初めて、一般大衆は、自分の買う食物が薄められたり、混ぜ物をされたりしないことを保証される合法的な権利が与えられた
のだ。
・ イギリスで殺虫剤農法が始まったのは、第二次世界大戦の終わったときだ。第二次世界大戦時の食糧危機を経験したイギリス
政府は再び戦争になったときに備えて自給率を高めるために、穀物の増産を望んだのだ。この時から、すべてが変わり始めた。こ
こで用いられた戦略は補助金だ。地主のポケットに更なる金をつぎ込む制度だ。地主たちは土地を酷使して、可能な限り穀物を生
産するように奨励された。新しい武器となったのは、多種多様な農薬だった。
・ 農薬開発を指揮していたのは農漁業食糧省の主席農業顧問であるウィリアム・ギャビン卿という人物だ。彼は化学会社ICI
にも籍を置いていた。戦争が終わって、ヒトラーとの戦争で開発された化学兵器MCPAはメトキソンという名で市場に出た。「麦
畑の掃除屋」として、農家の間で大評判になった。これはホルモンを乱す強力な化学薬品だった。
戦争前に使われていた殺虫剤は、天然の鉱物や植物からつくったものだった。メトキソンは実験室で分子を操作して作られたもの
で、比較的安価に製造でき、きわめて効果的な合成化学薬品だ。それが人気を集めた理由はもう一つある。1947年に議会が農
業法を成立させてからは、生産者が穀物栽培で損をすることなど殆どないと分かったのだ。雑草だの、害虫だのを殺す薬剤にどれ
ほど金をつぎ込んでも、事実上利益を保証する補助金が導入されたからだ。
・ ICI社は新しい散布方法の開発した。トラクターにスプレー用液体殺虫剤を充填した噴霧器を引かせたのだ。これで一気に
農薬散布が楽になった。やがて殆どの畑でホルモン撹乱型の除草剤が使われるようになった。
・ オランダで最近行われた調査によれば、有毒化学薬品に最も多くさらされた乳児群は、最も少ない乳児群と比較して、IQが
4ポイント低くなるそうだ。
・ スウェーデンの化学者リンドストローム博士は最初の子どもを母乳で育てるとき、自分の母乳に含まれるダイオキシンの量を
測定した。彼女の体内のダイオキシンレベルは最初の六ヶ月で15%低下した。減った分の毒は、彼女の赤ん坊によって吸い出され
たのだ。六ヶ月間母乳で育てられた乳児は、この種の環境汚染物質の一生を通じた総摂取量の最高16%を取り入れたことになると
推定されている。その殆どが、子宮にいたときに胎盤を通して移行したものだ。
・ 海で食物連鎖の底辺にいるのはプランクトンだ。プランクトンが海水中の毒を吸収すると、その毒性は265倍になる。プラ
ンクトンが小魚に食われると、それがさらに500倍になる。小魚が大型の魚に食われると、それがなんと7万5000倍にまで
濃縮される。そして鳥がやってきて、その魚を捕まえれば、毒はさらにまた濃縮されていく。魚を一番多く食べるカイツブリが殆
ど絶滅したのも不思議でない。食物連鎖の頂点にいるのは人間だ。
・ 有機塩素系殺虫剤は非常に効果的な殺虫剤だが、その副作用は破壊的だ。何より悪いのは、殆ど分解されないという点だ。毒
性は長い間土中にとどまり、散布されて17年たっても、まだ39%も残っていた例がある。アメリカが使用を禁止してから何年も
経って、とうとうイギリスもそれにならった。
メーカーが作るのをやめたわけではない。あくまで製造は続けられ、製品の一部は今日にいたるまで、イギリスが食糧を輸入して
いる国で使われている。私たちの食べ物の中には、まだDDTの残留が認められるものもある。現在は主に熱帯地方でマラリアを
抑えるために使われているが、依然として食物連鎖の中に入り込んでいる。
・ イギリスで有機塩素系殺虫剤が使用禁止になると、別の系統の殺虫剤が代わりに使われるようになった。有機リン系殺虫剤、
一般にOPと呼ばれているものだ。有機リン系殺虫剤は、脳を攻撃することで致命的な作用を及ぼす。神経細胞と神経細胞を接合
するシナプスに作用して、細胞から細胞への信号の伝達を不可能にする。その結果、脳から送られてくる何十億もの情報が伝わら
なくなってしまう。
ここ30年ほどの間に、注意欠陥障害として治療を受ける子どもが増えてきたが、これは有機リン系殺虫剤が大量に使われるよう
になった時期と重なっている。
・ 比較的若い人の肢体が不自由になり、ついにはアルツハイマー病にかかる例も著しく増えている。有機リン系殺虫剤はプリオ
ンタンパク質の毒性を増やし、アルツハイマー病のような病気が発症する年齢を下げた可能性があることが明らかになった。ほか
にも、殺虫剤の使用と若者層でのパーキンソン病の発症との間に、かなりの関連性があることを示す論文が出ている。
・ 私たちは今、殺虫剤の新たな世代を迎えた。ピレスロイド系殺虫剤と呼ばれているものだ。キク科の植物が有する固有の毒ピ
レトリンを使ったピレスロイド系殺虫剤は有機リン系殺虫剤同様、神経系を攻撃する。神経細胞間の情報伝達を邪魔するのではな
く、情報を無限に繰り返させるのだ。効果は前者と同じだ。
初期のピレスロイド系殺虫剤はあまり効果がなく、虫にかけても、いったんは動けなくなるが、すぐに元通りに回復してしまった
。そこで増強剤が登場した。少量のピレスロイドが体内に入ってきても、理論的には何の問題もない。肝臓で無毒化され、排出さ
れるからだ。しかし、もし増強剤によって肝臓の酵素のきわめて重要な働きが妨げられたら、どうなるのか?
・ 1999年の報告書によると、殺虫剤に汚染された野菜や果物がかなり増えてきている。テストされた生鮮品の43%で化学薬
品の残留が認められた。前年比10%の増加である。イギリスですでに禁止されている殺虫剤が見つかった例もある。
・ コンピュータディスプレイのブラウン管が温まるにつれて、火災防止剤として使われているトリフェニールリン酸エステルと
いう化学薬品が放出される。新品は中古品よりはるかに放出量が多い。ディスプレーのスイッチを入れる最初の二、三回以後はそ
の量はぐっと少なくなるが、なくなることはない。180時間以上使った後でも、放出される量は依然として通常の環境基準値の
10倍以上ある。
さらに家庭やオフィスに日常的に存在するプラスチックは、その多くが毒性をテストされていない。プラスチック製品は、少なく
とも頭痛や鼻詰まりや皮膚のアレルギー症状を引き起こす恐れがある。てんかんの発作のリスクが高まると考える科学者もいる。
・ 現代の魚の養殖法は集約養殖だ。多国籍企業が全養殖場の75%を傘下に収めている。例えば何万というサケが水中に詰め込ま
れている(最大規模の集約養殖魚場では、十万尾を超える魚を同じケージに入れている。最悪のケースでは、一尾につきバスタブ
半分の広さしかない。一つのバスタブに成長した二匹のサケが放たれて、死ぬまでそこで暮らすのだ)。
シーライス(超小型くらげ)の寄生や病気に苦しむサケも多いが、高度に加工された飼料と絶え間ない薬品投与によって生かされて
いる。大半のサケに与えている飼料には、とんでもなく高い濃度の油分が含まれている。このせいでサケは下痢を繰り返し、魚肉
は柔らかくなる。結果の一つは、お買い得の切り身に浮かぶ太い白線だ。脂肪である。
下痢を免れたとしても、ケージ内には大量の排泄物が浮かんでいる。このせいで感染症が広がり、えらを冒された魚体は大量の粘
液を分泌する。養殖サケは感染性サケ貧血にもなりやすい。これは、魚がかかる一種のインフルエンザだ。病気は他にもある。心
筋症候群、感染性膵臓壊死等々。集約的サケ養殖場自体が魚にとっては不健康な場所なのだ。
・ 養殖魚に多くの病気があることは心配だが、それ以上に心配なのは病気が別の種にまで広がっていくことだ。問題の一つには
、養殖ケージが効果的な監獄ではない、という点がある。現在、何十万というサケがケージから脱出に成功している。ネイチャー
によると、北大西洋で捕獲されたアトランティック・サーモンの、ほぼ40%が養殖サケだった。問題は養殖魚と野生種との交雑だ。
実際、野生のサケが元の川に帰ってこなくなるケースが非常に増えている。
・ サケ養殖場からの廃棄物に含まれているアンモニアは、アレクサンドリウム・ミニトゥムと呼ばれるプランクトンの発生を促
進する。このプランクトンが出す毒素はたちが悪く、麻痺性貝毒の原因となって人間にも害を与える。さらにシーライス対策とし
て頻繁に用いられている殺虫剤により、記憶喪失を引き起こす貝毒の被害が出た。
・ 養殖サケの身を野生と同じようなピンク色にするためにサケの飼料には人工カンタキサンチンが含まれている。人間が直接口
にする食べ物にカンタキサンチンを添加するのは禁止されている。網膜上に黄色の微粒子が蓄積することがあり、発達段階にある
小さな子供たちの場合は目に損傷を受けやすいとされている。
だが、鳥獣用飼料への添加は禁止されていない。ニワトリはいまだにカンタキサンチンの入った飼料を食べている。卵黄の発色を
よくするためだ。魚用飼料に対する規制もない。
・ 生涯を終える養殖サケは10日間、絶食させられて、最後の30日間はケージからよそに移される。残留薬品の問題をクリア
するためだ。だが、こういうことをしたとしても、様々な薬品の大量投与や殺虫剤が人間の健康を蝕む可能性を示す証拠が次々と
明らかになっている。
・ 農漁業食糧省内の食品汚染局が1999年に、ダイオキシンとPCBについて作成した内部資料が流出した。そこには、週に
二度以上魚を食べたとしたら、WHOが定めた安全値を超えるダイオキシンとPCBを摂取してしまう可能性があると書かれてい
る。
・ アメリカの科学者たちが遺伝子組み換えサケを作り出した。このサケは、野生サケの六倍のスピードで成長する。今のところ
、この「化け物サケ」の商業的養殖は行われていないが、それも時間の問題だろう。
・ 現在、ニジマスの成長速度を70%早めるような合成ホルモンを開発中だ。さらに魚にDNAを注入するというワクチン接種も
開発中だ。ワクチンには免疫反応を直接的に引き起こすような物質が入っている。危険なのは、DNAが魚の染色体の中に落ち着
いてしまうという点だ。その魚は遺伝的に組み換えられてしまう可能性がある。
・ 養殖サケ1キロにつき、2キロないし3キロの「収穫」魚が餌として必要だ。これでも、減りつつある漁業資源を救う手立てに
なるのだろうか。
・ 1999年のイギリス政府報告によれば、抗生物質の半分が農業で使われていて、人間が使用しているほぼすべての抗生物質
が農場の動物に与えられてきた。これが院内感染の原因になっているのでは?
