ピストルズは最高のバンドだ!!
過去この地球上に出てきた中で唯一嘘がない
ロック史はいかにして塗り変えられたのか?
ジョニー・ロットンの言いたい放題の革命宣言!!
1977年5月、デビュー・アルバム発表前の
ピストルズ超貴重ロング・インタビュー
クラッシュ、ダムドその他諸々の連中ってのは
過去のやってたことをなぞってるだけだ
誰も俺たちの後をついてこれないね
ロック・スターには絶対ならない
そんなのは全部クソ喰らえだ!
誰にも俺たちを止めることなんか出来やしない
1977年夏、セックス・ピストルズの悪名はその
頂点に達していた。女王陛下即位25周年を祝って
国中に旗が掲げられ、市民レベルでも祝賀パーティ
が計画されていた時に、ピストルズは小英国の中心
に放てば集団心停止を引き起こさせること間違いな
しのレコード、「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」の
リリース準備をすすめていたのである。十字架に
かけられたキリスト像の皮肉たっぷりの、パロディ
よろしく、ジョニー・ロットンは両腕を軽く肩の高さ
に伸ばしてみせた。どんよりとした嫌悪の情が一瞬
彼の生気のない顔を横切ったが、それはすぐに拗ね
たような侮蔑の表情に変わった。
警官はジョニーのポケットを探り、骨ばった身体を
服の上から手際良くチェックした。彼は何も見つける
ことは出来ない。ジョニーは腕を下ろし、うだるよう
に暑いロンドンのノッティング・ヒル脇で彼を制止し
た警官が、その注意をシド・ヴィシャスに移すのを
眺めながら、持っていたラガーの缶を挑戦的にぐび
りとあおった。シドは不適な微笑みを浮かべながら
、ポケットを引っくり返して見せ、警官が手帳を取り
出して、二,三の事項を書き付けるのを見ていた。
二人の間の会話を想像してみてくれたまえ。
>名前は?
「シド・ヴィシャス」
>スペルは、V−I−C−I−O−U−S?
「そじゃねぇの」
>住所は?
「あっちこっち」
>生年月日は?
「知ったことかよ」
ジョニーは苦虫をつぶしたような表情でその一部始
終を眺めていた。彼とシドは撮影の後、通りを歩いて
いて、突然法の拘束を受けたのである。
ジョニー・ロットン(以下J)「俺たちゃ他の奴らと
は違って見えるからさ、分かるだろ、それでみんな
ビビッちまうんだよ。もっともそこんとこは俺にも分
からないわけじゃねえけどな。要するにこれが、19
77年のロンドンで生きるってことなのさ。もし暴力
が欲しいって言うんなら、俺たちは暴力で応じるぜ。
こんな扱いしといて、一体他に何を期待してるってんだ?」
J「あんなのは日常茶飯事だよ。しょっちゅうだよ。
どこ行ったってさ。ただ道歩いてるだけでだぜ。警官
じゃなければ、どっかのデッカい、デブで無知な間抜
け野郎だな。ちょうど昨日もあったんだよ。ハイゲイ
トの道を歩いてたらな・・・・」
シド・ヴィシャス(以下SV)「パブか何か行く途中にだ」
J「違うよ、なわけねえだろ。俺はパブってパブから
全部締め出しくらってんだ。俺はもう、ハイゲイトじ
ゃビール一杯飲ましてもらえやしないんだぜ」
このよく晴れた火曜日の午後、セックス・ピストル
ズの4人のメンバーたちは初めて、全員揃ってほんの
3週間前に契約が(マルコムによれば45万ポンド、
ヴァージンによれば「不特定の金額」、そしてジョニ
ーによれば「アドヴァンス一銭もなし」で)成立した
ばかりの彼らの新しいレコード会社のオフィスを訪ねた。
SV「ブランソンの野郎(ヴァージンの社長)は、ど
こ行きやがった?あいつは誰だ、どこ行ったら食い物
が手に入るんだよ」
J「それより何より酒はどこだ?」
