ビギナーズラック

 競馬のG1シリーズが始まった。
 この十数年間はG1レースの馬券を欠かさず買っている。
 1993年のヤマニンゼファーとセキテイリュウオーの天皇賞(秋)から欠くことはない。とすると12〜3年は買っていることになる。私は物事に対してかなりいい加減な人間だが、継続しているものを途中で打ち切れない性格でもある。だからG1馬券も欠かさずに買っているのだ。馬券購入金額は当初の数分の1にはなっているが、少しでも買わなくては気がすまない。些少ではあるがJRAの発展の力になっていると自負している。

 最初に馬券を買ったのはホウヨウボーイとカツラノハイセイコの有馬記念。1980年だ。当時は馬連馬券は発売されていなくて枠連馬券だった。
 友人に頼んで買ってもらった。5000円で2種類の馬券。買い方もいい加減で、1−2を2000円。3−4を3000円と2種類の馬券だった。もちろん馬のことなどわからない。新聞で適当に選んだ馬券だ。ビギナーズラックというのはあるもので、3000円の馬券が60000円になった。当時の給料の半月分以上を数分で稼いでしまったのだ。その狂喜乱舞は今でも覚えている。早速職場の同僚に中華料理のフルコースをおごった。
 更に夢見て、翌年の金杯で全部すってしまったのだが・・・。それでも懲りずに、年に何回かは馬券を買っていた。ビギナーズラック以上の当たりはなかった。

 このときに馬券を買ってくれた友人が競馬の師匠である。彼からは、馬券の買い方だけでなく、競馬新聞の読み方、予想方法、過去の競馬についての知識などすべて教わった。更に、一時さめかけていた競馬熱を『ダービースタリオン』という競馬ゲームを紹介してもらい、その熱をヒートアップさせていただいた。彼がいなければ、JRAのお得意さんにならなかったであろう。でも、予想をして当たっても外れても数分間の悲喜こもごもを何十何百と味わったのだから満足している。競馬の道に入ることができたことを感謝しているのだ。

 ビギナーズラックと言えるものはこのほかには見当たらない。パチンコにも麻雀にもはまった時期はあるがビギナーズラックで大勝した記憶はない。ましてや宝くじは未だに連戦連敗である。
 しいて探してみるとスロットがあった。
 スロットをやったのはいままで1回しかない。職場の同僚に連れて行ってもらい、ルールもよくわからなくて始めた。それが出るわ出るわで換金すると2万数千円になった。この程度は大勝の領域ではないのかもしれないが、私にとっては大満足のビギナーズラックだった。しかし、それを限りで次回もと思わなかっただけ大人になったものだと自負している。

 ビギナーズラックは甘い誘惑の囁き。それに乗る乗らないは自分の判断。でもね。甘い囁きにはみんな弱いもの。
 私にビギナーズラックが少ないのは甘い囁きをかける価値がないと神様や悪魔が判断しているからか、それともビギナーズラックでのめり込んで人生を棒に振らないようにという思し召しなのか・・・。それは私には分からない。

 小説を出版したらミリオンセラーになって左うちわで生活する。株を買った暴騰暴騰の連続で巨万の富を得る。可愛いお姉ちゃんを誘ったら、すぐに意気投合して甘美な夜を過ごす。そんなビギナーズラックにあこがれているもだが・・・。

 

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