トップ/600字のCDレヴュー Surfin' On Sinewaves
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600字のCDレヴュー

600字程度で今まで紹介したCDを再レヴュー。画像クリックは通販サイトの該当ページへ。

No. 0050
Artist / Title Massive Attack / Mezzanine
Label Virgin
Release 1998
Keyword Dub, Rock, Hip Hop

1998年にリリースされたMassive Attackの3rdである本作は、メンバーのDaddy Gの「Massive Attackはカテゴライズした時点で存在しなくなってしまう」という言葉のとおりのアルバムだ。ダブ、ロック、ヒップホップといったキーワードはあるにはあるのだが、重たいベース、ダブ処理されたリズム、メランコリックなヴォーカル、すさまじいほどの緊張感、深遠な曲たちを実際に耳にしてしまうと、そういったことを考えることを放棄し、ただただスピーカーの前で圧倒され本作のとてつもない深みに堕ちていかざるを得なくなってしまう。ほとんどの曲に共通する、力強さを持ちながらも不安感を煽るようなこの感覚は表現しがたいのだが、国内盤のライナーノーツに3-Dが寄せた「『メザニーン("中二階"の意)』を大音量で聴く行為は、意識の真相に降りていくような、自分と言う存在を解体してしまうような体験」という言葉は、本作のそういった側面を端的に言い表したものと言えるだろう。ダーク&ディープ&ダビーな世界に覆われている本作ではあるが、唯一といってよい、安らかな空間に包まれるかのように穏やかなM3「Tear Drop」の輝きは、まるで瓦礫の山の隙間から微かに射す日の光のようで、その美しさが一層強められているのがとても印象的だ。好き嫌いを問わず、音楽好きであれば必ず一度は聴くべき珠玉の名作。

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(Last Modified: 2006.11)
No. 0002
Artist / Title Way Out West/ Intensify
Label エイベックス
Release 2001
Keyword Progressive, Trance, Breaks

トラブルを乗り越えて世に出たWOWの2ndである本作は、一言では言い表せない不思議な魅力を持った作品だ。前作のようなブレイクビーツはやや影を潜め、ハウスよりのトラックが多く配置されたダンサブルなものを基本に、非西欧風の要素を取り入れたりヴォーカリストを積極的に起用したりなど前作とはまた異なった魅力を持った内容となっている。かすれた女性の歌声にWOWらしいプログレッシヴなバックトラックが絡み、ラストはストリングスが調和とともに収束していくM1「Fall」で始まり、キレのあるトラックとブレイクでの尺八が印象的なM5「Shark Hunt」、Kirsty Hawkshowが優しく歌うM6「Stealth」、透明感あるピアノと控えめなブレイクスに乗せる歌がどうしようもなく切ないM8「Mindcircus」、引っ張りに引っ張る展開がかっこよいM9「Secret」と、中盤以降からテンションは一気に上げられていく。本作のハイライトであるM10「Intensify part.01」は、不安感を煽るシンセ、一番いいところで登場するスクラッチやパーカッション、ヒプノティックな上昇音、トランシーなエフェクト、希望を感じさせないダークなヴォーカルという、WOWの魅力が120%詰まった名作であり、前作からの変化・成長を表していると言えよう。作品全体を覆うメランコリックな雰囲気も含めて、WOWらしいオリジナリティを感じられる、懐の深い作品。

(Last Modified: 2006.10)
No. 0134
Artist / Title V.A. / Addictive Beats mixed by Saeed & Palash
Label Star 69
Release 2003
Keyword House, Tribal, Dub, Progressive

Saeed & Palashのコンビによる2枚組ミックスCDである本作は、ひたむきにダーク&トライバル路線で突き進む、そういう路線が好きな者にとってはたまらない作品だ。Saeedが担当するCD1は、ひそやかに序盤は進行し、中盤以降はパーカションが活躍するダーク&トライバルな世界に堕ちていく展開で、激しさはそれほど無くCD2への期待が高まる内容となっている。Palashが担当するそのCD2は優れた内容で、インド風の女性ヴォーカルにトライバルなリズムがよくマッチしているM1「Peter the zouk 7 di simon / Enchantments」でかっこよくスタートし、深い音処理がなされた上ものと女性ヴォイスがキレのあるリズム・パートに最高のスパイスを加えてくれているM2「Grassinimoto / Cosmic Morse Code」と続いた後も、ダーク&トライバルを基本としてブレイクやヴォーカルなどで色々と変化球を投げ始める。終盤では、メロディが皆無のテックでミニマルなM9「Grassinimoto / Sungtime」を経てラストM10「Insight / Prophecy」にたどり着き、薄暗い雰囲気がブレイクでほのかに明るさを取り戻していきながら終わるという展開。派手さは全く無いものの、聴いているうちにリズムや独特の雰囲気にハマってしまうような、不思議な魅力を持った作品。

(Last Modified: 2006.09)
No. 0133
Artist / Title Dimension 5 / Second Phaze
Label Nova Tekk, Global Trance Network
Release 2000
Keyword Goa Trance, Psychedelic Tance, Spacy

2000年にリリースされたDimension 5の2ndアルバムである本作は、ストレートにゴアよりのトランスの様式美にのっとった作品だ。2000年というと既によりソリッドでシャープな、宗教色が排されたサイケデリック・トランスが多く出回っていた頃だが、この作品は以前からのスタイルを踏襲したものになっている。宇宙空間に抽象的なオブジェとともに浮かんでいる目が写っているジャケット、「Beyond The Stars」といったたぐいの曲名たち、理性を減退させるかのように幾重にも重ねられて押し寄せる陶酔的なシンセサイザー、せわしなく変化し続ける不安定なピッチ、いかにもといった趣の宗教的なメロディ、扇情的でやや仰々しいくらいのドラマティックな展開など、「お約束」的な要素が気持ちよいくらい多く収録されている。最初から最後まで一気に聴けるようなスピーディでアップリフティングで外交的なエネルギーに溢れていつつも、スピリチュアルで内向的なエネルギーも同時に感じ取れるのは作り手の上手さか。M6「The Y Principle」あたりからのテンションの加速感はなんとも形容しがたい。特に大きな目新しさはないし、アクの強いものなので、万人受けはしないだろうけども、たまに聴きたくなってしまうような、そんな1枚。

(Last Modified: 2006.09)
No. 0132
Artist / Title Boom Boom Satellites / Photon
Label ソニー・ミュージック
Release 2002
Keyword Rock, Breaks, Dub, Jazz

Boom Boom Satellitesの3rdフル・アルバムである本作は、これまで以上にバンド・ロック色が強くなり、より肉体的で攻撃的な雰囲気が感じられるようになった作品だ。十八番ともいえる前衛フリージャズ的なM3「Beluga」やM8「Amber」といった曲もあるが、ヴォーカルの入った曲が収録曲のほとんどを占め、作りに作りこまれたリズムとベースが中心となりグルーヴを形成してグイグイと引っ張ってゆくといった要素はやや陰をひそめている。シングルでもリリースされたパワフルなM7「Blink」は民放ドラマの主題歌に用いられたりと、デビュー当時の色が抜けて一般層に広まっていくというのは、以前から知っていたファンからすればやや複雑な感情を幾分か抱いてしまう部分はあるであろうが、相変わらずジャズやダブなどの色々なエッセンスをバランスよく織り交ぜて完成させているあたりは、やはりセンスを感じさせる。ダンス色が強かった初期のサウンドを本作に強く求めてプレイヤー再生ボタンを押すと失望と困惑の念を抱くだけで終わってしまうかもしれないが、シンプルに「日本のバンドのCDを聴く」というくらいのスタンスで聴けば、作品自体の質は高いのであるから、本作をより楽しむことができるであろう。それにしても、ラストM10「I.A.I.T (Innercity Dub)」のこの迫力は一体…??

(Last Modified: 2006.09)
No. 0131
Artist / Title Technasia / Future Mix
Label Technorient
Release 2000
Keyword Technorient, Detroitish

普段はフロアを沸かせているクラブ・ミュージックのアーティスト・アルバムは、1枚の芸術作品として、ホーム・リスニングにも配慮して、などの様々な理由があろうが、得意とするスタイルの曲をただ並べるだけでなく色々なスタイルにも挑戦したり、mixed仕様にしたりなどの変化をつけることが珍しくない。しかし、Technasiaの1stである本作は、さらに一歩進めたコンセプトを基に創られたチャレンジングかつオリジナリティ溢れる作品だ。そのコンセプトとは「仮想の中国のFMラジオ」で、DJ(この場合は「ディスク・ジョッキー」の意)による曲紹介、ジングル、CMなど、収録時間66分の間FMラジオの番組を聴いているかのようにリアルな作りになっているのである。もうひとつ本作のオリジナリティを与えているのが中国という要素である。DJの喋る言葉が中国語なのはもちろんのこと、時折流れるCMのバックで流れる音楽などのラジオ部分で中国を感じさせる作りになっており、これらが世界に2つとない世界観を構築させている。肝心の音楽も、彼ららしいデトロイトの雰囲気を漂わせたサウンドで申し分ない。M1「97.1 FM 10 PM」で時報とともに番組がスタートし、DJにより曲紹介がなされた後にハードミニマルのM2「Sound Of K 'Silvery Sounds (Technasia Hard Mix)'」が\へ流れる展開で既に鳥肌もの。アナログだけでは不可能な、アーティスト・アルバムならではの醍醐味を存分に体験できる名作だ。中国語の看板で埋め尽くされたジャケットがまぶしい。

(Last Modified: 2006.09)
No. 0130
Artist / Title V.A. / Forensic Science mixed by Lexicon Avenue
Label Forensic
Release 2004
Keyword House, Dub, Progressive

Forensic Records初のコンピレーションである本作は、設立者であるLexicon Avenueによりミックスされた直球で質の高い作品だ。13曲のほとんどにメンバーの誰かが何かしら関わっているということもあり、ヴァラエティに富みつつも作品全体でのまとまりがしっかりしており、そのスムーズで流麗な展開には安心感さえ感じてしまう。彼ららしく、序盤はディープ・ハウスや控えめな歌ものを織り交ぜて展開させていき、中盤あたりからダーク&ダビーの様相が濃くなりながら地の底へ堕ちていく、という奇をてらわないながらも飽きの来ない内容となっている。終盤になるとさらにシャープさも加わるようになり、ホラー映画のように不安感を煽り立てる名曲M10「Dub Structure / Know It (Twice)、覚醒的なシンセとダブ処理されたフレーズにただただ圧倒されるしかないM11「Three Sixty / Body Music (Vocal Mix)」と手のつけられない展開に。ラストM13「Little Green Man / Need (Satohi Tomiie Un-released Dark Path Mix)」にてようやく現実世界にほんの少し引き戻されて終了。時折に入るヴォイスや歌がとてもクールでかっこよく、トータルの完成度で考えても名作と言える1枚。

(Last Modified: 2006.09)
No. 0129
Artist / Title V.A. / Audiotour mixed by Chris Fortier
Label Fade
Release 2004
Keyword House, Trance, Progressive

Fade Recordsからリリースされた、Chris FortierのミックスCDである本作は、No.0075「V.A. / Bedrock compiled and mixed by Chris Fortier」とはまた少し雰囲気の異なった作品だ。スロウだけどもしっかりとしたリズムのきいたトラックで序盤は展開していくも、中盤はやや暗めで地味な流れに。不安感と絶望感を聴く者に与えるブレイクが強烈で素晴らしいM5「The Alley Qats / Talk To Me Groove」や単純にかっこよいM6「Chris Micali / L'Evassion」など、分かりやすいメロディがあるわけではないけれどもパワフルな展開が続く。終盤は自分名義の曲や自身が関わったプロジェクトなどの曲が続き、トランシーで浮遊感漂うM10「Chris Fortier / Whateveritis」、中盤の閉塞感から解放された喜びを表すかのような開放的で明るいM12「Fade / Separation (Remix)」など、流れが変わりつつ終了する。派手なタイプのものを好まない方にとっては、ラストをはじめとして中盤以降やや仰々しい部分を感じる部分もあるかもしれないが、Chris FortierやFadeが好きであれば、チェックして損は無い1枚と言える。

(Last Modified: 2006.08)
No. 0128
Artist / Title V.A. / Peace Division: Peace Process
Label Tide NS
Release 2000
Keyword House, Tribal, Dub, Progressive

Peace DivisionによるミックスCDである本作は、彼ららしさがよく出ている傑作だ。序盤は音数を抑えた控えめでダビーでありながらもダンサブルなハウスが淡々とつながれ、嵐の前の静けさといった様子。中盤のM5「Charley's Vault / My Answer」あたりから徐々にギアが入り、トライバルなものやベースラインが引っ張るものなどを織り交ぜつつダーク&プログレッシヴに展開されていくが、極めつけは、地の底を這いずり回るかのようにトライバル色が強いリズムに、終わりなく延々と繰り返されるヴォイスループとエッジの効いたシャープなシンセというこれ以上無いヒプノティックな組み合わせの名曲M8「Freak Project / Beat Of A Drum (Peace Division Remix)」あたりで、そこからギアはトップに入り、アバンギャルドなM9「Lovesky / Drumz For Better Days」やシンプルながらもインパクトの強い「Danny 'Buddha' Morales / Lift Me (Buddha Passion Beats)」などを挟み、秩序が崩壊寸前まで行き直前で破綻を免れる強烈なM12「Eddy Airbow / Cosmic Tribe」で終了。序盤の始まりからは想像だにできない後半の怒涛の展開は、激しさは無くとも高いクオリティを持った必聴ものの1枚。

(Last Modified: 2006.07)
No. 0127
Artist / Title V.A. / Bedrock Breaks Compiled and Mixed by Meat Katie
Label Bedrozk Music
Release 2004
Keyword Nu-Skool Breaks, Electro, Progressive

Meat Katieがミックスを担当した本作は、滑らかにまとめられた質の高い作品だ。"Bedrock Breaks"と名づけられているとおりブレイクスが主に収録されているのだが、いわゆるニュースクール・ブレイクス的なものとなっており、4つ打ちのグルーヴを保ち、また、マッシヴなリズムにダビーな音処理がなされたトラックが多く、プロッグ寄りの4つ打ちを聴き慣れた耳にもすんなりと抵抗なく入ってくる内容となっている。ブレイクス一辺倒ではなく時折4つ打ちのトラックも織り交ぜているのだが、全く違和感なくすんなりと展開されているのがその証左とも言える。派手さは無いがじんわりと盛り上げていき、ラストM14「Aphasia / Acapulco (Sean Q6 Remix)」で一気に切なさをもたらすCD1、よりパワフルでアッパーに展開し、「NamTrak / What You Need (Meat Katie Remix)」などの自身の関わった曲もいくつか織り交ぜながら終盤へ進んでいくCD2ともに洗練されている。Bedrockが出したブレイクスのミックスCDというだけあり、完成度は申し分なく、一度は聴くべき傑作と言える。

(Last Modified: 2006.07)
No. 0126
Artist / Title V.A. / Exhibition U mixed by Ben Lost
Label Lost Language
Release 2004
Keyword Euro Trance, Progressive

Lost Language 初のレーベル・コンピであったNo.0099「V.A. / Lost Language. Exhibition mixed by Solar Stone & Ben Lost」の続編である本作は、3枚33曲とボリュームも多くなり、トランス寄りのCD1とCD2をBen Lostが、チルアウトのCD3をJay Burnettが担当しているのだが、内容も前作同様クオリティの高いバランスの取れたミックスCDとなっており、スローペースで徐々にテンションを高めてゆき、Tilt、Probspot、Leama & Moorといったアーティスト達の曲で安定感を保ちつつ展開していく比較的ゆったりとしたCD1、ソリッドめな序盤からアップテンポに展開していき、やや派手になったのち霊妙なシンセサイザー達と独特のベースが聴く者を優しくも寂しい感覚に包む名曲M8「Tilt / Goodbye」を挟み、クライマックスは荒涼とした風景を思わせるM10「Odyssee / Dreamcatcher」〜M11「Empire / Niagara」と終始メランコリックなCD2と、メロディアスながらも深みのあるトランスたちは聴いていて飽きない。「Salt Tank / Eugina」、「CM / Dream Universe」、「Space Manouevres / Stage One」などHooj時代の往年のヒット作も含めた曲たちのチルアウト・ミックスを集めたCD3も含めて、本作は何かと楽しめるターゲットの広い作品だ。

(Last Modified: 2006.07)
No. 0125
Artist / Title V.A. / Headliners: 02 Sister Bliss
Label Ministory Of Sound Recordings
Release 2001
Keyword Euro Trance, Progressive

Sister Blissがミックスを担当した本作は、Ministory Of Soundらしいサービス精神溢れる盛りだくさん内容となっている。ミックスCDにしては収録曲が多めであり(2枚で32曲)、かつ、いわゆるヒット曲が惜しげもなく幅広く用いられていることからも分かるとおり、コマーシャルなスタンスが強く感じられる作品だ。例えばCD1はStylus Trouble、Circulation、Trisco、Medway、X-Press 2、Chab、Simonなど、CD2はTrancesetters、Futureshock、Starcase、Hybrid、Sister Bliss、Timo Maasなど、有名アーティストの有名曲がこれでもかと言わんばかりに詰め込まれている。確かにSister Blissの冠がついた作品ではあれども、展開は速く、ヒット曲を多く収録している関係でミックス全体の流れにおいて無理をしている部分が少なくなく、良くも悪くも「Trance Nation」的作品である。しかし、この手の「コンビニ的ミックスCD」も、門外漢にとってみれば価値のある作品であり、「Trance Nation」がそうであったと同じように、本作をきっかけとして、徐々に本格的に聴きこんでいくような人が出ればそれはそれで本作のひとつの役目が果たされたということでもあるのであって、そういう意味においては、この手のスタイルに興味がある者にとっては十分に聴くに値する作品だと言えよう。

(Last Modified: 2006.07)
No. 0124
Artist / Title V.A. / Undulation 1 mixed by Satoshi Tomiie & Hector Romero
Label Saw Recordings
Release 2003
Keyword House, Progressive

富家哲とHector Romeroが手がけた本作は、Saw Recordingsのレーベル・コンピでありながらも、バランスのよくとれた傑作ミックスCDだ。前半はやや閉塞的で緊張感を漂わせつつ展開し、筆舌に尽くしがたいブレイクを持つキラー・トラックM4「Cass/Madam / Kenjin/Penetration」でにわかに熱気を帯び始める。その後はトライバルなものをかけたり、「Lexicon Avenue / Why R U Here」のミックス違いを3枚かけたりと聴き手の心をしっかりと掴んだまま離さない展開が続く。クライマックスである自身のM10「Satoshi Tomiie presents Ice. / Scandal In New York (Undulation Version)」は新世代ハウスといった感じの、プログレッシヴかつマッシヴなバックトラックに太い女性の語りと鼻歌が最高にマッチする怪しく退廃的な匂いのする名曲。最後に哀愁度が急速に高くなり、寂しげなトラックと脱力的なヴォーカルが何とも不思議な感覚を呼び起こさせるM12「Echomen / Cure (Undulation Version)」で終了。ヴォーカルものも適度に入っており、前述のとおり色々な意味でバランスがよく、隙が見当たらない。ハウス、プログレッシヴ好きであればぜひ聴いておきたい1枚であり、特にM4とM10の圧倒的な存在感は必聴ものと言える。

(Last Modified: 2006.06)
No. 0123
Artist / Title Starecase / Firstfloor
Label Hope Recordings
Release 2002
Keyword Breaks, Vocal, Progressive

Starecaseのデビューアルバムである本作は、躍らせるツボをよく心得ている彼らがホームリスニングも意識した作品だ。J.Bensonが軽快でありながらもダンサブルなブレイクスに歌声を載せていくM1「Faith」でスタートし、ダンテンポなインストものM2「Understand Me」、変則リズムにStarecaseらしい透明感あるトランシーなシンセがかぶさるM4「Come In」、けだるい感じの男性ヴォーカルに脱力感を覚えるM8「Bitter Little Pill」など、ブレイクスやヴォーカルを積極的に収録しているため結果的にポップなものとなり、単なるクラブ・ミュージックのアルバムには留まらない内容のものとなっている。もちろんフロア志向のトラックも収録されており、うねるようなアナログ風ベースとダブ処理がとても耳に残る女性ヴォーカルものM3「[Sound Two] Second Time」、ダークでストイックな前半から徐々に広がりを見せていく展開がよいM5「Stuck In The Middle」、ラストをソリッドかつダビーに〆る強烈なM9「The Bitter End」と、いずれも質は高い。作品全体を考えた時の統一感がもう少しあってもよいかとも思うが、個々の曲のクオリティは決して悪くなく、十分に聴く価値はあると言える1枚。

(Last Modified: 2006.06)
No. 0121
Artist / Title Dusted / When We Were Young
Label Netwerk
Release 2000
Keyword Children's Book

FaithlessのRolloのサイド・プロジェクトであるDustedのアルバムである本作は、深い森で子供と動物が粗めのタッチで描かれているアートワークやインナースリーヴから想像できるとおり、子どもの頃に読んだ絵本の世界をそのまま音楽化してしまったような、夢の世界にいるような超現実的で幻想的な作品だ。前半はやや複雑な展開をする曲が続き、ダブの要素が全体を覆っていることもあり、牧歌的でありながらも閉塞的な内容で何とも形容しがたいものとなっている。少年の透き通ったソロ・ヴォーカルが天上に響き渡る美しい名曲M6「Always Remeber To Respect Your Mother part 1 」を挟み、その後も引き続きダークで前衛的な要素が強い曲が続くが、M12「Under The Sun」で一気に閉塞状況から解放され大合唱となり、M13「If I Had A Child」のラストでカオスティックに終了する。世界観が完全に確立された本作は、パジャマ姿の子供が夜の森で見たこともない動物達が焚き火をしているシーンに出くわすという、アートーワークの絵がそのままアニメになったファンタジックな内容の「Always Remeber To Respect Your Mother part 1 」のビデオ等も含めトータルで評価されるべきであり、どことなくノスタルジックな念を抱いてしまう、芸術的で稀有な1枚と言える。なお、ラストにボーナス・トラックとして「Always Remeber To Respect Your Mother part 1 」のフロア向けのリミックスが収録されている。

(Last Modified: 2006.05)
No. 0120
Artist / Title V.A. / Global Underground 021 Deep Dish | Moscow
Label Global Underground
Release 2001
Keyword Dark, House, Progressive

Deep DishによるGlobal Underground初登場作にして気合が十分に反映された力作。CD1は、M4「El Greco / Night Watch (Tribal Mix)」などの比較的透明感ある展開が序盤はなされるも、中盤以降は暗黒色が徐々に強まり始め、DidoやIioのアーティストの曲の自身のリミックスなども織り交ぜつつ、適度に場を暖めて終了。バトンタッチされたCD2は、ヴォーカルものを多く取り入れた彼ららしい内容でありつつも、CD1よりもさらにDark、Dubby、Deep、Dirtyの4拍子の連携が強まった、ダークながらもアッパーな狂気の展開がなされてゆき、M1「BT / Shame (Way Out West Mix)」からSander Kleinenberg、Mara、Envyといったアーティスト達が手がけた曲などを通過して恐怖の終盤へ。M7「Dino Lenny / I Feel Stereo」で一旦Mixが終了、再開するとさらに危険度が上昇し、畏怖感と不安感と絶望感を強烈に呼び起こさせる程に底へ堕ちてゆき、先の見通しが全く立たない領域へ突入後、虚無的な男性ヴォーカルもののM11「Pappa & Gilbey / Skin Deep」をもって最下層に到着するという救いがたい展開。CD2の全体を通したこの流れとテンションは必聴ものであり、No.0105「V.A. / Global Underground 025 Deep Dish | Tronto」とはまた雰囲気が異なるものの、優劣を付けがたいハイクオリティな完成度を持った作品。

(Last Modified: 2006.04)
No. 0005
Artist / Title V.A. / Frogman presents Spunky Chorus
Label ソニー
Release 1995
Keyword Old German Trance

