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難治症例の外科治療(2つのアプローチ)
拡大経鼻手術  開頭術+経鼻術同時施行術

現在下垂体腫瘍の95%の症例は非侵襲的で切った跡さえ分からない通常の経鼻手術で安全に腫瘍の切除が可能です。しかし頻度は少ないとは言え
(5%以下)腫瘍が巨大(直径5cm以上)で、周囲に浸潤性(神経や血管を取込んで行く)に増大し、しかも線維化の強い(硬い)腫瘍に遭遇します。

この手の腫瘍は通常の経鼻的手術では安全な外科的切除が困難です。あるいは無理な切除を行うと(図1)のように残存腫瘍に
術後出血を合併し重篤な神経症状(意識障害や麻痺)を引き起こす危険性があります。


従来このような症例には開頭術による腫瘍の摘出が一般的でしたが、
開頭術では逆に下方や後方の腫瘍の摘出が困難となります(図2)

従ってこのような症例にも出来るだけ安全に、しかも可能な限り腫瘍を切除するためにはどうすべきかは大変難しい問題で、我々も長年挑戦して来ました。 
そして当施設では現在これらの難治症例に対する外科的アプローチとして2つの方法を行っています。


図1
浸潤性の大きな非機能性下垂体腫瘍症例(上段)。
通常の経鼻手術を行ったが、上方の1/3が残存。 術後
意識障害を呈し、残存腫瘍内の術後出血が原因と判明した
(下段)
すなわち比較的小さな場合には拡大経鼻手術を 腫瘍が大きな場合には経鼻手術と開頭術を同時に一期的に行う手術を考案、施行して来ました。


図2 他院で内視鏡による経鼻手術、更に後日開頭術が施行されたが、
腫瘍は硬く切除出来ず、当院で開頭術施行。かなりの部分を切除したが
(右MRI)、下方の部分は開頭術では切除出来なかった。

拡大経鼻手術
この方法は元来鞍上部の頭蓋咽頭腫の切除のために工夫された方法です(頭蓋咽頭腫の項をご参照ください)。 これを難治下垂体腫瘍に応用したものです。
 従来の経鼻法では切除が困難な前方に突出する腫瘍や、硬く浸潤性の鞍上部に突出する腫瘍の切除に応用しています。(図3 4)

拡大経鼻法:通常の開窓範囲(赤線)より
更に前方(緑線)を大きく開窓する(左図)。


拡大経鼻手術で展開された術野。 
視神経(視交叉)と下垂体の間に腫瘍が認められる。





図3

左の図4は いずれも再発症例

過去の他院での手術では腫瘍は硬く
切除出来なかったという。

このため腫瘍の外側からもアプローチが可能なように
(拡大経鼻法)通常のアプローチ(→)以外に
開窓を広げ(黄色の線)


腫瘍を切除した(折れ→)。 
術後MRI(下段)で下垂体、
下垂体柄が温存され腫瘍は切除されているのがわかる。
図4 44歳 非機能性腺腫 過去1回の経鼻手術既往歴  65歳 非機能性腺腫 過去3回の経鼻手術既往歴


開頭術+経鼻術同時施行術
残念ですが極希に拡大経鼻法でも腫瘍の切除が困難な巨大下垂体腫瘍(頻度としては希で当院で1%前後)に遭遇します。
(特に我々の施設ではこのような難しい症例が集中して集まる傾向がありますが)。

このような症例でも
出来るだけ安全にしかも最大限の手術効果を得るために近年開頭術と経鼻法を同時に行う開頭術+経鼻術同時施行術(図5)を行っていますので以下ご紹介いたします。この方法の利点は両方のアプローチの利点を同時に享受でき、お互いが助け合うことでより安全に手術ができ、最大限の腫瘍切除が一回の手術で可能である点です。数年前から学会等でその有用性を多くの症例を積み重ねながら発表して参りました。
なぜそんなに一度に切除することにこだわるのか? 別々に行えば良いのではないかなどの意見もあるでしょう。しかしこのような大きな腫瘍の手術で
最も危険なことは既に述べたように腫瘍が中途半端に残存した場合に致命的な残存腫瘍内出血が生じることです。(図1参照)
この合併症を避けるのが一番の目的で工夫された方法なのです。
※下記同時手術例を4例と同時手術風景をご説明しています。


図1. 56歳女性のクッシング病症例
腫瘍は浸潤性で血管を完全に取り込む巨大腫瘍(上段:手術前)
このため部分摘出に終わった場合の腫瘍内出血が危惧され、最大限に
腫瘍の切除が可能な同時手術が選択された。この方法を用いても腫瘍の
全摘出は出来なかったが、ほぼ全体に渡り腫瘍が大きく切除されている
のが分かる(下段:手術後)
図2. 69歳男性の非機能性腺腫例
 腫瘍は大きくかつ上前方に突出していた(上段:手術前) 
通常の経鼻手術はもちろん、拡大法を用いても全摘出は困難と判断、
同時手術を選択施行した。その結果一期的に腫瘍の全摘出が可能
であった(下段:手術後)
図3. 30際女性のクッシング病症例
一部海綿静脈洞に浸潤し、鞍上部では腫瘍は側方に大きく進展して
いる(上段:手術前)このため同時手術を施行。
腫瘍はほぼ全摘できた(下段:手術後)
図4. 57際男性。再発を繰り返した非機能性腺腫例
 腫瘍はそれほど大きくないが形が歪なうえ、浸潤性で硬い腫瘍で
あるため、同時手術を選択した。 下垂体柄を温存し腫瘍は全摘
できた(上段:手術前 下段:手術後)


図5 開頭術と経鼻法を同時に行う開頭術+経鼻術同時施行術の術中風景
(2人の術者により腫瘍の上(開頭側)下(経鼻側)から腫瘍を同時に切除している。)


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