ヴァージンのプレス・オフィシャルのスタッフが、
ジョニーと腹が減って死にそうだと訴え続けるシドを
なだめるためにサンドウィッチと飲物が約束された。
SV「うー、俺、すっげぇ具合わりいぃ。吐きそうだ」
スティーヴ・ジョーンズ(以下SJ)「おまえ、鼻の
そっち側になんかデッカいのこしらえてるじゃねえかよ」
SV「そうなんだ、こいつぁみんな俺が感じてるプレ
ッシャーのせいなんだぜ。俺の神経はこう見えたって
すっげぇ繊細なんだからよ」
J「酒はどこだよ?」
SV「なあ、レコード何枚かただでくれよ。くれねえ
ってんなら盗むまでだぜ」
体調が悪くてもシドのナイフのように鋭いウイット
は少しも鈍ってはいないことは、すぐに明らかになっ
た。彼は続けてカメラマンに注文をつける。
SV「もうちょっと近くに立ちなよ。俺のいまの体調
じゃ、そんな遠くまで唾飛ばせやしないぜ」
私が初めてセックス・ピストルズを観たのは、19
76年4月、ウエスト・ケンジントンの「ナッシュヴ
ィル」で、彼らがジョー・ストラマーの101’ers
の前座を務めた時のことである。安全ピンとワイルド
な自負心で接ぎ合わされたようなジョニー・ロットン
が、グリースで髪をツンツン立て、毒気に目をギラギ
ラ光らせてステージのフロントに転がりだしてきた。
その夜のライヴ・レヴューを私はしたため、こんなバ
ンドは二度と聞かずに済むように願いたいというコメ
ントで締めくくった。実にささやかな願いである。し
かしその年の終わりには、彼らはこの国で最も悪名高
いバンドになっていた。論争、惨事、そしてコンスタ
ントなパブリシティが、わずか数ヶ月の月日と絶え間
ない怒りの声の中で、無名のバンドだった彼らの国際
的な悪評をどんどん高めていったのだ。
J「あんたが俺たちをこきおろしたあのレビューな、
あれはあれで正しかったと思うぜ。あん時の俺たちゃ
多分、マジで醜かったんだろうからさ。謝ることなん
かねえよ。ただ言っとくと、あの時俺たちはまだよう
やくスタートしたばっかりだったってことだな。俺た
ちはただステージに出て行って、あれを演っただけな
んだ。俺たちがバンドを結成したのは、音楽があまり
にもシリアスになり過ぎてるからさ。
ロックンロールってのは本来、楽しみであるべきも
んだろうが。楽しみってのがどういうもんか、忘れち
まったわけじゃないだろ、ええ?要はエンジョイすり
ゃいいのさ。評論家が何て言うかとか、100年ぐら
いかけて100万くらいギターのコード覚えるとか、
そんなのは全部どうでもいいんだよ。問題はスピリッ
トさ。一番大事なのはそれで何を言うかだよ。
俺たちだって自分らの演奏のクオリティは気にして
ないわけじゃねえよ・・・・・・けど、あんたが俺た
ちを観た時な、あれは本当に俺たちが始まったばっか
りの時だったんだ。俺たちじゃただ出てって、公衆の
面前でプレイした、それだけのことなんだよ。俺たち
はリハーサル・スタジオに缶詰になったりはしない。
そんなんで完璧に演奏できるようになったところで面
白くも何ともねえからさ。
全ては俺たち自身が、ステージに出てって、楽しく
やろうってことだけなんだよ。そうして、その俺たち
を観てるどっかの誰かが、おんなじように楽しんでく
れりゃあ御の字なのさ。俺たちはただステージでプレ
イしたかっただけで、それを観た連中が家に帰って、
よし、自分らでもやろうぜってバンド作っちゃうみた
いなさ、そういう風に持ってければいいなと思ってた
んだよ。俺たちは新しいシーンを作り出したかったんだ」
SJ「実際作り出したじゃねえかよ。で、しばらくの
間は上手くいってたしな・・・・・・」
ジョニーは急に鋭い目つきになり、身体をぐっと前