・ 1950年代に、アメリカで抗生物質がニワトリの成長促進剤になるという発見がされた。それが他の動物にも適用されてい
った。
・ 抗生物質は恐ろしい感染症の原因となる細菌を殺したが、そのせいで食中毒のリスクを増大させるような農業システムが始ま
った。抗生物質を使えば、動物を短期間に大きくできるだけでなく、集約化を進めることもできたからだ。
・ 工場式農業が行われるようになると、サルモネラ菌中毒の数は80年から90年までの10年間で3倍に増え、3万件を超え
た。
・ あらゆる微生物はグラム陰性菌とグラム陽性菌に分類できる。食中毒の原因となるのはグラム陰性菌である。一方、家禽の成
長を早める抗生物質はグラム陽性菌を退治する。つまり、抗生物質は細菌をやっつけるが、やっつけられた細菌はサルモネラ菌の
競争相手だったのである。鶏肉中のサルモネラ菌が増えれば増えるほど、それを食べた人間が食中毒にかかる可能性も大きくなっ
た。
・ ニワトリは成長を促進する抗生物質以外に、健康を維持するために別の抗生物質も与えられる。病気になれば、感染症対策と
して、またしても抗生物質の投与だ。だがその抗生物質は役に立つ微生物を殺してしまう。いつまでも、いたちごっこ。
・ 1986年スウェーデンは、すべての成長促進剤の使用禁止に踏み切った。現在、スウェーデン産の鶏肉にはサルモネラ菌は
殆ど入っていない。
・ 養鶏場にはびこっているもう一つの有害細菌はカンピロバクター菌だ。イギリスのスーパーマーケットで売られているニワト
リの90%はこの細菌に汚染されている。カンピロバクターによる食中毒は重い敗血症を引き起こすことがある。これは血液を冒す
感染症であり、よくて集中治療室行き、悪くすれば長引く後遺症に苦しむことになる。
・ 多くの政治家も不安を感じている。だが、法律を作って新しい規制を導入し、抗生物質の使用をコントロールする段になると
、どの政府も期待を裏切ってきた。危険を認知できなかったか、無視できない証拠が出ているのに業界からの圧力に屈したかのい
ずれかだった。家禽生産者と製薬会社が騒ぎ立て、注意を促す声を掻き消してきたのだ。
・ 医師は自分が処方した薬を売ることはできないが、獣医は売ることができて、普通は売価の30%が彼の利益になる。獣医にと
って、農場主への抗生物質販売は大きな収益源だ。
・ 下痢を予防するワクチンをつくるためのバナナが栽培されているが、製薬業界では、こういった技術を一語で表している。製
薬と農業という二つの言葉をくっつけた「ファーミング(薬農業)」だ。
・ 現在、ヨーロッパでは商業目的の遺伝子組み換え作物は栽培されていないが、私たちはそういった食品を食べている。遺伝子
組み換え食品の75%はアメリカで生産されているからだ。あとの残りを作っているのはアルゼンチンとカナダだ。アメリカで栽培
されている大豆の5%以上とトウモロコシの25%は、遺伝子組み換えが行われている。
・ 遺伝子組み換えでは遺伝子を植物に注入するのだが、宿主となる植物のDNA内のどこに新しい遺伝子があるかを、正確に言
い当てることはできない。結果は偶然に左右される。だから遺伝子の移植によって作られたタンパク質がひょっとすると危険かも
しれない。
・ 乳牛の乳の量を増やすためにアメリカ食品医薬局の後押しで、遺伝子組み換え牛成長ホルモン(rBGH)を作り出された。199
3年にはモンサント社にこのホルモンの販売許可を与え、あっという間にアメリカの乳牛の三分の一が週ごとの注射を受けるよう
になった。
・ だが、モンサント社の牛成長ホルモンの売り込みは他国では成功しなかった。カナダの実験では、ラットの雄の甲状腺に嚢胞
ができ、前立腺も詰まっていた。欧州委員会は、遺伝子組み換え牛成長ホルモンを注射された牛の乳には、IFG-1(インシュリ
ン様成長因子)が高濃度に含まれていることを突き止めた。
この物質は自然状態で牛の体内に存在するが、人間がこれを過剰に摂取すると乳ガンおよび前立腺ガンの発生率が非常に高くなる
。抗生物質の問題もある。たくさんの乳を出すために遺伝子組み換え牛成長ホルモンを与えられた牛は、乳腺炎にかかりやすくな
る。こうして抗生物質の投与が増え、残留の危険も増していく。
・ ある植物種から別の植物種に遺伝子を移植したために、それまでアレルギーとは無関係だった移植先の植物がアレルギーを引
き起こす場合がある。ブラジル・ナッツ(アレルギーの原因となっている)の遺伝子を大豆に移植したときに、このような事態が起
こった。
・ 遺伝子組み換え作物の大半には、強力な除草剤を撒いても枯れないような遺伝子、もしくは害虫を寄せ付けない遺伝子が組み
込まれている。その結果、遺伝子組み換え作物には予想外に高濃度の毒素やアレルゲンが含まれるようになった。
・ 21世紀には世界中で人口爆発が起こるだろうといわれていたが、現実はそうはならない。国連が行った最新の調査によれば
、人工の増加傾向は「著しく低下している」。増加率がピークに達した1960年代後半には、一年に2.1%の伸びがあった。この
数字は2050年までに0.3%にまで落ち込むと思われる。
そして開発途上国の穀物生産量は、次の30年間で、90年代後期より70%上昇するだろうと見積もられている。この見積りは、
遺伝子組み換え技術の影響を考えに入れていない。
・ 99年に慈善団体のクリスチャン・エイドが報告書を出し、遺伝子組み換え作物は「飢餓と飢饉の典型的な必須条件を作り出
している」と述べた。過去の数年間、多国籍バイオ企業は世界中の種子会社を買収し、様々な種子の特許権を得てきた。クリスチ
ャン・エイドによれば、「ごく小数の限られた特許作物に頼った食糧供給は、食糧の安定にとって最悪の選択である」。
・ 現在、有機食品は大きなビジネスになった。マーケットでより多くのシェアを得るには、価格を下げるのが一番だ。できるだ
け安い値段で商品を売ろうとする有機生産を行っている人たちは、手抜きをして品質を下げるより、生き残る方法はないと腹をく
くるかもしれない。
・ 狂牛病(BSE)が発生したのは80年代である。これは、牛を飼う農場が、動物の背骨に特別な有機リン系殺虫剤を吹き付け
なければならなくなった時代と一致している。この有機リン系殺虫剤は体内の銅を減少させるだけでなく、マンガンを命にかかわ
るような「不安定かつ反応性の高い」脳内物質に変えてしまう。
さらに、牛のえさにはニワトリの糞が含まれていた。そのニワトリたちもまた、よりたくさんの卵を産むためにマンガンを与えら
れていた(銅のない環境で培養された細胞にマンガンを加えると、マンガンが正常なタンパク質にくっついて「悪玉」プリオンタン
パク質を作ってしまう。この「悪玉」プリオンは、BSEの牛や変異型クロイツフェルト・ヤコブ病患者の体内で発見されている)。
というわけで、牛の脳にあるプリオンタンパク質には、銅が少なくてマンガンが多かった。
・ ロンドン大学で免疫学を研究しているアービンガー教授によれば、BSEと変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の原因は、免
疫システムの不調であるという。教授は、土壌や上下水にごく一般的にみられる細菌が多発性硬化症の原因であると断言した。彼
は、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病は、多発性硬化症が極端な形であらわれたものだと主張している。BSEを引き起こした
かもしれない新しい要因が、また一つ明らかになったのだ。
・ 私企業が行っている食品の安全調査は、規制当局に商品化を許可してもらためのものだ、という。そのため、当局が求める基
準をクリアできたら、研究費もそこで打ち切りになる。環境や安全への影響を巡る基本的な研究に金を出すところはどこもない。
『奪われし未来』 シーア・コルボーン、ダイアン・ダマノスキ、ジョン・ピーターソン・マイヤーズ 長尾力訳 翔永社
(1997)
OUR STOLEN FUTUREというタイトルで、合成化学物質がホルモン作用撹乱物質としていかに危険のものかを論証。
シーア・コルボーン:世界自然保護基金の科学顧問で、内分泌系撹乱化学物質の専門家。ウィスコンシン大学で動物学の博士号を取得。現在はワシントンDC在住。
・
1965年に著したレイチェル・カーソンの「沈黙の春」は、合成殺虫剤が招く危険性を訴えた。
・
本書は、カーソンの志を継ぎ、問題の合成化学物質が、性発達障害や行動及び生殖異常といかに密接に関っているのかを裏付ける膨大な科学データを一つ一つ丹念に検証した労作である。
・
鳥類ではオスが基本の性であるが、ヒトをはじめとする哺乳類では逆にメスが基本の性である。したがって哺乳類の胎児は全て、男性ホルモンが当初の予定を無視して、あらぬほうへと暴走しない限りは、女性(メス)になるのである。
・
ノルウェーのスヴァルバル諸島においてもPCB、DDTなどの残留性の高い合成化合物によって、ホッキョクグマに汚染被害が出ていることが確認。こうした化学物質はいずれも野生動物の生殖能力を著しく損ねる有害物質である。
・
これまでにホルモン作用撹乱物質であることが確認されている51種類の合成化学物質のうち、PCBを含む少なくとも半数は残留性の高い化学物質である。その影響は数十年におよぶだろう。PCBは数世紀にわたることすらある。
・ 1929年に導入されたPCB(ポリ塩化ビフェニール)は、塩素原子を「ビフェニール」の名で知られる六角形のベンゼン環二つからなる分子と組み合わせることで合成されたもの。
・
建築物に備え付ける変圧器には、不可燃性の化合物を使用せよという連邦政府の条例により、PCBは瞬く間に電機産業界の安定した一大市場を確保した。その他、PCBは、潤滑剤をはじめ、作動油、切削油、封水として重宝された。さらに燃えない木材、燃えないプラスチック、丈夫で長持ちするゴム、水に強い漆喰、ペンキ、ワニス、インク、殺虫剤などに展開。
・
1976年米国はPCBの製造を禁止。日本では1972年に製造並びに使用が禁止。
・
おぞましいまでの安定性と揮発性に加え、脂肪への著しい親和性を兼ね備えた有害物質には、PCBをはじめ、殺虫剤DDT、クロルダン、リンダン、アルドリン、ジエルドリン、エンドリン、トキサフェン、ヘプタクロル、そしてダイオキシンがある。このうちダイオキシンは、自然環境に蔓延しており、数々の化学過程はもちろん、化石燃料やゴミの焼却によっても生じる汚染化学物質である。
・
人体脂肪中には、PCBをはじめとする残留性化学物質が蓄積されており、それはそのまま次の世代へと受け継がれている。人体の脂肪組織中には、少なくとも250種類の汚染化学物質が混入している。
・
母乳を摂取している乳児は、体重70kgの成人に対して認められているPCBの一日の国際健康標準量の5倍にも相当するPCBを摂取している。母乳の汚染状況は、北極圏のイヌイットの間で著しい。イヌイット族の子供の大半は慢性的な耳の感染症が蔓延。また免疫系の異常も確認されている。天然痘、はしか、ポリオなどの予防接種をしても、抗体が産出されない。そのため子供たちの抵抗力は著しく低い。
・
ダイオキシンの毒性は、砒素の数千倍に相当。ダイオキシンを体重1キロあたり100万分の一グラムしか投与されなくても実験動物は死んでしまった。しかもどんな実験動物も、強力な発ガン性物質が検出された。
・
殺虫剤や木材用防腐剤に使われる塩素含有化学物質の製造、塩素による紙の漂白、プラスチックや紙の焼却、化石燃料の焼却、こうした過程すべてからダイオキシンは発生する。DDTやPCBと同様にダイオキシンも体脂肪への残留性が高い合成物質だ。しかもダイオキシンは、そのほかの残留性化学物質同様、大気、水、土壌、堆積物、食物などから広く検出されている。
・
ダイオキシンには、精子数の現象や免疫系の抑制を誘発する性質があることが立証された。
・
アルキルフェノール・ポリエトキシレートは1940年代から幅広く使われていたが、分解すると水棲生物に有害な影響を及ぼすことから、1992年ヨーロッパ及びスカンジナヴィアの14ヶ国が2000年までに撤廃することに合意。とはいえ、この化学物質はいまだに多くの国で工業用洗浄剤として使われている。
・
スペインのグラナダ大学の科学者は、缶詰のコーティングに使われるプラスチックを調べた。これは金属成分の浸出を防いだり、金属臭が食物に移らないようにするため缶詰の内側に施される。米国及びスペインで購入した20社の缶詰を分析した結果、半数の缶詰からビスフェノールーAが検出された。これはスタンフォード大学研究室のポリカーボネイト製実験用フラスコから見つかったのと同じ物質だった。
・
知的所有権や企業秘密の壁で、市場に出まわっているプラスチック製品にホルモン作用撹乱物質がどのくらい含まれているかは分からない。
・
発展途上国では害虫のほうが人体や作物に有害とされているため、今なお問題の殺虫剤は散布され続けており、その使用量も増加の一途をたどっている。
・
個々の化学物質はとるに足らない微量でも、複数のホルモン作用撹乱物質が相まって強力な威力を発揮する証拠も挙がっている。
・
出生前にホルモン作用撹乱物質に暴露した場合は、ごく少量であっても非常に危険である。
・
アザラシ、イルカ等の野生生物の大量死には、汚染物質による免疫抑制が絡んでいる。
・
ホルモン作用撹乱物質にさらされると免疫系の発達が阻害され、しかもその影響は生涯にわたって消えることはない。
・
合成汚染物質は、ある臨界点を越える量を投与するとかえって生体反応が鎮静化するものもある。そのため大量のホルモンを使った実験結果から一般論を引き出そうとすると、場合によっては、肝心の危険性を低く見積もってしまう恐れがある。
・
ニールス・スカッケベック博士率いるデンマークの研究によれば(北米をはじめ全世界の20ヶ国で、1万5千人の男性を対象に実施)、精子数の平均は、1940年に精液1ミリリットル当り1億1300万個だったものが、1990年には6600万個にまで落ち込んでしまった。
・
フランス、ベルギー、スコットランドの新しい研究結果が明らかにしたのは、誕生年数が大きくなればなるほど、平均精子数は低くなり、奇形精子の割合も格段に高くなっていた。これは胎内でエストロゲンに暴露した結果だとシャープとスカッケベックは共同論文で発表。
・
過去半世紀の間、精巣癌と生殖器の奇形は激増。デンマークでは、若年層の病気である精巣癌は3倍に増えていた。
・
動物実験では、胎内のエストロゲン・レベルが高まると、成長後にオスが産出する精子数が減少することが暗示されていた。それは精巣内での精子の産出を調整・管理するセルトーリ細胞の増殖が抑制されるためのようだった。
・
出生前にホルモン類似物質に暴露すると、老年期の男性にはごく普通に見られる前立腺肥大を悪化させてしまう恐れもある。前立腺肥大とは、排尿障害を伴い、ときに手術が必要となる疾病である。
・
ラット実験によって、エストロゲン暴露が長期におよぶと、前立腺癌が誘発されうることを確認。前立腺ガンはこの20年間で激増し、現在では米国人男性がかかる疾病の筆頭と目されている。米国人男性の癌の27%を占める。
・
流産、子宮外妊娠、子宮内膜症といった女性特有の生殖障害とホルモン作用撹乱物質との関係も動物実験とDESにまつわる経験から予想可能である。
・
子宮内膜症は第二次大戦後に著しく上昇し、現在出産適齢期にある米国人女性の10−20%が罹っている。
・
PCBなどの合成化学物質に暴露すると流産、乳癌の危険性が増す。
・
米国では、5−10%の学齢児が多動症や注意散漫などの症状から、学習に支障をきたしている。それ以外にも、記憶障害やペンが持てない、文字が書けないといった運動機能障害による学習障害も多数報告されている。
・
PCBが内分泌系の構成素である甲状腺ホルモンの作用撹乱を招くことで、脳に損傷を与えることを裏づける証拠は続々と挙がって来ている。
・
汚染物質の影響で、ほんの些細なストレスでも生理機能にとっては相当なダメージになる。
・
母親が摂取した汚染物質が二世代にわたって受け継がれることがラットの実験で確認。
・
野生生物に蔓延する化学汚染と、メス同士のつがいやメス化したオスといった異常行動との関連とヒトの育児行動と性選択(パートナー選び)。
・
出生前に合成エストロゲンDESに暴露した女性には、そうでない女性よりも高い割合で同性愛及び両性愛の傾向が現れた。
・
1950年公衆衛生局の役人は安全基準を明らかにした。それによると、死亡するとか病気にかかるといった明確な影響が現れなければ当の化学物質は安全だということになった。
・
DDT、その分解生成物であるDDE、PCB、及びそのほかの合成化学物質により、胸部腫瘍ができることが分かっている。
・
