ベストテン・ワーストテン

2005年映画芸術 2005年キネマ旬報 漫画2005
2003年映画芸術 2003年キネマ旬報 2002年 2001年 2000年

この漫画がすごい2005
ムック ●発売中のムック「このマンガがすごい! 男性マンガ版2005」にベスト6選びを頼まれて書いたものです。(会社名は単行本の版元)
@日露戦争物語 江川達也 小学館
A絶望に効くクスリ 山田玲司 小学館
Bクニミツの政 安藤夕馬・朝基まさし 講談社
CMOONLIGHT MILE 太田垣康男 小学館
Dトッキュー!! 久保ミツロウ・小森陽一 講談社
E酒のほそ道 ラズウェル細木 日本文芸社

コメント
 わたしが最も愛しているのは少年マンガだが、最近元気なのがうれしい。BDの二作を選んだが、「はじめの一歩」講談社「ワイルドライフ」小学館「MAJOR」小学館「ゴッドハンド輝」講談社なども有力だし、「Over Drive」講談社「ヴィンランド・サガ」講談社「ブリザード・アクセル」小学館「さよなら絶望先生」講談社の今後もたのしみだ。過去を描いた@、未来を描いたCの雄大な歴史観、現在を追及するAの鋭い社会観を評価する。一方で、Eの日常感覚にも惹かれる。「赤灯えれじい」講談社「Ns'<ナース>あおい」講談社も入れたかった。