に乗り出した。
J「ピストルズは最高のバンドだ。過去二十億年の間
にこの地球上に出てきたバンドの中で、唯一嘘のな
いバンドさ。俺たちはずっと、おかしな格好した能無
しどもの集団みたいに扱われてきた。みんな好き勝
手に解釈してやがるからな。そういうのはこっちの力
で止められるもんじゃねえんだよ、インタヴューを受
けたって、記事になるのはそいつらが記事にしたい
と思うとこだけだからさ。こっちはそこまではコントロ
ール出来やしねえよ。
だから俺たちはもう、投げちまうことにしたのさ。
「てめえの顔なんか観たくもねえとっとと失せやがれ
!」ってな結局あいつらに何をどう説明したところで
無駄だからよ」
ポール・クック「誰ひとりとして真実を書いている奴
はいないよ。特に、俺たちに関してはな」
J「全くだ。おまけに、さらにクソムカつくのは、あ
のキャロリン・クーン(注:パンク全盛期のジャーナ
リストの一人)みてえな野郎だよな。何かにつけてセ
ックス・ピストルズの及ぼす社会学的な影響なんてこ
とを言いやがってさ。ったく、ウンザリするぜ。あり
ゃあどうしようもねいよ。あの女は俺が気に入らねえ
のさ・・・・・・実際、俺は一般大衆は新聞とかに書
いてある俺たちの記事がデマばっかりだってことに気
づくだろうと思ってたんだよ。とこらがそうじゃねえ
んだな。俺にとって一番ショックだったのは、あの一
般大衆の態度さ。あいつらはとんでもねえ大馬鹿野
郎どもだ。あの連中の日常は、常に「デイリーミラー」
とか「ザ・サン」とかに書いてあったことを中心に回
ってやがるのさ。
例のビル・グランディの一件の後、散々色んな事書
かれただろ。俺にはみんなが何だってあんな事を本
気にするのか、全く理解出来ないね。俺はあれをいい
笑いのネタだと思ったのにさ。一般大衆ってのは何で
みんなああ騙されやすいのかね。俺たちの事を誰が
どう思おうと関係ないよ。あんたが俺たちの事をどう
思ったって構やしない。今日ここから帰ったら、好きな
だけコキ下ろしゃいいよ。俺は気にしねえからさ。俺は
誰からも、何も期待なんかしてねえんだ」
SJ「全国紙で読んだからってだけの理由で一般大衆
はみんな、俺たちのやっている事って言えばそこらを
うろついちゃ、誰かにケリ入れて、ケンカして、酒か
っくらって、モメ事起こして、唾吐いたり毒づいたり
、それだけだと思っているんだぜ」
J「でも俺たちは変わる気はねえからな。俺たちにあ
れこれ指図くるような奴らには、いつだって「このク
ソ野郎!」って言ってやるぜ。だから俺たちはレコー
ド会社とトラブルが絶えないんだ。その点、今回の契
約は問題ないよ。今回ばかりはポシャリたくなかったんだ。
俺たちは自分らの方向性は自分らで決める。誰にも
従う気はねえし、俺たちの後をついて来られる奴もい
ない。俺たち以外のバンド、ザ・クラッシュとかダム
ドとかストラングラーズとか、その他もろもろの連中
ってのは、過去にいたバンドのやってた事をそのまま
なぞってるだけだ。あのデブで怠け者のヒッピーども
と同じさ。あいつらとちっちも変わりゃしねえ。全く
、ウンザリするぜ」
最後の言葉を吐いた時のジョニーの口調には、こち
らを思わず身震いさせるものがあった。
J「実際、酷え話だと思うぜ。よそのバンド観に行く
と、決まって完ペキ俺たちのパクリだからな。ゲッソ
リくるよ。知性のかけらも感じられやしない。あいつ
らにはステージに上がる理由も必要性もありゃしねえ
んだ。いいか、やるんだったら誰とも違う、自分だけ
の何かをやらなきゃダメなんだ。じゃなきゃ売りに出
来るものが何もないだろうが。もし売りが何もなきゃ
