すくらっぷブック 〜ブログより抜粋

2006.11

 

すくらっぷ・ブック 1


あれはもう26年前になるのだろうか。

共学だった中学校から男子ばっかりの高校に行き、むさくるしい青春を送っていたころ、ふと通学の電車の網棚にあった雑誌を拾ってきた。
それは、当時「ドカベン」や「がきデカ」といった人気作品が掲載されていた「少年チャンピオン」という雑誌だった。 特に毎週読んでいるわけでもなく、たまたま拾ってきたのでパラパラと読んでいたという感じだったのだが、ふと絵柄がとても好きな作品が目にとまった。
ちょっと子供っぽい感じの絵柄だったが、読み進むうちにそのストーリーや雰囲気に、すっかり引き込まれてしまった。

小山田いく著 「すくらっぷ・ブック」第27話 「秋時雨」。

中学生活を描いた、ちょっとコミカルに見えながら、実はシリアスなストーリーやセリフが根底に流れているという、一風変わった作品だったが、非常に心に残ってしまった。

それ以来、その独特の世界にすっかりはまっていった。
今年になって、その復刻版がでたことを知り、ちょっと高いものの、つい買ってしまった。

すっかりオヤジになった今読んでも、心に響く作品だと思う。 この作品と私のかかわりは、またゆっくり書いていきたいと思う。

 すくらっぷ・ブック

 

 

すくらっぷ・ブック 2


今回、復刊本で入手した「すくらっぷ・ブック」だが、もちろん当時はコミックスで11巻すべてそろえて読んでいた。
私はちょうど晴ボンたちの3つ上の世代に当たるため、リアルタイムでは高校2年〜3年生いっぱいということになる。
同期ではないため、楽しかった中学校時代を懐かしみつつ、こんな中学生活だったら素敵だったなあという思いを持ちつつ読んでいたおぼえがある。

復刊本は1〜4巻なのだが、うれしかったのは、「12月の唯」「春雨みらーじゅ」「三角定規+1」にそれぞれ小山田先生のコメントが入っていたこと。
当時の先生の気持ちがよくわかり、あ〜そうだったのかあ、と思った。

また、各巻末に収録された書き下ろしの連載作品「どっぐいやあ」も、すくらっぷファンにとっては宝のような作品だと思う。
すくらっぷ・ブックの素、と副題が付いているだけあって、ファンにとってはたまらないエピソードが詰まっている。
すくらっぷ・ブックの世界をまたひとつ掘り下げて読める気がして、あらためて全編を読み返したくなってしまった。

ここ数週間、すくらっぷ・ブックのおかげで心の中で忘れかけていた温かいものが、なんとなく戻りかけている気がしている。
漫画っていいものだなあと思う。

 

 

すくらっぷ・ブック 3

小諸へ 1


本当にいい作品というのは、読んだあと心が波立つ。
いてもたってもいられない気分になる。

今回の復刊本はまだ全4巻のうち3巻までしか出ていないが、続きを昔のコミックスを引っ張り出してきて、最後まで読んでしまった。
全編にわたって大好きな作品なのだが、特に後半になると、すくらっぷ・ブックの世界がより濃密に熟成されていき、ひとつの話ごとに余韻に浸らずには読み進めない。
リアルタイムで読んだころと同じ、いや、もしかするとそれ以上の感動がおそってきた。

胸がいっぱいになりながら読み終えたとき、心がざわざわしてきた。

「小諸に行きたいな」

そんな想いが、ふと浮かんだ。
そして、その想いはあっという間に大きくなって、いてもたってもいられなくなってしまった。

実は、高校生のときに軽井沢へ行ったついでにちょこっと小諸の町を回ったことがあった。
そして、会社に入り、つい1年ほど前にも出張で小諸駅を利用したことがあったが、ちゃんと回ったわけではなかった。
そのつど、もちろん頭の中はすくらっぷ・ブックの世界が流れていたのだが・・・。


そんなわけで、とても天気のいい秋の日、新幹線に飛び乗って小諸に向かってしまった。

長野新幹線に乗るのは、もう何度目だろうか。
碓氷峠を通らない新幹線は、長いトンネルをいくつか抜けてあっという間に軽井沢に着く。
そのころには、車窓にはカラマツの風景が広がり、ああ信州に来たんだなあという実感が涌いてくる。

軽井沢で降りてしなの鉄道というのもいいのだが、小海線が大好きなので佐久平まで行き、ディーゼルカーに乗り換えて、一路小諸へ。
小諸駅ホーム
小海線の車両からホームに降り立つと、ちょっとひんやりとした高原の風が気持ちよかった。

さあ、いよいよすくらっぷ・ブックの世界へ・・・。

 

 

すくらっぷ・ブック 4

小諸へ 2


小諸駅の改札を出て、振り返る。

そこには、まぎれもないあの改札口の風景があった。

といっても、新幹線ができ、しなの鉄道になり、ずいぶんと変わってはいるのだが、しかしそこは理美ちゃんがカナちゃんを東京から連れて帰り(悲劇のヒロイン)、イチノ、晴ボン、坂口が夕闇に旅立っていった場所(夕闇発19時16分)。
さっそく感慨にふけり、しばらくたたずんでしまった。