 
2005年ベストテントテン・ワーストテン(映画芸術)
映画芸術2005年 ※映画雑誌「映画芸術」のベストテン、ワーストテンは、普通のもののように1位から10位までを順に選ぶのではなく、1位10点、2位9点… 9位2点、10位1点の配分を合計55点の範囲内で選者が各自行えるようになっています。また、2005年度は選評で外国映画へも論及するよう求められています。
※2004年12月16日から2005年12月15日までに国内で劇場公開された日本映画が対象になっています。
●ベストテン
1位(10点) ローレライ
2位(9点) いつか読書する日
3位(8点) 埋もれ木
5位(6点) リンダ リンダ リンダ
5位(6点) 隣人13号
7位(4点) 狼少女
7位(4点) 亡国のイージス
7位(4点) タッチ
9位(2点) カナリア
9位(2点) YUMENO ユメノ
●ワーストテン
1位(10点) ALWAYS 三丁目の夕日
4位(7点) TAKESHIS'
6位(5点) 蝉しぐれ
6位(5点) 大停電の夜に
6位(5点) 交渉人 真下正義
6位(5点) 容疑者 室井慎次
6位(5点) 電車男
6位(5点) 真夜中の弥次さん喜多さん
8位(3点) 樹の海
●選評
 『ローレライ』をベストワンに推すのは、戦争映画趣味でもオタク趣味でも、ましてや内なるナショナリズムゆえでもない。ひとえに、歴史や社会と向き合って逃げない真摯な姿勢を評価するからである。戦争末期行き詰まり混迷する1945年夏を描きつつ、実はここで意識されているのは年金や医療保険の破綻を目前にしながら逡巡したり先送りしたりしつつ「小泉劇場」に興じる2005年の日本の大人たちのていたらくなのだ。
 歴史や社会に無関心で「自分探し」にばかり熱心な映画の跋扈する中、未来へ向かい何をなすべきかを問う意義は大きい。しかも、それを右翼左翼のイデオロギーに依るのでなく人間としてどうあるべきかを基準に考え得るのは、大和やヒロシマの史実に沿う実録とは決別して仮想SFの形をとった成果だろう。『亡国のイージス』も同様で、海上自衛隊の反乱という題材はショッキングでも、考えさせるのは歴史や社会の在りようである。
 もうそろそろ、戦後のイデオロギー対立から完全に離れた視線で映画を見つめていいのではないか。オウムの記憶に迫るやり方は平凡な『カナリア』を認めるのは、ラストで現れる愚劣な俗物たる祖父が良心的左翼=「朝日・岩波文化人」然とした存在だという一点に尽きる。メッセージ性を敢えて抑えてファンタジーに徹した『埋もれ木』や、あとの6本にここ数年に登場した新しい監督たちの自由な発想を選んだのも、同じ趣旨。
 ワーストでベストの点数を相殺できるのが映画芸術のいいところだ。『三丁目』の高評価を積極的に阻みたい。作者に邪意はなくCG技術を素直に発揮しているのだろうが、それに惑わされて安い<感動>に涙するのが観客善男善女のみならず映画賞選者に及ぶとは…。それより問題なのは、その安い<感動>が、現在の日本の情けない状況を忘れようとするかのような自国の歴史への賛美に結びついてしまう危険性である。
 大げさと言うなかれ。「みんな貧しくて温かくて、困っていたら助け合った。日本人の素晴らしさを感じさせる映画」(昭和22年生まれ男性)などという反響が続出している。冗談じゃない。「50年先だってずーっと夕日はきれいだよ」と無邪気に言う昭和23年生まれの少年こそが、学生運動からきれいに足を洗って会社のために談合社会を支え、バブルを謳歌し、子どもが大人に対して素晴らしさなんか感じない50年後を作った。
 韓国や中国から警戒される『男たちの大和』を観て「日本人の素晴らしさを感じ」る観客は、その実、半分もいないだろう。しかし『三丁目』や藤沢周平原作映画を見た者の大多数は、悪い悪いと言われる日本に素晴らしい「道徳」や「伝統」や「歴史」があったと安堵する恐れがある。こちらの方がよっぽど、人々をささやかなナショナリズムへと誘う可能性は高い(『春の雪』の絢爛な世界ですら、一歩間違えると大国意識をくすぐりかねない)。
 古き良き幸福を描こうとするのは勝手だが、それが当時の世界のどんな情勢を背景にしていたのか考えてみるといい。テレビが来た! と喜ぶ復興は朝鮮戦争をきっかけにもたらされた。現在の幸福はわれわれ自信の自覚と責任の上に成立しているから、それに相反する不幸がどこにあるかも見える。対して、過去の幸福に涙し酔うとき、そこに表れていない不幸の部分については見落としがちである。
 『TAKESHIS'』をベストに選ぶ人がどんな論理で褒めるのか、拝読するのをたのしみにしている。もしわたしを納得させてくださるなら素直に脱帽し、もう一度観て、映画を改めて味わわせていただこう。どう見ても手詰まりになった苦しまぎれとしか思えないのだが。北野武の第一作『その男凶暴につき』以来一連の作品の価値は十分知っているつもりだが、中途からの低迷ぶりもまた明白ではなかろうか。
 北野監督に伍する力のある脚本家と組んで脚本に依拠する正攻法の映画作りを検討してみるべき時期にさしかかっていると、わたしには見受けられる。にもかかわらず出てくるものを次々と褒め上げる北野支持勢力は、このままでいいとの判断らしい。本当にそうなの? もし、作り手の問題点を指摘することなく称揚を続けるだけの態度に終始しているとするなら、映画ジャーナリズムの退廃との謗りを免れまい。 
この2本以外にもワーストにあげつらいたい作品は多々あるが、そのうちでヒット作だったりベストの方にも選ばれそうだったりする7本を並べておこう。『蝉しぐれ』は、「とんでもございません」なんていうデタラメ江戸時代言葉を使わせて「藤沢周平に捧ぐ」と気取られてもねえ。生と死をご都合で使う『この胸…』、おふざけと下品の境が解っていない『真夜中…』。そしてあと4本の5点をつけた作品のひどさは、言わずもがなというものだろう。
 テレビからの参入ばかりが目立つ中で映画界から登場した新人監督の作品をワースト扱いしたくはないが、『樹の海』をヘンに持ち上げる批評を散見するので、敢えて異を唱えておきたい。
「外国映画」は、わたしの場合イコール韓国映画である。『復讐者に憐れみを』『受取人不明』『初恋のアルバム』『地球を守れ!』『木浦は港だ』『大統領の理髪師』『コーストガード』『マラソン』『四月の雪』『マルチュク青春通り』と、たちどころに10本が思い浮かび、そのほかにも愛すべき作品が少なくない。観客を楽しませようとする意欲と歴史や社会に正面から立ち向かう態度を、まず日本映画は見習うべきでないだろうか。
2005年ベストテン(キネマ旬報)
キネマ旬報 第一位 ローレライ
第二位 いつか読書する日
第三位 埋もれ木
第四位 リンダ リンダ リンダ
第五位 隣人13号
第六位 狼少女
第七位 亡国のイージス
第八位 タッチ
第九位 カナリア
第十位 YUMENO ユメノ

