私の闇の生活
みんな、誰かを信じたいなんて思ってない。
彼女はベッドに腰をおろして、掠れた声をあげた。雨粒の流れる窓はピカソの青よりも透明に近いブルーの光で彼女を照らしている。凍っていた彼女の目玉が溶けて、小さい粒を零した。
あんたは知らないんだよ。
彼女は私の方に目を向けようとしない。私は知らないのか。何を?
あんたは知らない、私の闇の生活を知らない。
白い壁に、白いカーテン、窓の白い格子。彼女の肩や髪が雨で濡れている。私は「闇の生活」という言葉を聞いて、吹き出しそうになった。まだ朝の四時だ。
哲学の修士号を持っているくせに、マヌケのフリをして顧客を獲得するハスラーのようなコンサルタント。彼女は私の幼なじみだった。酔って朝帰りなどしばしばだったが、私に涙を見せるのは初めてだった。彼女は「闇の生活」を告白した。
いくらでも殴っていいんだよ、小さな子供を。外国人のガキを、蹴飛ばしたり、放り投げて壁にぶつけたりするんだ。指の骨をへし折ったり、瞼を引っ張って裂いたりするんだよ。そういうお店。でも死んじゃうなんて、初めてなんだよ。私びっくりして、トイレに行くって言って逃げてきたんだ。
単なるサディズムの過失致死だ。私はあくびをして、目尻にまとわりつく目やにを取った。彼女はベッドに倒れ込んで、私の顔を覗き込む。
ねえ、私地獄に堕ちるかな。でも私はこの世でたった一人しかいないんだよ。こんな私でも、子供を殺しちゃうような私でも、私はたったの一人で、私が死んだら代わりは誰もいない。あんたは私が私だっていうだけで、好きでいてくれるでしょ?
彼女が私の頭を包むように、腕をまわす。
私はあんたを信じてるの。あんたは私が何をしても動じない。何をしても変わらない。ほかの奴らとはちがう。優しく自首しろって諭してくれる。警察まで連れていってくれる。
彼女の黒い瞳に、私が写っている。少々鬱陶しくなってきたので、私も告白することに決めた。
私は実在しない。あんたの妄想だよ。
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