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90年代初頭に南ドイツで生まれたトランス。
それまでシーンを支配していた若干下世話なハードコアテクノへの反動とも取れるそのサウンドは、速いテンポでありながらもどことなく「のどかさ」を感じさせるものが多く、ストレートにアゲていこうとするレイヴサウンドの代名詞ともいえるハードコアテクノとは異なり、「ハメていく」サウンドを目指していった。
たちまちドイツではトランスが大流行し、シーンの中核を担っていく。ジャム&スプーン、スヴェン=ヴァス、ポール=ヴァン=ダイク、マイク=ヴァン=ダイク、コズミックベイビー、ヒューメイト、オリヴァー=リーブ…(ちょっと系統は異なるかもしれないけど、ハードフロアも)。ばた隣国ベルギーでもカスパー=パウンドが主宰するライジング・ハイを中心として盛り上がっていく。
他人の表現を借りれば「ジェットコースター」のようなこのサウンドは、ヨーロッパをまさしく席巻していく。ブームの中心であるドイツのトランスシーンの中核はMFSとHarthouse、Eye-Qであった。特にMFSは出すもの出すものどれもがアンセム的にヒットし、ジャーマントランス=MFSと言ってもおかしくないほどの圧倒的存在感を持っていた。
しかし93年頃から徐々に様式化してきたこのトランスは飽きられ始め、テクノは壮大で叙情的なトランスから、単純で機能的なミニマル方面へと中心を移していく。それは先ほど挙げたようなアーティストの作風にも影響を与え、ある者は流れに従いミニマルテクノ寄りのサウンドへ、ある者は「トランス」という名前はほとんど忘れ去られても自分のスタイルを貫きつづけ、そしてある者はクラブシーンそのものから去っていった(それにしても、上で挙げたアーティストのほとんどは、今でも現役でクラブシーンへの存在感を失っていないところがすごいところ)。
またレーベルにおいても、MFSの勢いは「トランス」という名前と共に失速していき、優秀なアーティストも次々と移籍してゆき、ほぼ完全に忘れ去られている(徐々に方向転換をして存続はしているけど、PvDと裁判沙汰になったりして、もう昔のMFSの勢いは無い)。スヴェン=ヴァスが立ち上げたHarthouseとEye-Qも、彼がレーベルに関わらなくなったことをキッカケに存在感は薄れた。Supersutitionはお抱えのマイク=ヴァン=ダイクを手放すことなく(MFSは脱退)、レーベル自身もミニマル方面へシフトしていくことにより、見事に今でもドイツの有数のテクノレーベルとしてありつづけることに成功している。
さて、このようにしてトランスブームは終わり、「トランス」と言えばもうひとつのトランス、ゴア/サイケデリックトランスの方を指すようになる。
しかし90年代後半からふたたびこのサウンドが注目され始める。それにはさまざまな原因があるであろうが、ハードハウスやプログレッシヴハウスなどの要素を取り入れてゆき、新しいトランスとなりシーンに帰ってくる。そして98年末、ひとりのオランダ人がドロップした一枚のレコードが、想像できないほどのビッグバンを起こすことになる…。
ここからは、自分の意見というか、昔のトランスと今の(エピック/ユーロ)トランスを好むものから見た思いを少し。
チャートのところを見てもらえれば分かるように、昔のジャーマントランスが大好きなんですが、今のトランスの多くと違うのは、やっぱり「深み」と言ったら怒られるでしょうか。
ジャーマントランスにはアンビエントの影響が深いといわれており、実際にジャーマントランスのアーティストが別名義でアンビエント用の名義を持っていたり、MFSも実際にアンビエントを多くリリースしています。スヴェン=ヴァスも1stで「ブライアン=イーノにインスパイアを受けた」と言っていますし。
で、今のトランスの多くはやっぱりハードよりのハウスとかの系譜のサウンドになってしまったというか、テクノの実験精神を捨ててしまったというか…(ちょっと他に言い方が見つからないです…。でも、オリヴァー=リーブが昔のように20分の大掛かりなトランスを今作るかと言えば、それはないだろうと思うし)。
だからヴォーカルも入れやすいし、昔のトランスよりもずっとクラブミュージック以外の人たちにもアピールできるわけですし。でもこれだと90年代初期のハードコアテクノとあまり位置的には変わっていないというか。昔のトランスはそういったレイヴ寄りの、何の深みも無いサウンドへ反抗する部分というのはある程度はあったわけで。
また話の流れがぐちゃぐちゃになってしまいましたが、まあ要するに、昔のトランスにも良いものはたくさんありますよーということです。プログレッシヴなものには良いものは結構まだたくさんあると思いますが(サシャとか)。
たぶん今世紀になって初めて「トランス」というものを知った人も多いと思うので。
チャートに上げた5曲は、今だに聴いていて飽きないほどのクオリティを持っていると思うので、いろんな手段を使って、、なんとか聴いてみてください。
※注: 「オールドジャーマントランス」という言葉は、現在リリースされているいわゆる「ジャーマントランス」と、あまりにも内容が違うものが多いため、仕方なく区別するため用いた言葉であって、別に特にそれ以上でもそれ以下でもありません。
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