日本発では唯一の初期のジャーマン・トランスのコンピである本作は、愛に満ち溢れた類まれなる名作だ。「愛に満ち溢れた」というのは、本作がドイツの「ラヴ・パレード」にちなんで企画されたものだからというだけでない。企画に関わった石野卓球、Toby、KEN=GO→、佐藤大によるメッセージや全曲紹介などが詰まったライナーノーツを読んでもらえれば分かるとおり、当時のドイツの曲に対する彼らの思いやりや愛情が痛いほど伝わってくる内容であるからでもあり、ジャケットのアートワークや写真もとてもポジティヴ&ピースなテーマで統一されているのも良い。曲の方はというとハッピーさと切なさが絶妙なバランスで同居した、哀愁漂う名曲たちをMFSやSuperstitionといったレーベルたちから、スタイルのヴァラエティにも配慮しつつ選曲している。Mijk van Dijk、Sven Vath、Ramon Zenger、Paul van Dykといった、その後もシーンで重要な役割を担っていくアーティストたちの名曲たちが本作1枚で聴けてしまうということ自体が喝采ものであり、上述の4名だけでなく、リリースを決断したレコード会社にも素直に感謝したい。ラストのM12「Paul van Dyk / My World (Florin Mix)」は屈指の名作でもあり、是非聴いておきたい1枚。

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(Last Modified: 2003.8)
No. 0119
Artist / Title V.A. / Global Underground 016 Dave Seaman | Cape Town
Label Global Underground
Release 2000
Keyword Progressive, House

Dave Seamanによるシリーズ2度目の登場作品。CD1は、M6「Mandalay / Deep Love (Charley May Mix)」をはじめとした中盤から急速にダークかつトランシーなものに傾倒し始め、強烈なサイケデリック色に思わず面食らうM10「Brothers Love Dubs / 1-800 Ming (Martin Buttrich)」あたりまでの出口の見えないテンションだけでなく、その後ラストM13「Breeder / Tyrantanic (Slackers Kingdom Come Mix)」に至るまでの展開も素晴らしい。CD2は、ダークでありながらもアッパーな展開が序盤から続くが、最大の聴きどころはM8「Way Out West / The Fall」、M9「James Holden / Horizons (Way Out West Mix)」、M10「Junkie XL / Zerotonine (Slacker Remix)」という卒倒ものの終盤の展開で、M11「Highland / No Way Out」で幕が引かれたあともしばらく余韻に浸りたくなるような中身の濃い内容となっている。No.0067「V.A. / Global Underground 022 Dave Seaman | Melbourne」と同じく、やや毛色が異なる部分はあるものの、やはり独特のプログレッシヴ感が感じられる良作。

(Last Modified: 2006.04)
No. 0010
Artist / Title Cosmic Baby / Thinking About Myself
Label BMG, Logic
Release 1994
Keyword Old German Trance

Harald BluchelによるCosmic Baby名義での2ndである本作は、トランス史だけでなく電子音楽史に永く燦然と輝き続けうる極めて高い完成度を持つ作品だ。澄んだピアノ・ソロの音が果てしなく広がっていくM1「Thinking About Myself」のような、ピアノをメインに用いた静的で幽玄な調べを聴かせる曲と、ややアップテンポめなテクノ調の曲が交互に終盤まで展開され、聴き手の高揚感と期待感を少しずつだが確実に高めてゆくのだが、ジェットコースターのようなM9「Fantasia」とM10「Loops Of Infinity (Contenplative)」の2曲で高揚感は限界を超えるレベルまで達し、期待感はこれ以上なく満たされ、聴き手は至福の経験をすることとなる。どちらも疾走する速いテンポで脈打つリズムに牧歌的なフレーズやピアノのアルペジオたちが次々と一点集結し始め、夜の星空に意識が吸い込まれていきそうになるような感覚を味あわせるほどのテンションとクオリティと神秘性を持っており、言葉では到底表現不可能な領域に悠々と達してしまっている稀代のマスターピース。派手なブレイクもスネアロールも用いられていないスタイルは今でも十分聴くに値する内容だ。しかし、この感動はそれまでの粛々とした展開があってこそのものであり、アルバム・トータルをもって物語性を持ったひとつの世界を創出していると言える。メロディアスでありながらも内向的であり、激しさと切なさを併せ持った傑作だ。

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(Last Modified: 2006.04)
No. 0118
Artist / Title V.A. / Global Underground 026 James Lavelle | Romania
Label Global Underground
Release 2004
Keyword Nu-Skool Breaks, Progressive

James Lavelleが2回目の担当となったGUの第26弾。ハウス系が中心となっている本シリーズでブレイクスを中心に用いた前回同様、本作でもブレイクスものをよく用いているが、ハウシーなもの、ヒップホップよりのもの、トランシーなものなど幅広く、また、4つ打ちものも織り交ぜているため、自分のスタイルはカテゴライズ無用と言わんばかりのクロスオーヴァー的な、ある意味進歩的な内容となっている。「Beauty And...」と題されたCD1はJames Lavelleが関わっている作品がずらりと並び、比較的軽めのものやメロディアスのものが自由に脈打つ中、淡々とストイックに重ためのリズムを刻み続けるMeat Katieの曲が際立ったものとなっているが、終盤はやや仰々しい展開に。「The Beast」と題されたCD2は、序盤は4つ打ちもので展開され、相変わらずひと際ストイックなオーラが強く出ているMeat Katieの曲たちを挟み、またハウスに戻るというやや意外な内容だが、M11「Fred Numf vs Five point 0 / Hong Kong Junkie (Medway Remix)」やM12「U.N.K.L.E. / In A State (Sasha Remix)」などの終盤の内容がとてもよく、最後まで爽快なものとなっている。全体的にはそれほど重たい内容ではないので、気軽に聞くこともできる、シリーズ中でやや他と毛色が異なる作品。

(Last Modified: 2006.04)
No. 0117
Artist / Title Pascal FEOS / Self Reflexion
Label PV Records
Release 2003
Keyword Techno, House, Trance, Progressive

Pascal FEOS.の2ndである本作は、ベテランらしい懐の深さが出た良作だ。1stであるNo.0027「Pascal FEOS / From The Essence Of Mimalistic Sound」と同じく、Mix仕様になっているのだが、前作との大きな違いは、シンプルな作りはそのままでありながらも作品全体に深みが増し、聴いているうちに徐々に引き込まれていく感覚を一層強く覚える内容となっている点だ。M1「A Spirit Second」やM3「Self Reflexion」など奥行きのあるハウシーなトラックたちでクールで抑え目にスタートするも、中盤に差し掛かるとシンプルかつソリッドなかっこよいM6「Base Network」やミニマルながらも上もののシンセが強烈なトランス感覚を呼び起こす名曲M7「Stream Electric」など知らずうちにギアが上げられ、その後もデトロイトよりのもの、トランシーなもの、ジャーマンなものなど、幅広いスタイルながらもどれもがどことなく統一感を持った曲たちで展開されていく。終盤は前作での名曲「Reactivate The Unexpect」を思わせるジラし系名曲M12「Mantronix」でクライマックスを迎え、スローなブレイクスM14「Down To Earth」で終了。個々の曲の素晴らしさだけでなく、アルバムをトータルで見たときの統一感は良く出来ており、完成度が高くスキの無い作品。

(Last Modified: 2006.04)
No. 0116
Artist / Title Draco / South Of The Border
Label Positive Productions
Release 2002
Keyword Breaks, Dub, Vocal, Crossover

mimaと森本直樹による日本発ユニット、Dracoの2ndは(悪い意味ではなく)nなんとも捉えどころのない作品だ。素朴でスタイリッシュなジャケットや、全体を一聴して感じるラウンジ的な印象はあくまで最初だけ。ダウンテンポなブレイクビーツやダブといったあたりの要素を基本としたリズム&ベースをバックに歌を載せていくのだが、単に家でエスプレッソをすすりつつ、読書をしながら聴いて心の安寧を得る…というような作品では決してなく、聴き込めば聴き込むほど聴き手の意識を自分の世界に引きずり込んでしまう、奇妙な力を秘めたアルバムだ。それは、パーカッションなども交えたゆるめの音を奏でる舞台の後ろで、ダブの激しいエフェクト具合、mimaの声の持つ独特の雰囲気、作品全体を覆う妙に脱力感を誘う牧歌的な要素などが絶妙なバランスを保ちつつ激しく複雑に主張しあっているためで、具体的に強烈なインパクトがあるというわけではないのにもかかわらず、聴いているとどことなく非現実的で不思議な感覚を覚えてしまうのだ。この言葉で表しづらい感覚は、名曲M2「What Makes It A Little Good (In Dub)」、M7「Ionosphere」あたりを耳にすればきっと強く体験できることだろう。ポップなようで実はかなりアングラ色の強い、色々な仕掛けが詰まった不思議なアルバム。

(Last Modified: 2006.03)
No. 0115
Artist / Title Surgeon / Basictonalvocabulary
Label Tresor, Dynamic Tension
Release 1996
Keyword Minimal, Hard, Experimental

1996年にTresorからリリースされた、Surgeonの2nd。No.0113「Surgeon / Balance」No.0114「Surgeon / Force + Form」と同じく、アルバム全体でのバランスがよく、聴いていて飽きさせない。本作は、ダークに徹した上の2作へ向かう過渡期的な印象もあり、デトロイティッシュでブライトなM5「9 Hours Into The Future」などメロディのあるトラックもいくつか見受けられるが、根底にあるストイックさに変わりはなく、どの曲も素直にかっこよい。シンプルでキレのあるM2「First」をはじめ、比較的素直な前半から一転、後半になるとノン・キックの薄暗い音響群がこだまするM6「Depart」、深いレベルへ意識を移行させる、冷たく瞑想的なM8「Waiting」、覚醒度満点の極厚シンセがスピーカーから飛び出んばかりの勢いで空間を震撼させる原始トランス的なM9「Scorn」など、素晴らしい曲たちが次々と待ち受けている。ラストも、当時のTresorらしいシンプルなM10「Return」で手を抜くことがない。やはり上2作同様、外交的な部分と内向的な部分のバランスがよくとれていて、ミニマルのアルバムとしてもアーティスト・アルバムとしても、とても刺激に満ち溢れた作品。

(Last Modified: 2006.03)
No. 0114
Artist / Title Surgeon / Force + Form
Label Tresor
Release 1999
Keyword Minimal, Hard, Techno, Experimental

Surgeonの4thアルバムである本作は、前作「Balance」よりもさらにストイックさが強められた、素晴らしい作品となった。1曲をさらに2〜3のパートに分け、4曲で40分強という構成になっているのだが、4曲ともただのミニマルでは終わらせず、強烈なオリジナリティを伴った変化をつけており、単調な展開で終わることない。シンプルな部分と複雑な部分など、個々のバランスもよく出来ており、1枚のアーティスト・アルバムとしても完成度の高いものとなっている。4曲ともクオリティは高く、適度にざらついた音質がかっこよい前半から変則リズムへと転換する後半への流れがよいM1「Remnants Of What Once Was」、硬質なミニマル〜薄暗くノイジーなエレクトロニカへと推移していく様相がクールなM2「Black Jackal Throwbacks」、メロディゼロの無機的なミニマル〜説明不可能な世界へ突如飛ばされ唖然させたまま一方的に終了する驚愕のM3「Returning To The Purity Current」、濃厚なパッドにファンキーなリズムが絡む異色のM4「At The Heart Of It All」と捨て曲が無いだけでなく、聴き込めば聴き込むほど新しい発見がある。「ミニマル・テクノのアルバム」と一言では到底表現しきれない、可能性に満ち溢れた深みある名作。

(Last Modified: 2006.03)
No. 0113
Artist / Title Surgeon / Balance
Label Tresor
Release 1998
Keyword Techno, Minimal, Hard, Experimental

Surgeonの3rdアルバムである本作は、「温もり」というものがほとんど感じられない、極めて冷たく鋭い音が集まった作品集だ。アブストラクトで不安な音響群M1「Preview」から、内向的で不気味なメロディとともに終焉するM10「Dinah's Dream」まで、どれもが聴く者に緊張感の連続を強いる無機的なサウンドを一貫して流し続ける。不規則的なフレーズが規則的なリズムとコラボレートするM3「Circles」、音色・展開ともに素晴らしいM7「Set Two」やM8「Box」のような、4つ打ちでハードめなミニマルもあるが、本作の素晴らしいところは、そうした曲だけでなく、変則リズムの上を冷たいシンセサイザーの音群が揺らめくM2「Golden」、オリジナリティが強烈なエレクトロM5「Pnuma」、結局最後までキックが入ってこないM7「Set One」、Reflexもお手上げなやりたい放題の超前衛的音響トラックM9「Dialogue」などの、ミニマル以外の曲がまたよく出来ており、アルバム全体をもって強烈で荒涼とした世界を創出しているところだ。また、シンプルでモノトーンでありながらも趣があるジャケットのアートワークは音楽にマッチした秀逸な内容であり、どこをとってもスキがない、非常に「Balance」が取れた1枚と言える。

(Last Modified: 2006.02)
No. 0112
Artist / Title V.A. / Yoshitoshi In House We Trust 2 by Behrouz and Envy
Label Yoshitoshi
Release 2002
Keyword House, Vocal, Progressive

In House We Trustシリーズ第2弾。BehrouzによるCD1は、ハウシーなトラックを中心に、ヴォーカルものも織り交ぜつつ序盤はストレートめに展開するも、中盤あたりから急速に闇に包まれる。宗教色の強いチャントに荘厳ささえ感じさせるトライバル・リズムが重なる、最も危険な自身の曲M10「Behrouz / Azab」で終着点となり、その後に目の前が一気に広がっていくように爽やかなトラックが続いたのち、哀しいM14「Humate / Choose Life (Rob Rives Remix)」で終了。EnvyによるCD2は、序盤はクールなハウスめの曲が続くも、中盤は歌ものが連続し、気づくと自身のM8「Envy / Falling (High Vocal Pass)」のころには何とも言えぬダークな世界の中心に。その後少し持ち直すも、顔を覆いたくなるほどダークなM12「ECVM / Circuit Breaker (John Creamer & Stephane K Main Mix)」で現実から突き落とされ、M13「Rob Salmon & Rob Rives / Body Talk」でそのまま落ちていってバッドエンド。どちらも息の詰まるような展開が続く、かなりの良作。この手の音が好きならば、ぜひ聴いてもらいたい作品。

(Last Modified: 2006.02)
No. 0111
Artist / Title V.A. / Essential Mix by Sander Kleinenberg
Label Warner
Release 2002
Keyword Tribal, Progressive

Sander KleinenbergによるEssential Mix。前半は、彼ららしいM2「Peace Division / Seriously Twisted」、ブレイクが大変なことになっているM3「Erick E + Matthew Dekay / This Category」、ブレイクで昇天直後に急降下するM5「Funky Green Dogs / Burnin' Up (Flatline Dub)」など、ダーク&トライバルなトラックを中心に救いがたく強烈に展開。中盤からはテンションも上がり目になり、ややアッパーなM7「Filterheadz / The One Who Got Caught」、ミニマルな展開にヒプノティックで予想外な要素が入り混じりグルーヴを形成するM8「Kao / Stonegroove」、なぜか歌ものブレイクスM9「Blackwatch And Greed / Gentle Rain (Jacked High RMX)」など、さらに盛り上がっていき、どう締めくくるのかと思いきや、胸がすくような爽快でトランシーなM12「Redanka / Out Of The Dark」が象徴するような明るく希望に満ちた世界に浮上して終了。前半の雰囲気と終盤のそれはかなりかけ離れていて難しいところだろうが、それほど違和感なくまとめあげているところは良いところ。終盤の明るめでメロディアスな展開が嫌いでなければ持っておくべき1枚。

(Last Modified: 2006.02)
No. 0110
Artist / Title V.A. / Nite:Life 012 Lexicon Avenue
Label NRK Sound Vision
Release 2002
Keyword Tribal, Dark, House, Dub, Progressive

Lexicon Avenueが担当するNite: Lifeシリーズ第12弾。ジャケットの夜のビル群ように、全体的には力強さを感じさせながらもクールな印象。序盤はパワーを抑えながら、ヴァラエティに富んだハウシーな内容で、徐々に盛り上げていく。M5「Dizzy & Jado / The Funk In Th Trunk」あたりからプログレッシヴ色が強くなっていき、自身のM9「Lexicon Avenue / From Dusk Till Dawn (Weekend World Mix)」でいよいよ盛り上がり、地味ながらもよく出来た名曲M10「Chab / The Dub Sessions」で深い闇に包まれながら予測不可能な領域へ。アンコール的なM13「System F / Exhale (Sander Kleinenberg Mix)」は、オリジナルの雰囲気がほとんど残っていないドロドロのディープ・トラックで終了。No.0109「V.A. / Nite:Life 010 Peace Division」と同じく統一感がとれてまとまっている内容で、なおかつ自分たちの良さもしっかりと出すことが出来ている。特に、本作の特長のひとつである、アカペラを積極的に用いて盛り上げてくれるところは聴きどころのひとつと言える。ハウス/プログレッシヴ好きなら必ず満足できるであろう1枚。

(Last Modified: 2005.11)
No. 0019
Artist / Title 4hero / Two Pages
Label マーキュリー
Release 1998
Keyword Club Jazz, Drum 'n' Bass, Breakbeats, Soul

4heroという恵まれたセンスを持つ2人が、20世紀も終わりかけようとする頃に世に送り出したマスターピース。管楽器や弦楽器をはじめとしたの各種生楽器、随所に登場する魂のこめられたヴォーカル、そしてドラムンベースという枠を鼻でせせら笑うかのごとく自由に躍動するリズム群。これらを電子的にコントロールしつつ曲として自分たちの世界を創り出しており、Page One、つまりCD1は結果的にいわゆるシンセらしい音がほとんど入っていない作品に仕上がった。「生楽器とエレクトロニクスの融合」というコンセプト自体は珍しいものではなくなったが、これほどまでに完成度を高めることができたことに心の底から尊敬の念を抱く。どの曲のどの部分にもスキが全く無い完璧な出来だが、特に、Page Oneの世界そのものとも言える内容のM9「Star Chasers」は誰もがきっと心を動かされるであろうほどの名曲。「陽」的なPage Oneから一転、ダーク&エクスペリメンタルで「陰」な顔を見せるPage Two(CD2)もまた本作の聴き所であり、内容もよいのだが、Page Oneの印象があまりにも強く、その前にややかすんでしまっているのはさすがに仕方ないところか。どことなくドリーミーで牧歌的な部分も感じさせる、稀代の傑作。音楽を嗜むすべての方に。

(Last Modified: 2005.11)
No. 0109
Artist / Title V.A. / Nite:Life 010 Peace Division
Label NRK Sound Vision
Release 2002
Keyword Tribal, Dark, House, Dub, Progressive

Peace Divisionが担当するNite: Lifeシリーズ第10弾。ファンの期待に十分応えてくれる内容で、ダーク&トライバルに加え、少し官能的な雰囲気も漂わせたものに仕上げている。リズムとベースだけで素晴らしいグルーヴを発生させるM1「Earth Deuley / Decomposition」で始まり、焦らず徐々に盛り上げていく十八番の流れで序盤は展開。中盤はブレイクが説明不可能はほどどうしようもなく暗いM4「Urban Soul / Flying To Be Free (Flying To Be Dark Dub)」や、人間味を感じさせない無機的なバック・トラックがシンプルに脈打つ中、男性の”Underground...”という呟きが空間に果てしなくこだまする驚愕の曲M8「Marcelo Castelli / Sonar (Rui Da Silva Mix)」などでビルドアップしていき、終盤に差し掛かる頃には大変なことに。ラストはスモーキーな世界にメランコリックなシンセサイザーのメロディが空から穏やかに降り注ぐ美しい名作M11「James Holden / I Have Put Out The Light」で終了。全体的に統一感も取れており、流れの作り方も上手くすんなりと最後まで聴くことができる。ミックスCDとして完成度が高く、派手さは全くといってほど無いものの、非常に上質な1枚であることに疑いは全く覚えない。「躍らせるツボ」をさりげなく刺激し続けてくれる名作。

(Last Modified: 2005.11)
No. 0006
Artist / Title X-Dream / Radio
Label Blue Room Released
Release 1998
Keyword German Psychedelic Trance

X-Dreamの3rd。素直に「かっこよい」と言える作品は、個々の曲だけでなく、全体的な流れやアートワークもよかったりすることも珍しくないが、本作もまたその例に漏れない。ひんやりとした質感のラジオの写真が載せられている、3面開きのデジパック仕様のジャケットのフタを開けると、その3面に渡って緑を基調としたラジオらしきものの基盤のアップが映し出されているのだが、これがまたサイケデリック。この時点で胸躍るものがあるのだが、サウンドの方もその感情の盛り上がりをさらに加速させるものとなっている。ラジオのチューニング音から始まりハードなトランスへとトリップしていくM1「Radio」、覚醒的なシンセサイザー音がスピーカーからとめどなくあふれ出てくるM2「Freak」、何とも形容しがたい夜向けのトラックM5「The Frog」、荘重な儀式を思わせる名曲M6「Psychomachine」など、どれもが強烈な力を持っており、そのパワーに飲み込まれそうになる。その後のX-Dream周辺のサウンドはよりテクノ色が強くなり、サウンドもまた重くなっていくが、本作はその地点への過渡期的な内容で、旧来からあるトランスのサウンドとドイツらしい硬いテイストが絶妙な具合でブレンドされた、稀有でオリジナルなサウンドとなっており、本作を名作たらしめている要因のひとつとなっている。とことんダークでありながらも、ハードでダンサブル。どこをとっても名作の1枚。

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(Last Modified: 2005.10)
No. 0108
Artist / Title V.A. / Yoshitoshi In House We Trust 3 by Luke Fair and Desyn Masiello
Label Logic
Release 2001
Keyword House, Percussive (CD1), Trancy (CD2), Progressive

Yoshitoshiとそのサブ・レーベルShinichiによるレーベル・コンピ・ミックスCDの第3弾。今回の担当はLuke FairとDesyn Masiello。Luke Fairが担当するCD1は、ライナーノーツに「an electric style that includes twisted vocal house,funky progressive and trippy electro-tech」とあるとおり、ハウスよりのトラックを中心に、ダークなもの、ディープなもの、ファンキーなものなどヴァラエティ豊かに展開し、ラストはM13「Sultan / Night Visions」で美しく終了。Desyn Masiello担当のCD2は、「Chiapet / Tick Tick」と「Mysterious People」をミックスしたM3、「Loudeast / Lights Off」と「Luzon / The Baguio Track」のアカペラをミックスしたM5など、明るめながらもややトリッピーな雰囲気で前半は進むも、後半はM7「Humate / Choose Life (Gee Shock Remix)」、M9「PQM / You Are Sleeping (PQM meets Luke Chable Pass)」など、テックなもの、トランシーなものなど、次が読めないストーリーとなっている。レーベル・コンピでありながらも、その懐の広さが垣間見ることのできる作品。

(Last Modified: 2005.10)
No. 0008
Artist / Title Yoshinori Sunahara / Take Off And Landing
Label キューンソニー
Release 1998
Keyword ???