場違いなだけだ、とっとと消えた方が身のためだぜ。
あくまで正直にやらなきゃな。自分を信じて、誰が何
を言おうと何が起ころうと、そこんとこは絶対に譲っ
っちゃダメなんだ。
で、実はそれが俺たちの嫌われるもうひとつの理由
でもあるんだよな。俺たちはいわゆる一般大衆の考
えるバカくせえ基準とやらと折り合う気はないからさ。
例えば記者会見とかって言うと、みんな俺たちを人当
たり良くて礼儀正しい、あいつらにとって「こうある
べき」連中に仕立てあげようとするんだよな。最悪だよ。
もし誰かが俺に、「あいつらに気をつけろ、あいつ
にコキ下ろされたら大変だぜ」って言ったとしたら、
俺はそいつに向かって「クソ野郎。俺はてめえなんか
大嫌いだぜ」って言ってやるよ。そんなご忠告なんざ
クソ喰らえだ」
SJ「俺たちの事をカミカゼ・バンドって評した奴が
いたけどさ、俺たちは音楽をプレイしてるだけだ。
飛行機で突っ込んで行ったりゃしねぇよ。ただ、俺た
ちは絶対に引き下がらないってだけ、とにかくやりた
いようにやるだけだ。
他のバンドには、俺たちの後をついてくる度胸なん
てありゃしないぜ。最初は大丈夫だっただろうけど、
レコード契約を獲得してからはもうケチャメチャにさ
れちゃってさ。可哀想になっちゃうね。で、今頃にな
ってあいつらは、俺たちがシーンをメチャメチャにし
たって言いやがるんだぜ。シーンをスタートさせたの
は俺たちだってことを、あいつらはすっかり忘れてる
んだ。ドアを開けてやったのは俺たちなんだぜ」
SV「そ、ドアも窓も全部な」
SJ「俺なんか、首相の名前だって知らねぇんだ。そ
れなのに何だって俺たちをポリティカルなバンドだっ
て言う奴がいるのか、全く理解に苦しむよ」
J「支持してる政治家も政党もねぇしな。政治なんて
クソだぜ。音楽ってのは楽しみであるべきものだ。9
時から5時まで、工場で働きづめの労働者に安らぎを
与えるためにあるのさ。あんな、ザ・クラッシュがキ
ャンキャン吠えてるような、失業手当で暮らしてくの
がどんなに惨めかなんてのは要らねぇんだよ。まして
、あいつらはひと儲けしたばっかりじゃねぇか。クラ
ッシュはてめぇで言ってる事もちゃんと分かってねえ
んだよ」
SJ「ストラマーは政治家じゃない。政治家だったこ
ともなければ、これからだってそうなる事はないだろ
う。あいつが101'ersと一緒にチズウィックから出
したあのシングル(Keye To Your Heret)、あれはち
ょっとしたラヴ・ソングだった。とこらが今、あいつ
は Hate And War(憎悪、戦争)を歌ってる。どう考え
ても自分のやってる事を把握してるたぁ思えねぇよ」
SV「どっちにしろクラッシュにゃガッツがねぇよな
。あいつらのサウンドはダムド並みに弱いよ。哀れな
もんさ。あのダムドのレコードはまるで初期のサーチ
ャーズのアルバムみてぇだよ、薄っぺらでさあ。それ
からあのクラッシュのアルバムは、まるでフォーク・
アルバムだな。あいつらそのうちバラッドでも歌うよ
うになるだろうよ、クラッシュはさ」
ジョニーはチェルシーの新しいシングル”Right To
Works"に言及して、意地の悪そうな笑みを浮かべた。
J「ジーン・オクトーバーな。あいつが働く権利が欲
しいって叫んでるのなんざお笑い草だよ。てめえはち
ゃんと仕事持ってるじゃねぇか。バンドやってるじゃ
ねぇかよ。笑わしてくれるぜ」
この辺りでマスコミによってデッチ上げられた、ピ
ストルズと国民戦線(英国の極右政党)の関係に話を
持っていくのが順当な流れのようだ。ジョニーがこの
記事に腹を立て、同時に傷ついていたことを知ってい
たからだ。
SJ「俺たちが国民戦線と関わりがあるなんて、冗談
