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親方と三人の盗賊
written by R.TAKEMURA / arranged by S.NUNOI |
ある山の深いところに盗賊団のアジトがあった。
アジトとは名ばかりの、朽ち果て捨てられていた山小屋には四人の男たちが住んでいた。
一人は「親方」と呼ばれている盗賊団のボスで、
片目は義眼、片腕には海でもないのにキャプテン・クックのようなフックを付けていて、
全身が子分たちを威圧する無数の傷跡に覆われていた。
口数が少なく、ときどき蛇のように不気味に笑ってみせる親方を、
子分たちは心の底から恐れていた。
子分たちは親方によって盗賊団を結成する前、村ではしがない盗人だった。
猫よりもみすぼらしい手つきで魚屋から魚をかっぱらいひたすら逃げるだけの男、
乞食同然の哀れでみすぼらしい姿をしてお金を集めていた男、
道ばたに落ちている食い物やお金を見つけるのが得意だった男、
三人の盗人は盗人と呼ぶにはあまりにも恥ずかしいやり方で毎日生きていた。
しかし三人の子分同士で盗人自慢をしているときには、
おれは何人殺ったぜ、
おれはねずみ小僧と知り合いだ、
おれは女も傷一つ付けずに盗むことができる、
といった調子でありもしない話をでっち上げては
自分を大きく見せようと精いっぱい話を大きくしていた。
そんな三人の盗人も親方の前では縮こまった猫、いや蚤よりも小さくなってしまうのだった。
親方は村で三人がしょうもないことをしていたとき「盗賊にならないか?」と声を掛けた。
なぜ自分なんかを誘ったのか、三人には少しも分からなかったが、
親方の恐ろしい姿と「盗賊団」という魅力的な言葉の誘惑に負けて三人は素直に親方に従った。
親方の素性は分からなかったが、
かなりの修羅場をくぐってきたと思われる親方の側にいるだけで、
三人の盗人は自分も強くなったように感じられた。
しかし、子分同士では互いにおれの方が偉い、おれの方が親方に好かれていると
争いが絶えず、喧嘩してばかりいた。
ある日、親方が
「お前らがどれだけ盗みの技術があるか、
おれにどれだけ忠誠心を持ってるかを試してやる」と言った。
「今から一時間以内に、おれのために食い物を取ってこい!」
三人の盗人は食い物の乏しい山の中へ散っていった。
親方は子分が出ていった間、椅子に座って昔のことを思い出していた。
盗みを働いては屈強な男たちに捕まり、袋叩きにあっていた自分。
思えば親方は幼いころからみんなに気持ち悪いと言われてはいじめられていた。
背が小さく、顔も醜い親方はずっといじめられ続けていた。
思えば親方の人生は、いかにいじめられないかを考えてきた人生だった。
体中の傷や不気味な顔は度が過ぎると、みんな触れるのも嫌がって手を出さなくなるのだった。
殴られたり蹴られたりするのも、痛いのではなく気持ちいいのだと思ううちに、
本当に気持ちよくなってしまった。
屈強な男たちに袋叩きにあっても恍惚の表情を浮かべ、呻くのだった。
今では顔に張り付いてしまった蛇のような笑いも一生懸命練習した。
その甲斐あって今では三人の盗人を従える親方になった。
三人の盗人はもちろん、背の低い自分よりも背が低く、
自分よりもしょうもない生き方をしている奴らを選んだ。
絶対に自分には逆らわない奴、自分を恐れる奴、
親方はこれから始まる復讐のことを思うとうっとりした心地になった。
そんなことはつゆ知らず、
三人の盗人はそれぞれ苦労して
見つけてきた親方への捧げものを持って
山小屋の前でばったり出くわした。
三人とも自分の見つけてきたものを袋に入れて後ろに隠していた。
「おい、お前はなにを見つけてきたんだ?」
「お前こそなんだよ?」
探り合いながら山小屋の扉を開けた。
部屋の中では親方がなぜか素っ裸になって三人を待っていた。
「お前らも服を脱げ!」
なにがなんだか分からない三人は見つけてきたものを置き、急いで素っ裸になった。
小さな、四人の男たちが、醜い裸をさらしている妙な光景。
それから親方は言った。
「よし、お前らの持ってきたものを持って、おれの前に並べ!」
一人は山苺を持っていた。
一人はトウモロコシを持っていた。
一人はスイカを持っていた。
スイカを持っていた男は、二人を見下した目をして嬉しそうに笑みを浮かべた。
山苺とトウモロコシを持った男は負けたと思い、悔しがった。
親方は言った。
「お前らの持ってきたものを尻の穴に入れろ!」
スイカを持っていた男の顔が青ざめていた。
親方は蛇のように不気味に笑って見せた。