電気グルーヴのまりんこと砂原良徳が「成田空港は遠いから新宿あたりにあると便利」という本気なのかどうか疑いたくなる動機でスタートさせた、いわゆる「飛行機シリーズ」3部作の第2弾。第1弾の「Tokyo Underground Airport」と第3弾の「The Sound Of 70's」が脇を固めて引き立てる本作は、メジャーで出たということが奇跡と言うべきほどの狂気の大作だ。音楽的に見れば、ハウス、ラウンジ、グラウンドビートといった言葉は挙げられるものの、そうしたクラブミュージック的な要素は全体からすればあくまで部分のひとつに過ぎず、それ以外の様々な要素(コラージュなど)がそれらとカオスティックに絡み合うことによって大きなひとつの混沌とした流れを作り出している。特にM6「2300 Hawai」のワープからM11「The Good Timing Of World Of Love Song」の賛美歌までの流れは、彼にしか創ることのできない超日常的な世界であり、「前衛的」という一言だけでは到底片付けられない。その年のベスト・ディスクに本作を選んだAndrew Weatherallは、どんな思いで本作を聴き終えたのだろうか。クラブ・ミュージックの枠を飛びに飛び越えた、全ての音楽好きが一度は聴くべき(そう、一度だけでもいい)大問題作にして大傑作。

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(Last Modified: 2005.10)
No. 0007
Artist / Title BT / Movement In Still Life
Label ポリドール
Release 1999
Keyword Euro Trance, Nu-Skool Breaks, Progressive

BTの3rdである本作は実に完成度の高い名作だ。一気に彼の知名度を上げることとなった前作No.0059「BT / ESCM」でもブレイクスへの傾倒は見られたが、本作ではさらにニュー・スクール・ブレイクス色を強めたリズムを前半で展開し、Sashaと共作したM2「Ride」など、どれもがまたかっこよい。また、買い手の多くが求めているであろうトランス・パートも、「Flaming June」的なM8「Godspeed」、ベスト・パートナーJan Johnstonが切なく歌う名作M5「Mercury And Solace」、Paul van Dykと共作した壮大なユーロ・トランスの名作M9「Namistai」といったハイ・クオリティな曲たちがしっかりと後半部分に待ち構えている。本作のもうひとつの魅力はコラボレーションで、上で挙げたアーティストのほか、Kirsty HawkshowとのM6「Dreaming」、DJ Rapとの「Giving Up The Ghost」、HybridとのM10「Running Down The Way Up」など、かなり積極的に取り組み、また、相手の持ち味をしっかりと引き出して「1+1=2」以上の成果を挙げているのも素晴らしい。良質な独特のポップ感は門外漢にもきっと受け入れられるものだろう。おまけに日本盤初回限定だとボーナスディスクにヒプノティックかつ哀愁が漂う名作中の名作「Sunblind」も収録されている。最後M11「Satellite」では自分がヴォーカルをとり、思いっきり普通のソングを展開しているところはなんともBTらしい。本作は、「『名作』という言葉はこのアルバムのためにある」などという陳腐な文章さえ浮かんでしまうほどの、クラブ・ミュージック系のアーティスト・アルバムにおいて極めて高いレベルにい続けることのできる傑作ではないだろうか。

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(Last Modified: 2005.9)
No. 0107
Artist / Title V.A. / Nocturnal Frequencies 03 mixed by Danny Howells
Label Logic
Release 2001
Keyword House, Percussive (CD1), Trancy (CD2), Progressive

Danny HowellsのミックスCDシリーズの第3弾。パーカッシヴなCD1は、前半はダビーなハウスM3「Halo Vega / Primative」、ディープなトライバルM4「Mo Shic & Zeidan / Nightstalker」、10分に渡り自分たちの世界に引きずり込むM5「John Creamer & Stephane K / I Wish You Were Here」など、派手さ・ハードさは決してないもののじわりと聴く者に働きかけ、その後どうなっていくのかと思いきや、大きな盛り上げを作っていくこともなく、ある意味淡々としたペースで終盤へ。ややソリッドなM9「Third Movement / Free」を経てラストはなぜかはハーモニーが美しいデトロイトM10「Funk Dvoid / Diabla」。一方CD2は、アッパーかつトランシーな内容となっており、トランシーなM4「Riva / The Hunter」、ややアバンギャルドなM6「Stylus Trouble / Sputnik (Mainframe Remix)」、エッジの効いたM10「Mike Vandenberg / Flightpath」と、ギアを上げながら進んでゆき、ラストにM12「Slam / Life Times」を持ってくるという気のきいた内容。どちらも色は違えどそれぞれのよさがあり、夜に車を走らせながら聴きたくなるような、そんな作品。

(Last Modified: 2005.9)
No. 0106
Artist / Title V.A. / Nite: Life 014 Dirty Grooves by Pete Heller
Label NRK Sound Vision
Release 2003
Keyword House, Progressive

Pete Hellerが担当するシリーズ第14弾。前半からややアゲた状態で始まり、スウィーピーなシンセとダビーな音処理がかっこよいM2「RulersOf The Deep / Dirty Grooves」、Peace Division節全開なM4「Joeski & DJ Chub / El Amor (Peace Division Mix)」、トライバル・ビートにダビーなフレーズが強烈に絡んでいく衝撃のM6「Soul Penetrator / Tribal Plesures」と、パーカッションを全体的に用いながらも独特のトリッピー感のある内容で、前半だけでもう完全に引き込まれるような内容。後半もそれは変わらず、鬼がつくほどトライバルなM8「Afrodeep vs Kult Of Krameria / Good Vibrations (Krameria's Tribal Mix)」、トライバルなトラックに船の汽笛と男の妖艶なソングが絡むどうしようもなく意味不明なM10「Oscar G & Ralph Falcon / Dark Beat」、表現に困るM13「Pete Heller & Tedd Pattaerson / Big Room Drama (Dramatized)」と来て、ラストは爽快にM14「King Unique / Sugarhigh」。ある意味ではJuniorらしい、彼なりのポリシーが感じられる、聴きごたえ十分な1枚。

(Last Modified: 2005.9)
No. 0105
Artist / Title V.A. / Global Underground 025 Deep Dish | Tronto
Label Global Underground
Release 2003
Keyword House, Progressive

Deep Dish担当のGU第25弾。ハウスよりのものを基本として、歌ものやプログレッシヴなものなどを用い、かつ全体的にやや憂いを帯びた独特な雰囲気を漂わせている。CD1は、序盤は歌ものM2「Sultan / Nightvisions」など美しめのトラックを織り交ぜつつハウシーに展開するも、中盤で急速にダーク・サイドに堕ちてゆきながらヒプノティックな世界に突入し、脱力系歌ものM12「Seroya / Only Your Love (Holme Ives Remix)」で彼岸に逝き終了。よりソリッド&プログレッシヴなCD2は、M3「Junkie XL & Sasha / Breezer」やM4「Sander Kleinenberg / Work To Do」など陰陽入り乱れた先の読めない展開に。翻弄されたまま迎えるクライマックスは、デトロイト色の強いM12「The Youngsters / Break Them Up」をはさみ、ラストに超名曲M13「Holden & Thompson / Nothing (93 Returning Remix)」を持ってきてあっという間もなく終了。流れだけでなく、要所で用いられる印象的なヴォーカル・トラックをはじめとした個々の曲のクオリティも総じて高く、トータルとしての本作の完成度をいっそう高めている。時間が経つにつれどうしようもなく引き込まれていき、聞き終わった後に包まれるこの不思議な幸福感、高揚感は是非体験してもらいたいところ。シリーズ屈指の名作。

(Last Modified: 2005.8)
No. 0104
Artist / Title V.A. / Global Underground 024 Nick Warren | Reykjavik
Label Global Underground
Release 2003
Keyword Spooky, Breaks (CD1), Trance (CD2), Progressive

Nick Warren担当のGlobal Underground第24弾。今回の場所はレイキャビクということで、アイルランドのアーティストの作品も起用されている。CD1は、ややエクスペリメンタルでダビーなダウンテンポ・ブレイクスが中心となっており、決してダンサブルではないけれども、クオリティは非常に高く、存在感がある。CD2は、うってかわってフロアよりでトランシーなトラックが中心となっており、ハードさはほとんど無く、M7「Starkid / Crayons」のような優しさにあふれた展開は必聴もの。CD1、CD2どちらにも共通するのは、無機質ではないけれどもどことなくひんやりとした感覚とミステリアスで寂しげなメロディーで、CDケース裏面に記載されている「Warren's Rumble Through Icy Breaks And Spooky Trance Is As Wild And Windy Iceland Itself.」というコピーもそれを表している。アイスランドの地にはまだ立ったことは無いけれど、インナー・スリーヴの写真を見たのちに目を閉じて本作に耳を傾けると、風景が頭に浮かんでくるような気もするほど、ある意味とても芸術的で雰囲気のあるミックスCD。果てしない寂寥感に満ちた名作。

(Last Modified: 2005.8)
No. 0103
Artist / Title V.A. / Renaissance presents Everybody by Sander Kleinenberg
Label Renaissance
Release 2003
Keyword House, Progressive, Funky

Renaissance発、Sander KleinenbergによるミックスCD。本作は、曲単位でみても十分に素晴らしいのだが、注目すべきはそれらの聴かせ方のように思える。CD1の冒頭M1「The Intro / The Club」は、フロアの外での会話からフロア内に行くまでの内容となっており、その次に控えるファンキーでセクシーな歌ものハウスM2「Solaris Heights / Midnight」にとても上手くつなげていたり、展開もCD1、CD2ともにファンキーで軽いタッチの雰囲気から、プログレッシヴ色を強めながらよりタイトでヘヴィーなそれへとスムーズに聴かせたりなど、よく出来ている。中盤から急速に地の底に堕ちていったのちに新しい世界に出会うCD1、ファンキーなハウスを中心に徐々に哀愁さを増しながら盛り上げていくCD2ともに申し分なく、純粋なハウス・リスナーもプログレッシヴ系のリスナーも幅広く楽しめるものとなっている。クラウドの歓声が入ったライヴ一発録りのようなスタイルのものももちろんよいけれど、本作のような、クラブの疑似体験的な(そんな大げさなものでもないけれども)内容のミックスCDもよいと感じられる1枚。手書きのコメントがたくさん書き込まれているインナースリーヴも面白い。基本的にきれいめの曲が多くて聴きやすいので、プログレッシヴ系門外漢にもお勧めしたい。

(Last Modified: 2005.8)
No. 0102
Artist / Title V.A. / Blance 005 James Holden
Label EQ
Release 2003
Keyword Progressive, Trance, Dark, Gothic

James Holdenが担当の、Balanceシリーズ第5弾。プログレッシヴなハウスとトランスの中間をいくようなサウンドを展開しているが、暗くくすんだような独特の雰囲気が作品全体に充満しており(特にCD1)、ある種のゴス感も感じられる。ドロドロとしたCD1は、M5「Petter / All Together」あたりからその感が強くなり始め、深みにはまっていき、何とも形容しがたい歌ものM10「Jase From Outta Space / Do What You Want (Infusion Sky Mix)」、上記の雰囲気が惜しみなく出されているダークなトラックM12「Nathan Fake / Outhouse」など、圧倒的な展開。やや美しめなCD2は、序盤短めの曲をつないでいきながら、晴れた冬空のごとく爽快なM5「FC Kafuna / Hayling (Kosmas Epsilon Mix)」で一気に盛り上げたかと思いきや、妖しげなM8「Epsilon 9 / Lifeformation (Infimal Machine Mix)」やエレクトロ風味のM9「Carl A. Finlow / Ghetto Server」、上ものの音色が魅了的なM10「Gill Nomis / Fore」など、ヴァラエティに富んだ展開で、最後まで飽きずに聴かせてくれる。芯がしっかり通った内容であり、なぜかどことなく牧歌的な印象があるのも素晴らしい。

(Last Modified: 2005.8)
No. 0101
Artist / Title Timo Maas / Music For The Maases 2
Label Hope Recordings
Release 2003
Keyword House, Techno, Progressive, Trance

Timo Maasの作品集+リミックス・ワーク集シリーズの第2弾。前作No.57「Timo Maas / Music For The Maases」での、ひとつのジャンルにこだわらない姿勢は相変わらず。デビュー・アルバム「Loud」でコラボレートしたKelisの曲をやや軽いタッチのハウスよりに仕上げたM1「Kelis / Young Fresh And New (Timo Maas Remix)」で幕を開け、中性的で絡みつくようなShirley Masonの歌声とドライなギターサンプルのループが素敵なブレイクスM2「Garbage / Breaking Up The Girl (Timo Maas Remix)」、極度に変調されたヴォイスと奇妙な電子音が前衛的すぎるオリジナル曲M4「Timo Maas / Unite」、「Doom's Night」で聴く者を魅了した2ステップよりのブレイクスが登場するM7「Spice / 69 Overdrive (Timo Maas Extended Vocal Mix)」など、息つく暇が無い。ラストのM11「Placebo / Special K (Timo Maas Full Vocal Mix)」に至っては、耳に残る歌声にダビー&プログレッシヴなトラックが最高の名曲。他にもStarcase、Moloko、Fatboy Slim、BT、Mobyなどのリミックスが収録されており、Timo Maasの人気の高さと、色々できる器用さを持ちながらも自身の持つ独特の質感や雰囲気を損わないセンスに改めて脱帽の1枚。

(Last Modified: 2005.7)
No. 0100
Artist / Title Downhill / Silent City
Label Gravity Plus Recordings
Release 2003
Keyword Downtempo Breaks, Dark, Dubby, Movie Music

The Deltaの3人によるサイド・プロジェクトである、Downhillの1st。ダウンテンポでダビーなブレイクスを基本とし、そこにThe Deltaのような映画音楽的要素や冷たい感覚を呼び起こす荒涼とした雰囲気が本作にとてつもないオリジナリティを付与している。ブレイクスのパターン、細やかな音処理、挿入されるSE、たゆたうような展開などどれをとっても素晴らしく、文字通り唯一無二の世界を創り上げることに成功している。全10曲捨て曲無しのよい出来なのだが、ウッド・ベースのループとスクラッチの絡みがかなりヒプノティックなM3「ED LAB」、厚く重い音のカーテンが虚空に響き渡るM5「Final Miles」、ダークサイドに引き込まんばかりの恐怖ブレイクスM8「Weaken Memories」あたりが白眉。どの曲も個性がありながらも、全体としてひとつの「色」を出しており、それはジャケットのデザインにも現れている。他の曲に頭一つ抜き出てダークでホラーなノン・ビートの音響群であるラストのM10「Silent City (Soundtrack)」が、その「色」の究極的な形とも言える。衝撃の1枚。

(Last Modified: 2005.7)
No. 0099
Artist / Title V.A. / Lost Language. Exhibition mixed by Solar Stone & Ben Lost
Label Lost Language
Release 2003
Keyword Euro Trance, Progressive

Lost Languageの音源のみを用いたレーベル・コンピでありながらも、ミックスCDとしてのクオリティのレベルも非常に高い名作。チージーには陥らず、適度に(ここが重要)メロディアス&ディープ&哀愁漂うトランス寄りのトラックたちはどれもが素晴らしく、流れもよく出来ているので聴いていて飽きない。関わっているアーティストたちはJames Holden、Leama & Moor、Steve Porter、Max Graham、Way Out Westといった有名どころから、Miro、V-One、Solar Stone、Midway、Lustral、Three Drives、Salt TankといったHooj Choonsでもリリースしていた懐かしの面子まで幅広くそろっており、歌ものが少なくインストが中心の内容でありながらも、誰が聴いても素直に高揚感が得られる内容となっている。透明感のある曲たちをつなげてゆき、心地よくアゲて終わるSolar Stone担当のCD1、よりメロディアスになりアッパーさを増しながら雲の中を高速で突き進んでいくかのようなBen Lost担当のCD2と、どちらも甲乙つけがたい。随所に散りばめられている往年の名曲に耳を傾けるもよし、派手なものに飽きたときに聴くもよし、墓場まで持っていくほどの1枚にするもよし、インナースリーヴに載っているこれまでのリリースの統一感あるジャケット一覧を眺めるもよし。完成された傑作。

(Last Modified: 2005.7)
No. 0098
Artist / Title V.A. / Gekko Beginners Guide mixed by Praha
Label Plutipus Records
Release 2002
Keyword Trance, House, Progressive, Dark

Plutipusのサブ・レーベル、Gekkoのレーベル・コンピ。名前のとおり「Beginners Guide」を標榜していることもあってか、2枚組みにもかかわらず価格はシングル程度に抑えている。2枚とも内容はインストを中心に、灰色の雲の中を突き進んでいくかのようにダーク&トライバル&プログレッシヴな、トランスとハウスの中間を行くサウンド。PrahaがMixしたCD1は、M5「Rouge / Jingalay (Praha Mix)」やM10「Praha pres. Xian / Pachinko (Chab Remix)」などの自身が手がけた曲を織り交ぜながら、BPMはそれほど上げずにトライバルなものからトランシーなものまで徐々に盛り上げながら展開させ、初の歌ものでありかつ妖艶でかなりかっこよいM11「Ratio feat. LDF / You In Me」で頂点に。UnmixedのCD2も、戦慄がほどばしる恐怖のM4「Chab / The Chab」、鬼トライバルなM5「Groovaholic / Big Mantra」、前衛的なM10「Rouge / Jingalay (Markus Schulz Remix)」と、CD1に劣らぬ内容。CD1、CD2ともに多様な中身で楽しませてくれるが、その一方、Gekko色とも言うべき芯もしっかり通っており、この内容でこの価格はかなりお得なものとなっている。

(Last Modified: 2005.7)
No. 0097
Artist / Title V.A. / Whoop! Records Collection:Two mixed by Nigel Dawson
Label Whoop! Recordings
Release 1999
Keyword Euro Trance, Progressive

97〜99年のWhoop!の音源をNigel Dawsonがミックス。トランシーなものを中心に、ユーロピアンな香りのする哀愁もの、プログレッシヴなものを織り交ぜながら上手く展開させている。1stのころのBTを思わせるM2「Absurd / Behaviour (Raditation Mix)」、Nigel Dawson自身による、繊細な感覚を漂わせるM3「Dominion / Outsider」、ヒプノティックなトラックM5「Human Movoment / Traveller's Theme」など、派手ではないがクオリティの高いトラックたちでゆったりと暖めはじめる。しかしNick Muirによる、壮大で果てしなく悲しいM7「Cabala / Dark Blue」で一気にテンションを上げ、クライマックスへ向けて展開の大きな曲をつないでいく。DawsonのM8「Dominion / Ultraviolet (Full Bloom Mix)」、この上なく寂寥感が漂っているM9「Kayastone / Atmospheres」と続き、M10「Skynet UK / Open The Floodgates '99」でハイライト。タイトル通りのかなり勢いのある曲で、長いドラム・ロールのあとのハードなシンセ・リフに頭が真っ白になること間違いなし。その後は整理体操的な曲で終了。流れもしっかりしていてよいし、ハイライトの持ち上げ方もやり過ぎ感がなくてよい。

(Last Modified: 2005.7)
No. 0096
Artist / Title V.A. / Deeper Shades Of Hooj volume three
Label Hooj Choons
Release 1999
Keyword Euro Trance, Progressive

Hoojのレーベル・コンピ第3弾。リリースは1999年だが、当時のHoojらしく、それまでのメロディアスなトランス路線からディープ&プログレッシヴ方向へと変わりつつある、レーベルの方針が表れた過渡的な内容になっている。それまでの路線を引き継ぐ内容と言えるCD1は始まりこそ大人しめだが、Tilt、Three Drives、C.M.、Katcha、Origin、V-OneといったHoojの全盛時代の立役者たちによる曲が並び、終盤はM10「Lost Tribe / Gamemaster (Signum Remix)」、M11「Salt Tank / Dimention (Voices Of Reason Mix)」という感動的な展開に。CD2は脱トランス的な内容で、CD1にも収録されていた「Katcha / Touched By God」のPeace Divisionによるダークなハウス・リミックスで幕開け。その後もノー・トランスな曲が多く、パーカッシヴなミニマル系のM3「Silvio Ecomo / Nemesis」やM5「Yin Yunk / Rise Mix」、地をはうようかのごときM4「Sam Mollison / Cry (DJ Gogo Mix)」など、ハマり系の展開に。その後はトランシーなものやブレイクスものなどで変化をつけてゆき、ラストは浮遊感漂うM12「Medway / Resurrection '99」。CD1、CD2ともにバランスもとれており、クオリティは保証済み。

(Last Modified: 2005.7)
No. 0095
Artist / Title V.A. / Hope Classics mixed by Leon Alexander
Label Hope Recordings
Release 2001
Keyword Progressive

Hope Recordingsの音源をA&RのLeon Alexander自らミックスを担当したレーベル・サンプラー。のどかに鳴る上ものが何とも不思議な感覚のM2「Mad Dogs / Sudden Journey (Leon Alexander Mix)」、透明感あるシンセ・パッドの下をリズムが駆け抜けていく爽快なM3「Starecase / Undecided」、繊細でありつつもきらめくようなシンセサイザーが美しいM5「Arine / Eternity」など、派手さはないものの徐々に暖めていく内容で前半は展開し、その後はM6「Muse / Sunburn / Timo Maas Mix)」、M8「Ian Wllkie / Guten Morgen (Dub Mix)」など徐々に激しさを増していきながら終盤へ。クライマックスはクールかつトランシーなM10「Sonic Infuision / Reformatted (Main Elements Mix)」、これでもかという程にたたみかけてくるシンセ・アルペジオの洪水に呑まれながら陶酔感・幸福感を味わえるM11「Max Graham / Shoreline」という申し分ないもの。強烈な印象を残させるようなものではないものの、人に聞かれたら素直に「よい」と言える作品。

(Last Modified: 2005.7)
No. 0094
Artist / Title V.A. / Transport 5 mixed by Quivver
Label Kinetic Records
Release 2001
Keyword Progressive, Gothic, Dabby, Dark, Trance

シリーズ「Transport」の第5弾である本作はQuivverことJohn Grahamが担当。CDを取り出す前にジャケットやインナー・スリーヴに目をやると、暗闇を背に燃えるシリーズのロゴ、随所に登場する原始ゴシック体のフォントなど、「ゴス」感が伝わってくる。実際内容の方もこの上なく暗く、M2「Dark Driver / Re-Vision 2 (Mara's Empire Of Filth Remix)」というリミックス名同様救いがたいほどに闇の香りがするトラックで早速度肝を抜き、同じようにダーク&ダビーなものを展開させてゆきつつも、中盤をやや過ぎたM8「SSHH / Hold That Body (Infusion Remix)」あたりからは力強さをも加えながら突き進んでいくという流れになり、M10「Loki / NYCU (James Holden Inertia Remix)」、M11「Red Moon / Basis」、M12「Paranoid Jack / Slave Driver」という、派手さは無いけども身体に直接訴えかけてくる曲が続く。ラストは新時代ブレイクスM13「John Creamer & Stephane K / I Love You (Hybrid Mix)」で幕引き。終始「ゴス」な内容で、息の詰まるような緊張感のある内容なのだが、どの曲も浮くことなくひとつの大きな流れを作っており、その統一感・完成度は美しいと感じられるほど。万人に勧められるものではないかもしれないが、素晴らしい内容であることは疑いない。

(Last Modified: 2005.7)
No. 0093
Artist / Title V.A. / Transport 4 mixed by Max Graham
Label Kinetic Records
Release 2001
Keyword Progressive, House, Trance

シリーズ「Transport」の第4弾でMax GrahamによるミックスCD。小手調べ的なCD1は序盤こそダークな雰囲気で始まるも中盤あたりからトランシーな曲で盛り上げ、M10「Max Graham / Tell You」で一発花火を上げて終了。注目すべきはCD2で、たゆたうシンセ・パッドと疾走するリズムの組合せがかっこよいM2「Blackwatch / Skin Deep (Gulf Of Tnkin Mix)」、ソリッドでクールなM3「Sonic Infusion / Reformatted」、自身のM4「Max Graham / Shoreline」と、早くも卒倒寸前の展開。その後も手を緩めずM5「Tata Box Inhibitors / Freet (Pascal FEOS Mix)」、その題名とは裏腹に非常にヒプノティックでマッドなM6「Timo Maas / No Trance」と続き、どさくさに紛れて「Ayumi Hamasaki / Vogue」のJunkie XLによる歌無しリミックスも登場し、M8「Hybrid / High Life (Live Version)」、M9「Underworld / Kittens」で最高潮に。一瞬の静寂ののち始まり、10分に渡り壮大な終焉へと飛び立っていく名曲M10「Conjure One / Redeption (Max Graham Dead Sea Mix)」でクライマックス。CD2の選曲と勢いはどこまでも圧倒的で一聴の価値あり。

(Last Modified: 2005.6)
No. 0090
Artist / Title Jam & Spoon / Tripomatic Fairytales 2002
Label Sony Music Entertainment
Release 1993
Keyword Ambient, Dub, Experimental, Techno