発ガン性を安全基準の目安にすれば、ヒトはもちろん魚や野生生物を、ガン以外のあらゆる危険からも守ることができるという考えが広まった。こうして過去20年間、殺虫剤製造業者と政府の役人は、化学物質の安全性をチェックする場合には、主に発癌性と、猛毒物質や先天性欠損などの明白な危険性に的を絞って来た。このガン偏重主義が災いして、ガン以外の危険を知らせる信号は完璧に見落とされてしまった。
・
人体は、化学物質によるホルモン作用の撹乱に関する限り修復機能を持っていない。(DNAは傷ついても修復される)もともと細胞はホルモン・メッセージを受け入れるようにできているので、ホルモン様合成化学物質を取り込みやすいからだ。こうして人体は、この偽のホルモンを本当のメッセージと勘違いし、それをホルモン・レセプターにくっつけてしまう。つまり細胞は、合成化学物質の作用を特に異常とは認識しないのだ。
・
水道の水質検査でアトラジンとダクタルが検出されれば、他にも殺虫剤が混入している可能性が高い。
・
除去フィルターは、ホルモン様合成化学物質の除去には役立たない。
・
瓶詰めの天然水の安全性を信用しないこと。特にプラスチック・ボトルの場合は要注意だ。
・
米国での主なダイオキシン暴露源は、肉とチーズ。したがって(バター、チーズ、羊肉、牛肉などに含まれる)動物性脂肪を控えていれば、ホルモン作用撹乱物質への暴露を大いに減らすことができる。
・
食品を温めたり、電子レンジにかけたりする場合には、ガラスか陶器の器を使用する。ある種のプラスチックからは、ホルモン作用撹乱物質が染み出すことが分かっている。
・
こまめに手を洗うこと。合成化学物質の大半は気化して、机、家具、衣服などに付着している。つまり手を触れれば、すぐに暴露してしまう。
・ 殺虫剤が安全などと、決して思わぬこと。
・
殺虫剤を室内や庭に散布している家庭では、子供や犬に高い率で癌が発生している。
・
大半の殺虫剤が活性物質と不活性物質との混合物であり、ノニルフェノールやビスフェノールーAなどの不活性化合物が内分泌系撹乱物質であることは是非とも覚えておくこと。
・
ゴルフ場は、殺虫剤に暴露する危険性の非常に高い場所である。
・
1987年のモントリオール条約を受けて、米国をはじめとする国々は、包括的な国際条約を施行し、PCB、DDT、リンダンといった残留性の高い生物活性化合物の使用とその環境への散布を中止した。
・
現行のシステムによると、有害であることがはっきりと立証されるまでは、問題の化学物質は無罪とみなされるという問題がある。
・
最近の研究によると、ホルモン作用の撹乱には、プラスチックの含有物質であるフタレートや、プラスチック、洗剤などに含まれるアルキルフェノール・ポリエトキシレートといった広範に使用されている合成化学物質が関与していることが分かっている。
・
オレンジの場合、殺虫剤を散布する目的の六割から八割までが、表皮に傷や汚れをつけないようにするためだ。農作物の品質向上に殺虫剤散布が不可欠というわけではないのである。
・
汚染地域に住むカモメは巣を置き去りにするという報告がある。また、殺虫剤を投与された親ネズミから生まれた雄は成長すると、正常な親から生まれたオスよりもはるかに縄張意識が強く、気性も荒くなるという報告もある。
・
米国で大学進学を希望する高校生の学習能力適正テストの成績が、1963年をピークに急激に下降しはじめ、ほぼ20年もの間下降の一途をたどっている。
・
汚染物質によってラットは、否定的な出来事に対して過剰反応を示した。
・
某化学産業の見積りによれば、塩素系合成化学物質とそれを含む生産物とで、世界のGNPの45%を賄っているという。
『遺伝子汚染』 ジョン・フェイガン 自然法則フォーラム監訳 (1997)
マハリシ経営大学教授で、生態系の保護の観点から遺伝子操作の実用化を今後50年間凍結する事を提唱。
・ 遺伝子工学の危険性:
1.人の健康を損なう
2. 地球の生態系に対する脅威となる
3. 社会を破滅させる可能性がある
・生殖細胞の遺伝子操作が、生態の胚細胞(生殖細胞)の遺伝子を組み換え、組み換えられた遺伝子はその後の全ての世代に引き継がれる。その遺伝子操作に欠陥や副作用がある場合、そうした欠陥や副作用がその種の遺伝子供給源に入り、永遠に伝わり、新しい遺伝性疾患を発生させる。遺伝子操作を加えられた生物は、他の生物との予想外の相互作用をする事によって、予測もしなかったような大規模な影響を生態系に及ぼす怖れがある。これが遺伝子汚染。いったん遺伝子供給源に入った遺伝子欠陥は修正する事が出来ない。制御する事も出来ない。だから、化学物質や核の汚染よりもずっと有害で、ずっと大規模で、はるかに長期にわたって被害を及ぼす。
・
遺伝子治療は、病気の原因や誘因となる欠陥遺伝子を修正してしまおうというもの。生殖細胞遺伝子治療では生殖に関する細胞を修正するが、体細胞の遺伝子治療では、肝臓、脳、筋肉、皮膚など生殖細胞以外の細胞を修正する。だから、生殖細胞の遺伝子を操作するとそれ(ミスも含む)は後の世代全てに伝わるのに対して、体細胞の遺伝子操作ではその修正は一代限りで、伝わる事
はない。
・
現在、ほとんどの体細胞遺伝子治療の試験はエクス ビボ方式(@患者の体から細胞を取り出し、A
欠損している酵素や蛋白質を作る正確な遺伝子をその細胞に入れ、Bその細胞を患者の体に戻す。戻された細胞は、それまで欠けていた酵素や蛋白質を患者の体内で作る。)
・
エクス ビボ方式を使えるのは、たくさんの一遺伝子性疾患のなかのほんの一握り。ほとんどの体細胞遺伝子治療を用いる場合は、新しい正確な遺伝子を体内の特定の組織の特定の細胞に送り込む事が必要になる。体の細胞全部或はかなりの割合に新しい遺伝子材料を送り込む事が必要になるかもしれない。その新しい遺伝情報は、ねらった特定の細胞以外に取り込まれてはいけない。
目的の蛋白質や酵素を細胞のなかで合成できるよう機能を保った形で細胞に取り込まれなくてはならない。さらにその細胞が目的の蛋白質を適切な時期に適切な量だけ合成できるよう、その遺伝子の発現が正しくコントロールされなくてはならない。
・ ある種の遺伝子(原がん遺伝子とがん抑制遺伝子)に突然変異が起きると、正常な細胞が癌細胞に変わる。たった一つの癌細胞が腫瘍を作りうるから、体細胞の遺伝子治療でわずか一個の細胞の遺伝子が発ガン性のあるものに変わっただけで、がんになるおそれがある。たった一回の体細胞遺伝子治療操作で何十億もの細胞の遺伝子が組み変わり、その細胞の一つ一つが癌細胞に変わる
突然変異を起こす可能性を持っている。
・
ほとんどの体細胞の遺伝子治療は治療効果が数ヶ月しか続かないので、古くなった細胞が新陳代謝するにつれて遺伝子組み換えした細胞を繰り返し入れてやる必要がある。
・
政府、民間も体細胞の遺伝子治療に巨額の投資をしてきたが、体細胞の遺伝子治療には遺伝子を特定の部分へ送り込む事などの技術的な問題があり、袋小路の状態にある。これに比べると、生殖細胞遺伝子治療の開発は技術的に楽なので、投資回収するために彼らは危険な生殖細胞遺伝子治療に目標を変えてくる怖れあり。さらに、もっと大きな市場である人間の機能向上を目的とす
る遺伝子強化の市場、容姿改善の市場に進出してくる可能性大。
・ 生殖細胞の遺伝子操作の四つの危険性
1. 有害な突然変異―遺伝子操作の過程で生じる単純ミスが、遺伝情報を壊したり害する
2.
遺伝子の改変によって、個人の健康に予期しない影響が出る
3.
改変された遺伝子と他の遺伝子がヒトの遺伝子供給源の中で予期しない相互作用を起こし、遺伝子汚染を引き起こす
4. ヒトの自然な進化の過程に干渉してしまう
・
遺伝子工学の応用は、薬やホルモン、ワクチン、補助食品などの製造や、遺伝子欠陥を高感度で診断するテストの開発などに使われている。
・
遺伝子診断が治療よりも開発が進んでいるため、まだ適切な治療法が見つかっていない病気を診断できるテストが数多く存在。さらにこの診断法から得た情報が保険会社や経営者などに乱用される怖れがある。数年のうちに数百種類におよぶ遺伝病のテストと、がんや心臓病や精神分裂病など他の数百種類の病気のかかりやすさに影響を与える遺伝子のテストが利用できるようになる。こうした一連のテストを使えば、保険金を受け取る事になりそうな人や重い病気にかかるであろう人をあらかじめ除外できるから、保険会社や経営者にとってはおおいに利用価値がある。
・
栄養補助食品として市販されているトリプトファンをバクテリアで作っている製薬会社は幾つかある。昭和電工は遺伝子操作によってトリプトファンの製造率をあまりにも高めたため、微生物中のトリプトファン濃度が非常に高くなっていた。その結果トリプトファンとその前駆物質が化学反応を起こし、予想外の毒性物質ができた。これにより37人が死亡、1500人が部分的な麻痺に陥り、5000人以上が一時的な機能障害を起こした。昭和電工は1000億円以上の賠償金を支払った。
・
米国では二種類の遺伝子組み換えトマトが、大規模に栽培されている。最近、環境保護庁(EPA)と食品医薬局(FDA)が一種類の遺伝子組み換えカボチャの商業化を認可。
・ 大手農薬メーカー(モンサント、デュポン、カルジーン、アメリカン・サイアナミド、ローヌ・プーラン)は自社の除草剤に耐性のある遺伝子組み替え作物を開発し、除草剤の使用料を三倍に増やそうとしている。
・
除草剤に耐性のある遺伝子は、他花受粉を通して野生の近縁種に入り込む。季節が何回か繰り返すうちに、除草剤に耐性のある雑草が登場する。すると又それに対する遺伝子操作と除草剤の量が増える仕組み。
・
今までに開発された遺伝子組み換え作物の47%が、除草剤に耐性のある遺伝子を含んでいる。
・
クレブシエラ・プランチコラは、普通の土壌の中で生きている微生物で、この遺伝子を組み換えて農業と林業の廃棄物(トウモロコシの茎と木材のチップ)を処理して、燃料用エタノールを作る働きを持たせた。当初の計画では、これを使ってゴミとして出たバイオマスをエタノールに変え、その過程で出た残滓を堆肥のように自分の畑に戻す事が出来る事になっていた。ところが、この残滓は土壌にとって有害なものだった。この遺伝子組み換え微生物が前から土壌にいた微生物よりもはるかに丈夫で、肥沃な土壌を作るのに欠かせない他の微生物の働きを大幅に低下させてしまった。例えばクレブシエラ菌は、土壌から窒素やその他の栄養物を取る働きをしている菌根を形成する真菌をどんどん減らしてしまう。
・ FDAとUSDA(米国農務省)は、アップジョン社に対して、遺伝子操作によりあるウイルスへの抵抗性を持たせたカボチャの販売を認可した。遺伝子組み換えでウイルス抵抗性を持たせる方法は、ある特定のウイルスへの一時的な対策として役立つかもしれない。ウイルスやその病原体は短期間に変化し、数年でこの方法も役に立たなくなる。
・
遺伝子組み換え農作物が自然に放たれると野生の個体群の生物多様性を減らしてしまう。従来の植物品種改良業者が利用する遺伝子資源(原種、野生種)が減少してしまい、そうなれば将来、農作物の品種の開発は、ますます遺伝子工学への依存度を高めることになる。
・ ウイルスへの抵抗性を与えられた遺伝子組み換え植物(カボチャ等)は、他のウイルスに感染した場合、遺伝子に何かが起きて、新しい変種のウイルスを出現させることがある。
・
遺伝子組み換え微生物を使って乳量を増やすためのウシ成長ホルモン(BGH)の量産をモンサント、エリ・リリー、アップジョン、アメリカン・サイアナミドが始めた。BGHは乳量を15%も増やすものの、乳腺炎、嚢胞性卵巣、妊娠率の低下、その他の生殖障害をはじめとする有害な副作用が多く現れた。
・
遺伝子組み換えで耐ウイルス、耐除草剤等を解決しようとする限り、バイオ関連会社は絶えず新しい遺伝子組み換え変種を開発し、病原体が自然に持つ適応能力に追い付いていかなければならない。旧製品が必ず使えなくなり、新製品の市場が常に確保されている。
・
フェイガン博士は、1948年に生まれ、コーネル大学で博士号を取得した分子生物学者で、現在はアイオワ州フェアフィールドにあるマハリシ経営大学の分子生物学教授を努めている。
・
博士は、テロリストによる遺伝子組み換え技術を利用した強力な生物兵器の開発を危惧している。
・
現在のところ、遺伝子を正確な場所に入れる事が出来ない。入れたいと思う遺伝子がDNAのどの位置に入るかは、全く偶然まかせ。
・
日本の厚生省は安全性を強調し、その危険性は問題ないと述べている。しかも、安全性を確認したものに表示を義務づけることはないとしており、学校給食にも遺伝子組み換え食品の導入が始まろうとしている。
・
自然法則フォーラムは1996年10月、遺伝子組み換え食物の日本輸入問題を契機に結成された市民団体。教育、健康、科学技術、産業、環境など各領域における、自然法則に調和した人々のライフスタイルを提唱。人類のホリスティックな文明の進歩に寄与する事を目的としている。世界的ネットワークを活用して、現在は遺伝子工学の応用によって生じる健康や生態系に及ぼす危険性に関して予防策を呼び掛けており、提言、情報の提供、講演会などを行っている。中央区銀座8−9−13銀座オリエントビル3F 03−3572−0255
『ガイアの復讐』 ジェームズ・ラブロック 竹村健一訳 中央公論新社 (2006)
1919年英国生まれ。生物物理学博士、医学博士。英国国立医学研究所、米国ハーバード大学医学部、英国オックスフォード大学
医学部などで研究員および教授を歴任。57年、電子捕獲検出器の開発に成功。この装置によって、フロンやその他地球環境に影
響を及ぼす微量成分に関する分析が急速に発展。
60年、NASAの火星生物探査計画に招聘され、その過程で地球大気の特殊性を認識し、「生物圏が地球気候と大気組成を、生物
が生きていくうえで最適な状態に調整・維持している」という「ガイア仮説」を提唱する。
現在地球は後戻りができない危機的状況を迎えている。すでに地球は自己調節できないほどに人為的温暖化が進んでしまったと著者
はいう。二酸化炭素排出削減策を即実施する必要があり、そのための有効策は原子力だと主張する。この点については納得いかない
ところがある。
著者にしてみれば、人間は二の次で、地球自身にとってなにがベストなのかを考えている。放射能によるガンの恐怖が地球をダメに
しているというが、原子力がそれほど安全なのか疑問。ただし、常識と思われていること、科学的に正しいと言われていることをき
ちんと自分なりに検証する必要はある。考えさせられる書物であることは確か。
・ ガイア理論:地球観のひとつで、地球を自己調節するシステムと考える。生命体全体、地球表面の岩石、海洋、大気が緊密に
結びつき、進化するシステムを構成している。ガイア理論では、このシステムの目標は、常にその時点における生命にとって可能
な限りふさわしい状況を作り出すことだと考えている。
・ 海洋の表面温度が約12度以上になると生命なき砂漠のような状態になる。こういった事態が起こると、海面近くに安定した温
かい水の層が形成されるが、これはもっと冷たくて養分の豊富な下層の水とは混じらない。
この純粋に物理的な海水の性質により、温かい層に棲む生命体には養分がいかなくなり、やがて太陽に照らされた上層の海水には生命体が存在しなくなる。
これも、ガイアが地球を冷たく保とうとしているように思われる理由のひとつだ。
・ 私はガイアに「生きている地球」というメタファーを使い続けている。しかし地球が意識を持って生きている、あるいは動物
やバクテリアのように生きているという意味で私がこの言葉を使っているとは思わないでほしい。
メタファーが重要なのは、地球温暖化をめぐって人間が現在立たされている苦境を処理し、理解し、改善にまでもっていくためには、
地球の真の性質を知り、地球が危うげな「宇宙船地球号」のような機会仕掛けでなく、太陽系で最大の生物と想像する必要があるからだ。
そのように心と頭を切り替えなければ、生きている惑星の上で自分達が暮らしているのだと本能的に悟ることはできないだろう。
・ なぜ我々は排尿するのだろう。偉大なる地球システム、ガイアの進化の過程で、動物達が窒素を気体窒素でなく尿素もしくは尿酸
の形で排出するように進化したとは考えられないだろうか。動物にとって尿素の排出は、エネルギーと水の著しい浪費を意味する。
それが利他的な理由のためでないなら、なぜ自分たちに不利な進化をとげたのだろう。尿素はわれわれが食べる肉、魚、チーズ、豆を
代謝したあとの排泄物である。これらの食品はすべて生物に欠かせないタンパク質を豊富に含んでいる。尿素はアンモニアと二酸化炭
素の化合物である。
人間や他の哺乳類は、なぜ窒素をこの形で排出するように進化したのだろう。なぜ尿素を二酸化炭素と水と窒素ガスに分解しないのだ
