トップ5つ星CD/Sasha: Airdrawndagger Surfin' On Sinewaves
ライン
 Sasha
 Airdrawndagger
 BMG
 2002
 Progressive, Nu-Skool Breaks, Sasha

2002年にリリースされた、Sashaのデビューアルバム。
やはり5つ星CDとして紹介しているミニアルバム「Xpander EP」で既にその才能を発揮していた彼ですが、満を持して2002年にリリースしたフル・アルバムがこの作品です。

で内容のほうなんですが、「Xpander EP」でもその片鱗は見えましたが、ブレイクスを前面に出したものとなっています。しかも、どれもがディープ&アブストラクトな雰囲気で、「Xpander」のような曲をたくさん期待した人にとっては面を喰らってしまうかもしれません。しかし、この作品全体に漂う森厳さはSashaにしか出せないオリジナリティによるものであり、いつもどおり制作に協力したCharley Mayはもちろん、今回特別に制作に参加したTom Holkenberg (a.k.a. Junkie XL)との相性もよいです。ちなみに、完全インスト。

最初聴いてもやや地味な感じに聴こえてしまうかもしれませんが、何度もリピートしてください。そこで体験できるものは、「Xpander EP」の時のものとそれほど変わらないはずです。

なお、日本盤の限定版は、「Xpander EP」の4曲と、当時Underworldを脱退して間もなくだった頃のDarren Emersonとの共作「Scorchio」が収録されているという、超強力ボーナス・ディスクが付いていますので、その2作を持っていない方はそちらを買った方がよいかも、です。

1. Drempels

イントロ的な小品で、抽象的なシンセサイザーの柔らかい音色たちが軽やかにスピーカーからこぼれ出てきます。この曲だけで既に彼の才能が感じられます。

2. Mr Tiddles

M1「Drempels」に引き続くこの曲は雰囲気もそのまま引き継いで、深く控えめなリズムと、不思議な感覚のシンセサイザーとの絡み合いが美しく、また切ないです。落ち着いていて、荘厳なアルバムの雰囲気をよく表しています。

3. Magnetic North

少しギアが入り、ややはっきりとしたブレイクス系のリズムと、深玄な上もののシンセサイザーたちが淡々と絡んでいきます。大きな展開やメロディは無いのに、なぜか寂しさに包まれています。

4. Cloud Cuckoo

ディープでダビーな感覚で始まり、中盤までは特に大きな展開も無く、ニュースクールなブレイクスと落ち着いた上ものとのコンビがよい感じなんですが、中盤から時折、短いけれども美しいメロディが現れ、何とも寂寥的な印象を受けます。この曲あたりになるといつの間にかリズムもはっきりとしたものになってきています。

5. Immortal

前の曲から一転、ダークで妖気漂う内容です。「Xpander EP」に収録されている「Rabitweed」をさらに一歩進めたような感じで、プログレッシヴ色が相当強いですが、かっこよいです。

6. Fundamental

中盤のハイライト的な曲で、前曲と同じくダークで荒涼とした印象。リズムもかなりガシガシとしたヘヴィー&インダストリアルなブレイクスで、危険度はかなり高いです。途中から色々と音が重なってきたりもしますが、後半のブレイク以後はほのかに美しさが香るシンセサイザーの優しいメロディが参戦してきて、何とも表現しづらい展開になっていきます。9分以上ある大作。

7. Boileroom

前曲の続きのような内容で、よりプログレッシヴになり、ブリブリのベースラインが相当かっこよいです。後半突然リズムが抜けると共にまたか弱いながらも前向きなメロディが登場し、帰ってきたリズムと共に終わりへと進んでいきます。

8. Bloodlock

「Xpander」が大好きな人にとって両手を挙げたくなるような一曲。このアルバム初の4つ打ちで、かつプログレッシヴなトランスです。当時まだデビューして間もないJames Holdenを共作相手に選び、作品全体を覆う独特の雰囲気を全く損なわないままにトランスを持ってきました。「Xpander」ほど壮大な展開もメロディもありませんが、同時にまたその曲には無いスピード感とトリップ感を持っています。ベースが思いっきり当時のJames Holdenですが、それがまたバッチリ合っています。なんと美しい曲なんでしょう…。名曲。

9. Requiem

9.11への鎮魂歌(レクイエム)であるというこの曲は、ほぼノン・リズムであり、暖かく優しいシンセサイザーのメロディの重なりがあちこちに登場しながらも、寂しい印象もまた受けます。深遠なる世界に一歩足を踏み入れたような、そんな美しい曲。ラストの展開は、複雑ながらも哀愁的です。この曲でいったん区切りが入ります。

10. Golden Arm

2つめの4つ打ち曲で、結構明るめでシンプルな印象です。間もなく訪れるこの旅のクライマックスを期待させてくれます。

11. Wavy Gravy

終着駅は、やはり名曲です。神々しささえ感じてしまうシンセサイザーの響きで始まり、やはり淡々とリズムがそこにかぶさっていくわけですが、ところどころ奏でられるメロディたちがとてもはかなく、感傷的な雰囲気に満ち溢れていて、聴く者の心の琴線に触れてきます。大げさな要素は何一つ無いけれども、なんとももの哀しげな感覚を覚えてしまいます。最後は、荘厳なシンセサイザーたちがあなたを最後の最後まで祝福しててくれたのち、現実に帰ることになります。この曲も大好きです。

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