No.89「Jam & Spoon / Tripomatic Fairytales 2001」と同時にリリースされた本作は、トランス色が強くキャッチーな部分が大きかった「〜2001」とは異なり、アンビエント/ダブ寄りかつ実験色が強いものとなっている。クリアな部分とカオスな部分が交じり合う大作M2「N.A.S.A. Nocturnal Audio Sensory Awakening」、どこまでも反響するダブ処理されたコーラスに突如カメラの連続シャッター音がカットインされてゆく驚愕のM3「LSD Nikon」、アーシーな香りのするヴォーカルものM4「The Future Is In Small Hands」、穏やかに心を静めるM5「Salinas Afternoon」、荘厳なアンビエント・トラックをバックに、電話のダイヤル音がむなしくこだまするシュールなM6「V. Angel. Is Calling」、美しいアンビエントのお手本とも言うべき名作M8「Ancient Dream」、ややアバンギャルドな要素が混じった、哀しいメロディと歌声が感傷的なソングM11「Secret Kind Of love」、思いっきりレゲエなラストM12「World Of X-T-C」などどれもが一癖あって面白く、実は彼らが本当にやりたいのはこっちだったのではないかと思えてしまうくらいの完成度の高さだ。間違いなく「〜2001」と併せて聴くべき作品であり、注目度こそ「〜2001」には劣れど、内容の方は全く見劣りしない名作であることは確かだ。

(Last Modified: 2005.5)
No. 0089
Artist / Title Jam & Spoon / Tripomatic Fairytales 2001
Label Sony Music Entertainment
Release 1993
Keyword Old German Trance, Techno, Ambient

トランス黎明期の90年代初期のテクノ史における重要作品でもあるJam & Spoonの1st。ハードなものが主流だった当時に彼らが打ち出した、(それと比べれば)よりディープでメロディアスなスタイルは一気に広まっていったが、本作は正にその流れに乗った作品。と言ってもトランス一辺倒というわけではなく、かなりポップな歌ものトランスM8「Right In The Night」のようなものから、やや複雑な展開を見せるM1「Heart Of Africa」のようなダークで実験的な要素を持ったものもいくつか収録している。しかしやはり主役はトランスの部分であり、ややトライバルなリズム、祈りのコーラス、美しいシンセサイザーのハーモニーの3要素の共演がはるか高みへといざなうM2「Odyssey To Anyoona」、リリース後も何度も大物たちにの手でリミックスされ続けたM4「Stella」など美しい名曲が収録されているが、しかし最も美しいのは最後に収録されているM13「Stellas Cry」だろう。穏やかでゆったりとしたシンセサイザーたちが優しく出迎えるという荘厳な雰囲気で始まるも、リズムやピアノなどのフレーズが徐々に重ねられていきながら躍動してゆき、途中ブレイクを挟んで最高潮に到達したのちに静けさを取り戻してラストを迎えるという、壮大なストーリー性を持った名曲中の名曲であり、非の打ち所のない完成作品。本作は節々で音の古さを感じさせるのは否めないが、「Stellas Cry」のためにも、どうか一度は聴いてもらいたい一枚。

(Last Modified: 2005.5)
No. 0088
Artist / Title Spicelab / A Day On Our Planet
Label Harthouse
Release 1994
Keyword Old German Trance, Ambient

Harthouse時代のOliver Liebによるプロジェクト、Spicelabの2nd。4曲72分という異色の構成の、アンビエント色がかなり強い、ヒプノティックなトランス・アルバムとなっている。4曲それぞれ15分以上あるため、どれも展開に工夫がなされており、聴きごたえは十分。荒廃的なアンビエント〜まばゆい光が降り注ぐようにシンセサイザーの登場〜突如ダーク&ハードなトランス〜静寂というM1「Falling」、不気味な音響系〜パーカッシヴなリズムによる躍動〜クリアなシンセサイザーの登場ともに終焉に向かっていくM2「WeGot Spice」、カオスティックな序盤〜不安感で満たされる中盤〜闇の世界へといざなう終盤、という流れのM3「A Day On Our Planet」、ややディープ&ハードなトランス〜エレクトロ〜予測不可能なほどに仰々しいメロディとともに結末へ突き進んでいく、強烈な印象を残す壮大な名曲M4「Planet Spice」と、どれもが非常に個性的で飽きさせない。ところで、ジャケットやインナスリーヴに描かれている宇宙船などのCGのクオリティが微笑ましいくらいに思いっきり90年代初期風であり、それが本作をより一層未来的かつ哀愁的なものにしてくれているのが個人的にお気に入りな部分ではある。

(Last Modified: 2005.5)
No. 0087
Artist / Title V.A. / X-Mix-1 The MFS-Trip mixed by Paul van Dyk
Label MFS
Release 1993
Keyword Old German Trance

聴いてこれほどまでに幸福感と同時に哀切感に満たされるミックスCDが他にあるだろうか。Paul van Dyk、Humate、Mijk van Dijk、Cosmic Babyといった、90s初期のジャーマン・トランス・シーンを支え続けていた巨星たちのプロジェクトによるトラックをPaul van Dykが流麗にまとめたミックスCD。元々X-Mix Video Seriesの第一弾「The MFS-Trip」の音源のみを収録したサントラ的な作品であり、15曲全てがMFSの音源となっている。前半こそ控えめではあるが、M6「Microglobe / High On Hope」を皮切りに、M10「Humate / Love Stimulation (PVD Love Mix)」、M13「Cosmic Baby / Sweet Dreams For Kaa」、M15「The Vision Of Shiva / Perfect Night」など、言葉では表現できない感情をもたらす曲たちが次々と現れ、聴く者を優しく、しかし哀しく包み込んでいく。当時のジャーマン・トランスにしかなかったあの独特の「雰囲気」に包まれながらMFSの偉大さに改めて感服させられる、モンスター級の名作。いつまでたっても変わらない「何か」がここにはある。

(Last Modified: 2005.04)
No. 0086
Artist / Title The Delta / Force
Label ヴィジョンクエスト
Release 2002
Keyword Heavy, Industrial, Techno, German Pychedelic Trance

X-DreamのMarcus C. MaichelらがコンパイルしたUnmixedのコンピレーション。10曲中M2「Authentic / Vampire」を除いた9曲が、The DeltaやMidimilizなどの、いわゆるMarcus周辺(Marcus C. Maichel、Jan Muller、Wayan Raabe、Arene Schaffhausen)のプロジェクトたちで占められており、彼らの曲が好きならば間違いなく心に響くような内容となっている。M1「Der Interpret」やM10「G4 / The Final Conflict」などのアバンギャルドなエレクトロももちろんよいが、やはり真骨頂であるハードでダークなトラックたちが断然かっこよい。特にM3「Spirallianz / Battlejuice」〜M4「Midimiliz / Aeromode」〜M5「X-Dream / Thorazin」の怒涛の流れは鬼もおびえて逃げ出さんばかりのもの。収録曲のうち既に各名義のアルバムに収録されたものとそうでないものが半々くらいなので、4人の作品を持っていない人が初めて手に取るのに最適な作品とも言えるし、もちろん彼らのファンが聴いても十分に楽しめるであろう。しかし何よりも素晴らしいのは、本作が国内企画盤であるということであり、その点でVision Questには大きな拍手を送りたい。

(Last Modified: 2005.04)
No. 0085
Artist / Title Midimiliz / Antistat
Label Global Trance Network
Release 2002
Keyword Heavy, Industrial, Techno, German Pychedelic Trance

Spirallianzと同じWayan RaabeとArene Schaffhausenによるプロジェクト、Midimilizによる1st。No.84「Spirallianz / Blast Food」と同じくテクノ/ミニマル色が強いのだが、本作はそれよりもはるかに深黒の世界を創り上げており、強烈なインパクトを与えている。インダストリアルなエレクトロM1「Antistat」で幕を開け、冷たいシンセ・パッドが鳴る下を無機質なリズムが不気味に脈打ちながら疾走してゆくM3「Low Cargo」、ピンと張り詰めた空間をふいに恐ろしい「なにか」が一面を覆い始めるM4「Black Box」、No.20「V.A / Vision Quest Mix CD by X-Dream」にも収録された、ハイハットのアグレッシヴでソリッドな刻みが嫌がおうにも盛り上がるM5「Soopercharge」、Delta名義でも出てきそうな恐怖ホラーM6「Restore My Soul」など、個性的かつハイ・クオリティな曲が続き、思わず引き込まれていしまう。ちなみにシンセが暴れ回るラストのM9「Scandy Candy」のあとにはやはりシークレット・トラックが収録されており、数年後にリリースするDownHillのアルバムにも通ずるスロウでサントラ風のブレイクス・トラックとなっている。

(Last Modified: 2005.04)
No. 0084
Artist / Title Spirallianz / Blast Food
Label Spirit Zone
Release 2000
Keyword Crispy, Industrial, Minimal, Techno, German Pychedelic Trance

X-DreamのMarcus C. Maichelも1曲参加している、Wayan RaabeとArene Schaffhausenによるユニットの1stアルバム。言ってみればX-Dream周辺のサウンドなのだが、この1stはそれほどヘヴィーさやハードさは強くはなく、淡々としたDry & Crispyなトラックが10曲収められている。展開も基本的にミニマル・スタイルのものであり、ブレイクを経て一気に盛り上げていくのではなく、少しずつ音を重ねていきながら適度に高揚させていくものが中心となっている。前半はその典型とも言えるタイトル曲M4「Blast Food」のような曲が続くが、「重み」と「暗み」が増したM5「One Way Ltd.」やM6「Ghost Bridge」をはさんだ後は、怪しげな雰囲気のブレイクスM7「Run To The Sun」、もはや完全にCrispyなパーカッシヴ・ミニマルM8「Shaolin Shuffle」、光の届かぬ地の底で鳴り響いているかのようなM9「Heiterheute RMX」と、変化がついてくる。いわゆるキラー・トラック的な曲は無く、(よい悪いは別として)地味とも言えるようなものも多いのだが、ひとつひとつのクオリティは高い。ラストのブレイクスM10「The Re-entry」の後に収録されている、どうリアクションしてよいか困るシークレット・トラックもどうかお聴き逃しのないように。

(Last Modified: 2005.04)
No. 0083
Artist / Title X-Dream / Irritant
Label Global Trance Network
Release 2002
Keyword Heavy, Industrial, Techno, German Pychedelic Trance

X-Dreamによる通算5枚目のアルバム。既に紹介済みのNo.20「V.A / Vision Quest Mix CD by X-Dream」でその後の進むべきを示したのちにリリースされた本作では、超名作「Radio」よりもさらにテクノ/ミニマル色が強くなり、余分なもの(特に上もの)がそぎ落とされたものになっている。しかしその結果は「洗練された」というよりも、リズム部分が強調された「よりソリッドになった」という表現を用いたくなるような内容で、重たいキックと切り刻むようなハットの組み合わせ、ひとひねりを加えたブレイクで構成されたトラックたちはまさしく踊りたくなるような「ツボ」をこれでもかというくらい刺激してくれる内容で、フロアだけでなくCDで聴いても十分かっこよい。基本的な世界は「Vision 〜」で提示されたそれと大きくは変わらないのだが、各曲それぞれが多様な方向性に進んでいった内容になっているため、よりヴァラエティに富んでいるように感じる。もちろん本人たちは意識したわけではないのだろうけれど、もはや本作はトランスの枠を突き破ってしまっている。ちなみに爆発音とともに盛り上がっていく異色中の異色のM8「Intercorporal Stimulator」は名作「Coming Soon」とともに1999年に創られた、彼らにしか創れないオリジナリティの強烈な曲。これを聴くだけでも価値はあるはず。

(Last Modified: 2005.04)
No. 0082
Artist / Title Juno Reactor / Bible Of Dreams
Label Blueroom Released, ポニーキャニオン
Release 1997
Keyword Juno Reactor, Psychedelic Trance, Rock

Juno Reactorの実質的3rd。今までになく強烈に貫かれた個性があらわになっている。黒を背景にくっきりと浮かび上がる不気味で不可解な紋章という構成のジャケット、「Bible of Dreams」というタイトル、一歩間違えれば冒とくにも近い、ルネッサンス期などのヨーロッパの美術たちを勝手に改変してしまっている写真が並ぶ不謹慎なインナースリーヴ、非西欧の雰囲気をたっぷり用いたやんちゃなトラックたちなど挙げればきりがないが、何よりも制作費1億というM3「God Is God」の宗教的かつ象徴的な描写に終始する、シュールすぎるビデオ・クリップが本作の全てを表しているのかもしれない(本作には収録されてはいないが、未見の方は絶対に観ていただきたい)。パーカッションとシンセが踊り合う前を女性の祈りと男性のつぶやきが交差するM2「Conga Fury」、ロック的な力強さとアラビックな楽器群と妖艶な女性ヴォーカルが素晴らしいシナジー効果を産み出している衝撃的な名曲中の名曲M3「God Is God」、プリミティヴでシンプルなM6「Kaguya Hime」、重苦しいアンビエントM8「Shark」など、豪快かつ繊細な曲たちが並んでいる。正直に言えば、「God Is God」が強烈過ぎてそれ以外の曲が同曲に比べてインパクトがやや弱い印象も受けるが、さすがにそれは仕方ないところか。
【オマケ情報 : ここのサイトで「God Is God」のビデオが見られます!】

(Last Modified: 2005.04)
No. 0081
Artist / Title Oakenfold / Bunkka
Label Perfecto ほか
Release 2002
Keyword Oakie, Vocal, Break, Rock, Hip Hop, Trance
Paul Oakenfoldは、いまさら言うまでもなく「器用」な人物である。レーベルPerfectoを立ち上げ数々のアーティストを世に送り出したかと思えばゴアトランスにハマったり、数え切れないほどの著名アーティストのリミックスを手がけフロアを沸かせつつもブレイクスに傾倒したりと、その「器用」さは、「一貫性が無い」「適応力が強い」「流行に敏感」など色々な見方も出来ようが、とにかく彼の地位を高めたのにはその「器用」さが大きな役割を果たしてきたのは間違いない。そんな彼が10年以上のキャリアを経てようやくリリースしたアーティスト・アルバムは、予想通りの賛否両論の内容となった。映画にも使用された、ロッキンなM1「Ready Steady Go!」を幕開けとして、アメリカのマーケティングを意識してか、ほぼ全編ヴォーカル入りのブレイクス・トラックで構成されている。どことなく愁いを帯びたメロディ・ラインと透明感のあるシンセサイザーの音色がよく使われており、特に、美しすぎる名曲M2「Southern Sun」などに彼のよさが出てはいてはいるのだが、別の路線で来て欲しかったというファンも少なくはなかったであろう。「Southern Sun」のオリジナルそのものよりも、オリジナルの雰囲気をほとんどいじらずにリズムなどをフロア寄りに仕上げたTiestoの配慮がこもったリミックスの方が歓迎されたということが、その証左ではないだろうか。
(Last Modified: 2005.04)
No. 0080
Artist / Title Propellerheads / Decksandrumsandrockandroll
Label Dreamworks ほか
Release 1998
Keyword Big Beat, Breakbeats, Movie Music, Rock, Hip Hop
Propellerheadsによる、独特の雰囲気が漂ったトータルで楽しめるアルバム。リリースされたのが1990年代後半のものということもあり、いわゆる「ロックなテクノ」的なものもあるが、ヒップホップ、ファンク、ソウル、スパイ映画音楽(!?)などの要素も上手く取り入れたものとなっている。収録された曲はどれも基本的に展開は少なめでシンプルなものが多い。だが、そのミニマルさが「単調」で終わることが無く、むしろ聴き手を引き込んでしまうようなパワーを持っているのが上手いところで、M1「Take California」やM2「Velvet Pants」はまさしくその典型といった感がある。Shirley Basseyをフィーチャしたヒット曲M5「History Repeating」、アシッドなベースラインとハードなギターがブレイクスと絡む、アルバム中最もアグレッシヴなM7「Bang On!」、007のテーマ・ソングのリメイクというM9「On Her Majesty's Secret Service」、シンプルかつ忠実に盛り上げていく、最高にクールなM12「Spybreak!」など、よい曲が続く。本作はCMや映画で使われている曲も多くCMとしてはipodのM1、JaguarのM5、映画としてはMatrixのM12などがある。このシンプルさが苦手な人もいるかもしれないが、あまり深く考えずただ身を預けてみてほしい。なお、盤によっては2枚組みのものもあり、収録曲も異なるので注意のこと。ちなみにジャケットの写真は、いかにも彼ららしい。
(Last Modified: 2005.03)
No. 0079
Artist / Title Deviant Electronics / Blunt Instruments
Label Blueroom Released
Release 2000
Keyword Drum'n'Bass, Breakbeats, Trance, Dub
Blue Roomからリリースされた、2000年にリリースされたものにしては新しい感覚のアルバム。一番の根っこの部分にはサイケデリック・トランスがあるのだが、その上にドラムンベース、ブレイクビーツ、ダブなどを乗せ、好きなように調理してみましたという印象。音が空間内を自由に飛び跳ね回るM2「Free Radical」、ソリッドなドラムンベースのリズムが疾走するM3「Loud And Clear」のようなダークな曲調のものから、大きく壮大に展開していくM4「Suspense Hypothesis」のようなブライトな印象のものまで幅広く聴かせてくれる。中盤でトライバルなパーカッションにかけた緻密なエフェクトが戦慄のM6「On The Beach」を挟み、名曲M7「Tesco Siesta」ではスパニッシュなギターとフルートが絡み合う下を重低音ベースと生っぽいブレイクスがやや複雑に絡みながらグルーヴを刻んでいく。展開も申し分なく、Shpongleに通ずる部分も。ラストを飾るM9「Blunt Instruments」はダウンテンポなブレイクビーツの上に荒廃的なフレーズが覆ってくる曲。全体として他とは違うことをやろうとする気持ちはとても伝わってくるし、多少荒削りなところも感じられるが、新しい形のトランス・アルバムとしては成功と言える内容ではないだろうか。
(Last Modified: 2005.03)
No. 0078
Artist / Title Two Lone Swordsmen / Stay Down
Label Warp, ソニー
Release 1998
Keyword Breaks, Electro, Dub, Electronica, Melancholic
Andrew WeatherallによるプロジェクトのひとつであるTwo Lone Swordsmenの2ndである本作は、海の底深くに住まう者のメランコリックな感情の深淵を垣間見せてくれるかのごとくディープな作品だ。タイトルどおりのイメージを与えてくれる、深く音がこだまするアンビエントM1「Hope We Never Surface」で幕を開け、ダブ処理されたリズムと、一度聴いたら忘れられないベースラインが二つと無い世界を作り上げているM3「The Big Clapper」、シンプルで深みのあるトラックにかぶさるチープなシンセ・ストリングスに彼らのオリジナリティが現れているハウス寄りのM7「No Red Stoppings」、変則ブレイクビーツと牧歌的なメロディが救いようがないほどにシュールかつクレイジーなM11「Alpha School」、奥でほのかに暖かみのある音色のシンセ・パッドが鳴る手前を無機質で無感情なノイズのようなサウンドがリズムを奏でる、TLSサウンドここに極まれりといった感のM12「As Worldly Pleasures Wave Goodby...」など、13曲全てがバラエティに富んでいると同時に統一感が強く感じられるものとなっている。本作は他人といる時に聴くよりも、独りになった時にスピーカの音量をいつもよりもちょっぴり上げて目を閉じて聴き入って欲しい。海のように深いこの音世界に自らをしみ込ませていけば、底には新しい自己の内面の発見が待ち受けているかもしれない。なぜかそんな気がするのだ。
(Last Modified: 2005.02)
No. 0077
Artist / Title Leftfield / Rythm & Stealth
Label Columbia ※ 日本盤あり
Release 1999
Keyword Dub, Techno, Breaks, Reggae, Electro

Leftfieldの2ndアルバムである本作は、一言で言えば、重い。極端な例えだが、マッシヴな音がスピーカーから飛び出て、鼓膜を通じて脳にぶつかってくるかのような、それほどに強烈な作品である。M3「Chant Of A Poor Man」のようなレゲエ・スタイルの曲から、グルーヴィなブレイクスM2「Phat Planet」、ヒップホップよりのM1「Dusted」、ハードめな4つ打ちミニマルM4「Double Flash」など幅広く飽きさせずに聴かせてくれる内容だが、全ての曲がダブ処理されており、またその処理具合も素晴らしいの一言で、ヒプノティックで危険な様相をみせる。どの曲も、Africa bambaataaとのコラボレーションの末に産まれたサイバーなエレクトロM6「Africa Shox」に負けておらず、結果的にいわゆる「捨て曲ゼロ」の大傑作となった。個性的な各曲がひとつの大きな「うねり」を形成し、最終的には収束していくのだが、その最終地点であるM10「Rino's Prayer」は、もはや理性では説明不能なエネルギーによって聴く者を完全に圧倒してしまう恐るべき曲。ジャケットの黒の背景にうっすらと浮かび上がる日本鎧の神秘的な印象を裏切らない、内なるパワーに溢れている希代の名作。テクノ・ファンならずとも、一度この重たい「うねり」に大音量で身を預けてみてほしい。

(Last Modified: 2005.01)
No. 0076
Artist / Title V.A. / MM2 mixed by John Digweed
Label Bedrock, パイオニア
Release 2002
Keyword Bedrock, Progressive

John DigweedによるDJミックスCD。おしとやかな序盤から徐々にそして滑らかに盛り上げていく展開は、その音の波にただ身をあずけているだけで心地よい。10年以上も前の曲がDarren Emersonの手によってトランシーかつ優雅によみがえったM6「108 Grand / Te Quiero (Darren Emerson Remix)」で温度が一気に上がり、M8「James Holden / I Have Put Out The Light」でメランコリックに沸点に到達。その後一気に流れは変わり、覚醒的なシンセとダビーなトラックと女性ヴォーカルの組み合わせが何とも前衛的な、大御所SpookyによるM9「Spooky / Belong (Vocal Club Mix)」を挟み、同曲をよりクール&プログレッシヴ&サイケデリックにしたような、Charley Mayによる最高のリミックスM10「Mandalay / Deep Love (Charley May Remix)」でカオスティックに崩壊しながら幕引き。決して明るい雰囲気ではないが、かといってヘヴィーな曲が続くわけでもない。元々悪人相のJohnが黒系の服に身を包んでこちらをにらんでいるという、何を意図してこういう構図になったのか思わず理解に苦しんでしまうジャケットもすごいが、内容の方もさりげなくインパクトを与えてくれるものとなっている。

(Last Modified: 2005.01)
No. 0075
Artist / Title V.A. / Bedrock compiled and mixed by Chris Fortier
Label Bedrock, パイオニア
Release 2002
Keyword Progressive, Dark

Bedrockの傑作シリーズの第三弾。今回の担当はFade RecordsのChris Fortierで、CD1とCD2共に流れるような展開が素晴らしい。CD1は誰もいない深い森の奥で鳴っているかのようにディープ&ダビーなトラックが幽玄な世界を作り出していく序盤から、急速にソリッド&ダークさを増していきながら地の底へ潜っていき、最後は極めてストイックなブレイクスM11「Meat Katie / My Little Dancing Girl」〜ドロドロな暗黒ヴォーカル・ハウスM12「Sunscape & Chris Dee / Genetik (Chab Remix)」で締め括るという、非日常的な時間と空間の感覚を聴く者に覚えさせる好内容。CD2は、序盤こそCD1ほど無機的で張り詰めた雰囲気はそれほど無く、よい意味で肩の力を抜いて聴ける展開だが、中盤あたりからやはり激しさが増し始め、その流れがM9「Coco da Silva / @Night」で最下層に到達する。しかしその後は一気に急上昇し視界が開け、ラストは自身の美しい名曲「Losing Wait」でトランシーかつ爽やかに長かった旅を終わらせるという、こちらも素晴らしい内容。最初はとっつきにくい部分もあるかもしれないが、聴けば聴くほどにその素晴らしさが分かる内容で飽きが来ない。それほどに本作は質が高いと言えるし、クラブ・ミュージックが好きならばぜひ聴いてもらいたい一枚。

(Last Modified: 2005.01)
No. 0003
Artist / Title Shpongle / Tales Of The Inexpressible
Label ソルスティス、 Twisted
Release 2001
Keyword Psychedelic, World, Trance, Dub, Breaks

