この物件は、スキーマ建築計画/設計による、アパートのリノベーションでした。設計コンセプト、リノベーションの考え方など、この物件で、大変勉強になりました。そして、今回の僕の仕事ですが、やはり、一番の苦戦した古い壁の処理につきます。

04/3月号 BRUTUS CASA  掲載.

04/5月号 建築知識 掲載

裏の部分。古いままでは、少し汚い。むき出しになった古いブロックの壁リタッチ。ただ、古い壁を描くのではない。今回の場合、描くことは、作ってしまうということだ。古い壁の迫力を生かす、ということには場違いな気がした。悩みになやんだ。

ペンキは、各場塗る場所、機能によってたくさんの材料が揃っている。古い遺跡の腐食を防ぐ、撥水材もある。絵の世界も、絵の修復家が存在する。どちらも保護を前提にペイントする。

そこで、補修というペイントの意味をとりいれた。古くなった壁の補修。サッシ周りの雨もれを防ぐ,躯体のひずみから出たひび割れの補修。ブロックの目地の補修。頭で念仏のように唱えながら、ペイントした。

古い壁を生かすように、わざとらしくならないように。

同様にトイレ内部も裏の部分。仕上げ材はクリヤーのみ、ピンク壁はパテ材料に色を混ぜ合わせ、壁のベニヤ板に対する塗装の下地処理をしたイメージした。

反対に表の部分は、新規に壁が作られ、艶ありの塗装をペイントしている。

この現場まで、僕のペイントは、描くことの意味の方がつよかった。当然今回も悩むまでは描く方向で考えていた。古く汚い壁もペイントすれば綺麗になる。どちらかといえば、プラス思考的な考え方が優先していた。

しかし、今回の壁を生かすというペイントは、塗らなくてもよいというマイナスともとれる意味を含んでいた。

仕上げないということではない。

『少し汚い壁をマイナスとして、マイナスの意味でペイントを足す。

名付けて、プラスマイナスペイント。足して引いて、イコール0。イコール、既存壁を生かすこと!?』

とまどいを、言葉にかえたりして、ペイントしたなぁと思い出す。

そしてこの現場を境に、サンプルなどペイントを考える時、わざとらしくならないようにという項目が、僕の頭の中に増えた。