じゃねえよ。ありゃあ俺たちの信用を傷つけて、俺た
ちがあいつらご用達のバンドだってデッチ上げようと
した誰かの仕業さ。酷え事やってくれたもんだよ。チ
ープなパブリシティさ。全く、あのイヴニング・ニュ
ースに出てた記事ときたらよ、胸クソ悪いったらねえ
ぜ。あいつら、国民戦線の連中が俺たちのギグをよく
観に来てたって書いてたけど、そんなの嘘っぱちだ。
俺たちは国民戦線のためにプレイしたことなんて一度
もねえよ。俺はあいつらが大嫌いなんだ。虫酸が走る
ほどな」
J「俺はアイルランド人なんだぜ、分かるだろ。もし
あいつらが同じ船に乗り込んで来るんだったら、俺は
次の便にさせてもらうぜ。人間にはそれぞれ、自分の
好きな時に、好きな所で、好きなように生きる権利が
あるはずだろ。 ああいう国民戦線みたいな、どうし
ようもねえ連中が力を及ぼしてくるようなら、俺は悪
いけど長居する気はねえよ。あんな奴ら敵に回して戦
い続けたってしょうがねえだろう。相手は軍隊だぜ。
・・・・まあ、分かんないけどな。死ぬにはいい理由
になるかも知れないぜ。マシンガン手に入れて、可能
な限り大勢の人間を殺す、とかさ。ケッ、別に俺はそ
んなのがロマンティックだなんて思わねえからさ」
SV「俺もそうだな。ついでに言うと、国民戦線の連
中から百万発くらいの弾丸浴びて蜂の巣になるって
のはいかにもロマンティックじゃないぜ。どっちにしろ
俺らはみんな、アル中で死ぬんだけどな。 俺、酔っ
払うの好きなんだ。頭ぶっ飛んだ状態になるのって好
きなんだよ。なかなか楽しいぜ。普通の生活なんてか
ったるくてたまんねえから、俺はとにかく出来るだけ
そっから抜け出すようにしてんだ」
セックス・ピストルズがパニック状態に陥ったA&M
レコードの上層部から突然放り出されることになるそ
の前日の夜、ジョニー・ロットンによれば、バンドは
いわゆる典型的なレコード会社のお偉方の一人から
、彼らがいかに幸運な若者たちであるかをとくとくと言
い含められたのだそうだ。喜べ、感謝を忘れるな、自
分たちが自由な国に生まれてきたことを、表現の自由
が美徳として尊重される国にいることを。これがロシ
アなら、”ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン”のような
挑戦的な曲がリリースされることは決してなかったは
ずだぞ、と。そしてその翌日、ピストルズは再びレコ
ード会社なしの身の上になっていたのである。
SJ「俺たちはただ笑って、「クソったれが」って言
って思いっ切り中指おっ立ててやっただけさ」
だがジョニーの方はもう少し深刻に事態を受け止め
ているようだった。
J「上層部の中に、俺たちを落としたがった奴がいた
んだろう。そいつが誰だかは知らねえけど、俺たちが
上手いこと行くのが気に入らなかったのさ。俺たちを
黙らせたいと思ってる奴がいるんだよ。二度とこの世
界で浮き上がれないようにしてやりたいと思ってる奴
がさ。場所によっては禁止令が解除になってきてるけ
ど、俺たちは未だにどこ行ってもギグやらしてもらえ
ない状態なんだぜ」
彼はセックス・ピストルズの成功の可能性を摘み取
るために、何らかの陰謀が働いているのではないか
という疑いを抱いたこともあったのだそうだ。国民戦線
とバンドの関係が取り沙汰されたり、彼らのセンセー
ショナルな行動ばかりをクローズアップして報道する
メディアの姿勢に言及する。
J「俺は一般大衆の考え方ってやつに凄えムカツいて
んだよ。大学出てないって言えば、さぞかし無知で田
舎者で、自分の考えもまとめられやしないし、どっち
へ行くかも判断がつかねえだろうって決めつけやがる