とてつもなくエネルギッシュなアルバム。収録された9曲全てが素晴らしく文句の無い出来であり、しかもそれらがつながって、全体としてひとつのオリジナリティに満ち触れた、奇々妙々で複雑なシュポングル・ワールドを創出してしまっている。Raja Ramの長い経験で培われたセンスとマインドがSimon Posfordの秀でたプログラミング・スキルと合わさった結果できたその世界は、世界中の民族音楽とエレクトロニック・サウンドをごちゃ混ぜにして、ダブで味付けをしながら好きに料理をしてみました、というような内容。この世界ではセオリーというものは無く、西欧と非西欧(こういう分け方自体に問題があるのかもしれないが)、電子楽器と民族楽器、4つ打ちとブレイクス、ダブやトランスなどのカテゴリといったものは意識されていないようで、二人にかかると全ての要素が、「そんな意味の無い分類はどうだっていいじゃないか」とも言わんばかりに楽しそうに笑顔で歌い合っているというような状況にまさになってしまっているのだ(それはRaja RamのPeace精神が大きく関係しているのかもしれないけど)。この宇宙規模のサイケデリック・ジャーニーは、大作であるM8「Around The World In A Tea Daze」で一応のピークを迎えるが、本作を聴き終えたとき、普段の日常生活では感じられないような「何か」を感じる取ることが出来るかもしれない。それほどに、このアルバムはエネルギーが詰まっていると言える。絶対に一度は聴いてもらいたい一枚。

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(Last Modified: 2005.01)
No. 0074
Artist / Title V.A. / Bedrock compiled and mixed by John Creamer and Stephane K
Label Bedrock, パイオニア
Release 2002
Keyword House, Progressive

好相棒によるBedrockからのこの名作は、"Joining the dots between progressive, tribal, deep and funky house"とケースに書いてある通りで、CD1、CD2共にダークな色に浸っており、時折登場する官能的な歌や囁きなどが印象的。CD1はM1「Peace Division / Take Me (I'm Yours)」でダーク&トライバルに始まり、ファンキー〜トライバルなトラックが展開する中盤を過ぎると一気に地底へ潜ってゆき、M10「MV / From The Underground」でもはや救い得ない所まで行き着いたかと思いきやラストに少し光明が。CD2は幕開けにしてはプロッグ色が相当強いM1「4Toasters / Real World (Part 2)」、精神が不安定になりそうな超暗黒的官能女性ヴォーカル・ハウスM2「Against The Grain / Seven (Hard Dub)」という流れで早速聴き手の度肝を抜き、その後も歌ものや囁きものが続いてきたと思いきや突然鬼トライバルになったりともはや無法地帯に。プリミティヴな感覚を覚えるM10「Patterns / Simplicity」、M11「Danny Tenaglia / Wow (The Y&T Mix)」で終幕となる。最後までこちらに歩み寄らず常に息が詰まるような展開で聴く者を選ぶが、個性的な内容で本当に素晴らしい。しかし、本作で最も危険で個性的なのは実はケースに4カット載っているJohnの姿ではないかという話もある。

(Last Modified: 2004.11)
No. 0073
Artist / Title V.A. / Trance Anthems 2
Label KSRコープ
Release 2001
Keyword Euro Trance, Vocal

個人的に、このレヴューを書いた日現在(2004.11)で、ここ数年に聴いた日本国内で企画されたユーロ・トランス系ミックスCDの中で最も好きな1枚。こういったジャンルのコンピは選曲がかなり重要になってくるが、M1「Human Movement / Love Has Come Again」を幕開けとして、Sander Kleinenberg、Chicane、Moogwai、Solarstone、Salt Tank、Tiestoなど、当時の日本で企画されたとは思えない(失礼!)メンツが多くを占めており、曲単位で聴いても素晴らしい。また、前半の哀愁漂うヴォーカルものの名曲の連続から後半のインストものまで、ミニマルなものやアッパーなものなど色々織り交ぜながら飽きさせずに聴かせてくれ、「Sexy & Deep Vocal Tunes, Balearic And Uplifting Tracks」と謳うだけあり、展開もよい。ラストもM15「Airawave / Save Me」と、最後まで真摯な姿勢を崩さない。途中のド派手なM9「Anjunabeats / Volume One (Above & Beyond)」も心地よく耳に入ってきてしまうほど。ちなみに、M5ではこの作品の企画者でもあるHiro Kuretaniの曲も収録しており、日本産にしてはかなりディープ&プログレッシヴな内容で、しっかりと流れを作るのに一役買っている。以上のように、日本企画盤ということを抜きにしても十分よい作品なのだが、悲しむべきは、リリース量がそれほど多くなかったことである。

(Last Modified: 2004.11)
No. 0062
Artist / Title Chicane / Behind The Sun
Label Xtravaganza Recordings
Release 2000
Keyword Balearic, Euro Trance, Ibiza, Chill Out, Healing

"absorb"という英単語には「吸収する/同化する」という意味から転じて「(人の関心などを)すっかり奪う」「(人を)夢中にさせる」という意味をも持つが、本作は、聴く者の意識を音に同化させ、心地よく我を忘れさせてしまうような力を持つ、まさしく"absorbing"な作品だ。1st同様バレアリックな雰囲気が全体を覆うなか、幻想的で穏静的な、言ってみれば「静」的な要素と、躍動的で高揚的な、つまり「動」的な要素が絶妙な具合でブレンドされ、そこにポップさとエモーショナルさを注入しつつ、なおかつクオリティを高く維持することに成功している。生のフルート、パーカッション、ギターなどが幽玄なシンセの音色にほのかに包まれていくM2「Low Sun」、穏やかなリズムと悲しげな歌声、アンビエンス感溢れるシンセ・パッドが完璧な美しさと調和を聴かせてくれる名曲M3「No Ordinary Morning」、神々しささえ感じさせる歌声と疾走するリズムの展開が素晴らしいトランスM4「Saltwater」、ブレイクでのギターとシンセ・アルペジオの登場がこの上ない高揚感を呼び起こすM5「Halcyon」、ポップで明るいながらもどことなく哀愁が漂っている、Bryan Adamsが歌う名曲M8「Don't Give Up」など捨て曲なし。どの曲も粗雑な部分は一切なく丁寧に優しく作りこまれており、作り手の本作に対する並々ならぬ気持ちがとても伝わってくる、そんな1枚。ひとたび再生すれば、きっとあなたは聴き入ってしまうはず。

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(Last Modified: 2004.11)
No. 0072
Artist / Title V.A. / Fear Of A Silver Planet mixed by James Holden
Label Silver Planet
Release 2001
Keyword Progressive

James自身のレーベルEasy Accessと、親レーベルのSilver Planetの曲を集めてJames自らがミックスした作品であり、レーベル・コンピ的なものとなっている。インナー・スリーヴにある、各曲がどのようにミックスされているかが解説されている図を見れば分かるが、多いときは4曲が同時にかけられていたり、1分程度しか使われていない曲があったりなど、構成としてはやや複雑である(といっても、ただ聴いている分にはそんな複雑さなど全くもってどうでもよいことなのだが)。収録された曲はどれもディープ&ダビーでありながらもメロディアスなトラックが多く、質もまた高い。Jamesの関連プロジェクトやリミックスが収録曲の多くを占めており、彼のワーク集としても楽しめる。ソリッドで疾走感のあるリズムと穏やかでトランシーなシンセの組み合わせは、大音量で聴けば嫌がおうにも気分が高揚し心酔させられること間違いなし。門外漢でもきっと、中盤以降の深遠な懐を持った曲たちに圧倒され、ハイライト的なM16「James Holden / One For You」が鳴っている頃にはこのマジカル・サウンドに魅せられていることだろう。「Horizons」がオリジナルではなくノン・ビートのリミックスなのはちょっぴり残念だが、それでも十分傑作と言える、ある意味でトランスの原点を感じることができる1枚。

(Last Modified: 2004.11)
No. 0071
Artist / Title V.A. / The Politics Of Dancing mixed by Paul van Dyk
Label Ministry Of Sound
Release 2001
Keyword Euro Trance, Progressive

PvDのキャリア初の公式的なDJミックスCD。一口に「DJミックスもの」といっても、現場での実際のプレイをそのまま持ってきたもの、スタジオでライヴ一発どりをしたもの、あとからミスなどを機材で修正したりしたものなど様々であるが、本作はそういった種のものとは異なり、収録する各曲を分解・部分的抽出し、そこにリズムやベースなどの新しい要素・フレーズを加えたりすることによって大胆に再構築し、自身の「色」を見事に表現することに成功している。ウォーミングアップ的なCD1は、自身のオリジナルはもちろん、U2のリミックスや、IioやTimo Maasなどの曲を交えながらじっくりと暖めていき、ラストは自身の「Out There」でハードに終わるという安心できる内容。CD2はその暖めた熱を引き継ぐかのようにトランシーでアッパーなトラックを序盤から展開し、BPMもそれに伴い上がっていく。M8「Lexicon 4 / Reach Me」などの中盤以降は作品中最高の盛り上がりとなり、4 Strings、Signumなどの曲を多様に織り交ぜつつ、飽きさせずに最後まで一気に聴かせてくれる。ラストのM16「Nu NRG / Dreamland」までになるとややお腹一杯な部分もあったりするが、それ程違和感を感じないのは彼のなせる業か。リリース元のことも考えれば、初のDJミックスCDにしては十分過ぎるほどの出来。

(Last Modified: 2004.11)
No. 0069
Artist / Title LTJ Bukem / Journey Inwards
Label Good Looking, Kinetic Records (2-54653) ※ 日本盤あり
Release 2000
Keyword Drum'n'Bass, Jazz, Soul
2000年にようやくリリースとなったデビューアルバム。「ノーコンセプトで作った」と本人は言いつつも結果的にはドラムンベースの枠からはみ出し、ソウル、ジャズ、ファンク、ヒップホップ、ハウス、デトロイトテクノ…など彼がこれまでに接し、影響されてきた多様なサウンドを消化し、作り出されたオリジナリティあふれる作品となった。タイトル通り、彼の内面に刻まれてきた音楽の歴史を感じ取ることができる。フェンダーローズとフルートを多く用いていることもあり、アルバム全体の雰囲気に統一感があって美しい。1枚目は中盤のブレイク後に出てくるサックスがしびれるドラムンベースのM2「Waterclors」、生っぽい質感のドラムとダブルベースが完全にマッチし、さらになぜか歓声付きのM6「Point Of View」をはじめ、7曲全て良い。ラストM7「Viewpoint」ではなぜかストリングスのみという驚きの内容。2枚目はもはやまんまソウルな歌もののM1「Sunrain」、4小節のフレーズを基本にミニマルに展開していく「Inner Guidance」など、どちらかというとドラムンベースから脱却したものが多く、新しい可能性が提示されている。ラストでは渋いハウスまで。どの曲もメロディアスなものも多いので聴きやすい。フロア仕様の曲がほとんど無いのは時代の流れもあり仕方無かったのかもしれないが、その分高い芸術性が感じられる。
(Last Modified: 2003.8)
No. 0068
Artist / Title Innerzone Orchestra / Programmed
Label マーキュリーミュージック
Release 1999
Keyword Detroit, Techno, Jazz, Soul
Carl Craigによるプロジェクト、Innerzone Orchestraによるアルバム。ジャズだけでなく、ファンク、ハウス、ソウル、ラップなど、色々な方面からの影響が色濃くうかがえる。生楽器もふんだんに使い、同時期にリリースされた4 heroの「Two Pages」同様この作品もこの作品もハーモニーが素晴らしい。前半はごっついブレイクスとシンセが絡むM4「Programmed」などのクセのある曲が続き人気は分かれそうだが、後半は名曲ぞろいが多く、エレピのインプロビゼーションとジャズなリズムが完全にマッチしているM10「Basic Math」、即興のフルートやパーカッションにハウスビートを載せ、ダブ処理された音で聴き手をトバす官能的なM12「Galaxy」、ピアノの即興演奏が盛り上がる、クラブジャズ系のコンピレーションにも収録されたりもしたM13「At Les」、デトロイト特有のシンセのコード感とジャジーなリズムトラックが絡む、シンプルできれいなラストのM14「Bug In The Bass Bin」など聴きどころが満載。特に後半の流れは一聴の価値ありで、よく出てくるピアノが印象的。ジャズとエレクトロニクスの融合を試みた作品はたくさんあれど、これは高い次元でそれを成功させている。聴き手を壮大な未来的、宇宙的世界へといざなってくれる珠玉の1枚。
(Last Modified: 2003.8)
No. 0067
Artist / Title V.A. / Global Underground 022 Dave Seaman | Melbourne
Label Global Underground
Release 2002
Keyword Progressive, Breaks

ブレイクスも用いたプロッグサウンド全開の1枚。1枚目はそもそもダンスビートになるまでの間がかなり長い。スペインギターと絶叫系のフラメンゴ風の歌が驚愕のトライバルハウスM4「Howie B / Making Love On Your Side (S Man's Dark Gypsy Mix)」からようやくダンサブルになるが、そこからは完全に最後まで黄泉の世界で大変なことに。2枚目は序盤こそ割とストレート目に盛り上がるも、中盤からはまたプログレッシヴ色が強烈に。M10「Ashland / Clear」ではなぜか女性ヴォーカルと歪んだギターが大活躍のそのままロックに度肝を抜かれ、次のM11「Lamb / What Sound (Tom Middleton Deep Step Mix)」ではオーケストラのシンフォニーとヴォーカルのメロディにこの上なく哀愁を感じてしまう。歌ものブレイクスでは名曲中の名曲。ある意味この連続した2曲を聴くだけでも価値あり。ある程度慣れていないと1枚目の展開に置き去りにされる確率高いが、逆に好き者にはたまらない作品。ここにはもはやハウスの呪縛から悠々と抜け出しているプログレッシヴの姿がある。美しいトランシーなもの、泥臭いトライバルなもの、やかましいノイジーなもの、エネルギッシュなロックなもの。制約の無いプログレッシヴだからこそこんなに多様な内容のDJができうる。真似しようと思ってもできない、まごうことなき大傑作。でもジャケットは100%サンプラザ中野。

(Last Modified: 2004.8)
No. 0066
Artist / Title V.A. / Global Underground 019 John Digweed | Los Angels
Label Global Underground
Release 2001
Keyword Progressive, House

彼のファンからだけに限らず、多くから強い支持を得ている好盤。ストレートにダビーな、プロッグハウスが中心で、派手に盛り上げることはせず淡々とトラックをつないでいきながら適度にアゲていくあたりがさすがに巧い。1枚目はM2「Satoshi Tomiie / Love In Traffic (John Creamer and Stephane K Remix)」、M3「Madam / Penetration」、M4「Electric Tease / Your Lovin' (16B Remix)」など、ジワジワと効いてくるようなトラックをつないでいくが、中盤から徐々にギアを上げていき、M8 Photek「Mine To Give (Satoshi Tomiie Remix)」からM9 Tijuana「Groove Is In The Air (Simon Remix)」への展開で頂点に。正統派な内容、展開だからこそ、そこに彼のセンスの良さがうかがえる。2枚目はM5 Roland Klinenberg「Inner Laugh (James Holden Remix)」、M6 Way Out West「The Fall (Bedrock Remix)」、M7 Quivverの「One Last Time」など、やはりダーク&ダビー路線で突き進んでいって、ラストはSalt Tank 「The Energy」のRemy Remixで、地の底に落ちていきながら終了。こちらもそれほど奇をてらわない正統派的内容。

(Last Modified: 2004.8)
No. 0064
Artist / Title Toires / Oued-Sanati
Label Dakini Records
Release 2002
Keyword Islam, Ethno-Ambient, Dub, Breaks

イスラーム色の強いエスノ・アンビエント。タイトルを始めアラビア語も頻繁に登場し、歌、ヴォイスサンプル、楽器など、イスラームなそれらを現代的なエレクトロニックサウンドで調理したサウンドは斬新でありかっこよい。またアンビエントといってもリズミックかつダブの影響が強く、同じDakini RecordsからリリースされたIshqの「Orcihd」とは大きく異なる。1枚目はイスラームな多重男性コーラスと時折入るダビーなシンセが危険なM2「Kamoun Soufi」や、弦楽器、パーカッション、ダビーなシンセ&ベース、歌のハーモニーが完璧なM9「Toinet」など捨て曲無し。2枚目はよりエレクトロニックな雰囲気が強く、アルバム中唯一の4つ打ちとトライバルなパーカッション、笛とダビーなシンセがかっこよいM1「Lelital」に始まり、音があちこちにトビまくる、2枚目で最も危険&かっこよい曲M2「Barmanu」、色々なヴォイスサンプルとシンセの催眠的な絡み具合のあと突如入ってくるリズムが激しくかっこよい、アルバムのハイライト的なM7「Kia」などこちらも全てよい。イスラーム教と日本は、仏教やキリスト教など同じ外来の宗教と比べてあまりつながりが深くなく、9.11の事件によって拒否感情も抱いている人もいるかもしれないが、このアルバムはそういった政治的、宗教的感情は一切抜きにして単純に楽しめる好内容となっている。

(Last Modified: 2004.8)
No. 0061
Artist / Title BT / Ima (今)
Label Perfecto
Release 1995
Keyword House, Progressive, Piano

デビューアルバム。複数のバージョンがあるが、ここでは紹介するのは2枚組のものを。タイトルはヘブライ語でのImaが「母」という意味であるのとかけてあり、CDにも漢字で「今」とある。全体的な雰囲気を表すキーワードは「海」。ピアノのバッキングが随所に使われた、ややプログレッシヴでトランシーなハウスが基本となっている。若干アングラ色が強く、2nd以降のポップなサウンドを期待しすぎると面食らうかもしれないが、その後の彼のプログレッシヴな部分はこの頃から感じ取れる。1枚目はオールドスクールなトランスを思わせるM3「Tripping The Light Fantastic」、跳ねるようなピアノバッキングとイルカの泣き声がどこまでも印象的な、アルバム中最もポップな名曲M4「Embracing The Sunshine」、色っぽい男性ヴォーカルもののM6-7「Loving You More」あたりが耳に残る。2枚目はTori Amosをヴォーカルに起用し、ポップでロックなものとなったM1「Blue Skies」や、Sashaが1枚目の曲をチョイスして42分間に渡ってDJミックスした、という豪華で大胆な内容のM3「Sasha's Voyage Of Ima」などボーナスディスク的内容。正直古さを感じさせる部分もあったりするが、彼のルーツが感じ取れる1枚。

(Last Modified: 2004.8)
No. 0060
Artist / Title BT / Rare & Remixed
Label Nettwerk
Release 2001
Keyword Euro Trance, House, Breaks, Progressive

94年から2000年までの、オリジナル曲集+リミックス・ワーク集に、他アーティストによるリミックスを少量加えたものをDJミックスしたレアでぜい沢な2枚組み。BTは「Flaming June」がターニング・ポイントであったことは否定しようもないが、本作もCD1は「E.S.C.M」以前の曲を中心に、CD2がそれ以後の曲を中心に収録されている。元々ハウス畑にいただけあってCD1は「Ima」のようなアングラでトランシーなハウス系のものが続く中、M4「Shame (Way Out West Mix)」は救いがたいくらいプログレッシヴなミックスで異彩。後半は決別する前のDeep Dishとの共作M10「Prana / The Dream」など、かなり直球ハウスな初期の音源も聴ける。CD2は「Movement In Still Life」の国内初回盤収録の壮大な名曲プログレッシヴ・トランスM1「Sunblind」で幕を開け、「Godspeed (Hybrid Mix)」などのブレイクスやM7「Blue Skies」などで盛り上げ、クライマックスはベースラインだけで強烈なグルーヴを作り出すM9「Dina Carrol / Run To You (BT vs PvD Mix)」、歌詞は分からないけど思わず両手を挙げて一緒に歌いだしてしまいたくなる素敵な歌ものM10「Sarah McLahlan / I Love You (BT Mix)」、そしてM11「Flaming June」、という卒倒寸前の内容。門外漢もファンも満足できるであろう1枚。

(Last Modified: 2004.08)
No. 0059
Artist / Title BT / ESCM
Label イーストウェスト
Release 1997
Keyword Euro Trance, Breaks, Drum 'n' Bass, Progressive
「幻想的な」という表現が似合う作品ではないだろうか。BTの才能を決定的に世界に知らしめることになった本作では、既に彼のスタイルが確立されており、トランス系のアーティストとして認識はされていながらも、アルバムではブレイクスなどにも積極的に挑戦をしており、かつその方面のクオリティも非常に高いものとなっている。また本作では非西欧的な民族音楽の要素や、当時はまだ若かったドラムンベースを取り入れたり、ディストーションギターがうなるハードロックをやってしまったりなど、同じことを繰り返すのではなく(それが例え成功に終わったとしてもである)、新しいことをやろうという姿勢が伝わってきてよい。なおかつ、若干アンダーグランドよりの内容だった1stにポップさと力強さが加わり、作品としての完成度は相当高いものとなった。幻想的で幽玄なシンセサイザーのメロディが疾走する、クラブ史に残る名曲M3「Flaming June」、若かりし頃の(失礼!)Jan Johnstonによるエンジェリックな歌声とBTによる幻想的なバック・トラックの組み合わせが聴く者に幸福感と切なさを感じさせてくれるM4「Lullaby For Gaia」、97年で既に21世紀型ブレイクスをやってしまっているM9「Love, Peace And Grease」は必聴。ちなみに、映画「2001年宇宙の旅」をご覧になった方は、本作のジャケットを観て声をあげて驚くかもしれない。名作。
(Last Modified: 2004.08)
No. 0009
Artist / Title Sasha / Xpander EP
Label Deconstruction, Ultra Records
Release 1999
Keyword Progressive, Breakbeats

結局よし悪しというものは人それぞれの基準によるものであるから、普遍的によいものというものはありえないのかもしれない。しかしそれでも、この曲に関しては、何の惜しみもすることなくただただ賛嘆の声を出すのみであり、大げさな話ではなく、この曲は今まで聴いてきた全ての音楽の中で最も心を動かされたもののひとつであるし、初めて聴いた時の衝撃はこれからも忘れないであろうと、論理的ではなく身体的に、思えてしまう。本作のタイトルにはEPという言葉が付いてはいるが、10分間に渡るこの壮大な名曲M2「Xpander」だけでなく、荒涼的でありつつも感傷的な部分をも持ち合わせたM3「Belfunk」、プログレッシヴでゴーアンなブレイクスM4「Rabbitweed」、静謐に始まり神気を帯びながら終焉へと向かうM5「Baja」と、ミニアルバム的な内容となっていて、どれもがやはり10分を超える大作であり、かつクオリティは完璧な出来上がりとなっている。目を閉じて聴いていると、純粋に音に自我が向かい合い、幸福感と救済感と共に吸い込まれていくような、そんな感覚さえ覚える。ここまで散々語ってきたけれども、もうプログレッシヴだとかトランスだとか4つ打ちだとかブレイクスだとか難しいことは抜きにして、クラブミュージックが好きなのであれば一度は絶対に聴いてもらいたいと心の底からそう思える。まさしく芸術的な傑作。

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(Last Modified: 2004.07)
No. 0058
Artist / Title Way Out West / Way Out West
Label Deconstruction
Release 1997
Keyword Techno, House, Trance, Breaks, Dub

UKの天才コンビによる、記念すべき1stアルバム。既に様々な要素を詰め込んで、独自の世界を創り出している。時代の流れを反映してか、ブレイクビーツの割合が多い一方、キレのあるフロア・ライクな4つ打ちものも収録しており、聴く者を飽きさせない。ピアノと幻想的なシンセサイザーにブレイクビーツが絡むM1「Blue」、ブレイクビーツ・トランスとも言うべき名曲M2「The Gift」、リズムがブレイクビーツから4つ打ちになり、一気に最高潮に向かってドラマティックに盛り上がっていくアッパーな展開が相当かっこよいM3「Domination」、哀愁漂うメロディがなんとも切ないM5「Questions Never Answered」、プログレッシヴかつトランシーなM6「Sequoia」、プログレッシヴな歌ものM7「Ajare」、サイケデリックでミステリアスな、ゴアにも通じる激しさを持った強烈トランス・トラックM8「Drive By」、一転して汗臭いファンクネスで充満した、名前もそのままなM9「King Of The Funk」など、97年の時点でこうした音を展開していたと言うことだけで驚くに値する。それぞれのフレーズの音色、パターンがこれ以上なく練りこまれており、聴いていると、どこか遠くの地へ意識が行ってしまうかのような、そんな引き込む力を持っている。サウンド的に所々時代を感じさせる部分もあるが、彼らの才能が如何なく発揮された作品。