ろう。窒素を呼吸で排出する方がずっと簡単だし、尿素を排出するのに必要な水分を節約することにもなる。尿素を酸化すればわずか
ながら水分を得ることもできるし、さらにエネルギーも取り出せることになる。
100gの尿素は代謝的には90キロカロリーに相当する。しかしそれを消費する代わりに排尿するとしたら、希釈して非毒性にしなければ
ならないため、100gの尿素を排出するのに4リットル以上の水が必要になる。通常、われわれは毎日約1.5リットルの水とともに40gの
尿素を排出している。
つまり、われわれは尿素なる廃棄物を排泄するために貴重な水分とエネルギーを失っているのだが、もし、人間や他の動物が排尿せず、
代わりに窒素を呼吸で吐き出したら、植物は減少し、結果的には飢餓を招くことになるだろう。どうしてわれわれはこれほど利他的に
進化し、賢明に自己の利益をはかれるようになったのだろうか。
おそらくはガイアの働きに組み込まれた知恵がそうさせているのであり、ガイアは利己的な遺伝子をそのように読み取っているのだろう。
・ 酸素濃度が21%を超えると、火事になる危険性が高まる。酸素濃度25%で火花から引火する可能性は約10倍に増加する。アンドリュ
ー・ワトソンとティム・レントンは酸素濃度を調節できる模型を製作し、枯れた植物に火がつく危険性が酸素調節のメカニズムと密接に
関係していることに気づいた。
酸素濃度が13%以下では火災は起こらないが、25%以上になると非常に激しい火災が起こるため、森林が成熟するのは不可能に思われる。
地球は生物にとって快適なレベルに調節されている。これもガイア理論の重要な根拠だ。
・ 私は、地球は化学的に不安定な大気をどうして動的安定状態に保つことができているのか、そしていつも明らかに生息に適した状態
にあるのはなぜなのかと考えた。生命が継続していくためにはそれなりに快適な気候が必要なのに、太陽の光度は地球が形作られて以来
37%も増加しているのだ。
私はこれらの考えを総合して、生命体が気候と大気中の化学組成を自分達の利益になるように調節しているという仮説を導き出した。
そして1969年に小説家ウィリアム・ゴールディングがそれにガイアと名づけてくれた。数年後、私は著名なアメリカの生物学者リン・
マルグリスと共同研究を開始し、最初の共同論文の冒頭でガイア仮説についてこう述べた。
生物圏は適応制御システムとして作動しており、それによって地球のホメオスタシス(恒常性)が維持される、と。1960年代に仮説を発表
した当初から、地球が気候や化学物質を自己調節しているという考えは、地球科学者にも生命科学者にも不評だった。
しかし、その後少なくともヨーロッパではガイアに対する理解が進み、2001年のアムステルダム会議(この会議で気候変動に関係する四
つの主要な組織が立ち上げられた)において、千人以上の代表者が調印した宣言には次のような一節があった。「地球システムは物理、
化学、生物、人間という構成要素から成る単独の自己調節システムとして機能している」。
こういった言葉は、それまで揺るぎなかった既存の知識に突然の転換期が訪れたしるしだった。従来の生物学者たちの考えでは、生命体
は環境に適応するものであって環境を変えるものではなかったし、地球科学者たちの考えでは、大気、地殻、海洋の進化は地質学的な力
だけで説明できるものだったからだ。
・ 大勢を占める生物がもっとも繁栄するのは温度が25度から35度の間だが、これは調節のうちの生理的な部分に過ぎない。生命は地球
の物質部分の物理的特性からも影響を受ける。生命体は約40度までの暖かさなら繁栄するが、自然界では気温が20度を大きく上回ると、
生命維持に欠かせない水を手に入れるのが難しくなる。
冬季に雨が降り、気温が10度を下回ると、雨水はかなりの期間あちこちにとどまるし、土も湿ったままで個体数の増加に適する。しかし
夏が来て平均気温が20度近くになると、雨は新しく降ってもすぐに蒸発し、地表は乾いたままになる。雨が繰り返し頻繁に降らなければ
、土は湿気を失う。
気温が25度を上回る場所では蒸発があまりにも速いため、雨が続かなければ土は乾き、土地は砂漠化する。生命体は暖かいのを好むよ
うだが、水の特性によって個体数の増加は制限される。
・ ロシアの地球物理学者M・I・ブディコが初めて提唱した氷のアルベド(物体もしくは表面の反射率)のフィードバック。雪に覆われ
た地面はそこに降り注いだ太陽光をほとんどすべて宇宙に反射するため、寒冷なままになる。しかしひとたび雪が縁部で溶け始め、黒い
地面が現れると、太陽光を吸収するため暖かくなる。
その暖かさがさらに雪を溶かし、正のフィードバックで雪解けは加速し、やがてはすべての雪が消える。極の浮氷はちょうど今急速に
溶けつつあり、ブディコのいう効果がまさにすすんでいるところだ。
・ 海洋が温まると、養分の乏しい水に覆われる地域が増え、海洋は藻類にとってあまり住み心地のよくない場所になる。そのため二酸
化炭素の吸収率が減少し、太陽光を反射する白色の層雲が海上に発生することも少なくなる。
・ 陸地では気温の上昇によって熱帯雨林の安定性が損なわれ、その面積が減少する。森林の失われた土地は冷却メカニズムを欠くため、
より暑くなり、その結果、雪と同じように森も消えてなくなる。
・ リチャード・ベッツは1999年に「ネイチャー」誌に発表した論文で、初めてシベリアとカナダの黒っぽい寒帯林が熱を吸収すること
に着目した。地球温暖化が進むと、寒帯林はその範囲を拡大し、ますます多くの熱を吸収する。
・ 森林と藻類の生態系が死ぬと、それが分解する際、二酸化炭素とメタンが空気中に放出される。温暖化が進む世界では、これも正
のフィードバックとして働く。
・ メタンは、氷の結晶内の分子サイズのかご構造の中に取り込まれ大量に沈積している。これをクラスレートと呼ぶ。これは低温下、
あるいは高圧下でのみ安定である。地球が温暖化すると、こういったクラスレートが融け、二酸化炭素の24倍の温室効果を持つメタンガ
スが大量に流出される危険が高まる。
・ 今、われわれはガイアにとっての危険地点に近いところまで来ている。太陽はあまりに熱くなりすぎて快適とはいえないが、大体に
おいてシステムが何とか働き、二酸化炭素を充分に吸収し、太陽光を反射する白い氷と雲を作り出して地球を涼しく保ち、地球の適所占
有率を最大にしている。
しかしそのために、北緯45度より北と南緯45度より南の地域は犠牲にならざるをえない。こういった極地は地球の表面積の30%も占有し
ておらず、その地表の白い色が太陽光を反射し、地球を冷やすのを大いに助ける。
・ 太陽の暖かさが生命にとって理想的だったのは地球の歴史のほんの短い期間だけで、それも20億年ほど前のことである。それ以前は
寒すぎて快適とはいえず、それ以後は次第に暑さが増してきている。長期的な尺度で見ると、現在の人為的な地球温暖化との戦いよりも
、太陽がどんどん熱くなっていることのほうが、生命にとってはずっと大きな問題である。
今のところ地球の正常な状態は氷河時代なのだ。地質学者が更新世と呼ぶ最近の一連の氷河期は、地球のシステムが現在の生物の必要を
満たすために行っている最期の必死の努力だと私は思う。
・ 産業文明は温室効果ガスだけでなく莫大な量のエアロゾル粒子を大気中に放出するが、この浮遊する小さな塵が入射する太陽光を
宇宙にはね返し、地球の冷却を引き起こす。エアロゾルの靄は地球の広い地域に及び、地球温暖化を充分相殺するほどの太陽光を宇宙
にはね返している。
それだけで地球の温度は2度から3度下がる。しかし、エアロゾル粒子の滞空時間は非常に短く、数週間で着地する。ということは、経
済が大きく低迷したり、化石燃料の計画的削減や、賢明とは言いがたい硫黄の排出規制(ヨーロッパ人は今酸性雨を止めるための法律
を制定しようとしている)が実施されたりすれば、地球温暖化が一気に進むことになる。
・ 前回の氷期には二酸化炭素濃度は180ppmだが、氷河期終了後にこれが280ppmに、そして現在は人間による汚染の結果、380p
pmに上昇している。すでにわれわれは氷河時代と間氷期の間に起こったのと同じくらいの変化を、大気にもたらしているのだ。
・ われわれの要求を満たし、快適な気候と大気の組成を維持するガイアの力を妨げない唯一のエネルギー源は、原子力だと私は信じ
ている。主な理由は、原子核反応のエネルギーが化学反応の数百万倍だからだ。核融合炉の核廃棄物は、放射能を持たない無害の気体
ヘリウムである。高レベル核廃棄物の問題もない。
・ 過去の超大国の核実験により、世界中の大気の中に、チュルノブイリの惨事二回分がまる一年間毎週起こるのと同じくらいの放射
能が撒き散らされた。これらの実験やその放射性降下物によって人類がどのような害を被っていても、そのせいで寿命の漸進的増加
が妨げられているという確たる証拠も理論的根拠もない。
・ 天然ガスの燃焼は石炭や石油に比べて、二酸化炭素の排出量が半分だ。しかし、天然ガス(主成分はメタン)の一部は燃焼する前に
空気中に漏れる。その総量は使用されたガスの2〜4%にあたる。メタン漏出の問題点は、この物質が二酸化炭素に比べて24倍以上高い
温室効果をもつガスだという点にある。
幸いメタンは空気中の滞留時間が比較的短く、年間でその約8%が自然に酸化する。12年で、漏出したメタンのうち37%を残して酸化し
、二酸化炭素と水蒸気になる。二酸化炭素は空気中にもっとも長く留まり、50年から100年という滞留時間で複雑な過程を経て除去される。
メタンにはまだ心配の種がある。もし毎年使われる天然ガスの2%が燃焼前に漏出するなら、それが20年以上続けば、天然ガスの代わ
りに石炭を燃やすのと同じ温暖化を引き起こすことになる。もし漏出が4%なら、それによって引き起こされる温室効果は石炭を燃や
す3倍以上に値する。
・ 燃料電池の原料となる水素の扱いは他の気体燃料(メタンやプロパン)よりずっと難しい。今のところ、頑丈な金属や炭素繊維のコ
ンテナに入れて非常な高圧をかけておかないと保存できない。水素には鋼鉄をもろくする性質があり、分子の大きさが小さいために小
さな穴から簡単に漏出する。
水素に空気が混じったものは火がつくと爆発する。また、水素の炎は目に見えないので、わずかな漏出でついた火が、気づかないうちに
配管やバルブの危険な過熱を引き起こす可能性がある。
・ 二酸化炭素はかつてないほど増大しているのに、人々にはその危険が全然見えていないようだ。排出された二酸化炭素はで、毎年
高さ1600m、外周19.2kmの山ができる。
『バイテク・センチュリー』 ジェレミー・リフキン 鈴木主税訳 集英社 (1999)(6.27.99)
世界的ベストセラー『エントロピーの法則』で知られるアメリカの文明批評家。『大失業の時代』『地球意識革命』など多数の著作があり、科学技術や経済、環境などのテーマを将来の動向を展望しながら鋭い視点で論じ、常に重大な問題を提起している。ペンシルヴェニア大学ウォートン・スクールで経済学の学位を、タフツ大学フレッチャー・スクールで国際関係の学位を取得。現在、ワシントンDCにあるエコノミック・トレンド基金の会長。
現在の遺伝子技術が想像以上の進歩を遂げており、我々が真の問題に気づく前に企業が暴走してしまう危険性を訴えており、非常に将来が不安になった。
・ トランスジェニック(遺伝子導入)生物
・ キメラ(二対以上の親による二つ以上の胚またはその一部からできた個体で、異なった遺伝子型が体の各部に混在する)
・ クローン(1個の細胞または生物から無性生殖的に増殖した生物の一群)
・
伝統的な生物の品種改良と遺伝子操作の違いを理解する必要がある。動物の雑種は(例えばラバ)はたいてい不妊だし、植物の雑種はきちんと繁殖しない。生物体や種のレベルで仕事をする時には、どの程度の操作が許されるかという限界が内部に組み込まれている。遺伝子操作は種の制約を完全に無視している。
・
1986年に、研究者たちは蛍の光を放つ物質を作る遺伝子を取りだし、それをタバコの木の遺伝子暗合に組み込んだ。そのタバコの葉は光を放つようになった。
・
1980年代に、コバルトや鉄、ニッケル、マンガンなどの金属を食べる微生物を使った試験がなされていた。あるバクテリアは鉱石中の塩分を食べ尽くし、後にはほとんど純粋な銅が残った。含有量の低い鉱石は従来の採鉱技術では抽出が難しいのだが、微生物を使えばもっと経済的に抽出及び処理ができるようになるだろう。鉱山爆発の主因をなくすよう、鉱山のメタンガスを食べる微生物の設計も進行中。
・
21世紀半ばには、砂糖や穀類から得られるエタノールでアメリカの自動車燃料の25%がまかなえるのではないかと期待されている。最近では、余剰農作物や刈り取った芝草、自治体から出される固形廃棄物、製紙工場のヘドロなどを食べて、それをエタノールに変える大腸菌株が開発されている。
・
1993年に、ワシントンのカーネギー研究所の植物学部長クリス・サマヴィルは、マスタードの苗にプラスチックを作る遺伝子を挿入した。その遺伝子によって、マスタードの苗はプラスチック工場に変わった。モンサント社は2003年までにプラスチックを作る植物を市場に出したいと思っている。
・
アメリカ陸軍は円形の網を張るクモが絹糸を作るのに使う遺伝子と類似の遺伝子をバクテリアにくみこんだ。そのクモの絹糸は現存することが知られている中で最も強い。研究者たちは絹遺伝子を作るバクテリアを産業現場の大桶の中で育てて絹を収穫し、航空機の部品や防弾チョッキを作るのに使いたいと考えている。
・
インスティテュート・フォー・ゲノミック・リサーチというバイオテクノロジー会社は、大量の放射性物質を吸収できる微生物の遺伝子の配列を決定するの成功した。「ウランを貪り食う経路」をコードしている遺伝子を使って、放射性廃棄物処理場を生物的に浄化する新しい方法を考えている。
・
窒素を空気中から直接摂取する新しい農作物を作り、高価な石油化学系肥料に頼らなくてもいいようにする研究がすすめられている。また、ある種から望ましい遺伝的特性を別の種に移し、植物の栄養価を高めて収穫量をふやし、性能を高める実験が現在進められている。
・
除草剤への耐性を与え、ウイルスや害虫を撃退するのに役立ち、塩分の強い土壌や乾燥地に対する適応能力を高めるなどの特性を持つ遺伝子で実験を進めている。
・
商業的に栽培された遺伝子組換え食用作物が初めて植えられたのは1996年のこと。アラバマ州では綿花の四分の三以上が昆虫を殺すよう遺伝子操作された。1997年にはアメリカ全体で、800万エーカー余りの畑に遺伝子組換え大豆が蒔かれ、350万エーカー余りの畑に遺伝子組換えコーンが蒔かれた。これから5年以内に農地の大半が遺伝子組換え作物に転換されると予想。
・
1996年には遺伝子を組み込まれた最初の昆虫、捕食性のダニがフロリダ州で放たれた。フロリダ大学の研究者たちの狙いは、イチゴなどの作物を傷つける他のダニを、それに食べさせることである。
・
カリフォルニア大学は、リヴァーサイド市でワタキバガの幼虫に致死遺伝子を組み込んでいる。この毛虫は毎年全米の綿花畑に数百万ドルの損害を与えている。致死遺伝子は幼虫の体内で活性化し、若い毛虫を殺して、それが綿花を傷つけたり、交配して繁殖しないようにするのだ。
・
バニラは生産するのに手間がかかりコストが高い。そこで研究者たちは商業用の大量のバニラを実験室の大桶で作れる―バニラ風味を作る代謝経路をコードする遺伝子を分離し、バクテリア槽の中で増やす―ようになり、その結果、バニラの種子も植物もいらなければ、土壌や耕作も収穫も、そして農民も不要になった。オレンジジュースも同様の運命。
・
アメリカ農務省は、ほぐれたワタの繊維細胞を「だまして」、栄養素の入った桶に浸して増殖させた。すると、ワタは無菌状態で育ち、微生物に汚染されないので、研究者たちはそれを無菌ガーゼに使うことができるだろうと言っている。
・
生物学者の故マーチン・H・ロゴフとスティーブン・L・ローリンスは、ともにかつてアメリカ農務省の研究監督官だったが、農地と工場の両方を使う混合型の農業を構想していた。畑には多年生のバイオマス(燃料に転化できる)作物だけを植える。作物を収穫したら酵素を使って砂糖溶液に転換する。その後、溶液をパイプで都会の工場に送り、組織培養でどろどろしたパルプ状の素材を大量に作る際の栄養源として使う。次に、その素材を溶かしてさまざまな形と質感に加工し、「畑で栽培された」作物を連想させる伝統的な形を真似る。
・
高い食料生産能力をもつように遺伝子操作された「スーパー・アニマル」を開発している。また、遺伝子を導入された新しい動物を作り、薬剤や薬品を作る「化学工場」として、また人間の臓器移植の臓器「提供源」として役立たせようとしている。
・
