さようなら、機械人間キカイジャー
彼らは冬の海辺を訪れた。「海を見に行こう」パーティーの最中、へろへろに酔っぱらった女の子が突然そう言い出して、早朝、車を走らせた。誰一人としてシラフの者はいなかった。
車を下りると冬の海は獰猛な冷たさで彼らを襲いかかってきた。狼の群に遭遇してしまったように、真っ白な牙を剥き出しにして露出した肌に咬みついてくる。彼らはコートやマフラーを固く締めた。
「さみいー!」
彼らは大声で叫びながら砂浜へと下りていった。人は一人もいなかった。灰色の砂浜で彼らは意味もなくはしゃいだ。彼は持ってきたウィスキーの瓶に直接口をつけて飲んでいた。体の中が燃えるように熱くなった。
「おい、あれなんだ?」
砂浜で走り回っていた一人が奇妙なものを見つけた。彼らはみな興味を持って、その奇妙な物体に近づいていった。
「あ、キカイジャーじゃん!」「うわ、本当だ、キカイジャーだ!」
それは全身錆に覆われていた。元の、メタリックボディの面影は見られなかった。海の方を向いて砂に埋まり、体育座りしていた。ぽつんと砂浜に残されたそれは奇妙なスフィンクスのようだった。
彼らの一人が頭部を思いっきり蹴飛ばした。頭は脆くも崩れてサッカーボールのように波打ち際に転がった。彼らは笑った。彼らはサッカーをやり始めた。
「ねえ、なんなの?」彼女は隣の彼からウィスキーの瓶を受け取って言った。
「これ、キカイジャーだよ」「だからキカイジャーってなに?」
頭がもげ、上半身だけの物体はもはや少しの面影もなかった。
「ああ、女の子は知らないかな。子供のときテレビのヒーローものに出てたやつ。ほれ、あの胸のVのところからビーム出すんだよ」
「なにそれ?」
「キカイジャービームっ!つってな。強かったんだぞ。しかしなんでこんなところにいるかな?」
彼はそう言いながらキカイジャーの上半身を軽く足で押してみた。すると上半身はゆっくりと倒れ、砂の中から体育座りした手と足が姿を現して転がった。もげた首の辺りから血液にも似た真っ黒なオイルのようなものが流れ出した。急にゼンマイ仕掛けようにキカイジャーは動き出した。横たわりながらおもちゃのロボットと変わらない、歩行の動作を繰り返した。
「うわあ、気持ち悪い!」
彼はキカイジャーをテレビで夢中になって見ていた。気持ち悪いと言われたとき、少しだけ腹が立った。なにも知らないくせに。
「いやいや、昔は格好よかったんだよ。銀色のメタリックボディで、すげえ強くて……」
そう言って彼は砂の上に横たわるキカイジャーを見たが、足を空回りさせている姿はたしかに気持ち悪かった。彼女は恐る恐る覗いていた。サッカーボール扱いの重い頭部は砂浜に線を引いて転がっている。
「でも今は、なんてことはない、ただの鉄クズだな」
彼がもう一度蹴飛ばすとゴンと、錆びついた空っぽな音が鳴り響いて動くのを止めた。
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