(Last Modified: 2004.07)
No. 0057
Artist / Title Timo Maas / Music For The Maases
Label Hope
Release 2000
Keyword House, Trance, Techno, Breaks, Funky, Progressive

変名を含めたTimo Maas自身の作品と、手がけたリミックス・ワークを集め、DJ Mix仕様で20曲を2枚に分けて収録したベスト盤的な本作は、彼らのオリジナリティとも言うべき、テクノ、ハウスを基本とし、ブレイクスもさりげなく取り入れてしまうそのスタイルは独自のトランス感、ファンク感も帯びており、まさしくジャンルレスであると同時に、ストレートにフロア志向なものとなっている。耳に粘りついてくるようなベース・ラインと2ステップが逆立ちしたような変則リズムの組み合わせが最高にクールなクラシックM1「Azzido Da Bass / Dooms Night (Timo Maas Mix)」を皮切りとして、M2「Muse / Sunburn (Timo Maas Breakz Again Mix)」などブレイクス中心の序盤から、ストイックなリズムが脳を揺さぶるM6「Kinetic A.T.O.M / ATOM Noise」や、ミニマルな展開にトランス感覚を覚えるM7「Timo Maas / Riding On A Storm」やM9「Timo Maas / Der Schieber」などのキラー・トラックの連続となるDisc1が非常に素晴らしいが、Lustral「Everytime」やPoseidon「Supertransonic」などのリミックスをはじめとしたトランシーなトラックが多いDisc2も当然よい(なぜか最後はトライバルに)。ターゲットを問わない理想的なダンス・アルバムのひとつの形。

(Last Modified: 2004.06)
No. 0056
Artist / Title Sorma / 亜 Mirage Of The East
Label パシフィックムーン
Release 1999
Keyword Sophisticated and Electronic Asian Music
アジア音楽文化を現代的な手法と融合させた作品をリリースするPacific Moon Recordsからリリースされた、日本のクリエイター集団Sormaの3rd。トランス色が強くダンサブルだった2ndをよりオリジナルのイメージに作り変えたリメイク盤といった位置付けであるが、結果呈示されたのはダンス色がほぼ排除された、ニューエイジ的なサウンドにも近いもの。バリのガムランやモンゴルの馬頭琴、インドのシタール、日本の尺八といったアジアの楽器たちが、時にはピアノやヴァイオリンや賛美歌などの欧風の要素と共に、シンセサイザーやリズムなどのデジタルサウンドと違和感無く調和し、一度聴いたら忘れられないほどのインパクトを持った至高の作品を作り上げている。それらを支えるインドやモンゴルでメンバーが発掘してきた歌姫による伸びやかな歌も素晴らしい。このように書くと、統一感の取れていない中途半端な作品なのではないかと危惧する方もいるかもしれない。しかしその不安もM1「Gumbalo」を聴けばきっと払拭されるであろう。「音楽に国境は無い」というもはや陳腐化された言葉を、改めて意味を持って私たちに再度認識させてくれる力を本作は持っている。ケースに付属されている線香の香りに包まれながら、ちょっぴり未来的でアジアンな世界に想いを馳せてみるのもまた心地よい。
(Last Modified: 2004.05)
No. 0055
Artist / Title Sven Vath / Contact
Label Virgin, Ultra Record
Release 2000
Keyword Electro, Techno, Trance, Experimental

衝撃の3rdから2年後に出た4th。今作でも方向性が大きく変わり、今度はドイツの演歌的存在(?)、エレクトロにやや傾倒したものになっている。聴き手に開かれたキャッチーなものが耳に残る一方、2ndで聴かせたような複雑で内向的な展開も増え、結果的に非常に異色な作品となった。すなわち、エレクトロビートにトランシーなシンセ、Svenの囁き声の組み合わせがいかにもドイツなM1「Passfinder」、4つ打ちに直線的で野太いシンセ・ベースとピコピコとしたシンセが絡むM04「Your Sweat (Dein Schwiss)」、曲間無しで始まり、エレクトロニックでトランシーなミニマルで、アルバムで最もフロア・ライクなM05「Smuggler」といった中盤あたりまでは比較的ストレートだが、それ以降からは、何とも形容しがたいM06「Contact」を皮切りに、救いようがないほどに暗く不気味な音響トラックM07「Once More...」、普通の牧歌的でノン・ビートなトラックかと思いきや、次々とシュールな要素が絡んでくる、09分以上に渡るサウンド・ジャーニーM10「Privado」といった気難しい内容の曲が続くのだ。ラストのM12「Agent P.」に至っては唖然たるのみである。よく言えばエクスペリメンタルであるが、前作を聴いてからファンになった人が、これを聴いてどういった反応をするのか興味深い。本作はそれほどのインパクトを持った、クレイジーな作品だ。

(Last Modified: 2004.04)
No. 0054
Artist / Title Sven Vath / The Harlequin- The Robot And The Ballet-Dancer
Label Eye-Q
Release 1994
Keyword German Trance, Ambient, Dark

Sven Vathの2ndにして問題作。名作と言われた1st「Accident In Paradise」から1年、それを乗り越えようとして彼が提示した世界は多分に内向的かつ精神的であり、複雑怪奇だ。導入のM1「Intro」からして既に聴き手をあざ笑うかのような超現実的な展開を見せるが、その後もホーミーが流れる牧歌的なM2「Harlequin Plays Bells」、ゴア・トランスにも近いダークなトランスM3「Harlequin - The Beauty And The Beast」、12分間至福のひと時に浸れる極上のアンビエントM4「Harlequin's Meditation」、タイトル通りのM6「Robot」、荘厳な序盤から一気に壮大なトランス・トラックに変貌していく名曲M8「Ballet - Fusion」など、道化師、ロボット、バレエ・ダンサーが登場する9つの楽曲たちはひとつに繋がれて73分にわたる大きなストーリーを作り上げている。M9「Ballet - Dancer」で静かにその幕が閉じられた時に聴き手だけが体験することができる、この深い感情はもはや言葉では表現は不可能な領域だ。コンセプトも含めて、個人的には大傑作。次作で方向を転換したものうなずける、ある意味で究極的なトランス・アルバムのひとつの形。

(Last Modified: 2004.03)
No. 0053
Artist / Title Sven Vath / Fusion
Label 東芝EMI
Release 1998
Keyword German Techno, Minimal, Trance

本人名義での3rdにして名作。最初のアルバムが高評価の場合、次の一手というのは批判されやすいものだが、実際2nd「The Harlequin- The Robot And The Ballet-Dancer」のころはかなり彼にとっても苦しい時期だったようだ(個人的には2ndも名作だが)。しかし、3rdにて彼は完全に新しい方向性を打ち出すことに成功した。これまでのような内に内に進んで行かんとするダークなパワーは鳴りを潜め、あるのは曲作りが楽しくて仕方ないという彼の気持ちが伝わってくる程にブライトで外交的な姿勢だ。そのことはブラス、鉄琴、スクラッチといった今までにはありえなかった、言ってみれば「生」の感触を喜びをもって伝えるような暖かみのある人間的なサウンドであふれるM1「Fusion」で聴くものに訴えかけてくる。その後もアラビックでダビーなダウンテンポ・ブレイクスものあり、浮遊感漂う心地よいトランシーなものあり、クレイジー度が相当高い危険なエレクトロあり、ゆったりとしたジャジーなものありと、別人かと思うくらいの懐の広さになっており、かつそのクオリティも決して浅いものではない。それらの結晶とも言えるM5「Scorpio's Movement」はもう頭が正常を保っていられなくなる程にかっこよすぎる、トランシーでハードなミニマルな4つ打ちテクノ。これはトランスを知り尽くした彼だからこそ、また、DJとして長い間クラウドの腰を振らせつづけてきた彼だからこそ作りえた完璧な一曲だ。改めてもう一度言いたい。これは名作だ。

(Last Modified: 2004.04)
No. 0045
Artist / Title Orbital / Orbital 2 (The Brown Album)
Label Internal
Release 1993
Keyword Techno, Trance

Orbitalの2nd。本作は1stと共に名前が付けられておらず、一般に、1stが「Orbital (The Green Album)」、2ndの本作が「Orbital 2 (The Brown Album)」と呼ばれていることがあるので、今回の表記はそれに従った。本作で有名なのはやはりM2「Lush 3-1」、M3「Lush 3-2」、M9「Halcyon + On + On」であろう。オリエンタルなメロディを奏でるシンセサイザーとシンプルな4つ打ちの原始的なリズムの組み合わせがよい前半から、ややハードでより東洋的な雰囲気になる後半への流れがかっこよいM2「Lush 3-1」とM3「Lush 3-2」ももちろんよいのだが、それよりも、いくつものミスティックな女性のヴォイス・サンプル・ループ、ひとつの点に向かって厳かに進んでいくかのようなスロウな展開、包容力あふれるシンセサイザーの響きのコンビが、テクノ史上最も美しい曲のひとつと言い切ってしまいたくなるほどの9分以上にわたる壮大かつ壮麗なトランス・トラックであるM9「Halcyon + On + On」は、今もなお燦然と輝き続ける名曲中の名曲だ。思いっきりゴア・トランスなM6「Remind」も入っていたりなど、全体的に時代を感じさせてしまうのは否めないところだが、それでも彼らの基本がここにはある。

(Last Modified: 2004.04)
No. 0051
Artist / Title V.A / Nubreed Satoshi Tomiie
Label Global Underground
Release 2002
Keyword Progressive

Global Undergroundによる人気ミックスCDシリーズ、「Nubreed」の6作目。今回起用されたDJは富家哲。Anthony Pappa、Danny Howells、Steve Lawler、Sander Kleinenberg、Lee Burrigdeというこれまでのそうそうたるラインナップに彼が加わったことは、単純に日本人として嬉しい限り。気になる内容もその期待を裏切らないもので、穏やかでハウシーな序盤から、Lexicon AvenueやTijuanaなどの名曲でジワジワと確実に盛り上げていくCD1、トランシーで美しい雰囲気で始まり中盤で暗黒世界に潜り込み、あるひとつの歌から一気に感傷的なクライマックスへと向かっていくCD2と、どちらもクセがあまり無くまとまったものになっており、比較的聴きやすい。ダークなものを基本としつつも、トランシーなものやハードなものを種々織り交ぜながら構築していくその世界の質の高さには頭が下がる思い。プログレッシヴ・シーンを知る第一歩としても充分だ。また、自身のレーベルであるSaw Recordingsの音源も積極的に使用しており、Moogrooveといった日本人アーティストの曲も収録されているのにも注目したい。日本人であることを考慮に入れずとも、聴くべき作品。

(Last Modified: 2004.03)
No. 0049
Artist / Title Boom Boom Satellites / Umbra
Label ソニー
Release 2001
Keyword Rock, Dub, Jazz, Breaks

傑作「Out Loud」から3年のブランクを経てリリースしたBoom Boom Satellitesの2ndフルアルバム。基本的には、前作の流れを組んだものをより深化させたものとなっている。すぐそこで演奏しているかと思うほどに生の質感が伝わってきた、と思ったらお得意のダブ処理で一気に飛ばされるM1「Sloughin' Blue」、ドラムやトランペットなどのインプロビゼーションの兼ね合いがクールでフリージャズなM3「Brandnew Battering Ram」、Boom Boom Satellitesサウンドに合わせたラップがかっこよいM4「Your Realtity's A Fantasy But Your Fantasy Is Killing Me」、アルバム中随一内向的なM5「Ego」、ダークな曲調とつぶやくヴォーカルの音処理が彼ららしい、アルバムヴァージョンのM7「Fogbound」など、相変わらずオリジナリティでは他の追随を許さないレヴェルに達している。特定のスタイルにこだわらず、様々な方向を持った要素をひとつにまとめるということ自体はそれほど目新しいことではないが、彼らの場合その要素のチョイスと、ブレンドの仕方が素晴らしい。もちろん、当の本人達はそんなことを意識しているわけではないだろうが。外交的で肉体的なパワーに満ち溢れたここにはもはや「Joyride」の面影はほぼ無きに等しいが、「Out Loud」が好きならばすんなりと受け入れられるはず。

(Last Modified: 2004.02)
No. 0048
Artist / Title Boom Boom Satellites / Outloud
Label ソニー
Release 1998
Keyword Rock, Breaks, Dub, Jazz

ミニアルバム「Joyride」の頃よりもずっと生っぽく、もっと言ってしまえばロックっぽくなった1stフルアルバム。当然のようにR&Sからリリースすることはできなくなってしまったが、ロックだけでなく同時にジャズの要素も取り入れ、また、それまでのダビーな雰囲気をさらに強くすることでBoom Boom Satellitesサウンドとも言うべきオリジナリティを確立することに成功している。ダブ処理されたサックスやフルートが左右に反響する下を、マッシヴなベースとリズムが重たく進んでいくM2「Batter The Jam No.3」、ヴォーカルを積極的に取り入れた、完成された名曲M3「Push Eject」、インタールード的な乱れ打ちドラムソロの小品M5「Intruder」、まんまロックなM7「Oneness」、ほとんどベースラインとリズムだけで強烈なグルーヴを作り出してしまうM8「Scatterin' Monkey」、ストリングスを大胆に上ものに用いたM9「On The Painted Desert」など、聴く曲聴く曲において彼らが新しいことをやろうとする気持ちが伝わってくる。「Joyride」に未来を感じたテクノ・ファンの中で本作で一気に興味を失った方は多いであろうが、テクノという狭い枠ではなく、もっと広い枠の中で見れば本作は非常にオリジナルなものであり、稀有の傑作であると言える。

(Last Modified: 2004.03)
No. 0047
Artist / Title Boom Boom Satellites / Joyride
Label ソニー
Release 1997
Keyword Techno, Breaks, Rock, Dub

Boom Boom Satellitesによる、1stフルアルバム「Push Eject」の前にR&Sからリリースされていたシングルの音源を集めたミニアルバム。この頃はまだロック色はそれほど強くなく、ミニマルでフロアでも映えるようなテクノ寄りのブレイクスものが中心で、ヴォーカルの入れ方もあいさつ程度。十八番のサイン波、アップテンポでグルーヴィなブレイクス、絶妙なタイミングで入るフィルインなど、この頃のBoom Boom Satellitesのよい所を凝縮したような名曲M1「4 A Moment Of Silence」、ダビーで生っぽい複雑なパターンのブレイクスが疾走する中、ゆらゆらと宙にたゆたうように音色が変化してゆくシンセサイザーのフレーズが耳に残る、最高にかっこよいM2「Joyride」、ロックでマッシヴなリズムにディストートされたうねるベースラインというシンプルな構成ながら凄まじい迫力を持った、ダビーなM4「Dub Me Crazy ver.02」、音の処理が完全にトリッピーなM5「Low Blow」、展開が予測不可能なほど複雑な、スロウなブレイクスと広がるようなシンセ・パッドが絡むM6「The Wonderful Wizard Of Dub」など素晴らしい曲たちが詰まっている。どの曲にも共通しているのは、聴く者をハメるような、音にグイグイと引き込んでしまうほどの力を持っているということだ。そしてそれは、反復を基本とするダンスミュージックの原始的な部分に他ならない。

(Last Modified: 2004.02)
No. 0046
Artist / Title μ-Ziq / Lunatic Harness
Label 東芝EMI
Release 1997
Keyword Drill 'n' Bass, Childlike, Electronica

Richard D. Jamesが主宰するReflexからリリースされた、彼とコラボレーションもしたことのある奇才Mike Paradinasによるプロジェクト、μ-Ziqによる3rdアルバム。Richard D. Jamesなどの作品についてもよく言われることだが、幼児性とも言うべき、例えるなら未知の音の出るマシーンを親から買い与えられた幼い子どもが興奮しながらその嬉しさをそのまま音で表現してしまったかのような、つまり、暴力的であると同時に牧歌的であるというような、「大人」から見れば不思議な世界を呈している。複雑怪奇にスピーカーを揺らす高速ブレイクビーツがけたたましく登場したかと思えば美しいシンセサイザーの調べがかぶさってきたりなど、一寸先の展開も読めない曲が続く。Mike Paradinasの作る曲の特徴はやはり聴く者に独特な印象を与えるメロディだろう。シングル・カットもされたM1「Brace Youeself Jason」、タイトル通り静寂を打ち破るように歪められた、暴力的なシンセサイザー音色とリズムがハードなM6「Approaching Menace」、徐々に秩序が崩壊していき、そこから悲愁的な感情がこぼれ落ちてくる名曲M11「Catkin And Teasel」あたりがよい。聴きようによってはただの変態サウンドになってしまうギリギリな内容だが、これもテクノのフリーマインドが成し得たひとつの立派な方向性であると言える。

(Last Modified: 2004.02)
No. 0044
Artist / Title Hardfloor / TB Resuscitation
Label ソニー
Release 1993
Keyword TB-303, Acid House Revival, Trance

Hardfloorによる、シーンに激震を走らせた話題作。今では珍しくも何ともなくなってしまったビルドアップや16連スネアといった手法の起源であるということや、アシッド・ハウス・リヴァイヴァル・ブームの火付け役となったことなどの歴史的重要性はさておくとしても、改造された名器TB-303からレゾナンスが全開で発振され、かつオーヴァードライヴやディストーションといったエフェクターで激しく歪められた彼らのアシッド・サウンドと、やはり名器TR-909のシンプルに脈打つボトムの太いリズムの組み合わせは「Hardfloorサウンド」を完全に確立している。頭からアシッド全開のM1「Lost In The Silver Box」、世界中のテクノ・ファンを虜にした歴史的名曲M6「Acperience 1」などが素晴らしい。特に、日本盤のボーナス・トラックとして収録されているM9「Acperience 5」は期待以上の内容で、ひとつずつ音を丁寧にビルドアップしていき、大きなブレイクで16連スネアが過剰なまでに乱れ打たれ、なおかつアシッド全開、という全てが揃った名曲。ただ仕方ないことではあるが、ハードでアシッドなトラックがアルバムの多くを占めているので変化にあまり富んでおらず、途中でやや飽きが来るかもしれない。ただし、「躍らせる」ということを主眼に置くという、ある意味では基本に忠実なテクノのひとつの形であり、十分に刺激的な作品だ。

(Last Modified: 2004.02)
No. 0043
Artist / Title Gouryella / Tenshi
Label Tsunami
Release 2000
Keyword Dutch Trance

TiestoとFerry Corstenのユニットによるシングル。それぞれの曲名を違う言葉で天国や天国に関係あるものにしようと思ったという彼らが3枚目に出したのが本作(1stシングル「Gouryella」はオーストラリアの先住民であるアボリジニ族の言葉で「天国」の意、2ndシングル「Walhalla」は北欧の先住民であるヴァイキングの言葉で「楽園」の意、4thシングル「Ligaya」はフィリピンの言葉で「幸福」の意)。今回のタイトルは容易に想像できるように、日本語の「天使」だが、そのサウンドは前の2作のようにシンセサイザーの細かく刻んだリフのメロディで盛り上げるものとは異なり、コードの進行で泣かせるというもの。分かりやすいメロディの細かいリフものよりも作るのは容易ではないだろうが、本作はベースラインから上ものまで完璧と言って差し支えのないほど全てが見事に調和されており、一度聴けば目の前が明るく開かれる感覚を覚えるような、ドラマティックで壮大に哀愁感が漂い、かつどこまでもポップなものに仕上がっている。いくつかリミックスは出たが、既に完成されているので、オリジナルを超えられていない。この強烈なオリジナリティは一体何だ。ダッチ・トランスという枠だけでなく、ユーロ・トランス全体を見ても名曲と言わざるを得ない。ちょっと正直に言うと、シングルで600字のコメントは書くことが無くて辛い。

(Last Modified: 2004.02)
No. 0042
Artist / Title V.A / In Search Of Sunrise 2
Label Black Hole
Release 2000
Keyword Euro Trance

TiestoのMix CD。彼の中でターニングポイントとなったであろう「Delerium / Silence」のリミックス名から取った名前のシリーズの第2弾である本作は、全体的に統一感があり展開もよく練られた良作。有名どころを所々に交えながらも決してチープなものに陥っていないのは、やはり彼の選曲眼と展開力のなせる技か。シンセパッドのハーモニーが美しいM1「Tastexperience / Tantrix」やM2「Ln Movement / Golden Desert part 2」といったディープでゆったりとした雰囲気が気持ちよい序盤から、M4「Rui Da Silva / Touch Me」、M5「Salt Tank / Eugina (Michael Woods Remix)」、M6「Cass & Slide / Perception (New Vocal Mix)」、M7「Mekka / Diamondoback」、M8「BT / Dreaming (Lucid's 12" Club Mix)」といったヒット曲連続の盛り上がり必至の中盤、そしてM12「Coast 2 Coast / Home」、M13「Breeder / Tyrantanic (Slacker's Kingdom Come Mix)」、ラストのM14「Max Graham / Airtight」というややプログレッシヴ色が入ってくる、感動を呼び起こす終盤までの流れは一気に聴けてしまう出来のよさ。ターゲットを問わない1枚。

(Last Modified: 2004.02)
No. 0040
Artist / Title V.A / 3D Story
Label 3D Vision
Release 2002
Keyword Psychedelic Trance

フランスの3D Visionによる2枚組コンピ。期待に裏切らず、アッパーでハード、まさしくFull On Tranceな内容。Absolum, Talamasca, Wizzy Noise, Nomad, Deedrah, Oforiaといったおなじみのアーティストたちがトラックリストに名前を連ねる。うねるようにピッチが変わるシンセサイザー、左右の耳の間を飛び交うSE、地を這うようなベースラインといった構成は、無条件で聴く者の精神の高揚をもたらしてくれる。ある意味では様式化しているとも言えるのだが、それを補うほどに音色がかっこよい。音の渦に引き込まれそうになるCD1のM4「Cat On Mashroom / The Fly」、展開といい構成といい音色といい全てが完璧なM7「Wizzy Noise / Dark City」、迫り来る音が脳内をかき回すM9「Absolum vs Nomad / The Game part 1」とCD2のM9「Ablolum vs Nomad / The Game part 2 v.1.2」など、良質なトラックが多く収録されている。何重にも重ねられた音たちがスピーカーを通じて一斉に向かってくるさまは日常世界から乖離されており、聴く者の思考を停止させるに飽き足らず、音と一体化させようとまでしてしまうと言っても過言ではない。

(Last Modified: 2004.02)
No. 0041
Artist / Title DJ Tiesto / In My Memory
Label エイベックス, Black Hole
Release 2001
Keyword Euro Trance, Techno

時間をかけて作られた、Tiestoによる洗練された1st。DJとしてだけでなく、クリエイターとしての経験も積んできたため、多くのファンがその初のオリジナル・アルバムの内容に注目していたであろう。ピュアで透明感のあるものからダークでプログレッシヴなものまで、フロア志向のクラブトラックからリスニングに最適なスロウなテンポのものまで幅広く曲が展開されており、彼の才能がトランスおいてのものだけではないことを証明しようとしている。Jan Johnstonが歌うアンビエンスに満ちたM2「Close To You」、クリアなシンセサイザーとNicola Hitchcockの歌声が晴れわたる空に高く響くかのように素晴らしい名曲M4「In My Memory」、Junkie XLが参加したパワフルなトラックM5「Obsession」、誰もが衝撃を受けたM7「Flight 643」、壮大に展開するトランスM9「Suburban Train」など、彼なりの実験精神をポップさを失わない程度に随所に埋め込みつつも、1枚のアーティスト・アルバムとしてメジャーにも通じるものにまで完成させているのはさすがの一言。フロア寄りのものに関しては、長年のDJで培ったセンスが如何なく発揮されていて心地よい。ちなみに盤によってはボーナス・ディスクが付いているものも。

(Last Modified: 2004.02)
No. 0039
Artist / Title V.A / True Spirit
Label Tresor
Release 2002
Keyword German, Techno