オーストラリアのアデレード大学は遺伝子操作によって新種の豚を開発したが、それは普通の豚よりも30%効率的に生育し、七週間早く市場に出された。
・
オーストラリア連邦科学・産業機構は、遺伝子操作によって普通よりも30%速く成長する羊を作り、今は羊毛がもっと早く伸びる遺伝子を羊に組み込んでいるところである。
・
ウィスコンシン大学では抱卵癖のあるメスの七面鳥の遺伝子を変更して生産生を高めた。抱卵する雌が産む卵の数は抱卵しないメスより四分の一か三分の一少ない。抱卵癖のあるメスは平均的な群のほぼ20%にのぼるため、研究者たちは抱卵本能を奪いたいと思った。プロラクチン・ホルモンを作る遺伝子をブロックすることでメスの自然な抱卵本能を制限することができた。遺伝子操作された新種のメスはもはや母性本能を示さなくなっている。しかし生む卵の数は増えている。
・
コロラド州ボールダーでは、ソマトゲン社がヒトのヘモグロビンを作る豚を遺伝子導入によって作った。遺伝子動物による薬品生産は従来の半分以下のコストですむ。
・
農業関連産業、製薬会社、化学会社などは特注型のクローン動物を大量生産して、それらを化学工場として使い、さまざまな薬剤や薬品を分泌させようと計画している。食肉産業もクローニングに関心を持っている。赤身と脂身の割合をはじめ、さまざまな特徴について厳格な規格通りの動物を生産できるなら、過去にはそれができなかった産業でも厳密な品質管理ができるようになる。
・
クローン動物の使い道としては、さらにヒトの臓器移植に使う臓器の採取がある。動物の正確なレプリカを大量生産できることで、バイオ産業における品質管理が確実になるだろう。ネクストランやアレクシオンなどのバイオテクノロジー会社は、動物の胚の生殖細胞系列にヒトの遺伝子を注入し、臓器をヒトゲノムになるべく適合させて、拒否反応が起こりにくくなるようにしている。遺伝子を組み込まれた豚の肝臓の商業的価値は一個1万8000ドルになるという。
・
ジョンズ・ホプキンズ大学は、既にカレイなどの「不凍」遺伝子をバスやマスの遺伝暗号に組み込むのに成功しており、魚が寒冷な海水でも生存できるようになって、北方性気候の土地に住む漁師に新しい商機を広げるとみられる。また、哺乳動物の成長ホルモン遺伝子を魚の受精卵に注入し、成長が速くて重量のある魚を作っている。
・
他の研究者は実験的に不妊のサケを作っている。そうすれば、サケは産卵という自殺的な衝動を持たなくなり、公海にとどまって重量のある身を提供できる。(生まれた場所へと川を遡る長い旅の間、サケはえさを食べないので体重が激減する)
・
アムゲン社で作っているエイスロポイエチンは、毎年20万人の腎臓透析に使われている。遺伝子操作による製品は赤血球の成長を促し、危険な輸血をしないですむようになる。
・
人間にとって致死的な病気を持つ昆虫の遺伝的特性を変える新しい方法と取り組み、それらを感染源として無害な昆虫に変えようとしている。
・
米国立アレルギー・感染症研究所は蚊を遺伝子操作して唾液腺に変更を加え、蚊が刺しても犠牲者にマラリアの病原体を注入できないようにした。
・
マウスの筋肉細胞の成長を調節する遺伝子の分離に成功。この遺伝子が筋肉の成長を調節する蛋白のミオスタチンを作ることを発見。調節遺伝子を取り除いたところ、マウスの筋肉はぐんぐん成長した。この研究が将来筋ジストロフィーのような筋肉に関連した病気や、エイズやガンのような筋肉がやせ衰えていく病気の新しい治療薬につながる可能性がある。
・
1997年5月に日本人の研究チームはヒトの染色体全部をマウスの遺伝子暗号に移植することに成功したと報告。この分野の研究者のほとんどが到底不可能と思われていた偉業。横浜にあるキリンビール技術研究所富塚一麿が率いる日本チームは、染色体を持っているヒトの皮膚細胞をマウスの胚細胞と融合させた。マウスの胚細胞のいくつかは、抗体産生遺伝子を持つヒトの染色体14番と22番を取り入れた。研究者たちはこれらの胚細胞を取り出してメスのマウスに移植した。メスから生まれた子供はヒトの染色体をもっていて、外来蛋白が体内に侵入したときにヒトの構成要素からなる抗体を作り出した。日本でマウスに注入されたヒトの染色体は約1000の遺伝子を持っており、これまでに移植された量の50倍にのぼる。日本人のこの画期的な実験が意味するところは、いずれ遺伝子操作とクローン増殖法で動物が大量生産されるだろうし、ヒトの抗体など治療に役立つ製品を無限に作るのに使われる可能性があるということ。
・ 器官を作ることであり、ただ移植するだけではない。―コンピュータを使った設計と製造方法により、研究者は特定の組織やひいては器官の形を真似て、基盤となる入り組んだ苗床をプラスチックで作る。細胞がくっついて増殖するのを助ける化合物でその基盤を処理し、そこに細胞を植える。細胞が分裂を繰り返して増え、つながっていくにつれ、プラスチックは分解していく。最後には密着した組織だけが残る。その後、新しい恒久的な組織が患者に植えられるようになるだろう。
・
2020年には人体の部分の95%は実験室で育てられた臓器と取替え可能になるだろうといわれている。
・ 現在ある遺伝子スクリーニング・テスト(集団の中から健康上疑いがあり、精密検査を要する者ないし発病者を選び出す医学的なふるいわけ)には、乳癌、ハンチントン病、ダウン症候群、脆弱X症候群、嚢胞性繊維症、テイ・サックス病、ゴーシェ病、鎌状赤血球貧血などを調べるためのものがある。遺伝子スクリーニングの市場の将来性は、21世紀の最初の数年には数百億ドルになると推計。
・
1997年4月に、オハイオ州クリーヴランドのケース・ウェスタン・リザーヴ大学医学部の研究チームは、史上初めて人工のヒト染色体をつくったと発表。これは性細胞あるいは受胎直後の胚細胞の中で注文に合わせて遺伝的特性を設計することにつながる開発である。
・
彼らは生物から取ったDNAと実験室で「機会でつくった」人工DNAを混ぜ合わせた。人工DNAはヒト染色体の動原体と呼ばれる部分を真似てつくられた。この部分は染色体の複製を受け持つ主要構造である。ジョン・J・ハーリントン博士とハンチントン・F・ウィラードの率いる研究チームは、次に実験室のシャーレのなかで増殖している細胞にそのDNAをちゅうにゅうした。新しいDNAは「自カでつながりあって」染色体を形成した。人工染色体上の遺伝子は六ヶ月以上の間、親細胞が二四〇回分裂をくりかえしたあとまで娘細胞のなかで機能しつづけた。クリーヴランドを本拠地とするバイオテクノロジー会社アサシーズ社は、そのテクノロジーに特許を持っている。ウィラードが言うには、彼の会社はー年以内に前もってつくってある染色体の部分を単位ごとのモジュール方式でつくる計画であり、「おのおのの単位は異なる重要な遺伝子をもっているから、それを必要に応じて研究室の棚からおろして組み合わせ、人間の細胞に注入できる」ようにするだろう。
・
ヒトの人工染色体が、医学テクノロジーとしても商品としても、なぜそれほど潜在的な価値があるのかというと、まだ新しい遺伝子治療の分野で働く研究者にとって、それまで至難の業だった予測が立てやすくなるからである。いままでは、個々の遺伝子をウイルスに組み込んだ後、そのウィルスを運び屋として使い、その遺伝子を細胞の染色体に注入するという方法によらなければならなかった。この「ショットガン」方式の場合、どの染色体が追加分の遺伝子を受け取るのか、またそれが染色体に届いたとしてもどの部位に付着するのか、まったく予測できなかった。遺伝子を望ましい場所に正確に送り込む方法がないのだ。人工染色体を使う場合には、やりかたは遺伝子のカセットを身体に注入するのに近い。おのおのの遺伝仔はすでにみずからの染色体の上にきちんと収まっていて、現在の遺伝子治療法の行き当たりばったりといったところがなくなる。人工染色体は体細胞と生殖系列細胞の両方の遺伝子構造を変える可能性を無限に広げてくれるのだ。注文に応じて子供の遺伝子を変更することは、受胎前に性細胸でするにせよ、受胎後あるいは胚細胞でするにせよ、今後一〇年のうちに現実になりそうである。
・
妊娠から出生まで子供を完全に母親の子宮の外で育てることも十年足らずのうちにできるようになると考えるものもいる。1995年にランガーとヴァカンティは「サイエンティフィック・アメリカン」投稿し、胎児をヒトの子宮の外で生かすうえでおもな障害となるのは、彼らの肺が未熱なために空気を吸えないことだと言っている。そして液体で満たされた無菌の子宮をつくることを提案している。―赤ん坊は酸素と二酸化炭素が含まれているパーフルオロカーボンと呼ばれる液体を呼吸することになる…ポンプで絶えず液体を循環させれば、ガス交挨ができるだろう…この人工子宮には[また]液体から毒素を除去する濾過装置も備えるのだ。栄巻は現在と同じように静脈から輸液をを与えることにする。すべてを完備したシステムを子宮が提供すれば、子供は第二の「誕生」をとげるまで正常に発育し、成長できるだろう。
・
少なくともー人の研究者が言うには、21世紀初めのいつか、彼は人工子宮の中で頭のないヒトのクローンを育てられるようになり、クローニングのために細胞を提供した人物が生きている間、その人の人体部品のスペアとして使えるかもしれないそうだ。1997年10月、イギリスのパース大学の発生生物学の教授ジョナサン・スラックは、同僚とともにある遺伝子をカエルの胚に組み込んでオタマジャクシの頭と胴と尾の発育を抑えることができたと報告した。その実験の結果、頭のない生きたカエルが生まれた。スラックはヒトとカエルでは同じ遺伝子が同じように機能するので、ガラスの人工子宮で人体の部分を作ることも可能だという手応えを得たという。
・
地球の遺伝子の宝庫の所有権をめぐって、北のハイテク諸国と南の貧しい発展途上国の間で歴史的な規模の戦いが起こっている。国連食糧農業機関「FAO」の会議では、この10年というもの、もっぱら遺伝子資源の支配権をめぐる戦いが政治の議題となってきた。第三世界の指導者が論ずるには、多国籍企業と北半球の諸国はいわば生物的共有財産を占有しようとしているが、そのほとんどは生物的に豊かな南半球に見られるものではないかという。また、南半球の諸国は、遺伝子資源は、中東の石油と同じように自分たちの国家的な遺産の一部であり、それを使用するなら報酬を払うべきだと主張する。多国籍企業と北半球諸国は反論して、複雑な遺伝子スプライシング法を使って遺伝子を操作し、組換えをしてはじめて遺伝子は市場価値を増すのであるから、遺伝子が採取された国に対して報酬を払う義務は全くないという。
・
マダガスカルの熱帯雨林で発見されたバラ色のツルニチニチソウも、共有財産たる遺伝子の囲いこみで期待できる潜在的な利益を示すよい例である。数年前、研究者はこのめずらしいツルニチニチソウのなかに、ある種の癌の治療薬として利用できる特殊な遺伝的特性を発見した。その薬を発見した製薬会社イーライ・リリーは相当の利益―1993年だけで販売高1億6000万ドル―をあげたが、マタガスカルはその自然資源を奪われたことにたいする補償を、びたー文受け取っていない。
・
世界の各国政府は遺伝子保管施設をつくって、いずれ市場価値の出てきそうな遺伝的特性を持った稀少植物種を保存している。コロラド州フォート・コリンズの米国立種子貯蔵研究所には、世界中から集められた40万種以上の種子が保存されている。他の多くの国でも遺伝子銀行を増設して、稀少微生物の保管や動物の冷凍した胚の保存を始めている。
・
遺伝的共有財産の囲いこみと私有化が始まったのは1971年、インドの微生物学者アナンダ・チャクラバーティが当時GEの社員として、米特許商標局(PTO)にたいし、遺伝子操作で流出石油を食べるように設計した微生物について特許を申請したのが最初。1980年、五体四の僅差で、判事たちはチャクラバーティに有利な裁定を下し、遺伝子操作された最初の生命に特許を認めた。「意味のある相違は生物か非生物にあるのではなく人間による発明品かどうかなのだ」
・
この最高裁の決定によって、バイオエンジニアリング・テクノロジーはそれまでの学問的な装いを脱ぎ捨てて、市場へと勢いよく進出し、瀕死の工業テクノロジーにとってかわる、待ちに待たれたものとして迎えられた。
・ 1987年に米特許商標局(PTO)が下した決定は、商業目的で世界の遺伝子プールをひとからげに囲い込むことへの歯止めを外し、世界史における新経済時代が始まったことを知らせた。PTOは考え方を180度転換して以前の立場を覆し、動物を含めて遺伝子操作された多細胞の生物は、すべて特許を与えられる可能性があるという裁定を下した。この決定はヒト以外のすべての生きものに適用されるといい、ヒトを除外する理由は、憲法修正第十三条が人間を奴隷とすることを禁じているからだと説明した。その一方で、ヒトの遺伝子や細胞系、組織、臓器はいうまでもなく、遺伝子を変更されたヒトの胚や胎児は特許の対象となりうるとして、身体全体ではないにせよ、人間の個別の部分のすべてに特許が与えられる可能性を大きく開いた。
・
1988年、PTOは哺乳動物への最初の特許を認めた。これは遺伝子操作によって、癌に罹りやすいヒトの遺伝子を持つマウスである。デュポン社にライセンスされたこのマウスは、癌研究用の「研究モデル」として販売されている。それ以後、アメリカでは遺伝子操作された動物の幾つかに特許が与えられた。さらにブタ、ウシ、ヒツジなど200種近くの動物が遺伝子操作されて特許の承認を待っている。
・
エイズの研究に適した動物モデルを見つけ出そうとして、研究者はヒトのエイズ・ウィルスのゲノムを極微注射でマウスの胚に注入した。やがて生まれたマウスは、人免疫不全ウイルスを身体の全細胞に発現していた。科学者はヒトを冒すウイルスの遺伝命令を別の動物の遺伝暗号に移植することに初めて成功したのだ。それに劣らず重要なのは、次の世代の多くのマウスがHIVウイルスを持っていたことである。批判者は警告して、マウスが偶然にせよ実験室から開けた環境に逃げ出すという、めったにないが非常に現実的な危険を指摘した。そうなったら、マウスが野生のねずみと交配するかもしれないし、動物界にエイズの新しい恐ろしい貯蔵庫を作ることになりかねない。1990年2月のロバート・ギャロ博士の報告によると、マウスが保有していたエイズ・ウイルスは他のマウス・ウイルスと結合でき、その結果、毒性が強い新型のエイズ・ウイルスを生み出すという。これまでのものよりも急速に増殖し、新しい種類の細胞に感染する能力も含む新しい生物的特性を獲得していた。さらに、新型ウイルスは空気感染も含む新しい感染経路で広がる可能性があるという。
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初めてアメリカ政府の承認を受けて、遺事子操作された生物が自然環境に放出されたケースを考えてみよう。1980年代の初めに、カリフォルニア大学の研究者たちはシュードモナス・シリンジというバクテリアを遺伝子変更した。このバクテリアは世界中の温暖な地域でごくふつうに見られ、氷の結晶の核をなすという独特な特性をもっている。粗換えDNA技術を使って、カリフォルニア大学の研究者はこのバクテリアから氷をつくる遺伝命令を除去する方法を発見した。遺伝子操作されたこの新しい菌株アイス・マイナスと呼ばれている。研究者たちはこのアイス・マイナスが農業で長期にわたってもつ商業的な可能性に興奮した。霜害は、長きにわたってアメリカの農民の大きな悩みの種だった。その主犯となるのは、植物に付着して氷をつくりだすP・シリンジである。この研究に資金援助していたアメリカ企業は期待した。アイス・マイナスのP・シリンジの高濃度液を農作物に散布することで、自然に発生するP・シリンジは追いだされ、霜害が予防されるだろう、と。遺伝子操作されたこの生物を導入する恩恵はすばらしいと思われた。だが、長期的に考えて生態系の面で払うことになるコストを考えたとき、初めて問題が浮かび上がってくる。まず最初に、すぐれた環境科学者がよく問題にするのは、自然界に発生するP・シリンジは、いったいどのような役割をもっているのかということである。この生物を研究してきた科学者によると、この氷をつくる能力は世界的な降雨パターンをかたちづくるのに役立ち、地球上の気候条件を定める主な決定要因であるという。
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一番規制が不充分なのは、遺伝子変更された生物の野外試験の手続きの確立という点である。いわゆる「野外試験」なるものは、商業的に環境への大規模放出を始める前に、潜在的なりスクを判断することを目的として計画された。リスク評価の手段としては、野外試験は科学の大矢敗と考えなければならない。にもかかわらず、科学界や科学出版界、政府のほとんどすべての人間が無条件で野外試験というアイデアに賛同したし、世界の他の国々も追随して似たような野外試験の手続きを定めた。
