開頭せずにトルコ鞍底に穴をあけ腫瘍の底の部分から腫瘍を摘出する手術です
下垂体腫瘍 経鼻法について

経鼻法とは図5-1の様に上唇の粘膜を切り、鼻腔を経由しさらにその奥の蝶形骨洞(蝶の形をした鼻腔に連なる空洞で副鼻腔と言います。ここに膿みがたまった状態がいわゆる蓄膿症といわれるものです)を経由し、
下垂体が埋まっているトルコ鞍底に達し、
この底に穴をあけ腫瘍の底の部分から腫瘍を摘出する手術です(図2)。
しかし非常に狭い場所での操作で、かつ周囲には重要な視神経や腫瘍で薄く圧迫された正常下垂体があり、これらに傷をつけずに下垂体腫瘍の腫瘍だけ完全に切除するには、多くの経験と極めて高い技術が必要とされ、そこに脳神経外科医のなかでも下垂体を専門にする下垂体外科医の存在意義と必要性が有るわけです。

ちなみに年間下垂体腫瘍の発生は10万人に一人と考えられており、従って大学病院でも年間の治療件数は通常10〜20症例程度です。
現在日本で1000例以上の下垂体腫瘍の手術を自分自身で経験されている外科医は小生(山田正三)を含め数人程度です。


図2

経鼻法について更に詳しく
経鼻法の基本的な手順はフランスのギオー、カナダのハーディー先生ら(図3)
により最終的に完成されたもので、現在でも下垂体手術を専門としない
一般脳神経外科医はこの原法に沿って手術をしています。


図3
(左よりギオー教授、小生(山田正三)、ハーディー教授、1987年モントリオール大学病院手術室にて)

その後さらに身体に優しい非侵襲的な方法が工夫されてきました。 
その結果上唇を切らずに鼻の粘膜を切開する方法や(図4-1〜3)

4-1 4-2
4-3

鼻孔(鼻の穴)が小さく従来の上唇を切開しなければならない場合でも、
原法とは比べものにならないくらい小さな切開しかおかない方法
(我々の考案による)などです(図5-1〜2)。

図5-1
従来の大きな切開に比べ改良法では
より小さな切開(a)となっている。
図5-2
切開の実際。最近では小さな(1cm大)
縦切開を使用している


その他、近年では更に非侵襲的な方法として内視鏡の使用しての手術も導入され出している。6

6(内視鏡による下垂体手術の手術風景)

どのような方法を選択するかは下垂体腫瘍の種類、大きなや患者さんの条件
(子供か大人か、男性か女性か等)で異なって来ます。

Q.下垂体腫瘍の経鼻手術後、容貌や傷は目立たないでしょうか?
A.いずれの方法でも後に美容上問題となるような顔貌の変化や傷が残ることはありません。

Q.下垂体腫瘍の経鼻手術の後はどんな経過ですか?

A.下垂体腫瘍の手術は全身麻酔で行われます。
腫瘍の状態によって異なりますが、実質の手術時間は2時間程度です。
当日は多少痛みがありますがお薬(痛み止め)でコントロール可能です。
翌日より通常の食事も歩行も可能でベットに寝ている必要もありません。
ただし両方の鼻の穴に詰め物が2〜3日はいります。
入院は術後一週間程度でほとんどの方はそのままご退院か
病気の種類によっては内分泌科に転科し、術後の内分泌の状態の精査が行われます。

Q.仕事にいつ復帰できますか?

A.患者様の立場に立ち、最善を尽くしております。原則退院後すぐ通常の仕事への復帰が可能です。

Q.下垂体の手術での合併症にはどんなものがありますか?

A.手術ですのでいろんな合併症が報告されているのは実事です。
しかし通常下垂体を専門とする外科医では重篤な合併症はまずおこりません。
ただし下垂体を専門とする外科医においても1)術後の下垂体機能低下症と2)
術後の髄液漏は一応考えておく必要のある合併症です。

図7-1 図7-2

(下垂体腫瘍手術前後のMRI。大きな腫瘍が(左)切除され、正常下垂体が保存されている(右)



下垂体腫瘍 山田正三のHP