テクノの黎明期からドイツのシーンを支えつづけてきたレーベル、Tresorの11周年記念コンピ。1989年から2002年までの楽曲の中から39曲をチョイス、3枚に収録。Jeff Mills, Blake Baxter, Dr. Motte, Joey Beltram, Christian Vogel, The Advent, Fumiya Tanaka, James Ruskin, Drexciya, Surgeon, Marshall Jefferson, Juan Atkinsといった豪華な顔ぶれがレーベルの歴史と実力をうかがわせる。初期の音源を集めたCD1では、今よりもずっと手法や慣用句に束縛されずに自由な感覚の下で曲が創られていたことを、90年代後半以降のハードミニマル系の音源を中心に集めたCD2では、技術の革新がシーンの音そのものに多大な影響を与えたことを、ハウス寄りの音源を中心に集めたCD3では、Tresorの幅の広さを、改めて実感することができる。どの曲もクオリティは高いのだが、個人的にはMixedにされていると、もっと聴きやすかったのだが。しかし、もはや入手がほぼ不可能な初期の貴重な音源も収録されているから、それらを求め探し回っていた人たちにとって、Unmixedな本作は価値のあるものであろう。Tresorの歴史や詳細なディスコグラフィーを載せたブックレットも47ページという豪華さで必見。

(Last Modified: 2004.02)
No. 0038
Artist / Title V.A. / Wire 99 Compilation
Label キューン
Release 1999
Keyword Techno

1999年にスタートを切った石野卓球がオーガナイズする屋内レイヴ、Wire。本作はその1999年、つまり第1回目の開催を記念したオフィシャル・コンピレーション。パーティへの参加アーティストがそれぞれ1曲ずつ参加している。ドイツからはMijk van DijkとWestbamが、UKからはDMX Crewが、アメリカからはDerrick Mayが、香港からはTechnasiaが、そして日本からは電気グルーヴ(石野卓球はソロでも参加)、Toby(本作にはEBTBとして参加)、田中フミヤが名を連ねる。収録曲のほとんどが既存のもののため、既にそれらの曲を知っている人にとってはさほど新鮮味の無い作品であろうが、インナースリーヴには各アーティストのバイオグラフィーが日本語と英語で載せられており、パーティのプロモーションとしては十分であろう。内容としては、ドイツ臭が強烈に漂う骨太エレクトロM3「Takkyu Ishino / Bitter Sweet Break Down」、直球ミニマルM6「Fumiya Tnakana / Rimsd Sticks」、言わずと知れた名曲M7「Technasia / 桃花」、シンセサイザーがもの悲しく響く、生きる伝説によるトラックM9「Derrick May / Beforethereafter」あたりが素晴らしい。

(Last Modified: 2004.01)
No. 0036
Artist / Title Faithless / Reverence
Label Cheeky
Release 1996
Keyword Faithless, Gothic, House, Trance, Rap, Folk

ライヴもこなす稀有なダンス・バンド、Faithlessのデビューアルバムの本作は、ゴシックな感覚を持った強烈なオリジナリティにあふれる作品だ。鬱屈としたUKらしい雰囲気を全体的に漂わせた中で、M1「Revelance」でつぶやかれる”I'm not a mystic, my views are realistic, simplistic...””... the point I wanna make is you can never escape from your fate.”といったMaxiのリリックからも分かるように、メッセージ性を持った曲が多い。映画「普通じゃない」にも提供されたM2「Don't Leave」、退廃的なM4「If Lovin' You Is Wrong」、来世的なM5「Angeline」といった内向きの曲が続く一方、M3「Salva Mea」、M6「Insomnia」のような、フロアを沸かせるほどパワフルでありながら繊細さをも持ち合わせたクラブトラックもこなせてしまうのが彼らの人気の所以だろうか。どちらも壮大に展開する美しいトランス。Cheeky Recordsを主宰し、Dusted名義でも曲をリリースしているRollo、DJ/アーティストとしても活躍する紅一点のSister Bliss、敬虔な仏教徒としてリリックを綴るMaxi Jazz。中心メンバーであるこの3人が如何なく力を発揮させて始まった、Faithless史の輝かしき第一歩。

(Last Modified: 2004.01)
No. 0037
Artist / Title Faithless / Outrospective
Label Cheeky, BMG
Release 2001
Keyword Faithless, Trance,House, Rap, Folk, Gothic

名作であった前作「Sunday 8PM」から3年を経てリリースされた3rd。そのブランクの間にRolloはDusted名義において究極的な次元で彼岸的世界を表現し、Sister Blissはトランス復興〜プログレッシヴというシーンの盛り上がりに合わせたかのようにソロで評価を得るなど、Fiathlessにおける曲作りに関わるこの二人の成長はサウンド面においても影響が見られる。地を這うようなベース・ラインはあまり変わらずだが、ファンキーなブラスをフィーチャーしたり、Sister Bliss自身がハスキーな歌声を披露したり、やや派手にパーカッションを用いたりと新しい試みがなされており、全体的な雰囲気も前作までのようなドロドロとしたゴス感覚はややなりを潜め、同じところに留まることなく前に進んでいこうとする姿勢が強く表れている。M3「We Come 1」やM8「Trantula」といったお得意のクラブ向けの曲たちも健在だが、今までのような仰々しいまでの壮大でスピリチュアルなサウンド・展開から、よりエレクトロニックでタイトなフロア寄りのものとなったところに、上記の3年がいかにメンバーに大きな影響を与えたのかが感じ取れる。特に「Trantula」は今までのFaithlessしか聴いてこなかった者にはきっと驚きをもって迎えられるであろう(多くの場合、肯定的な感情と共に)。宗教性、メッセージ性が強かった前作までの世界からは大きく転回したが、根底部分が強固で不変なため、この路線でも十分に素晴らしいものとなった。

(Last Modified: 2004.01)
No. 0035
Artist / Title Faithless / Sunday 8PM
Label Cheeky, 東芝EMI
Release 1998
Keyword Faithless, Gothic, House, Trance, Rap, Folk

Faithlessの2nd。前作「Revelance」にあったような、退廃的、宗教的なゴス感覚は健在。その一方、随所に使われたギター、ピアノ、ストリングスなどの生楽器が占める割合は増えており、そのことは作品全体に深みをより一層持たせることを可能にした。冒頭のM1「The Garden」をひとたび聴けば、前作とは一歩も二歩も進化したことが思い知らされる。控えめに脈打つビートを用いたおとなしめの曲が多い一方、クラブトラックとしても大ヒットした、叙情的なサウンドにMaxi Jazzのリリックが絡むM5「Take The Long Way Home」やM8「God Is A DJ」といった十八番なフロア寄りの曲たちとのバランスも絶妙。特に「God Is A DJ」はタイトル、サウンド、リリックを含めて、いかにもFiathlessらしい。作品全体に暗く内向的な雰囲気が漂う中、時折現れる美しいメロディやハーモニーはなにか救済的な力さえ感じさせてくれる。生楽器を多く使っていてもあまり日常的、現世的な感触は伝わってこず、聴いているうちにスピリチュアルでドロドロとした、なんとも形容しがたいFaithlessワールドにグングン引きこまれてしまうのは必至だ。すべてを聴き終わった時、あなたは何を感得するだろうか。完成度はこの上なく高い名作。

(Last Modified: 2004.01)
No. 0034
Artist / Title V.A. / Swordfish
Label ワーナー
Release 2001
Keyword Soundtrack, Breaks, Trance, Paul Oakenfold

サイバー世界を取りまく人物たちを描いた映画「Swardfish」のサウンドトラック。Paul Oakenfoldがプロデュースを手がけた本作は、15曲中10曲に彼の名前がクレジットされているため(もちろんAdny Grayと共に)、アーティストアルバム的な側面もある。映画の割引券がついていたり、インナースリーヴに本作とは全く関係のないCDの宣伝があったりなど、プロモーション色が強い感はあるが(そもそも映画の紹介が5ページ強もあるのに対し、Paul Oakenfoldに関する記述は1ページ弱しかない。サントラ自身に関する記述に至っては歌詞とその訳のみという扱い)、ダークで統一された雰囲気の曲たちのクオリティは低くはない。Jan Johnstonが歌うM3「Unafraid (Paul Oakenfold Mix)」、M10「Speed」といったブレイクスから、M4「Dark Machine」、M6「Chase」、M14「On Your Mind (Omaha Mix)」といったややプログレッシヴなトランスまで、Patient Saintsなど他のアーティストの曲も交えながら展開されていく。ブレイクスが多いのは、映画用の音楽ということだけなく、翌年のアルバム「Bunkka」の内容からも分かるように、当時の彼の趣向を反映していると言えるであろう。

(Last Modified: 2004.01)
No. 0033
Artist / Title V.A. / Ghost In The Shell(攻殻機動隊)
Label ソニー
Release 1997
Keyword Soundtrack, Techno, Minimal, Dark

テクノ史上最強のの豪華な面子が集まったコンピがゲーム「攻殻機動隊」のサウンドトラックというところが、テクノらしい。石野卓球、Mijk van Dijk、BrotherFrom Another Planet (Claude Young)、Hardfloor、Westbam、Joey Beltram、Scan X、The Advent、BCJ (C.J. Bolland)、Dave Angel、Derrik Mayという、テクノに少しでも魅せられた人ならば絶対に知っているであろうというような御方たちによる、全て新曲という衝撃の本作。内容は、ゲーム音楽という制約もあり、音数が少な目のトラックが多い。また、原作の関係で全体的にダークな雰囲気。直球ミニマルM1「Takkyu Ishino / Ghost In The Shell」、おそらくこの企画へのモチベーションは一番だったであろうMvdのM2「Mijk van Dijk / Fire Cracker」、もう素晴らしいの一言に尽きるM4「Hardfloor / Spook & Spell (Fast Version)」時空、身体の感覚が失われそうになる、ダークでトランス色の強さが大変危険なM7「Scan X / Blinding Waves」、神再臨のM11「Derrik May / To Be Not To Be (Off The Cuff Mix)」など、クオリティは保証済み。原作を知る知らずに限らず、テクノ好きならば持っておきたい一枚。

(Last Modified: 2003.12)
No. 0030
Artist / Title Aphex Twin / Come To Daddy EP
Label ワーナー, Warp, Sire
Release 1997
Keywords Richard.D.James, Experimental

Richardの色々な面が見られるシングル。身の毛もよだつような叫び声、スピーカーを震わせるノイジーなサウンド、複雑にプログラミングされた暴力的なビート。彼の狂気があふれ出んばかりの名曲M1「Come To Daddym Pappy Mix」で本作は始まる。ちなみに廃ビルに巣食うRichardの顔をした無数の子供たちや拒食症の女性、果てはエイリアンまで登場する、奇才Chris Cunninghamによるカオスティックなビデオクリップも素晴らしい。M2「Flim」は一転してシンセサイザーによる優しいメロディと軽やかなリズムが救済的で牧歌的な名曲。しかしその後はしばらく聴き手を置き去りにするような曲が続く。のどかなメロディとややネジがゆるんだようなリズム、という彼お得意の組み合わせで始まったと思わせておいて途中から暴発状態になって最後は誰にも止められないM4「Bucephalus Bouncing Ball」、もはや言葉では表現不可能な迷曲たちのM6「Funny Little Man」やM7「Come To Daddy Mummy Mix」など、おなじみのRichardワールドが好き勝手に展開されていく。ラストM8「IZ-US」は常識的な曲で少し驚き。外向的でエネルギーが過剰なくらいに満ち溢れる「Come To Daddy Pappy Mix」、内向的でほんのり感傷的な「Flim」。この2曲はファンならずとも聴くべき作品だ。

(Last Modified: 2003.12)
No. 0031
Artist / Title Aphex Twin / Selected Ambient Works 85-92
Label ソニー, R&S
Release 1993
Keyword Ambient, Techno, Richard.D.James, TR-808

Ridhard D. Jamesによる傑作。タイトルに「アンビエント」という言葉は入っているものの、リズムが入った曲が大半であり、ダンサブルなものも少なくない(その点で「〜vol.2」と決定的に違う)。といっても当時隆盛を迎えていたハードコアなものではなく、リヴァーブやディレイを駆使した、圧倒的にディープな作品となっている。TR-808系の音でリズムが構成されているのを始めとして全体的にベッドルーム的手作り感が漂っているが、決してチープな印象は無く、どことなく暖かみが同居した本作は、聴いていてとても心地よい。透き通った音たちがどこまでも反響していくかのように響く名曲M1「Xtal」、心臓のように脈打つシンプルなリズムにシンセイザーの音色が美しいM3「Pulsewidth」、お得意のアシッド・トラックのM6「Green Calx」、ディープでメロディアスでゴシックな踊れるブレイクビーツのM7「Heliosphan」、ハウシーな雰囲気に驚きのM10「Ptolemy」など、聴き込むほどに発見がある曲が詰まっている。「Come To Daddy」で感じられるような暴力性や幼児性もそうだが、本作で感じられるような内観性や理性も十分に彼が「変態」であることを証明しているように思える。これは、Richard D. Jamesに内在する精神世界的宇宙空間への旅行チケットだ(例え方が仰々しい?)。

(Last Modified: 2003.12)
No. 0032
Artist / Title V.A. / Trainspotting
Label 東芝EMI
Release 1996
Keyword Soundtrack, Pops, Rocks, Dance, Techno, Drug

あまりの好評ぶりに第2弾も出たほどの名作。ジャンルの壁を超えて幅広いUKの重要アーティストが集まった。映画のテーマがテーマだけに退廃的・享楽的なものが続いており、日本盤で解説をしている田中宗一郎氏の表現を借りれば、「単に映画のサントラというよりは現在のイギリスのサウンドトラック」。軽快に自身の欲望を歌ったM1「Iggy Pop / Lust For Life」で本作は幕を開け、シンセサイザーの和音の響きがまさしくタイトル通りなM2「Brian Eno / Deep Blue Day」、Andrew Weatherallプロデュースの、ドラッギーかつダビーなM3「Primal Scream / Trainspotting」、1987年のものとは思えないM6「New Order / Temptation」、まだ時代が彼に追いついていなかった頃の名曲M10「Bedrock featuring KYO / For What You Dream Of」、渋いダブM12「Leftifield / A Final Hit」など、多様性に富みつつも冒頭にも触れたようなある種の統一感があって良い。M13「Underworld / Born Slippy」は言うに及ばず。他にもBlur、Lou Reed(Produced By David Bowie)など多彩なアーティストが参加しており、サウンドトラックとしてだけでなく、単純にコンピレーションとしての完成度も高い。歌詞も楽しんでもらいたい一枚。

(Last Modified: 2003.12
No. 0028
Artist / Title The Delta / Send In… Send Back
Label Global Trance Network, Nova Tekk
Release 2001
Keyword German Psychedelic Trance, Techno, Minimal

The Deltaの2nd。ホラーというコンセプトが明確だった1stからさらに進化し、メランコリックな映画音楽的雰囲気に満ち溢れた作品になったのは、自然な結果であると言える。メンバーもMarcus C. Maichel (aka X-Dream)とMidimilizなどの名義で活動するWayan RaabeとArne Schaffausenの3人という構成に変わり、よりサウンドの方向性がはっきりしてきた。サイケデリックなトランスを基本としつつも、ミニマル色は前作よりも濃くなり、新たにノイジーでインダストリアルな要素が加わり、さらにそこに映画音楽のようなクラシックサウンドが絡んでできた結果、なんとも不気味で奇怪な音楽が出来上がってしまった。M1「Intro」からM11「Basic Beat」まで、この手のサウンドのアルバムの多くがそうであるように、本作もやはりジャケットの色使い同様、音楽的にも視覚的にもモノ・トーンな印象を受ける。サイケデリックトランスという枠組みを超えつつあった1stも賛否両論であったが、その進化形とも言える本作を、あなたはどう評価するだろうか。究極形であるM6「A+B」を聴けば、きっと何らかの答えを出さざるを得なくなるであろう。息が詰まるような72分の灰色の世界。問題作であると同時に、名作でもある。

(Last Modified: 2003.11)
No. 0029
Artist / Title Aphex Twin / Singles Collection
Label ワーナー
Release 1996
Keyword Richard.D.James, Experimental

Warp Recordsからリリースされたシングルの収録曲から、Richardが選曲した日本企画盤。12曲収録だが、多くのファンの興味はM1「On」とM5「Donkey Rhubarb」でに向けられていたであろう。両曲とも個性的なビデオクリップが作成されたためMTVを中心に知られていったわけだが、曲自体の内容も素晴らしい。特に「On」は、数多くの変名で数多くの曲を作ってきたRichardの中でベストワークと言っても差し支えない出来ではないだろうか。冬の空から降り注ぐ朝の日の光のように優しく響くピアノとシンセ・パッドのハーモニー、という彼の繊細な面が上ものによく出ているのに対し、リズムは原形を留めないほど過剰なまでに加工された音の塊という彼の暴力的な面がむき出しになっている。しかし、その二つの要素が互いに干渉することなく、むしろ完璧なまでの調和を成しているところに彼の才能がさりげなく感じられる。祭りの最中の喧騒と終わった後の寂寥感、といった趣の「Donkey Rhubarb」も良い。この2曲を聴くだけでも価値がある1枚。他の曲は、おまけ程度のものでしかない。もしこの2曲を聴いて興味を持ったならば、ストップ・モーション・ムービーを使った「On」と、ライヴではおなじみの子供が泣いて逃げ出す着ぐるみたちが戯れる「Donkey Rhubarb」のビデオクリップも是非見てほしい。

(Last Modified: 2003.12)
No. 0026
Artist / Title Planetary Assault Systems / Atomic Funkster
Label Peacefrogs Records
Release 2001
Keyword Techno, Minimal, Experimental

Luke SlaterとAlan Sageによるプロジェクト、Planetary Assault Systemsのアルバム。長年ひとつのシーンに深く関わってくれば、アイディアの枯渇による駄作の連発、もしくは過去の名曲の焼き直し、ということは往々にしてある話だ。しかし彼らは本作において、決して同じ地点で立ち止まることなく、次へ向かおうという姿勢を示さんとしている。もちろんM1「Darkcity」、M3「Atomic」、M7「Groove For Thought」といったお得意のシンプルかつキレのあるミニマルトラックも展開しているが、M2「I Am The Funkster」やM4「Twelve」のプリミティヴなシンセの響き、M5「Booster Album Remix」のハウス・フレイヴァー、M8「Mind You Trip」のトランス感覚などの要素も良い。M6「From Above」なんて、もうSurgeonばりなノンビートのシンセ音響群だ。アルバム全編を通して、オーガニックな要素はほとんど無い、純粋なエレクトロニック・ダンス・ミュージック。しかし、ところどころ何かもの悲しさを感じさせるのは一体なぜだろう。活動はアナログでのシングルのリリースのみ、というアーティストが多いこのシーンにおいて、彼らのような存在はとても貴重に思える。

(Last Modified: 2003.11)
No. 0027
Artist / Title Pascal F.E.O.S / From The Essence Of Mimalistic Sound
Label PV
Release 1999
Keyword Techno, House, Trance, Minimal

Resistance Dなどの名義でシーンの初期から活躍してきたPascal Dardoufasによるプロジェクトのデビューアルバム。アーティスト・アルバムにおいて、ミックスCDのように収録曲をDJミックスするというスタイルはそれ程珍しくないが、本作の場合自然に、かつしっかりと流れも確立されている点が素晴らしい。前半はパーカッションやシンセサイザーを使ってジワジワと盛り上げるテクノ、ハウスの中間なテックハウスよりのクールなトラックが続く。特に曲の半分以上にわたって聴き手をじらしつづけるM4「Reactivate The Unexpect」は名曲中の名曲。中盤はM7「G.P.L.」やM8「Are U Tranquillzed」といったミニマルな曲が主体で、M9「Supermatural」以降の後半はディープなハウス寄りな展開に。かすかに瞬く光を感じ取るかのようなM10「Nothern Lights (Iceland Cut)」が特によい。2ステップなM12「Km 5」で本作はラストを迎える。一枚のアルバム内で非常に高いクオリティを維持し続けながら色々なスタイルに挑戦し、なおかつ展開も考えられている。ここまであらゆる面で丁寧に作りこまれたアルバムは他にはあまり見られない。おそらくは、10年後も評価されつづける名作であろう。

(Last Modified: 2003.12)
No. 0025
Artist / Title V.A. / Revelation: Mixed by Nick Warren and Howells
Label Renaissance Recordings
Release 2001
Keyword Progressive House

RenaissanceのミックスCDシリーズ、本作でミックスを担当したのはNick WarrenとDanny Howells。Dannyが担当した一枚目はM1「Bent / Always (Ashley Beedle's MahavishnuVocal Mix)」というこれ以上ない美しさで始まり、セクシーなハウスよりのトラックを中心に進んでいき、中盤以降はドロドロのダークなものにシフトしつつも、ラストはM13「Mother's Pride / Nightflight」でメロディアスに終わらせる、という幅広い内容。Nick担当の二枚目はよりダビー&パーカッシヴな内容で、彼らしい展開。ダーク路線を突き進みつつも、途中M8「Way Out West / Stealth (Quivver Mix)」やM9「Iio / Rapture (Deep Dish Mix)」などの有名曲も挟みつつ進んでいく。M10「Future Sound Of Prefab Sprout / If You Don't Love Me (Stateside Mix)」からようやく明るくなっていくのかと思いきや、その後は終わりまで一気に地の底まで果てしなく落ちていく、という驚きの展開。M12「Deep Funk Project vs. Austin Leeds / Sub Ritual」からラストM13「Marino Berardi / Tribal Shot」までのヒプノティックな流れは筆舌に尽くしがたい。

(Last Modified: 2003.10)
No. 0023
Artist / Title Supercuizer / Skydiverz
Label Superstition
Release 2001
Keyword Trance, House, Techno

日本のDJ Tobyとドイツのトランスアーティスト、Gabriel Le Marがコンビを組んで結成したユニット、Supercruizerによるデビューアルバム。もともとサイケデリック寄りではありながらも自由なマインドで曲を作るGabrielがいるためか、本作もトランス、ハウス、テクノ、ダブなどの色々な要素がブレンドされ、結果的にプログレッシヴなものとなった。シンセサイザーのクリアな音色が全体に涼しげな雰囲気を与えており、また、音の重なり具合が絶妙で、聴いていてとても心地よい。うねるようなシンセやエフェクトがトランシーなM3「Para-Shooting」やダビーなエレクトロM8「Stratosfear」などをはじめとして捨て曲が無くどれもよいのだが、特にM10「Fight Over Sibiria」が素晴らしすぎる。広々とした大空をゆったりと優雅に飛んでいるかのような気分にさせてくれる、壮大かつディープなトランストラック。Superstitionもよくリリースしてくれた。ジャケットに「The Flight is Created by Gabriel Le Mar and Toby Izui」とあるように、アルバムを通して統一感が感じられ、バランスが良い。トータルとしての完成度も高い一枚。

(Last Modified: 2003.10)
No. 0024
Artist / Title The Delta / Scizoeffective
Label Global Trance Network, Nova Tekk
Release 2000
Keyword German Psychedelic Trance, Horror

X-DreamのMarcus C. Maichelによるサイドプロジェクト、The Deltaの1st。本作で頭から尻尾の先まで貫かれているコンセプト、それはホラー。例えばジャケットを見ても、怪しげな洋館と半透明の人の顔のアップという表面から、かすれた文字フォントと左右逆になったトラック番号がいかにもな裏面まで徹底しているし、曲名を見ても意味深なものが続いている。また内容も、映画音楽のような展開/音使いが随所に見られたり、子供の泣き声、雷鳴、犬の遠吠えと言った音たちが挿入されたりなど、そのコンセプトが確立されていて面白い。大ヒットした、派手にエレキギターがさく裂するアッパーなM2「Travelling At The Speed Of Thought」も良いが、不安をかきたてる金切り声を撒き散らしながらハイスピードで天に上昇していくゴーストのようなM4「Thing」、突然入ってくる細かいエレキギターのリフがクールなM6「As A Child I Could Walk On The Ceiling」など、ドライ&ヘヴィーなトランスを基調としつつも様々な仕掛けが満載で、どのトラックもクオリティがしっかりしていて素晴らしい。コンセプトアルバムはともすれば内容が伴わないものに陥りがちだが、本作はその点では全く心配はいらない。

(Last Modified: 2003.10)
No. 0021
Artist / Title V.A. / Technosport
Label ソニー
Release 1996
Keyword Techno