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1997年に、研究者のアリソン・スノーとべドロ・モラン・バルマは、リスク評価の手段として野外試験をおこなうことにひそむ多くの本質的な欠点を指摘した。これは主要科学雑誌でこのテーマについて掲成されたごく少ない記事のーつとなった。ニ人の研究者が指摘するには、野外試験は一般による「花粉や種子、肥芽の逸出が起こらない」ようにおこなわれるものだという。彼らはさらに、花粉による「遺伝子の流出」を最小限にするために、早期に収穫する、花に袋をかぶせる、また遺伝子導入された花粉が試験地域から飛び出さないように境に並木を植える、などの事をするのが普通だという。申請者はさらに野外試験完了後には植物や種子をどう処理するつもりなのか、説明を求められる。第二に、野外試験場が余りにも小さい―100エーカー足らず―ため、また、概してテスト自体が生育シーズンにして一回か二回に限られるため、潜在的に望ましくない影響は観察されない。
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今後遺伝子変更された生物の大規模な商業的放出により恐ろしい環境破壊が起こるだろうが、責任の問題は未解決のまま。
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成長する世界除草剤市場でのシェアを高めるために、科学会社は自社製品の除草剤そのものに耐性のある遺伝子導入作物を作り出した。遺伝子操作で特定ブランドの除草剤に耐性を持った特許承認済みの種子を農家に売りつけることであり、狙いは会社の種子及び除草剤の両方のマーケット・シェアを伸ばすことなのだ。新しい除草耐性作物を植えた農地では、除草剤を噴霧してもその過程で作物をいためる恐れが格段に減っているからと、農家は今までよりも大量に除草剤を使用して雑草を取り除くことになるだろう。
・ ウイルス耐性遺伝子導入作物(ウィルスの外皮蛋白遺伝子を植物のゲノムに組み込み、そのウィルスからの感染に対する耐性を与える)は世界中の農家にとって大きな恵みになると同時に、バイオテクノロジー会社にとっては思わぬドル箱になるだろう。だが、外皮蛋白遺伝子は遺伝子導入植物に自然に入ってくる近縁ウイルスの遺伝子と結合する可能性があり、そうすると新しい特性を持った遺伝子組換えウイルスが生まれる恐れがある。また、遺伝子導入作物の多くが雑草と化するのではないかという懸念も強まっている。除草剤耐性、害虫耐性、ウイルス耐性等は、導入された特性の中でも競争上の利点となる可能性があり、その結果、遺伝子導入作物はさまざまな環境ですさまじい侵入者となる可能性がある。さらに、除草剤や害虫、ウイルスに対する耐性のある導入遺伝子も受粉によって流出し、近縁の野生種のゲノムに入りこみ、除草剤や害虫、ウイルスに耐性のある雑草を作り出す恐れがある。
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遺伝子操作によりさらに恐ろしい生物兵器、化学兵器が作られる恐れがある。しかし、解毒剤の開発は通常何年も後にある。
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感染性の微生物に遺伝子を組み込み、抗生物質耐性や毒性、環境変化に対する安定性などを高めることも出きる。致死的遺伝子を無害な微生物に組み込むことも可能で、その結果、身体には安全だと認識され、抵抗されないような生物兵器も作れる。また、気分や行動や体温を調節する調節機能に影響するような遺伝子を生物に組み込むことさえできる。さらに、特定の人種あるいは民族グループがゲノム・タイプの構成ゆえに特定の病気のパターンに傾きがちなのを利用して、彼らを排除する選択的な毒素をクローン増殖することもできる。
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1981年には、ペンタゴンの防衛用生物戦争研究の予算は1510万ドルに過ぎなかったが、1986年には9000万ドルまで伸びた。
・ 1995年のCIA報告ではイラク、イラン、リビア、シリア、北朝鮮、台湾、イスラエル、エジプト、ヴェトナム、ラオス、キューバ、ブルガリア、インド、韓国、南アフリカ、中国、ロシアの17ヶ国が細菌兵器を研究し、備蓄している。
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地球上に存在する多くの動物種の「種の独自性」もしくは「生きものらしさ」を遺伝子組換えで破壊してよいのか。
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1996年に「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に、ブラジルのクリの遺伝子を持つ遺伝子導入大豆は、クリにアレルギーを持つ人々にアレルギー反応を起こす可能性があると発表されたことにより、遺伝子操作によって作られた食品には適切なラベルを貼る必要があるのではという議論が持ち上がった。
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これから数年のうちに、農業化学会社やバイオテクノロジー会社は何千もの遺伝子を伝統的な食用作物や食用動物に導入しようと計画している。バクテリアやウイルス、カビ、さらには食用とされない植物や動物―人間も含む―から採取した遺伝子を組み込むのである。したがって、まだほとんどわかっておらず、わかっている治療法のない新種のアレルギー反応を引き起こす現実的な可能性が出てくる。
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一部の研究者は、遺伝子変更された動物の臓器をヒトに移植することによって、動物ウイルスが種の境界をこえて、治療法の全くない新しい致死的なウイルス性流行病を生み出す恐れがあると警告している。
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1997年に、研究者たちはブタが細胞膜内にもっているレトロウイルス(PERV)を発見し、それが実験室でヒトの細胞に感染したと報告した。これにより、移植手術のあいだに未発見の他のブタ・レトロウイルスが種の境界を飛びこえて、人間の患者に病気を起こす可能性が浮かび上がったのである。さらに恐ろしいことに、多くのレトロウイルスは血液によって媒介されるか性交によって伝染する病原体であり、したがってPERVは人間が他人と接触することでうつされ、エイズ・ウイルスと同じように流行病を引き起こすおそれがあるのだ。ブタ・レトロウィルスに関して最近発見されたこうした結果に、「アメリカをはじめどこの国の公衆衛生機関も当然、動物からヒトへの移植はレトロウイルスのるつぼであって、それは結果として遺伝子変更された病原性組換えウイルスになりうると考えるべき」なのである。
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しかし、アメリカ政府は1996年にブタとヒヒの両方の臓器を移植に使うことを許可した。イギリスでは動物のウイルスが人間の集団に広がるリスクをさらに詳しく研究する間、異種間移植を一切禁止した。
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多くの科学者や観察者が、地球上の遺伝子の多様性が失われることで人類に新しい食品や薬品、繊維を提供できる見通しが狭まっているのを憂慮するようになり、政府に「貴重な天然資源グリーン・ゴールド」を保全するように求めている。
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遺伝的多様性の減少をさらに悪化させているのが、複数品種よりも単一品種の栽培を重視する近代農業である。農業関遵会社と化学会社は完全な製品を求めて、おこたりなく目配りしている。つまり、成長が速くて病気に強く、収穫や市場への輸送が容易にできる植物の株である。先進国でも途上国でも、市場の力に押されて農業は伝統的な作物の栽培をやめて高品質の単品種栽培に切り替えてきた。膨大な数の伝統的な栽培品種を放棄して新株を大事にすることで、数の減っている植物ゲノムに依存しすぎる傾向が生まれ、遺伝的多様性は著しく損なわれた。遺伝的多様性の減少は、既にほとんどの国で進行している。世界の大豆の75%を占めるアメリカの大豆は単品種栽培であり、さかのぼれば中国から輸入されたわずか六本の木の子孫である。農村振興国際基金(RAFI)の報告によると、アメリカで栽培されている75種類の野菜のうち、すべての品種の97パーセントが80年足らずのうちに消滅したという。RAFIの調査によると、アメリカで1804年から1905年にかけて栽培されていたりンゴの品種7098株のうち、6121株つまり86.2%がそれ以後になくなってしまったという。
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遺伝的異常を生殖細胞系レベルで、つまり生殖細胞のなかで治療することは、出生後に体細胞遺伝子手術によって遺伝的異常を治療するのとは全く違う。前者の場合、遺伝子削除が結果としてヒトの遺伝子プールを危険なほど狭めるため、未来の世代が環境の変化に進化論的な適応をするとき頼りにできなくなる。
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ミネソタ双子・養子センターは、遺伝形質が多くの一般的な性格の特徴に決定的な役割を果たしていることを発見した。そして、遺伝がどの程度まで性格を決定するかを推測した研究報告まで発表した。それによると、心配性は55%、創造力は55%、順応性は60%となっている。多くの社会生物学者はそれをさらに進めて、ほぼすべての人間の活動は何らかの点で遺伝子の構成で決定され、自分の状態を変えたいと望むなら、我々はまず遺伝子を変更しなければならないと主張している。
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ロンドンのチャイルド・ヘルス研究所は、少女が少年よりも社交性に優れる要因をなすと思われる遺伝子群のX染色体上の位置を突き止めたと発表。研究者たちは、ターナー症候群にかかっている二つのグループの少女たちが社交性の点で著しく異なることを発見した。X染色体を父親から受け継いだ少女たちは、母親から受け継いだ少女たちよりもはるかに社交性があり、友人を容易に作れて、家族や教師とうまくやっていけるほか、おおむね幸福でよく適応していた。
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遺伝子構成や遺伝的素因に基づいた、何らかの差別を受けている。遺伝的差別が最も激しいのは、保険会社と医療提供者だった。潜在的な病気を抱える遺伝子を有しているというだけで、将来発病するかわからないのに生命保険の加入を断られたりしている。
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民族や人種全体を遺伝的に差別する可能性が出てくる。アルメニア人が家族性反復性多発性しょう膜炎にかかりやすい。ユダヤ人はテイ・サックス病やゴーシェ病を持っているし、アフリカ人は鎌状赤血球を持っている。この種の民族や人種に特有の遺伝情報が差別や隔離、虐待の手段として施設によって使われる恐れがある。
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雇用主もまた、就職希望者をふるいにかけるために遺伝子スクリーニング・テストに関心を高めている。一部の化学会社は労働者をスクリーニングにかけて、毒性の高い労働環境に対する遺伝的な感受性を計測したいと考えている。医療保険の多額の負担、心身障害の補償請求、常習欠勤などを懸念して、企業は病気にかかりやすそうな労働者を選別したいのだ。
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個人やグループが、遺伝的に優れたものと劣ったものに分けられ、社会が二極化することは新しく強力な社会的力学を生み出す。妊娠中に優れた遺伝的特性を胎児に組み込む余裕のある家族は、子供にいっそうすばらしい遺伝的利点を確保してやることができ、その結果、社会的・経済的な利益も確保してやることができる。出現する「遺伝的下層階級」の側では、遺伝的に型にはめられる問題から抗議の声が高まって、世界規模の「遺伝的権利」の運動が起こるだろう。
・ 1996年に、分子生物学界は最初のDNAチップを発表してウオ一ル街を驚愕させた。コンピュータ・チップによく似たこのチップにはDNAがつまっていて、生体のゲノムに含まれる多量の遺伝情報を「読みとる」ように設計されている。カリフオルニア州サンタクララにあるバイオテクノロジーの新興会社アフィメトリクスは、そのチップを遺伝的異常を検知するように設計した。同社は現在、メリーランド州ゲーサーズバーグにある遺伝子検査会社のオンコーメド社と共同で「P53」遺伝子機能不全を検知するDNAチップを開発中である。この機能不全は人間のすべての癌の60パーセント以上の発癌要因であると考えられている。DNAチップが個々の患者をスキャンしてその人の遺伝子構成を正確かつ詳細に読み取り、さらには異常な、あるいは機能不全の遺伝子を検知できようになる日はそう遠くはない。いずれDNAチップは、ある決まった時間にどの遺伝子のスイッチが「オン」になり「オフ」になるかも判断できるようになるだろう。
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情報科学と生命科学の最終的な統合は「分子コンピュータ」というかたちであらわれる。それはシリコンではなくDNA鎖でできた、考える機械である。研究者たちはすでに初代のDNAコンピュータを構築しており、コンピュータ科学者と分子生物学者のどちらも、バイオテクノロジーの世紀の早い時期に、ほとんどの演算はマィクロチツプの集積回路ではなく、DNA経路にそっておこなわれるようになると予測する人が増えている。情報を処理するDNAの能力は、現存する最先端のスーパーコンピュータをはるかにしのいでいる。ほとんどのコンピュータは逐次的で、一度に一つのことしか処理できないのと異なり、DNAは大量並行計算機であり、理論的にはー度に一京個のことを処理できる。ある科学者は、小さなグラス一杯のDNAで現在使用されているすべてのコンピュータよりも多くの計算ができると皮肉を言った。
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分子コンピュータを案出したのは、南カリフォルニア大学のコンピュータ科学の教授で数学者のレナード・エーデルマン博士である。
『脱牛肉文明への挑戦』『BEYOND BEEF』ジェレミー・リフキン ダイヤモンド社
(1993)
牛肉を食べることがいかに人類にとってよくないことかを徹底的に歴史的、科学的に論証しており、私も出来る限り牛肉を食べないようにしようと思った。
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発情期を同時化する薬品によって、畜産業者は一年のうちの理想的な時期に出産を集中させる。誕生後、オスの子牛は「従順」な性格と良質の牛肉を作るために去勢される。ウシが互いを傷つけ合わないように、角が除去される。生後6―12ヶ月間は放牧場で育ち、その後機械化された巨大な肥育場に運ばれ、屠畜の日を待つ。できるだけ短期間で最適な体重を達成するため、肥育管
理者は成長促進ホルモンや飼料添加物を含む一連の調合薬を使用している。さらに、現在は禁止されているが抗生物質が大量に投与され(乳牛は今でも投与されており、全牛肉の15%はこの乳牛)、飼料は除草剤で汚染されている。また飼料を食べる邪魔をするハエを殺すため大量の殺虫剤が散布される。
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cattle(畜牛)という語はcapital(資本)と同じ語源から派生している。多くのヨーロッパ言語においてはcattleはchattel(動産)及びcapitalと同意語だった。ウシは財産を意味した。
