10.冥府魔道の錦之介その2


このところ殺陣シーンが面白い。何がって、そのシチュエーションの中で拝一刀がえらい事になっているから…。

潜伏中の小屋に火を付けられた病臥の一刀。難を逃れた大五郎も一刀を求め業火に飛び込んだ。しかし焼跡には二人の残骸はなく、その姿を必死に探す役人や農民達の目に飛び込んできたのは…乱れ髪一刀

どわ〜!凄い頭になっちゃって!
煙に燻されて煤けた姿に、ザンバラ頭を振り乱し、くすぶったもやの中から泰然と現れる様は人に非ず、近付くと何かヤバい事になるような妖気が漂っております。

以前観た「源氏九郎颯爽記」の源氏九郎(中村錦之助時代のシリーズ物の映画で白塗総髪の美剣士)の成れの果てというか、同じような髪型だけど、全く彷佛とさせない錦之介さんの嬉しい脱皮ぶり(?)に笑いと感動があります。

そして、「007 ダイ アナザー デイ」でビキニで水面から現れる健康美のハル=ベリーの姿は何度もCMで流され、多くの人の記憶に残っていると思うが、ナントあれは拝一刀の方が先です。(笑)

武衛流砲術との戦いに臨み、何を思ったのか、海の中へザブザブ入っていく親子。
かなわぬと見て入水自殺するのか?と背中を見送る高橋悦史以下弟子達。
しかし、一刀親子がそんなに生っちょろいはずもなく、不可解な行動をとる時は必ず策があるのです。

一刀が海上から超ロングショットで投げた槍は信じられない的確さで高橋さんに命中。
瀕死の重傷を負いつつも大砲を打ち込む高橋さん。そして一刀達の姿が波間に消え、一瞬の静寂の後…

ずぶ濡れ一刀ぶは〜っ!
と海坊主のように海面から浮上してきた錦之介さん。
凄い形相で、槍を振りかざし、浜辺に上陸してくる姿は、まさに鬼神。
カツラの隙間にまで海水をたぷたぷに入り込ませ、全身ずぶ濡れの体当たり演技で、気合いが満ち満ちた錦之介さんは、本当に水も滴る良い男でした。

錦之介さんは扮装が濃けれが濃いほど演技に気合いが入ってきますので、普通はちょっと引いてしまう位のぶっ飛んだ扮装やシチュエーションの方が、断然素敵に見えます。
そういう時の殺陣は、その太刀裁きにまでドラマを感じます。

殺陣がただ上手い、迫力があるというのではなく、そこに至るまでの状態や、なぜ斬るのかという思いを込め、時には敢然と、時にはこけつまろびつ、剣を振るい、毎回変化のある殺陣を見せる錦之介さんの役者魂が好きなんです。

そして、最終シーズンも佳境を迎え、とんでもないキャラクターが登場してきました。
阿部怪異…。この人の事は後でゆっくり触れたいと思うが、阿部の策にはまり、眠り薬で意識を失ってしまった一刀。その隙に夜鷹達に斬り掛かられ、絶体絶命と思ったその刹那、恐るべし拝一刀。彼の剣はもう神の領域に達してしまっている。
項垂れたまま小太刀を薙ぎ払い、アクロバティックに、死地を脱する一刀親子。
剣の達人は意識がなくても殺気に反応して自然と剣を振るう事ができるらしい!

なんでも有りの豪快なストーリー展開と、一刀、烈堂、怪異ら役者陣の濃厚な演技力によって、この超人達の三つ巴の緊張感はラストの盛り上がりを期待させてくれるのに充分に余り有るのです。('03.10)