 改札
駅を出ると、そこにはちょっと勾配の付いた駅前広場がある。
改めて見ると、小諸の町は「浅間山へむかってせりあがる・・・(暁着3時31分)」という町だったことがよくわかる。

 駅前広場
まずは、なにはともあれ懐古園へ。
駅の反対側になるのだが、ちょうど紅葉が始まった時期でもあり、なんとも言えずきれいだった。

 懐古園


ちょっとすくらっぷ・ブックの話から外れてしまうのだが・・・。

懐古園に入る前に、駐車場のお手洗いを使わせてもらい、そこを出た瞬間、私の目はあるものに釘付けになってしまった。
C56 144というプレートをつけた蒸気機関車。
小学3年生だったから、昭和47年(1972年)、小海線に乗って小諸に来たとき、駅の構内で貨物の入れ替えに忙しく働いていたのが、このC56の144号機だった。
当時、蒸気機関車がほとんど姿を消していく中で、かろうじて現役として残っていたのが、「ポニー」の愛称で呼ばれていたこの機関車だった。

 C56144
鉄道大好き少年だった私は、夢中になって写真を撮りまくったのだが、その時の風景は今でも眼をつぶると思い出せるほど鮮烈に覚えている。
その翌年には現役を引退して静態保存されることになるわけだが、かろうじて最後の瞬間に出会えた幸せを、懐かしく思い出した。


そして、今回の復刊本に連載されている「どっぐいやあ」を読むと、この昭和47年の春に、小山田いく先生は芦原中を卒業したことがわかる。
私があの機関車と出会ったほんのちょっと前に、すくらっぷ・ブックの素となった世界がそこにあったわけだ。

もちろん、そのときには、後に「すくらっぷ・ブック」という作品と出会うことなど知る由もないのだが、私の鮮烈な経験とあの素敵な世界がちょっとつながったような気がして、何かとても感慨深いものがあった。

 

 

すくらっぷ・ブック 5

小諸へ 3


懐古園の中に入るのは何十年ぶりだろう。

昔は無料だったような気がするが、今は共通券が500円、散策券が300円。
紅葉の季節ということで、思ったより多くの観光客がいた。
晴ボンの影響ではないのだろうが、スケッチの街小諸ということで、懐古園の中では各所でイーゼルが立っていた。

ああ、ここをイチノや晴ボンたちが駆け抜けて行ったんだなあ、などと思いを馳せながら、やはりなんといっても川の手展望台に行かなくてはと歩を進めた。
構内案内を頼りに奥へと進んでいくと、そこにはすくらっぷ・ブックに何度となく出てきた展望台のある風景が。

かがりが

「たけしー ばかものー!!」(風花の円舞曲)

と叫んだ場所である。

展望台
思わず展望台に上ると、そこには本当に吸い込まれてしまいそうな壮大な景色が広がっていた。
かがりがあの時、声を限りに叫びたくなった気持ちも、この風景を実際に見ると良くわかる。

展望台より
口に出すと怪しすぎるので、心の中で 「たけしー ばかものー!!」 と叫んでみた。
すると、その脇から雅一郎の 「ばけものー」 という声が聞こえたような気がした。

とても中年のオヤジがすることではないな、と反省しつつ、そのころにはもうすっかりすくらっぷ・ブックの世界に浸りきってしまっていた。
戻り際に石垣を見ては、陰から理美ちゃんが出てくるんじゃないかと思ったり、木の陰からマッキーが飛び出してくるんじゃないかと思ったり、本当に楽しくも懐かしい気持ちでわくわくしてしまった。

さて、懐古園を出るともうお昼。 出てすぐのところにある「草笛」というお蕎麦屋さんで中もりを食べた。
なかなか食べでのあるボリュームで、大食いの私にはうれしかった。

 

 

すくらっぷ・ブック 6

小諸へ 4


次に向かったのは、いわずと知れたすくらっぷ・ブックの舞台、芦ノ原中学校。
実際の名称は小諸市立芦原中学校である。

懐古園を出て線路沿いの道を長野方面に歩いていくと、正面に白い雪を半分ほどかぶった山並みが見えてくる。
晴ボンが「雪のエアポート」と言った、北アルプスである。
晴ボンは冬がそこからやってくる、と信じていたのだが、確かにこの風景を見ると、小諸は秋なのに北アルプスにはもう冬が来ていると感じさせる。

雪のエアポート
ひとつひとつの風景を見ることで、すくらっぷ・ブックの世界がまたひとつ深くなっていく。
これは、実際に小諸の街に行って見なければ、決して味わうことのできない感動だなあと思った。

そして、しばらく歩いていくと、セブンイレブンがあり、ちょっと買い物をする。
もちろん、このお店はすくらっぷ・ブックには出てこないのだが、レシートに印字された店名が「小諸芦原店」。
なんだかそれだけでわくわくしてきた。 店を出て少しだけ歩くと、交差点があり、そこの信号には「芦原中学校前」と書いてあった。