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遊牧民が初めてインドに入った時、人口密度は低く、土地は豊富にあった。ガンジス川流域の平原の大部分はまだ森林で覆われていた。しかし、紀元前300年ごろには、500万から1億人の住民を抱える世界最大の人口密集地になっていた。人口圧力の増大とともに、農地はますます小さくなり、貴重な土地を牧畜者に分けることが難しくなった。増え続ける人口を養うために、
牧草地のほとんどは小麦、雑穀、豆類の栽培地に転換された。それでも、農民は畑を耕すために少なくとも二頭の役牛と、繁殖と牛乳を確保するために一頭の雌牛を必要とした。農民は自分たちの唯一の拠り所を食べるわけにはいかなかった。役牛の力を借りなければインド北部の固い土壌を耕すことは不可能だったし、雌ウシなしには耕耘用のウシを補給することが出来なかった。
一方バラモン階級と王族は引き続き国内のウシを屠殺し、膨大な量の牛肉を消費していた。怒った農民は立ち上がり、支配者に公平な分配を要求し、その非道ぶりを激しく非難した。支配階級は民の声に耳を貸さなかった。インドの民衆が、動物の殺生を戒める新しい宗教、すなわち仏教に目を向けたのはこのときである。仏教徒はヒンズー・バラモン教の僧侶と激しく反目しあった。
その後九世紀にわたって、インド民衆の支持を勝ち取るための両者の戦いが続いた。結局はヒンズー教が勝利を収めたが、その時までにヒンズー教は仏教の訓戒の多くを自身の教義に取り入れていた。とりわけ重要な点は、ウシの儀式的屠殺を禁じたことである。さらに、ヒンズー教は仏教の教えにはなかったウシ崇拝を奨励した。
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インドでは、ウシは単なる崇拝の対象に留まらない。インド国民の生存そのものが、ウシに強く依存している。雌牛は国内の乳製品需要の大部分を供給。役牛は、全人口の80%に食料を供給している6000万戸の小規模農家に耕耘のための牽引力を提供。インド全土で生み出される牛糞は年間7億トンにのぼり、その半分は畑の肥料に使われている。残りは料理用の燃料に使われ
る。牛糞は水で練って家の床材にも利用される。皮は世界最大規模を誇るインドの皮革産業で利用。インドに出現した畜牛複合社会は、人間と牛の関係の宗教的側面と世俗的側面の両方を強化する結果になった。インド以外では東アフリカのみ、多くの牧畜部族の間で何世紀にもわたって宗教性と世俗性の同様のバランスが築かれている。
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15世紀のヨーロッパは傷んだ食肉の臭みを消すために、東方からの香料(スパイス)の供給に依存していた。コショウ、ショウガ、クローブ、メース、ナツメグ、コリアンダー等の香料はしばしば、肉が「腐りかけていることを隠すため」に利用されていた。東方の香料諸島<インドネシア東部のマルク諸島>ヘの新しい海上交易路を発見することへの関心は、ヨーロッパとオリエントの狭間に位置していたオスマン・トルコ帝国の商業政策によって掻き立てられた。15世紀に、オスマン帝国はその領土を通る陸上交易に厳しい税金をかけた。ジェノバの航海士クリストファー・コロンブスがマルコ・ポーロの本に魅せられ、アメリカ大陸を発見。彼は先住民を「インディオ」と呼んだ。新世界に初めて牛を持ち込んだのはコロンブス。
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16世紀にはイベリア半島は過放牧の状態にあり、スペインの土壌は広域にわたって砂漠化が起きたためスペインの征服者と宣教師はアメリカ大陸をスペイン原産のロングホーン[長角牛]の放牧地とすることを決めた。
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イギリス人の牛肉好きは、狩猟、動物の殺戮、そして肉の饗宴を好んだケルト人の伝統に深く根ざしていた。動物の殺戮の宗教的側面はイギリス人の意識から失われていたが、牛肉の持つパワーへの信仰はイギリス人、特に貴族の間に深く浸透していた。中世のイギリスの貴族の間では、贅をこらした肉料理で客をもてなすことが地位と特権を誇示する主要な手段となっていた。一方、
貧しい人々は19世紀最後の四半世紀になるまで牛肉は食べられず、チーズ、牛乳、バターその他の乳製品で我慢した。しかし、近代初期に、富裕層と貧困層の中間に労働者階級と中産階級が出現。中産階級は急速に繁栄し、貴族のような肉食生活を志向した。産業革命直前には、イギリスはすでに世界最大の牛肉消費国になっていた。1716年には、ロンドン市場だけで年間10万頭の牛が屠殺されていた。イギリスの牛肉需要の増大は、イギリス政府に新しい牧草地を外に求めることを迫った。スコットランドとアイルランドが植民地としての最初の放牧地となり、さらに19世紀には北アメリカの大平原、アルゼンチンのパンパス、オーストラリアの奥地、ニュージーランドの草地がこの目的に利用された。
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ロングホーン牛は筋肉質の牛で、強靭で適応力があり、北アメリカの厳しい気候と風土に理想的な牛だった。しかし、その肉は固く、脂肪が少なかったので、霜降り肉に慣れたイギリスの貴族と中産階級の口には合わなかった。これが牧畜と穀物生産を結び付けた。スペイン牛を西部大平原から中西部農業地帯に輸送し、そこで栄養豊富なトウモロコシ飼料で肉を霜降りになるまで肥
育する。それから牛肉を鉄道と船舶でイギリスへ輸送した。
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イギリスの地主階級が霜降り肉を好むようになったのは18世紀末のことだ。1800年にイギリス人は新しく改良された脂肪のたっぷりついたダーラム種の牛に沸き立った。また、牛の品評会が開催されるようになり、貴族と王室からも来賓が出席する非常に重要な社会的イベントになった。裕福な育種家たちは、かっぷくのよい牛を育てるのに熱中した。
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エドワード・デイルは言う「バッファローを殺し、インディアンを平原から排除して、ようやく牛を放牧することが出来るようになると、牧場主たちは今度は、食料源を断たれて飢えに苦しんでいるインディアンに食べさせるための牛肉を政府に売り始めた。西部でこれほど多くの牧場主が初期財産を築き上げることが出来た理由はまさしくここにある」
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1860年代にヨーロッパ大陸で蔓延した脾脱疽という伝染病がイギリス市場向けの肉牛の放牧地であったアイルランドとイングランドにも飛び火して、家畜に甚大な被害をおよぼし、これがイギリス市場における牛肉価格のいっそうの高騰を招いた。イギリスは、新たな牛肉供給源として南北両アメリカに目を向けた。1860年代に、大西洋を渡って輸送される生きた肉牛と塩
漬け牛肉の量が増大した。1870年代に、アメリカ大陸横断鉄道の開通、新しい冷蔵技術の開発(ジョン・ベイツが氷で冷やした空気を大型扇風機で循環させて作った冷蔵室を発明)、そして海外資本の大量流入(イギリス資本の牧畜会社設立)が効率的な輸送を実現した。
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1870年代には、広大な放牧地の西部地域と肥沃な穀倉地帯の中西部諸州を鉄道がつなぎ、「開放草地(フリー・グラス)」と「余剰トウモロコシ」が一体となって、高脂肪牛肉に執着するイギリスの消費者のニーズにかなう商品が生産されるようになった。
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1900年にはすでに西部の草地は牛であふれ、過放牧状態になっていた。牧畜業者はもはや牛を五年も六年も放牧する余裕はなかった。他方、コーンベルト諸州は余剰トウモロコシを生み続けていた。そこで、牛を1―2年間だけ放牧し、それから中西部の肥育場に運んでトウモロコシで肥育し、市場に送るという方法がいっそう合理的になった。1900年以降、トウモロコシ飼料による牛の肥育が急増したため、穀物価格の変動が牛肉価格に影響を与え始めた。同時に、肉牛生産と牛肉消費需要の変動が、穀物価格に敏感に繁栄されるようになった。
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国内消費者に霜降り牛肉を受け入れさせるため、アメリカ合衆国政府は1927年牛肉の価値を評価するための等級制度を導入した。この制度は、肉に含まれる脂肪の量によって牛肉の品質を等級づけるもので、脂肪が多いにくは消費者に好まれるという想定に立っている。この等級制度が畜産業の構造を決定づけ、そしてこの構造が穀物肥育牛への消費者の嗜好と需要を固定化してきた。
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生理学的に牛は高カロリー穀物を大量に摂取するのに適していない。大量の穀物摂取は反芻胃の微生物の正常な作用を妨げ、一連の消化器系の病気を引き起こす。その最も一般的な病気は、反芻胃―肝臓複合膿腫である。米国で解体される全ての牛の約8%は肝臓に膿腫ができている。
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1934年、フランクリン・ルーズベルト大統領はテイラー放牧法に署名した。この法律は表向きは、土地の管理と改善に集団的責任を負う牧畜業者に公有地を賃貸することにより、公有地の改善を促進することを目的としていた。しかし現実には、この法律は名ばかりの使用料ないし賃貸料と引き換えに、広大な公有地の使用権を民間(牧畜業者組合)に移転してしまった。現在、使用権保有者は、米国の公有地で放牧する権利に対して、ウシ一頭当たり月1ドル81セントしか払っていない。
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五大精肉会社(スウィフト、フィリップ・アンド・シメオン・アーマー、ネルソン・モリス、カダヒ・パッキング・カンパニー、シュウォーツシールド・アンド・サルズバーガー[後のウィルソンアンドカンパニー])が[ビーフ・トラスト]のメンバーで第一次大戦直前には、この五社で米国の生鮮牛肉生産量の三分の二、赤肉総生産量の半分を支配した。
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コンベア・ベルトの導入による新しい流れ作業生産は、驚くべきスピードで牛を殺し、切断し、洗浄し、仕上げることを可能にした。旧来の工程では、作業員が肉牛を殴打し、喉を切り、血が出尽くすまで地面に放置する。それから、三人がかりで死骸を作業場の横木まで引きずって行き、頭がぶら下がるように固定する。ここまでの作業に15分以上かかった。新方式では一分間に70頭。へんリー・フォードはこのアイデアを導入。解体工程において人間が機械に部分的に置き換えられたことは、生身の人間に新たな現実認識をもたらした。それは殺すという行為に感情が伴わなくなり、無関心になるという変化である。
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現在、米国最大の牛肉加工会社になっているアイオワ・ビーフ・パッカーズ(IBP)は、1960年代に牛肉産業発展のペースメーカとしての役割を果たした。生きた肉牛でなく冷凍枝肉を出荷することによって経費を削減したグスターヴス・スィフトなどから教訓を得て、IBPは枝肉でなくカットして容器に詰めた牛肉を出荷した。これによって莫大な経費削減が達せられ、1
0年もたたないうちにIBPとその追随業者は牛肉産業への支配力を獲得。(チルド枝肉を積んだ近代的とラックや鉄道貨車には無駄なスペースがたくさんある。枝肉は扱いにくい形をしているので、きっちりと詰め込むことが出来ず、しかも食肉売場に出す時に切り落とされる骨その他の不要物がたくさん付いている。)新たに出店していたスーパーマーケット・チェーンでも、箱詰め牛肉は大好評だった。
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IBPとその競合会社は、農村部の貧しい人々と、メキシコ、中南米、東南アジアから大量流入する新しい移民集団を取り込み、安い非組織労働力資源をバックに企業帝国を築き上げた。1988年には、IBPは米国内の肉牛の29%を解体し、箱詰め牛肉取引の35―40%を支配。
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1981年、IBPは大手石油会社オクシデンタル・ペトロリアムに8億ドルで買収された。1978年に、世界最大の穀物取引会社カーギル・インダストリーズがMBPXコーポレーションを買収し、社名をエクセルと変更し加工施設をカンザス州ドッジシティに移転。カーギルが牛肉加工事業に手を広げたことは、究極的な牛肉産業統合、すなわち牛、穀物、牛肉加工、販売を単
一の畜牛複合社会(キャトル・コンプレックス)に統合することを意味した。
巨大食品会社コンーアグラが1980年代に牛肉産業に参入し、スウィフト及びその他の中小精肉会社を買収。コンーアグラは穀物加工、飼料、肥料、農業化学品、世界規模の商品取引、冷凍食品、小売業と幅広い分野に子会社を所有もしくは利権を保有している。
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IBP、エクセル、コンーアグラの三大企業は、牛肉生産プロセスのほぼ全ての段階で強大な支配力を行使。彼らは飼料穀物生産に必要な種子供給会社の多くを所有。また、土壌改良と飼料作物栽培に必要な化学肥料や農薬の多くを生産し、大量の牛の群れと飼育場も所有している。国内で解体される全ての牛の約17%は、彼らが所有する飼育場で飼育されている。(1995年には30%と予想)さらに国内で生産される全ての肉牛の70%は彼らによって解体されている。
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農務省といくつかの大手精肉会社は、現在、合理的検査システム(SIS:Streamlined
System)と呼ばれる新しい検査方式を試験的に導入。このシステムは、州間及び国際取引向けに加工される牛枝肉を検査する際の連邦食肉検査官の役割を事実上排除するものである。つまり、従来のように連邦食肉検査官が生産工程にある全ての枝肉を検査するのではなく、工場従業員が抜き取り検査を行う。
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牛白血病ウイルス(BLV)は牛に悪性腫瘍を引き起こすレトロウイルスで、昆虫を媒介に感染する。米国内ではすべての牛の20%、畜牛群の60%以上がBLVに感染しているとみられる。BLVが人間に感染することも確認されている。またBLVと何等かの種類の白血病の間に因果関係が存在する可能性がある。さらにガンの原因になるヒト・レトロウイルスである成人T細胞白血病ウイルス(HTLV−1)とBLVの間に密接な関連性がある。(ウイルスを増殖させる働きをする共通の遺伝子を持つ)
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近年、米国でもう一つのウシ・ウイルスが発見。エイズ・ウイルスに似ているため牛免疫不全ウイルス(BIV)と呼ばれる。ウシ・エイズウイルスは乳牛と肉牛の両方に広く蔓延。このウイルスは牛の免疫機能を低下させ、乳腺炎やリンパ種など非常に多様な病気にかかりやすくさせている。人間ヘの感染はまだ解っていない。しかし、農務省は牛肉、牛乳、その他の酪農品について、これらのレトロウイルスへの抗体が含まれているかどうかの検査を行うことを頑として拒否している。
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1960年代には、世界銀行と米州開発銀行からの融資に支えられて、中南米諸国政府は広大な面積の熱帯林と農地を、国際牛肉市場向けの肉牛を飼育するための牧草地に転換し始めた。これにより零細農民は他に暮らしを立てるあてもなしに、殆ど無一文で過密都市への移住を余儀なくされている。近代的なウシ飼育は高度に資本集約的・労働節約的な産業になっている。伝統的な自給農業では普通1平方マイル(2.6平方キロ)の耕地で100人の生活を支えることができるが、ウシ牧場は牛2000頭につき1人しか雇用しない。12平方マイル当たり1人。
