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日本地震学界の金字塔
(その3) |
地震予知学と経済政治シミュレーションを徹底的に追求したアレツハウザーの地震経済小説「東京大震災」 その衝撃と多元的小説構成の手法 |
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| 日本地震学界の金字塔とその精神の系譜;明治の科学者であると共に文学者でもある寺田寅彦に始まり、つづいて関東大震災を予告した今村博士、ついで宏観現象の武者金吉、そして河角 廣博士、続く力武常次博士、いま石橋克彦博士などおおくの多元的厳密科学精神の系譜が日本にある | ![]() |
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| 『地震予知学』は生命の大切さから成立する多元的厳密科学である | アルバート・アレツハウッザー | 著者は1960年生まれのアメリカ人。イギリス系証券会社の東京支店に在勤中に野村証券を扱った小説「ザ・ハウス・オブ・ノムラ」を書いた。従って、彼の得意とする経済・政治・国際状況など、これまで日本人には馴染みのない領域を主題にした地震小説を書くことが出来た。まずは、こうした特異性に注目したいと思う。 | |||
| 複雑な人間の赤裸々な絡み模様を描き出す | 近未来のある日、東京に大地震が発生した。脆くもその巨大な建物は崩壊し始めた、彼のオフィスは大手町の一角。最上階にいたエリート社員であるかれは、その会社の誇りを象徴するかのように最も見晴らしのよい部屋だった。この世界を代表する証券会社は、バブルが弾けた中で他社を後目に巨額の利益を計上していた。 同僚の中に、彼に好意を寄せる日本人の女性社員がいた。物語は、この女性とエリート・サラリーマンの愛憎を巻き込んで、劇的な展開を見せながら日本の恥部へと切り込んでゆく。大震災の報道合戦が熾烈を極める中で、政界の黒幕とその秘密をにぎる女性ジャーナリストとの命がけの追跡劇が、大震災の混乱の街を背景に衛星携帯電話で全世界に向けて実況放送される。そこには混乱に乗じた悪徳商人の酷い姿、それを跳ねののけようと格闘する善意の人々の姿、これらが複雑な人間の赤裸々な絡み模様を描き出す。そして、日本のこの混乱にもっとも衝撃を受ける証券業界、金融業界の国際的な策略。アメリカ国債の暴落を心配する政治家達とそれを冷ややかに見守るヨーロッパ連合。こうして、視野はどこまでも広がってゆくことを許容する壮大な小説だ。 |
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| 医療の世界ではすでに常識ともなっているインフォームドコンセント、がん患者への「告知」も地震の「予告」も同じことのおなじ側面である。素人のことばで語る地震予知学の展開こそ地震学の発展を促す。専門家の位相がいま厳密に問われているのだ | 多元的小説構成の手法 | かつて、ドス・パソスが「USA」で描いた多元的手法をアレツハウザーはさりげなく、しかし見事にこの地震小説に生かし切った。ドス・パソスは42に達する物語を一つの小説の中にジグソーパズルのように入れ子状態にした。アレツハウッザーは同じようにサブストーリーを数多くはめ込み画にした。出来上がった絵は「巨大地震の鯰絵」だった。そのテクニックはたいした手腕と言うべきではないだろうか。一般の小説と違いこうした特殊なジャンルの小説だけになかなか評論家の目には止まらないかもしれない。 こうした優れた作品が文学作品として評価される日のくることを願いたいものだ!! |
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| 相互作用する物語粒子群 | 正義派女性新聞記者と政界の黒幕との物語、ソロモン・ブラザースに勤務する米国人の青年主人公と同僚女性社員の愛憎物語、マスメディア支配を地震のどさくさに画策する新興宗教の教祖と主人公の物語、地震工学の権威者と建設業界との軋轢の物語、一流デパートの中間管理職と落ちぶれた商店経営者との葛藤物語、心的外傷を受けた中国系日本人の混血女性と政界の大物の命がけの物語などなど、まだこれで全部ではない、それは読んでからのお楽しみということに…… | ||||
| 東京大学教授にアメリカ人地震学者がいる! | 東京大学理学部教授・ロバート・ゲラー博士、この米国人がこの小説を地震予知面で監修したのだ。まずは、東大に外国人教授がいることに新鮮な驚きを感じた。ところで、ゲラー博士は地震予知は直前でなければ防災面上は意味がない。従ってこうした立場から見るとき、ほぼ予知は不可能という立場なのだそうだ。そこで、この作家はこの不可能なもののために莫大な予算をつぎ込むことの愚かさを指摘することとなった。 | ||||
| 地震予知は幻想なのだろうか? | ゲラー博士は地震予知はあまり意味のない研究であるという結論を主張する。以下彼の意見を拝聴することにしたい。 「私は正確な地震予知(一般的に、十分な信頼性及び精度をもって、ある特定の地震の発生場所、時間及び規模を前もって予測すること、と定義される)が可能かどうかについて考察してきた。過去35年間の国内・海外で行われた予知研究の詳細なレビュー(以下の参考文献4) に基づいて、現時点では、その可能性はほとんど皆無であるという結論が得られた。また、このレビューの他に、一般物理の観点から議論すると、破壊現象は非線形現象であり、初期状態におけるわずかな相違によって、その破壊の広がりが極端に変動することも考慮するなら、現時点及び近い将来に正確な予知ができる可能性はきわめて低いといえよう。それゆえ、地震災害を軽減するため、予知研究ではなく、リアルタイム地震学や構造物の耐震基準を設定するための地震学的研究などに取り組むべきである」という。 |
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| 地震予知は非線形理論なら可能である | ゲラー博士は「破壊現象は非線形現象である」だから直前予知理論は成り立たない、従って「リアルタイム地震学」をとの主張である。しかし、河角廣博士、五十嵐丈二博士、ともに非線形理論である統計力学やフラクタル理論を使って予知理論を作り上げてきた。 その成果はすでに場所、時期ともに極めて精密に算出された。この成果に基づいて金融機関はすでにデーターベースの分散化を終了させている。こうした行動は恐らく何時完成するともしれない「リアルタイム地震学」では出来ないことなのだ。 |
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| 市民の為の市民に必要な地震予知 | 命を大切にしたい、身を守りたい、家族を守りたい、財産を守りたい。こうした市民の願いに地震学はこの今の時点で貢献してほしいのだ。今村明恒博士が関東大震災の危険を警告したのは1905年のことだった。大地震は1923年に発生した。結果だけから見れば、18年間の地震対策猶予期間を今村博士は明示した。地震の発生直前に避難することも大切だが、こうした対策期間はそれ以上に大局的な価値をわれわれ一人一人の運命の上に持っているのだ。 | ||||
| 『地震予知学』は生命の大切さから成立する多元的厳密科学である | |||||
| 『東京大震災』199X年の悲劇─マグニチュード8.6の大地震で首都壊滅!日本はどうなる? 原題は”JISIN ! ”by Albert Alletzhauser 「阪神大震災の犠牲者の霊に捧げる」 徳間書店.1996年11月30日発行 真野明裕 訳 地震学に関する監修は東京大学理学部教授・ロバート・ゲラー博士 |
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