羽遠に流れる血

人の世が江戸と呼ばれていた時代、一匹の臆病な犬妖怪が人里に降りてきた。その臆病さゆえに群れを追い出されたのだった。犬妖怪は正体がばれることを恐れて人の姿に化けて人里に隠れた。しかし山に入れない犬妖怪は人里で悩んだ末に仕事を始めた。それは少しの食べ物をもらうかわりに荷物を預かり届けることだった。人に比べて脚が早く、鼻が聞く犬妖怪にとってそれは天職ともいえるものだった。やがて仕事のよさに世間が目をつけ、飛脚として犬妖怪は成功する。このとき羽遠の名をもらい、彼が臆病であるがゆえに、逃げるために振るった拳が羽遠流となった。
(だから本来の羽遠流は殴る蹴るという動作が速い以外とても原始的で拳法とは呼べない代物である。のちの師範たちがそれを拳法として洗練して現在にいたるのである)
嫁ももらい、子も授かる(幸い子は普通の人間の姿だった)が犬妖怪は正体をあかさずにその一生を終える。羽遠流の始祖が犬妖怪などと誰一人知ることはなかったのである。

時代は移り、羽遠流が拳法として鍛え上げられても始祖の臆病から始まった護身の精神は変わらず(少なくとも血縁者には)羽遠の名と秘められた妖怪の血とともに受け継がれてきた。妖怪の血のおかげで肉体的には常人を超える力を持ちつつも戦うことをよしとしないためにそれが表に出ることもなく羽遠流は人間の流派として生きてきた。
しかし現代、魔獣という脅威に反応してか、初めて「瞳」という例外が現れた。自らの犠牲すらいとわない正義をもって拳を振るう瞳。戦いから遠ざかることで眠っていた血が数多の戦いを経て瞳の力を上げていく。そしてついに騎士となるまでになる。
そして戦闘時の興奮で血は限りなく目覚めに近い状態になる。それは瞳に身体を人間ではなく妖怪の肉体として改変することであり、瞳は知らずにそれによって強力な力を得ている。
現在、瞳は無意識下で血を押さえ込んでいるのでかろうじて目覚めていないが、戦う度に血は着実に瞳の身体を蝕んでいく。もし、戦闘で瞳が大きく傷つき意識を失ったとき、はたしてどうなるか?
(PL談ぶっちゃけ血が目覚めてEVします)