伝説 オン・ザ・ロード





おれはついにレジェンドを見つけた。レジェンドはソファーに浅く腰掛けて、隣に座ってる不細工な女の長い髪に顔を突っ込んで何やら耳打ちしていた。おれは若くて、怖いものなしだった。深呼吸もせずにつかつかとレジェンドに近寄って、やあレジェンド、おれデヴィッド、と挨拶した。レジェンドはまったくおれに気付いていない様子で、無精ひげの生えた顔を女の耳元から離そうとしない。そして自分の囁いた言葉に自分で大笑いすると、膝を叩いてテーブルの安酒をあおった。「ほらレジェンド、かわいい坊やがお迎えに来てくれたよ」女はレジェンドの機嫌を損ねない程度に気を遣いながら厄介払いしようとしている。「ばかやろう、オレのガキは大学に行ってるんだ、こんな乞食みたいなガキと一緒にすんな」レジェンドは足でおれを追い払う仕草を見せながら、また女にすり寄った。相当酔っている。たぶんクスリもやってるだろう。でもシラフのレジェンドなんてテレビでも見たことないから平気だ。「レジェンド、おれミュージシャンなんだ。ガキの頃にテレビでレジェンドのライブを観て、ハンマーで頭殴られたみたいだった。おれの曲を聴いて、悪いところを教えてほしいんだ」レジェンドは女の肩に回そうとしていた手をピタリと止めて、真顔になっておれを見る。「ガキ……もういっぺん言ってみな」焦点は合っていないけど、昔のレジェンドのような鋭い眼光だった。おれはビビって、口ごもった。「じゃあナニか……」レジェンドは立ち上がっておれの方に寄ってくる。「おまえ、あれか……オレ様に憧れてるのか」おれは緊張して声が出なかったけど、すかさず腕の入れ墨を見せた。「いいだろう。外へ出よう。ここは息苦しい……」女がおれに感謝のウインクを贈った。
「この話を他人に漏らしたら殺すぞ」レジェンドはおれを裏通りに連れ込んでそう凄むと、ポケットの中からボロボロの紙を取り出し、そいつをおもむろに地べたにひろげた。おれの部屋に貼ってあるレジェンドのポスターよりもでかい地図だ。レジェンドは路上にしゃがみ込んで、地図上にいくつかある星印を順番に指さしながら何かの法則を説明している。おれは隣に座って「ふんふん、なるほど、そっか」なんて相槌を打ってたけど、ちんぷんかんぷんだった。怪しげな埋蔵金の話らしいということだけは、何となくわかった。レジェンドは地図にポイントする指先もふらつきながら、いっしょうけんめい解説してる。おれはレジェンドの横顔を見ながら思った。だめだ、こいつは……。
ああ、もちろん。レジェンドはいまでもおれの中の伝説(レジェンド)で、永遠の師匠だよ。



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