灰色のあまりにも静かな朝
S.NUNOI



ナボコフ『ロリータ』(大久保康雄訳・新潮文庫)より
[引用・編集]

「私は はちきれそうにふくらんだ青白い蜘蛛 糸は家じゅうに張り巡らされ 私は狡猾な奇術師のように 椅子に腰掛けたまま耳をすます ローはいま自分の部屋だろうか? 私はその方法で 彼女が台所にいないことを 冷蔵庫のドアを開けたり 仲の悪い母親に向かって金切り声をあげていないことを たしかめる 私のニンフェットは 家の中にいない 私のプリズム光線の網は ただの古ぼけた灰色の蜘蛛の巣と変り 家のなかはがらんとして 死んだように静まりかえる」

『ロリータ』第一部、月曜日の日記からの引用・編集。雨の朝、ハンバート・ハンバートはパジャマ姿で耳をすまし、ローが家の中にいるかどうかを確かめている。ハイテンションな静けさが伝われば、この断簡は成功。水中の光が蜘蛛の糸みたいに見えるのは、ステキな偶然です。

Feb.2nd.2001 NUNOI



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