NAKED2.5
太陽が空に穴を開けたように煌めいていた。目が焼けてしまって、暗い緑色に反転している。夜のようだ、と思った。真昼なのに。夜になると目の奥が発光していつまでも眩しい。目をつぶってみてもまだ光っている。光はシンバルの音のように明滅を繰り返す。まるで異邦人だ。しかし、この街にはママンはもちろん、恋人も、殺すべきアラビア人もいない。人は一人もいなくなってしまった。ぼく以外には誰も。汗はもう流れなかった。暑さに慣れてしまったのと、体から水分が抜けて、乾いた抜け殻のように変わっていたから。水も食料も完全に尽きた。
ぼくは役所の放送室にいた。カフェから持ってきた背の高い椅子に、裸の体を預けるようにして眠っていた。役所のスピーカーからは部屋から持ってきたモーツァルトのピアノソナタを流れている。街全体に軽やかなメロディが響いている。「こちらは○○役所です。ただいま光化学スモッグが発生しました。屋外での運動はなるべく控えてください」放課後の学校の放送のような、懐かしい放送はもはやない。車は一台も走っていない。代わりに毎日モーツァルトのピアノソナタが流されている。プライバシーやプライベートなど、もうどうでもいい。この放送を聴いている人が一人でもいるならば、なにかしらのリアクションがあるはずだった。しかし、どうやら本当にこの街には誰もいなくなったようだ。
街が崩壊しようともモーツァルトのCDは色褪せることなく、奇跡のように音を運ぶ。演奏者の息づかいやピアノの軋みまで録音されたこのCDは、しかし役所のスピーカーでは聴こえてこない。掠れた自動演奏のように暴力的に繰り返される。
この街を出ようと思う。CDを止めてケースにしまい、代わりに mego035 の Endless Summer でも流しておこう。歪んだ電子音の終わらない夏。
とりあえず西にでも向かおうか。街が崩壊したら西に向かうより仕方がない。
服ぐらいは着なくてはいけない。こざっぱりした新しいシャツを。太陽のせいと言わないためにも。
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