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今日、地球上には10億頭以上の牛がおり、世界の全陸地面積の四分の一が、牛その他の家畜のための牧草地として利用されている。非常に肥沃な草地では、1ヘクタールで1頭の牛を1年間飼育することができる。限界生産的な放牧地では、一頭の牛を一年間飼育するのに20ヘクタール以上の草地を必要とする。
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今日、世界中で約2億人が畜産活動に従事。北・中央・南アメリカ全体で、世界の牛肉生産の43%を生産。米国は世界最大の牛肉生産国で、世界生産の22%を占めている。旧ソ連が18%、アルゼンチンとブラジルがそれぞれ約5%を占める。西ヨーロッパ諸国は全体で17%。牛肉生産は全米第四位の製造業。(年間360億ドル)
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今日、米国で生産される穀物の70%以上は家畜に供給。家畜の中でも牛は特に飼料変換効率の低い動物である。肉牛の体重を1ポンド増やすのに9ポンドの飼料を必要とする。1エーカーに食用穀物を作付ければ、同じ面積を食肉生産のための穀物栽培に利用した場合の5倍の蛋白質を生産することができる。豆類なら10倍、野菜なら15倍。
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貧しい人々の間で飢えが広がっているにもかかわらず、多くの国々では依然として食料から飼料への転換が急速に進んでいる。1984年のエチオピアの飢餓問題。このとき、エチオピアの農地の一部が、イギリスその他のヨーロッパ諸国に輸出するための飼料用のアマニ粕、綿実粕、ナタネ粕を生産するのに使われていた。現在、第三世界の膨大な土地がヨーロッパ市場向けの家畜飼料生産に利用されている。
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アジア人の食事の四分の三以上は穀物である。年間、135―180`の穀物を消費。他方、アメリカ人は年間1トン以上の穀物を消費。その80%は穀物で飼育された肉牛のかたちで消費されている。アジア人は、一日に56グラムの蛋白質を摂取しており、そのうち動物性蛋白質は8グラム。アメリカ人は一日に96グラムの蛋白質を摂取しており、その66グラムまでが動物性蛋白質である。全人類の三人に二人までが基本的に植物性食物で生きているということを忘れてはならない。世界の穀物生産の三分の一が牛その他の家畜に供給されていること、そして世界人口が向こう10年間にほぼ20%増加すると予想されていることから、近い将来に世界規模の食料危機が起こる条件はすでに揃っていると考えざるをえない。
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現在世界人口の20%、13億人以上の人々が慢性的な飢えに苦しんでいる。慢性的に栄養不良の子供は一般に、正常な子供よりも体格が小さく、しばしば脳も小さい。栄養不良が生涯の最初の一年以内に起きると、身体と知能の発達の遅れが取り返しのつかないものになる。しかも、これらの子供が栄養不良の母親から生まれるなら、先天性以上を持つ確率が高く、そこに出生以後の栄養不足による脳細胞の発達障害(DNAの量が正常な新生児の40%しかないことがある)が加わる。
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1960年以来、中央アメリカの森林の25%以上が牛の放牧地を作るために切り払われた。70年代末には、中央アメリカの全農地の三分の二までが、主に北アメリカに輸出するための牛その他の家畜の飼育に利用されていた。中央アメリカ産牛肉のハンバーガーを1個作るのに、5平方メートルのジャングルが伐採され牧草地に転じられた計算になる。1970年代と80年代に、米国の多数の企業が中央アメリカ諸国の牛肉生産に大量の投資を行った。ボーデン、ユナイテッド・ブランズ、インターナショナル・フーズ、カーギル、ラルストン・ピュリナ、W・R・グレース、ウエアハウザー、クラウン・ツェラーバッハ、フォートドッジ・ラブズ。
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多数の多国籍企業がブラジルの奥地に群がり、一部はウシ牧場の建設を目的として密林を切り開いた。スウィフト、アーマー、ダウ・ケミカル、ユナイデッド・ブランズ、W・R・グレース、ガルフ・アンド・ウェスタン、インターナショナル・フーズ、フォルクスワーゲン、三井物産。1966年から83年の間に、アマゾン流域でおよそ10万平方キロの森林が商業開発のために切り払われた。38%は大規模なウシ牧場開発によるもの。今日、切り開かれたアマゾンの土地に何百万頭もの牛が放牧されている。しかし、これらの土地は放牧に適していない。熱帯生態系の土壌基盤は非常にやせており、栄養分をほとんど含まない。これらの古代生態系は、エネルギーを根から樹冠に素早く回収するので、森林の土壌にはエネルギーが殆ど保たれない。放牧をほんの数年間続けると、土壌の生産力が枯渇し、牧場主は次の処女地を切り開くことを余儀なくされる。
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すべての医薬品の四分の一が熱帯産植物を原料としている。抗癌作用を持つと確認された植物の70%は熱帯雨林の植物である。多くの外科治療は南米産のクラレ属の植物の樹皮に頼っている。(筋弛緩剤として使用)コルチゾンやジオスゲニンのような副腎皮質ホルモン剤は、グアテマラとメキシコに分布する熱帯種の野生ヤムイモから作られる。熱帯産植物から採取される天然ゴム、ラテックス、樹脂、ガム、染料、蝋、油脂は工業原料や化学基剤として利用され、口紅、防臭剤、セロハン、ニス、その他の多種多様な消費製品に生まれ変わる。
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現在世界の全陸地面積の29%で砂漠化が起きている。世界中で、毎年6000平方キロの土地が砂漠化のために放棄されている。砂漠化によって最も深刻な影響を受けている地域は全て牛の生産地、米国の西部、中南米、オーストラリア、アフリカのサハラ南縁地域である。
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ウシが過放牧され、自生の牧草又は栽培された牧草を食い荒らし、地球上に残存する草地から植物被覆の大部分を剥ぎ取っている。土壌を固定させ、水分を吸収し、栄養分を循環させる作用をする植生がなければ、土地は風と水に浸食されやすくなる。加えて、広大な面積の耕地が過耕作のために世界全体で年間250億トンの表土が流出。この数年間に、表土の流出によって世界の耕地の生産力が29%以上低下。
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国際開発援助機関は、何千本もの井戸の建設事業に多額の資金と技術援助をアフリカに供与。安定的な水供給が確保され牧畜民は降雨サイクルに基づく遊牧的移動性活をやめて井戸の周囲に半恒久的住居を築いた。豊富な水供給は遊牧民族に牛の群れを拡大することを促した。数年もたたないうちに、井戸の周辺の放牧地は過放牧のために植生が破壊され、土壌が固結化し、地層が露出し、すっかり荒れ果ててしまった。現在、アフリカ大陸全体で1億8600万頭の牛が放牧されており、これはアフリカの総人口の三分の一にあたる。
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米国内の水総消費量のほぼ半分は、牛その他の家畜の飼料を栽培するのに使われている。1ポンド(4.5`)のステーキを生産するのに使用される水の量は、一世帯当りの年間水消費量に等しい。このため中西部と大平原諸州における地下水位が急速に低下しており、水不足が多発。
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米国では牛が年間10億トンの有機廃棄物を生み出しており、その大部分は地下水と地表水に流入し、井戸、河川、湖沼を汚染している。その量は米国内全工業活動からの排出量の2倍。典型的な一万頭規模の肥育場から排出される有機廃棄物は、人口11万の都市から排出される人間の屎尿の量に相当する。
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1987年には、ブラジルの富裕な土地所有者が適用期限の近づいた租税優遇措置に殺到したため、この一年間でアマゾンの森林の伐採と焼却により12億トンの二酸化炭素が大気中に放出された。これは世界の温室効果ガス総排出量の9%に相当。今日、世界中で行われているバイオマスの焼却の大部分は世界のウシ飼育産業を促進することを直接の目的としている。
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穀物肥育肉牛のための飼料作物を生産するのに化学肥料が使われる。化学肥料はもう一つの温室効果ガスである窒素酸化物を排出する。1950年から89年までの40年間に、化学肥料の使用料は1400万トンから1億4300万トンへと増加。化学肥料その他の発生源から放出される窒素酸化物は地球温暖化の6%に寄与。
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メタン分子は二酸化炭素分子より25倍も強力に太陽熱を閉じこめる作用をする。今後50年以内にメタンが最大の温室効果ガスになる可能性あり。すでに年間5億トン以上のメタンが大気中に放出されていると推定。そのうち世界中で飼育されている13億頭の牛が12%に当たる6000万トンを排出。
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森林、草地、作物残滓の焼却は年間5000万から1億トンのメタンを放出。さらに放牧地のために熱帯雨林が破壊されると、倒木に巣食う白蟻の数が増加し、そこから大量のメタンが放出。年間何百万トンのメタンを放出。
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19世紀から20世紀初頭にかけて、牛肉は成功と地位のイメージと強く結び付き、今日の乗用車の所有とまったく同じような象徴的役割を果たすようになっていた。多くの移民は、牛肉文化への参加を、彼らの最大目標であるアメリカ中産階級への仲間入りを達成するための不可欠の儀式とみなした。
・ アメリカ人は年間11―13`の牛挽肉を消費。全牛肉消費量のほぼ40%が挽き肉であり、その大部分はハンバーガーのかたちで消費。
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牛肉を挽き肉にして食べる方法は、欧米牛肉文化の発祥地であるユーラシア・ステップに起源を持つ。ハンバーガーの原型のようなものを初めて食べたのは中世のタタール人であり、これは塩、コショウ、タマネギの汁で調味した生肉で、後にタルタル・ステーキとして知られるようになった。ドイツの商人がこの調理法をハンブルグに持ち帰り、地元の嗜好に合うように手を加えた。挽き肉を平たく丸めて焼いたのである。19世紀にドイツからの移民がこのハンバーグをアメリカに伝えたといわれている。1904年のセントルイス万国博覧会でハンバーガーは絶大な人気を集めた。いつでも簡単に買えて、食器を使わずに歩きながら食べられるため。
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1950年代半ばにはハンバーガーが大流行しアメリカのシンボル的な食品であったアップルパイの影を薄くした。50年代に無数の郊外居住者が庭でバーベキューをするようになったことが原因。さらに豚肉との競争にも牛肉は勝利した。豚挽肉のパティは戸外のグリルでうまく調理できない。ボロボロ崩れて金網の下の炭火に落ち、食事をだいなしにしてしまう。豚肉には旋毛虫病に感染する危険があるため、牛肉よりも長い時間をかけて火を通さなくてはならない。さらに、1946年に導入された農務省の規制はハンバーガーを「牛肉及び牛脂以外のいかなる食肉も脂肪も含まない挽き肉パティ」と規定。もし「ほんのわずかでも豚肉や豚脂」が混じっていれば「ハンバーガー」と称することはできない。同様に重要な事は、政府規制はパティの重量の30%まで牛脂を加えることを認めているので、精肉会社は「全く異なる個体」から取った牛肉と牛脂を混ぜ合わせることができる。このふたつの規定は、20世紀後半の牛肉産業による食肉取引の支配を可能にした。最も安価な牛肉は牧草で飼育された牛の肉であるが脂肪分が少ないので、もしそれをハンバーガー用の挽き肉パティにすれば、豚肉同様にボロボロ崩れる。パティをしっかり固着させるためには、牛肉に脂肪を混ぜなくてはならない。動物性、植物性を問わず、どんな脂肪でも牛挽き肉のつなぎに使えるが、農務省の規制が牛脂以外の脂肪の使用を禁じているので、牛肉産業は市場を独占することができた。
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第二次大戦後、米国では働く女性が増え、郊外の自宅で料理するだけの時間が無くなったため、多くの家庭はまず調理済み食品を利用するようになった。1950年代に冷凍テレビディナーが登場。冷凍ハンバーガーは便利な夕食の材料として重宝された。共働きが増えたため、外食が日常生活のありふれた側面になった。1948年から82年の間に、外食市場に占めるファーストフード産業のシェアは8%から30%に増加した。現在、米国には58万3000店を越す飲食サービス施設があり、年間でみると飲食サービス産業は780億食以上を供給し、国内で消費される全食肉販売高の40%を占めている。年間収入は2070億ドルを超え、従業者総数は800万人以上で全業種中最大の雇用を誇る。
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近年、精肉産業は「成型牛肉」に力を入れている。今日では、新技術を用いて、牛肉をばらばらにし、再成型して高級切り身の模造品を作ることができる。
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ユダヤ教とそれに続くキリスト教は、動物の屠殺のいけにえ的側面を排除した。人間はもはや、他の動物を殺してもそれを償うことも、神にいけにえを捧げることも要求されなくなり、動物の肉を食べることを正当化するあらたな大義名分を与えられた。ユダヤーキリスト教の神学者は、人間を神のイメージと重ね合わせ、人間を世界万物の監督者にすることによって、動物を殺し、その肉を食べることの合理的根拠を人間に与えた。さらに、後の啓蒙思想家は生物学的観点から肉食を正当化し、すべての自然は人間の功利主義的要求を満たすために存在すると主張した。これに加え、ダーウィン説の信奉者たちは、進化の唯一の目的は、自然界の激しい生存競争における適者生存を促進することだと論じた。彼らによれば、人間はもっとも高度に進化した動物なので、人間として可能な限り多くの他の動物の肉を獲得し代謝させることによって、自らにふさわしい進化的役割を果たしていくのである。
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もし牛肉が「屠殺された動物」とか「動物の死体の一部を焼いたもの」といった名称で販売されたとしたら、牛肉産業と消費者は間違いなく大いに動揺するだろう。「ビーフ」「ヴィール」「ポーク」「ベニソン」(しか肉)「マトン」といった用語も婉曲表現であり、元の動物と全く関係のない食品というイメージを人々に与える。近代文化が家畜から自らを隔離するのに用いたもう一つの重要な手段は、肉の調理である。中世の家庭では丸ごとの動物又はその大きな部分を食卓に置くのが普通だった。近代初期から、その動物の正体を示すあらゆる形跡が消されて食卓に出されるようになった。