んだぜ。 言っとくけど俺の知っている中でも、一番
のインテリ連中ってのは、みんなどん底から這い上が
ってきた奴らだ。そん中には、その辺うろついて、カ
ツアゲして面白がっているようなごろつきどもも入っ
てる。そういう奴らだって、頭は凄え冴えてるんだぜ。
自分らが好きなもの嫌いなものもちゃんと分かってる
。ただ問題はメディアによってどんどん考え方が毒さ
れちまうことさ。そうなるともう、始末に負えなくなく
なっちまうんだよ」
彼がもうひとつ我慢ならないのは、パンク・ギグや
その他の場所で暴力沙汰が起こる度に、それを絶えず
ピストルズと関連づけようとする動きだ。中でも彼を
憤らせているのは、昨年暮れに行われた100クラブ
のパンク・フェスティヴァルで、オーディエンスの一
人の少女が目を負傷したことに関して、彼らがその責
任を問われた件である。
J「ありゃあとんでもねえ話だよ。だって俺たちゃ2
00マイルも離れた所で起こった事を、突然てめえら
のせいだって言われたんだからな。あれはそもそも、
ヴァイブレイターズとダムドの間で起こったいがみ合
いが原因なんだぜ。一体俺たちになにが出来るって
言うんだよ? それなのに俺たちはその責任を押しつ
けられて、おまけにみんな悪いのは俺たちだって思っ
てやがるんだぜ。だが、真実はこうだ。どこでプレイし
てても、俺たちが一旦ステージに上がったら、オーデ
ィエンスの中にはケンカしてる奴なんかいやしない。
みんな俺たちを観てるんだ。誰も俺たちから目をそら
すことなんか出来やしねえのさ。 いいか、俺たちの
ギグには色んな奴らが来るんだよ。後ろの方でテディ
・ボーイズが踊ってる時もあれば、北の方じゃバイカ
ー連中が観に来るぜ。けど、客同士でケンカになった
ことは、これまで一度もない。それが本来あるべき姿
だろ、大勢の人間が、みんな一緒になって楽しむって
のがさ。そういう状況を作ることが出来ないんなら、
やってる意味はねえんだよ−それがモメ事の元にな
るのさ、そういう状況が起こらないようにしちまうことがな」
私は彼に、パンクのギグでしばしば起こる暴力沙汰
に対して、個人的に恐怖感を抱いたことはあるかと素
朴な疑問をぶつけてみた。
J「あんたは怖くねえかよ? 大半は単なるコケおど
しだよ、ギャグみてえなもんだ。オーディエンスの中
の誰かが言ってくるんだよ、「降りてこいよ、相手に
なってやるぜ」って。そういう奴らを見てると、どう
しようもなく腹が立って、もうマジで嫌になってきち
まうんだよ。だって、そんな風に凄む必要なんてねえ
んだぜ。みんな楽しんでりゃそれでいいはずだろうが
。それによ、ケンカした挙げ句に紙みたいに叩きのめ
されるってのは、面白くもなけりゃカッコよくも何と
もない事なんだぜ。それどころか、ぶざまで情けねえ
こった。俺だって叩きのめされた事は何度もあるぜ。
あんなの、ちっとも面白い経験じゃねえよ・・・・。
なあ、たまにはどっかで静かに飲みたいなと思って
出かけたら、そこにたちの悪い群衆がいて、そいつら
は俺の顔を新聞で見たことがあるってだけの理由で
俺のことを気に入らないって言うわけさ。そんな事言
われたってこっちにはどうしようもねえだろう。ところ
が、こいつが現実なんだ。実際にそういうことが目の
前で起こってみろよ、そんなのイカすことでも何でも
ねえぜ」
ピストルズのメンバーたちも、多くのロック・スタ
ーたちと同じように、周囲にボディガードを置いたら
というアイディアを、ジョニーは鼻先で笑い飛ばした。
J「バカ言ってんじゃねえよ。俺はそういうのは大嫌
いなんだ。あいつらは嘘ばっかりだ。いつだって矛盾
だらけさ。例えば俺はこないだ、ピート・タウンゼン