 芦原中学校前
その字を見た瞬間、物語の世界と現実の世界がごっちゃになり、思わず「え〜へへへへ」とニヤニヤしてしまった。
幸い、まわりに通行人はいなかったが、きっとはた目にはかなり怪しく映っていたのではないかと思われる。
実は中学校はもちろんそこにあるのだが、校舎がとてもモダンなものに建て替えられていたこともあり、芦ノ原中学校をイメージするのは難しいので、校舎の写真は載せないでおこうと思う。
ただ、まぎれもなくその場所ですくらっぷ・ブックの素が生まれたわけであり、その場所に立っているのだと思うと、鳥肌が立つ想いであった。

 

 

すくらっぷ・ブック 7

小諸へ 5


芦原中学校を出て、次に向かったのは、すくらっぷ・ブックのみんなが住んでいたと思われる小諸の町。

小山田先生の公開プロフィールには、坂の上小学校卒、芦原中学校卒とあることから、おそらくその間に多くの登場人物が住んでいる設定だったのではないかと思った。
通学路はこんな感じだったんだろうなあ、と思いを馳せつつ、ゆっくりと歩を進める。
小諸の街は、どこを歩いていても必ず背景には山があるんだなあと思った。
途中で、なんだか懐かしいような、見たことがあるような無いような風景に出会ったので、シャッターを押してみた。

なんかなつかしい風景
やがて、しなの鉄道の高架をくぐり、市街地へ入る。 駅からほど近いところに、「猫のいる小諸の風景」という、小山田先生の描いた絵葉書を無料でわけていただけるところがあるという。
お店の名前は桜井写真商会さん。
この話を聞いたとき、あれれ、どこかで聞いたことのある名前だなあ、と思った。

桜井写真商会
その絵葉書は店頭に並べてあり、「ご自由にお持ちください」と書いてある。
お店の方に断って、数枚いただき、そのあとでちょっとお話をうかがったところ、やはり思ったとおりだった。

芦原中学校は、すくらっぷ・ブックに出てくるとおりの、のんびりしたいい学校で、いい先生にも恵まれてすばらしい日々だったとのこと。
作品の登場人物の中には、実在の方も少なくないそうだ。

そんな話を聞いてしまうと、ますます小諸の街への思い入れは強くなるばかり。
ますますわくわくしながら、坂の上小学校を目指す。
駅前から坂の上小学校までは、ずっとなだらかな坂道になっている。
たしかに坂の上の小学校である。
ここは、復刊本の「どっぐいやあ」でも出てくるのだが、もちろん小山田先生が通っていた当時の木造校舎ではない。
でも、ここであんなことがあったのか、と思うと、これまたすくらっぷ・ブックの素を感じてしまった。

坂の上小学校

学校の前には国道18号線が通っているのだが、そこをくぐる地下道の入り口に、一枚の絵がかかっていた。
坂の上小学校卒業生の卒業制作とのこと。

絵
小山田先生の後輩たちの絵になるのだが、とても深いものを感じた。
スケッチの街だけあって、美術に関心の高い生徒が多いのだろうか。 妙に感心してしまった。

 

すくらっぷ・ブック 8

小諸へ 6


坂の上小学校を出た後は、すくらっぷ・ブックに出てくる「六供」「乙」というあたりを歩いてみた。

坂道が多く、なだらかに山から降りてくる途中に家がある感じ。
やはりどこから見ても山が背景になる。
すくらっぷ・ブックの原風景が、そこかしこに見て取れた。

ふたたび18号を渡り、駅の方へ戻る途中、小川沿いの道を通ったのだが、ふと大林宣彦監督の映画に出てくる尾道の風景がダブってしまった。
坂道、細い路地、玄関までの細い通路、古い町並み・・・。
映画を撮っても絵になりそうだなあと思った。

途中で「ほんまち町屋館」という、ちょっとした展望のいい広場のようなところで腰を下ろす。
そこにあった地図を見て、ああ、あれが高峰高原なのか、としばらく眺めていた。
晴ボンとマッキーたちが妙子ちゃんを雪遊びに連れて行った、標高差1300メートル、直線距離10kmの高原(雪ぼっこ)。
今回は時間が無くて行けないが、次回来たときにはぜひ行ってみたいなあと思った。

そこから小諸の街をあらためて眺め、今回の小諸めぐりを締めくくった。


リアルタイムですくらっぷ・ブックに出会い、それから26年。

あらためて作品をすべて読み返し、舞台となった小諸の街を歩いてみたことで、この作品に対する理解がまた一段と深まったような気がしている。
43歳のオヤジとなった今、読み返してみても心がざわつくすばらしい作品。
子供がちょうどすくらっぷ・ブックの世代となったこともあり、「今の子に受け入れられるのかな」と思いつつ、下の子ともども読ませてみたが、それぞれにいろいろなことを感じ取ってくれたようだ。

親子二代に渡って読めるすばらしい作品。 すくらっぷ・ブックに出会えて、本当に幸せだったと思う。

 

 

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