ソニーは一時期テクノのCDを数多くリリースしていた時期があり、コンピレーションの制作にも精力的だったのだが、その中でも間違いなく一番の出来のコンピが本作であろう。なんと言っても参加アーティストが豪華の一言に尽きる。「世界最強」というコピーに嘘は無く、Underworld、LFO、The Sabers Of Paradise、Jeff Mills、 The Hypnotist (Casper Pound)、Aphex Twin、Hardfloor、Model 500 (Howan Atkins)、Rhythm Is Rhythm (Derrick May)、Paul van Dyk、Chemical Brothersといった世界的に超重要級のアーティスト達が名を連ね(リミキサー含む)、日本勢も電気グルーヴ、Hoodrum、Ken Ishiiが参加している。全ての収録曲がそのアーティストの代表曲というわけではないが、それでも十分に聴く価値がある作品だ。ちなみに解説は佐久間英夫氏が務めているのだが、アーティスト一人一人について個別に詳しい解説をしつつも、そのアーティストのアルバムでソニーが既にリリースしているものについては、そのカタログ番号を逐一載せているあたりに本作のもうひとつの目的を垣間見ることができる。

(Last Modified: 2003.10)
No. 0022
Artist / Title Mijk van Dijk / Multi-Mijk
Label ソニー
Release 1998
Keywords Old German Trance

Mijk van Dijkの90年代中期ごろまでの作品をコンパイルし、Tobyがミックスした日本企画盤。MFS時代の貴重な音源を中心に、初期のジャーマントランスの名作たちが一枚で聴けてしまうという点ではベスト盤に近い内容。現在では活動停止中のMicroglobe名義の曲がリミックスも含めると8曲も入っている。当然内容はメロディアスなトランスものが中心で、M2「Microglobe / Ambition (Uplift-Mix)」、M8「Microglobe / All Our Colours」、M11「Microglobe / High On Hope (Joy Of Life-Mix)」あたりのアッパーなトランスはファンにとっては垂涎もの。M10「Denki Groove / Niji Mijk van Dijk's For Girls Remix」やM12「Moby / Everytime You Touch Me (Mijk van Dijk's Microglobe Mix)」などを聴いても、原曲の雰囲気を残しながらMijk節を聴かせてくれるあたりは、リミキサーとしての才能も証明している。Marmion名義の曲も少し入れてほしかったところだが、それでも聴く価値が十分にある一枚。M11とM12の陽気な明るさの陰に見え隠れする切なさに胸がとても締め付けられる名作。ただ、Mijkの趣味丸出しのジャケにはやや照れる。

(Last Modified: 2003.10)
No. 0020
Artist / Title V.A / Vision Quest Mix CD by X-Dream
Label ヴィジョンクエスト
Release 2001
Keywords German Psychedelic Trance, Minimal

X-Dreamの初のミックスCD。収録されている10曲全てドイツの音源という男らしい選曲で、全編に渡ってダーク&ソリッドなミニマル・トランスを展開させている。ミックスCDと言っても曲の最初と最後が若干重なっている程度で、基本的に曲そのものを聴かせようというスタンスだ。X-Dreamは活動当初からどちらかというとテクノ色が強いユニットであったが、「Radio」からその傾向はますます強くなり、このミックスCDは次のアルバム「Irriant」と合わせて、完全に自分達の進むべき道を定めたことを知らせてくれている。X-Dream名義の曲はもちろん、The Delta、Organic Noseなどの変名から、MidimilizやAuthentikなどの仲間たちの曲が脇を固め、トータルとしての完成度も非常に高いものとなった。最初から最後までテンションもそれほど変わることなく淡々とつながれていく流れに色気や妥協は全く感じられない。メロディらしいメロディはほとんどなく、無機質な音の塊が荒天を駆け巡るかのような本作は、いわゆる「トランス」を期待して聴くときっと肩透かしを食らうであろうが、これも立派な彼らなりの「トランス」なのだろう(といっても、彼らはそんなことは気にはしていないだろうが)。ハードミニマルが好きな人にもオススメ。

(Last Modified: 2003.10)
No. 0018
Artist / Title Richie Hawtin / Decks, EFX and 909
Label ソニー
Release 1999
Keywords Minimal Techno

タイトルが示すとおり、ターンテーブル二台とミキサーという通常の構成だけではなく、エフェクターやTR-909を駆使し、さらにハードディスクに取り込んで編集、という手の込んだミックスCD。ただ単に曲をつなげるだけではなく、色々加工することによって流れを作り、DJとしてのオリジナリティをそこで表現し、ひとつの作品として提示するというその方針には非常に共感できる。Jeff Millsや自身の曲などを中心にグルーヴィーなミニマルトラックが前半は続くが、、M20でエレクトロニック・ボディ・ミュージックの80年代の名作「Nitzer Ebb / Let Your Body Learn」が突如はさまれるあたりは、彼なりのオマージュなのであろう。この曲の前後はニューウェイヴ系のバンド、Yellowの「Oh Yeah」ネタの「Richie Hawtin / Orange」であり、ここに彼の主張したいものがあることを示している。この曲を境目として、徐々に流れはディープ&ダビーなものとなっていき、どんどん音数も少なくなっていく。ラストM38「Rhythm & Sound / Never Tell You (Version)」は、海の底でこだまするかのように深く、冷たい曲だ。全体的に見ても、Surgeon、Ben Sims、Marco Carolaをはじめ有名なアーティスト、曲が収録されており、聴きごたえは十分にある。

(Last Modified: 2003.10)
No. 0016
Artist / Title The Antidote / Antidotcom
Label Solstice Music
Release 2001
Keywords Psychedelic Trance

フランス発のトランス・ユニット、Total EclipseのメンバーSergeによるソロプロジェクトであるThe Antidote名義のアルバム。Solstice系の未来的ジャケットに収められている本作品は、インタビューでSerge自身が言っていたとおり「フル・オン・トランス」な内容で、アシッドなシンセが全面的にフィーチャーされたサイケデリック・トランス・アルバム。単純ではありつつもさほど飽きさせずに最後までアゲていく展開は、1曲1曲のクオリティの高さが成せるわざであろう。アシッドといってもギンギンにハードなものではなく、リズムも含めて全体的にも独特の丸さというか柔らかさがあり、ドイツによく見られたドライ&ハードなものとは明らかに質感が異なる。BPMは抑え目ながらアゲな内容のM1「Geometric」でアルバムは幕を開け、アシッドシンセひとつで最初から最後まで曲に色をつけていくM4「Have A Drink」、ミニマルなリズムループにひたすらヒプノティックなシンセが絡んでくるタイトル曲のM6「Antidotcom」など、フロア直結のトラックがたくさん詰まっている。ただ、それだけにもう少し曲に多様さがあればよかったのだが。個人的には少し最後の方はお腹いっぱいになってしまったが、アシッドなものが好きな人にはオススメの一枚。

(Last Modified: 2003.10)
No. 0017
Artist / Title V.A / Bedrock Compiled and Mixed Jimmy Van M
Label Bedrock
Release 2001
Keywords Progressive

BedrockのDJミックスCDシリーズ「Compiled And Mixed」。第一弾のJohn Digweedに続き、この第二弾を担当したのはアメリカのトランス〜プログレッシヴシーンを支えてきたJimmy Van M。もともとトランス・シーンに関わってきたこともあってか、本作では全体的にダビーでありつつもやや明るめな内容で、ダーク過ぎるのがダメな人でも聴ける内容。一枚目は序盤はダークで地にもぐっていくような感じだが、中盤から徐々にトランシーでアッパーな展開に。そのままハウスなフィーリングも残しつつ、M10「Minimalistix / Struggle For Pleasure」で終了。チープさは全く無し。二枚目はよりアゲな内容で、M1「John Jonston / London」のBedrockのCDとは思えぬ明るさで始まり、徐々にアッパーに。そして後半からより盛り上がってきて、M6「Van Bellen / Soulfeel」、M8「Junkie XL / Bon Boyage」、M9「Nuclear Ramjet / Deep Blue」など、聴く者を高揚させること間違い無しの流れ。ラストの「Themobee & Stratosphere / Diminished Responsibility」もアゲ。ダーク&ダビーの印象が強いBedrockからのリリースだからと偏見を持たず聴いて欲しい一枚。

(Last Modified: 2003.10)
No. 0015
Artist / Title V.A / Trancedome 1 mixed by Ferry Corsten - System F
Label Avex
Release 2001
Keywords Euro Trance

Avexが立ち上げたトランスDJミックスシリーズで、第1弾はFerry Corsten。選曲については口を出さず彼にほとんど任せ、結果当時の彼のDJに近い流れを実現させたのは評価すべき点。M1「Rank1 / Such Is Life (Marco V Remix)」M2「Eon / Pocket Damage」という始まりの流れで既に「Trance Nation」とは全くの別物であることを示しているが、M4「Ultravibe / Choose Freedom」M7「Signum / In Progress」M8「Orion / See Me Here (Darren Tate's Dub)」などのアゲ一辺倒ではないものをメインに持ってくる展開でありながらもM6「Riva / Stringer」M11「System F / Exhale」などのヒット曲も収めているのはさすが。乱発されたトランスのミックスCDの中で本作はトータルでの完成度は良くできている方であろう。しかし「Trance Nation」のコンビニ路線を期待していた人にはやはりウケがあまり良くなかったようで、第2弾にTiestoが起用されるという話が出るも中止に。そしてこれに懲りたのかAvexは新シリーズ「Tranthem」を立ち上げMinimalistixを起用し、実際のDJとは全く違うヒット曲がオンパレードのミックスCDに仕上げたところ、こちらの方がレスポンスが大きかったという結果は皮肉なもの。彼らはどう受け止めたのだろう。

(Last Modified: 2003.9)
No. 0001
Artist / Title Polygon Window / Surfing On Sine Waves
Label Warp、ソニー
Release 1992
Keyword Richard D James, Intelligent Techno, Ambient

Richard D Jamesの変名のひとつ。アルバム名は言うまでも無く、このサイト「Surfin' On Sinewaves」という名前の引用元である。ネーミングに普段は無頓着な彼には珍しく、アーティスト名もアルバム名も凝っている(結局アルバムリリースはこの1枚だけだけれど)。全面的に808をメインに据えたリズムはどことなく懐かしい。火曜サスペンス劇場のエンディングテーマのようになにか歯の奥に引っかかるようなピアノのメロディが寂しすぎるM4「If It Really Is Me」、無機質なロボットヴォイスとシンセが聴く者の不安さをただただかきたてるM6「UT1-dot」、アシッドベースと荘厳なシンセパッドが絡む、曲名が無いM7、極上のアンビエントのM9「Quino-phec」など、部屋でまったりと聞くリスニングテクノ。と思いきやM3「Quoth」のようなかなりフロア対応のミニマルテクノも入っており、リチャードの意外な一面も見ることができる。Aphex Twin名義しか知らない人にもぜひ聞いてもらいたい1枚。人のいない岩肌と海岸、というジャケが示す通り、彼の数多くの作品の中でも無機的な印象が強い作品。ここでRichardが奏でている音は「Come To Daddy」のようなノイズまみれの乱暴なものではなく、ただ彼の内面世界へと通じる、怪しくもちょっぴりメランコリックなものだ。

(Last Modified: 2003.8)
No. 0004
Artist / Title Virgo / Remnants
Label Form@records
Release 1999
Keyword Pure Techno, Listening Techno, Ambient

依光英世氏がただ一人で運営しているForm@Recordsからリリースされた、Yasutaka SatoによるVirgo名義の2nd。時代の流れに惑うことなく、ピュアでインテリジェントなテクノを作りつづけている彼がリリースしたこのアルバムは、周囲の期待を裏切らない傑作。過去に作リためてきた音源を集めたという前作「Landform Code」よりも完成度は一段と増し、オリジナリティを完全に確立している。生楽器、人間の歌、声といった有機的なものを一切排除し、フロアとも全くの無関係の音を作りつづけた結果、ここで生み出されているのはただただシンセサイザーの無機質でクリアな響きと、淡々と脈打つリズムマシーンの刻みのみだ。CDジャケットが示すとおりここには人の気配は全くなく、あるのはブームや流行とは無縁の時のない音。だからこそ心を揺さぶる「何か」をこの作品は持っている。荒涼とした風景を思い起こさせる小品M8「Ivied Scluptuer」や春の朝日のように優しく降り注ぐシンセサイザーが聴く者の心をほんのり暖めるM10「Starlight」などを始めどの曲も良いが、当時音楽雑誌の付録CDにも収録され大きな反響を呼んだM5「Mesa」が白眉。群を抜いて良い。アルバム全編を通して使われるシンセパッドは、どこか寂寥感を呼び起こさせる。

(Last Modified: 2003.8)
No. 0011
Artist / Title William Orbit / Pieces in a Modern Style
Label Warner Music UK
Release 2000
Keyword Healing Music, Ambient, Experimental

「Strange Cargo」シリーズなどでアンビエントをリリースしてきたWilliam Orbitの異色のカバーアルバム。トラックリストにはVivaldi、Beethovenなどのクラシック勢に混じってJohn CageやErik Satieなどの現代音楽勢の名前も。やはりこの人はシンセサイザーを操るのが巧い。クラシックが原曲のものが中心なので展開もしっかりあるしほぼノンビートなので、自然と心をリラックスさせてくれる。フロアとは無縁のヒーリングミュージック。忘れたころに入ってくるシンセパッドが神々しいまでに美しいM3「Erik Satie / Ogive Number 1」、感動的な展開のM5「Murice Ravel / Pavane Pour Une Infante Defunte」あたりが素晴らしい。ただ、曲によっては実験色がやや強い。ちなみに2枚目はM1「Samuel Barber / Adagio For Strings」とM5「Murice Ravel / Pavane Pour Une Infante Defunte」のFerry Corsten(盤によってはATBのも)によるリミックスを収録したボーナスディスク。特に前者のリミックスは彼の中でもトップに近いクオリティであり、当時はかなり話題となった。国内盤は当初2枚目は無かったのだが、それを知らずに買った消費者から反発を受けたためか、すぐに2枚組みにし、「リミックスヴァージョン」として再発売したという逸話が残っているほど。

(Last Modified: 2003.8)
No. 0012
Artist / Title Robert Miles / Dreamland
Label BMGビクター
Release 1996
Keyword Piano, Dream House, Euro Trance

日本でもテレビでスポット的に使用したりし、その度に問い合わせが来るというモンスター級の「Children」と「Fable」の2曲が収録されている時点でヒットは確約されていたも同然。クラブミュージックに普段は縁が無い人でも、この2曲を聞いたことある人は多いであろう。どちらもピアノを全面的に押し出したハウスで、その後のユーロ/エピックトランスの源流とも言うべき内容。ヨーロッパ特有のメランコリックなピアノソロのメロディは耳に残りやすく、バックでストリングスがサポートし、それらを引き立てるようなハウスビートとスネアロールの絡み、というスタイルは「やったもの勝ち」的ではあるが、当時実際に実行しヒットさせたのはすごい。ただ完全に様式が完成してしまっているため、アルバムで似たような曲はM8「Princess Of Light」くらいで、あとは大人しめの曲が続く。と言っても上の2曲のミックス違いも含めると全12曲中6曲を占めているので、嫌がおうにも盛り上がる。歌詞とメロディが哀愁漂うヴォーカルハウスM1「One And One」も素晴らしい。クラブミュージックを聴いたことが無い人でもすんなりと入っていける入門編的アルバム。「Children」「Fable」の2曲とM8「Princess Of Light」のメロディをだけでも聴く価値は十分にある。

(Last Modified: 2003.9)
No. 0013
Artist / Title Blue Planet Corporation / Blue Planet
Label Flying Rhino Records
Release 1999
Keyword Trance

Flying Rhinoからリリースされた、ひそかな名作。リリースされた99年頃はサイケデリックトランス全体的にはやや微妙な時期だったと個人的には思っているが、このアルバムは時代に流されず、自分の音を正直に吐き出していて気持ちが良い。ヨーロピアンな朝方系のものからややハードなトランスまで幅広くオープンなスタイルで、それらがよどみなく続き、アルバム全体で朝〜夜〜朝といった感じの大きなひとつの流れを作り出している。メロディアスなものが多いので、普段はユーロ/エピック系のトランスしか聴かない人でもきっと入っていける1枚。ディープさとハードさのバランスが巧妙なトランスM1「Apex」に始まり、シングルカットもされた完全に朝向けのシンセサイザーの音色がすがすがしいM2「Crystal」、尺八の音と駆け抜けるような4つ打ちのリズムとピッチが絶えず変化するシンセがかっこよすぎるM5「Atoll」、サイケデリックトランスとエピックトランスの壁を完全に取り払うかのように感動的かつ野性的なM7「Open Sea」などが特に良い。ハードなサイケデリック一辺倒だけでなく、エピックな朝方ものでいいものをしっかり作れているアーティストは貴重。CDジャケットの写真、音、展開など、全てが統一感を持っており、飽きが来ない傑作。

(Last Modified: 2003.8)
No. 0014
Artist / Title Makai / Millennium
Label Static
Release 1998
Keywords Drum' n' Bass, Hard

親日家ドイツ人、Jan HenningことKabukiを筆頭とするプロジェクト、Makaiの1st。「忍」をテーマにし、忍者のゲームからサンプリングしてしまうほどの日本狂ぶりを見せた2nd「Stealth」とは異なり、ここでは素直にダビー&ハードなトラックを集めたものになっている。完全フロア対応の8曲。どれもクオリティは高いが、オリエンタルなコーラスサンプルの繰り返しと重低音ベースがかっこよいM1「Beneath The Mask」、迫ってくるような迫力がある、聴く者を不安にさせる轟音ベースラインに空間をつんざくドラム、さらに時折カットインされるブレイクビーツが危険過ぎる名作M3「Black Belt 2nd Dan」、希望というものを全く感じさせない世界を綿密にプログラミングされたリズムパターンが淡々と脈打っていく、エクスペリメンタルなドラムンベースM6「Rectifier (V.I.P MIX)」などが特に良い。無機質で冷たく暗いこの世界に人の気配を感じることは全くできず、荒涼とした大地で轟音ドラムンベースが鳴り響き、こだましている様は、想像するだけで興奮させてくれる。ちなみにこのCDはExtra仕様で、パソコンで見るとメンバー紹介や「Beneath The Mask」ビデオクリップなどを見ることができる。

(Last Modified: 2003.8)
No. 0052
Artist / Title Sasha / Airdrawndagger
Label BMG
Release 2002
Keyword Progressive, Nu-skool Breaks, Sasha

DJ暦14年目にようやく満を持してリリースされたSashaのでデビューアルバム。優秀な相棒、Charley Mayは当然のごとく制作にに参加しているが、それに加えてTom Holkenberg (a.k.a. Junkie XL)も全面的にプロデュースに関わっている。音的にはほぼ全編に渡ってディープでアブストラクトなインスト・ブレイクスが続き、「Xpander」などのフロアを沸かせるトラックを期待してきたファンは肩透かしを食らったに違いない。だが、このどこまでも内向的なサウンドはアーティストとしてのSashaの才能を改めて証明するものだ。空気を揺さぶる低音ベースとマッシヴでニュースクールなブレイクスが素晴らしいM6「Fundamental」、James Holdenが参加した完全フロア仕様のドラッギーなプログレッシヴトランスM8「Bloodlock」、9.11の事件への鎮魂歌M9「Requiem」、シンセサイザーの音色がもはや神の領域に達しているラストのM11「Wavy Gravy」を始め、完璧に統一された世界観は前人未到の領域。深く引きずり込むようなものでありつつも、出てくるメロディやシンセサイザーの音色がどれも美しく印象的なためそれほどダークなものにはならず、むしろエモーショナルな雰囲気に満ち溢れている。流行廃りを全く気にしていないこの傑作は、どのように時代が変化しようときっといつまでも評価され続ける1枚になるに違いない。

(Last Modified: 2004.08)
No. 0063
Artist / Title Ishq / Orchid
Label Dakini Records
Release 2001
Keyword Ambient, Ethnic

Dakini Recordsよりリリースされた、民族楽器を主とした生楽器とエレクトロニクスの融合を積極的に試みたIshqのエスノアンビエントアルバム。「ランの花」の意を持つタイトル名を与えられたこのアルバムの1枚目は荘厳な「Skyblue」でその幕を開ける。ノンビートで環境音楽的でもあり、尺八が印象的なM2「Yu」や何層にもレイヤーされたシンセが圧倒的なM7「Arc」などノンビートの曲が大半で、綺麗な作りながらもどことなく催眠的な部分もあるサウンド。2枚目はうねるように様相を変化していくシンセが秀逸な20分の大作のM1「Fluid Earth」に始まり、「蒼いかすみ」というタイトル通りのサウンドのM2「Blue Haze」など、全てノンビートの曲が連なっている。イギリスのコーンウォールの森の中で作られたというこのアルバムは、川の流れる音、虫の泣き声、水滴の垂れる音など、普段はそれほど気にも止めないこれらの音にあえて精神を集中し、その結果得られた感情を音にしたものだ。そのようなプロセスを経て紡ぎ出されたサウンドは、空間的で、神秘的で、催眠的なものとなった。その超現実的世界はDakini Recordsの紹介ページでは「禅」とさえ表現しているほどである。なお、お香が付属されている。

(Last Modified: 2003.8)
No. 0065
Artist / Title V.A / Global Underground 013 Sasha | Ibiza
Label Global Underground
Release 1999
Keyword Progressive, Sasha

シリーズで最も売れた作品であると同時に、最高傑作。プロッグとトランスの隙間を縫ったサウンドがちりばめられており、必需品であると同時にシリーズを始めて聴く人にも十分勧められる。CD1の前半はきれいめでディープなトラックが続くが、M5 「Medway / Real Time」の後半から出てくるM6「Sander Klinenberg / My Lexion」のフレーズのメロディがサビまでいかずループされて、じらされ続ける展開に昇天。その後もプログレッシヴなハウスやトランスを織り交ぜてアゲていき、壮大なキレイ系のトランスのNatious「Amber」でシメて終了。つなぎが完璧で忘我状態は必至。CD2はBTによるプログレッシヴなブレイクス「Fibonacci Sequence」で始まり、徐々に盛り上げていったあと、M5のSasha「Xpander」を投下。ほぼフルレングスで収録されており、ここで文句無しに昇天。その後もM7「BT / Mercury And Solace」、M9 の「Junkie XL / Future In Computer」などアガらざるをえない内容で、ラストは「Bedrock / Heaven Scent」。どちらもジワジワとじらせながらアゲていく展開は素晴らしいの一言で、誰にでもオススメでき、かつチープさはゼロ。99年ものとは思えない。SashaのMix CDの中では個人的にベストであり、Ibizaの名に恥じぬ、いつまでも愛聴できる名作中の名作。

(Last Modified: 2004.02)
No. 0070
Artist / Title DJ Krush / 覚醒
Label ソニー
Release 1998
Keyword Abstract, Breakbeats, Hip Hop, Free Jazz

衝撃の5thアルバム。「これはジャズなんだよ」と本人が言うこのアルバムは、基本的には全曲インスト、アブストラクトな質感のブレイクビーツ、ミニマルな展開と、若干アンダーグラウンドな内容。またゲストも多数迎え、DJ KenseiやDJ Yasなどの有名どころだけでなく、デモ・テープを通じて知った新人を起用したり、ヒップホップ畑外から迎えたりと、新境地を開いていこうという姿勢が強く感じ取れる。このアルバム全体のの方向性を十分に表したくぐもったリズムのM1「Intro」で始まり、深い響きのブレイクビーツとひたすらループされるピアノのサンプルが、もはや芸術的ともいえるM6「Crimson」、サンプラーを一切使わず全てブースで生レコーディングしたという、生サックスが全面にフィーチャーされたM7「The Dawn」、三味線や琴の響きが和の世界を繰り広げるM8「Interlude」、スクラッチと生ベースのサンプリングがカオス的な世界を作り出しているM13「The Kinetics」などど16曲どれもがダークでアブストラクトなブレイクビーツで、無駄を極限まで省いた結果出てきたビートは、シンプルでありながらもそこに彼らしさを存分に表現することに成功している。どこまでも果てしなく内向的なこのサウンドは、夜一人で聴いているとなんとも不思議な気分にさせてくれる。

(Last Modified: 2003.8)

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