トがパンクについて語ってる記事を読んだけど、「て
めえ、何様のつもりだよ!?」って思っちまったよ。
「パンクがどういうものかなんて、てめえみたいな人
間がよくもまあいけしゃあしゃあと聞いたような口叩
けるもんだぜ!」ってな。しかもあいつは、自分が今
ストリートでどういうものが流行してるか知らないっ
て半分認めてたぜ。きっとこれまでだってそんな事、
かけらも知らなかったんだろうよ」
SJ「俺はもう一人の奴の方がムカつくな。ロジャー
・ダルトリーさ」
SV「あいつにゃ一発蹴り入れてやりてえよな」
J「俺は誰も眼中にねえよ。だいたい俺はストーンズ
だって好きじゃなかったんだぜ。ジャガーはいつも凄
く遠かった。街なかでバッタリ逢った誰かと話すみた
いに、マイケル・ジャガー(彼はこの名前をせせら笑
うように発音した)と話すなんて、とてもじゃないけ
ど想像出来やしないだろ。でも本来はそれが出来な
きゃおかしいんだぜ。あいつが何であんなに、どこへ
行くにもボディガードを引き連れて回らなきゃならな
いのか、俺にはまるで理解出来ないね」
SV「イアン・ハンターもムカつく野郎だ。何かって
言うとストリートから出てきたって話ばっかしやがっ
ってよ」
J「そういう連中は俺達にすっかりビビってるんだぜ
。音楽紙(誌)を読めば分かるけど、みんな俺たちの
事を話してるよ。あれは笑っちゃうね。イアン・アン
ダーソンなんて、自分たちを持ち上げるために、何か
って言や俺たちをけなしてるよ。まあ、ケツの穴が小
せえって言うか、バカげてるし子供じみてるよな。
きっとみんな、俺たちの方こそそういう連中だろうと
思ってるだろう。俺たちはそういうイメージで扱われ
てるからな。で、向こうはいつも知的なイメージで見
られてるからさ。けど、もし本当に頭のいい連中なら
、あんな事言うわけねえだろうが・・・・あいつらだ
って、俺たちが行くような場所と似たようなところで
目撃されてるはずさ。 ロバート・プラントが「ロキ
シー」に来た時なんか、百万人ぐらいボディガードに
囲まれてたよ。で、そん中の一人が俺に近づいて来
て言ったんだ、「ロバートがあんたと話がしたいそう
だ。さて、まさかここでモメ事を起こす気はないよな、
どうだ?」ってさ。でっかい屈強そうな男が何人も、
俺があいつのところに行くのを待ち構えてるんだぜ。
俺の2倍くらいあるような連中だよ。どうしようもね
えだろうが? 俺はロバートをちらっと見た程度だっ
たけど、あいつはマジで何にも知らない北部の田舎
者みたいでさ、ちょっと可哀想になっちまうくらいだっ
たよ。いかにも気がちっちゃそうでさ。一体そんな奴
に、どうやって敬意を持てって言うんだ?」
最後に私は、いつの日かピストルズが、現在彼ら
がここまで忌み嫌っているありがちなロック・スター
たちの世界に仲間入りをする時が来ることを考えた
ことがあるかと尋ねた。
J「絶対ない。俺たちは未だに、隔週で記者会見開い
たり、社交界の実力者連中を接待するためにとんで
もなく豪華なパーティ開いてへこへこしたり、プライヴ
ェート・ジェットで世界各地のリポーターをニューヨ
ークに集めたりしない唯一のバンドなんだ。そんなの
は全部クソ喰らえさ。 俺たちはまだまだこれからだ
。今はシングルがようやく一枚出たとこだけど、これ
からアルバムを仕上げたら、どっかプレイ出来る所
を見つけるさ。誰にも俺たちを止めることなんか出来
やしねえ。たとえ締め出すことは出来たとしても、俺
たちを黙らせることは誰にも出来やしないのさ」
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