監督賞 小栗康平 『埋もれ木』
脚本賞 いつか読書する日
主演女優賞 田中裕子 『いつか読書する日』『火々』
主演男優賞 岸部一徳 『いつか読書する日』
助演女優賞 ぺ・ドゥナ 『リンダ リンダ リンダ』
助演男優賞 新井浩文 『隣人13号』
新人女優賞 香椎由宇 『リンダ リンダ リンダ』『ローレライ』
新人男優賞 塩谷瞬 『パッチギ!』

ベストテン感想
 観たのは121本。『ローレライ』は、凡百の戦争映画とは次元の違う新しい形の作品だ。1945年を描いて2005年の社会の在りようを考えさせるだけの鋭い問題提起がここにはある。Fの提起する課題も重い。Bはファンタジーの極み。他の7本もそれぞれ人間の心を熱く描ききって、この社会の姿を浮き彫りにする。『パッチギ!』『火火』『CHARON』『帰郷』『17歳の風景』『8月のクリスマス』『疾走』『レイクサイド マーダーケース』『ゲルマニウムの夜』『北の零年』が次の10本。

個人賞感想
 ファンタジーの極致を成立させた小栗監督、フィクションの妙を見せた『いつか読書…』の脚本は断然。主演女優・田中裕子も文句なしだろう。主演男優・岸部一徳はそれとみごとに伍した。助演女優は敢然と日本映画に挑んでくれたペ・ドゥナに。男優は『村の写真集』藤竜也もいいが、若手で『隣人13号』新井浩文を買いたい。新人は『パッチギ!』の二人とも思うが、女優はくっきりしたキャラクターが鮮やかな香椎由宇を推す。

2003年ベストテン

映画芸術ベストテン・ワーストテン

ベストテン

@バトル・ロワイアルU 鎮魂歌【レクイエム】(10点)
@ヴァイブレータ(10点)
Bblue(8点)
Dロボコン(6点)
D沙羅双樹(6点)
E蕨野行<わらびのこう>(5点)
E赤目四十八瀧心中未遂(5点)
Hいたいふたり(2点)
Hゲロッパ!(2点)
I六月の蛇(1点)

ワーストテン

@踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ(10点)
@スパイ・ゾルゲ(10点)
C1980(7点)
Dスカイ・ハイ【劇場版】(6点)
E月の砂漠(5点)
Eドラゴンヘッド(5点)
Gオー・ド・ヴィ(3点)
GMOON CHILD(3点)
Gドッペルゲンガー(3点)
G星に願いを。(3点)

 「小津安二郎生誕百年」とは無縁に、今年も量産される新作日本映画を追いかけて見てまわった。古典を無視して新作に走るのは、秀作だろうと愚作だろうと、それが現在の日本社会をいい意味でも悪い意味でも反映しているからだ。わたしは、映画研究家でなく、また、もはや映画評論家でもなく、職業としては文化行政のプロとして映画を社会の中にどう位置付けるかを考え、個人としては観客の立場でNPO活動などを通し映画が振興されることを願う。…とすれば、今現在のこの社会の中にあって日本映画がどういう自己主張をするのかが、最も注目する点なのである。
 B(ベスト)@『BRU』は、鋭敏な時代意識に満ちている。それは、前作からUへ、七十代の父・深作欣二から三十代の子・健太へと世代を超え、しかし視点を共有して受け継がれる意識だ。アメリカの対テロ戦争に真っ向から異議申し立てをなしテロリストやゲリラの側に位置取りするのは、深作映画の輝ける常道。それに加え「すべてのオトナに、宣戦布告。」と若者vs.大人の世代間抗争色を濃厚にしたのが、今回のミソである。年金問題をはじめ、若い世代の利益と古い世代のそれとが相反する局面が急激に大きくなっている社会の現状を、鮮やかにすくい取る。上陸作戦の戦闘場面で男生徒、女生徒が全く同じ条件で戦いに晒される「男女共同参画」ぶりも含め、深作健太監督の新しい感覚がみごとに生きている。
 それに比べてどうだ。W(ワースト)@『踊る…』は、世代間対立と並んで深刻な問題である官僚社会の退廃を扱うかに見せながら、そしてまた官僚制批判という大衆受けする構図をドラマの主軸に据えながら、ただ表面をなぞった底の浅いおふざけに終わっている。まだしも前作では「事件は会議室で起こってるんじゃない!」の決めぜりふが生き、現場とキャリア官僚の関係性がくっきり表れたり、中間管理職官僚の微温的環境とうらはらの悲哀あたりは問題提起できていた。ところが女性キャリアを戯画的に示し(「事件は現場で起こってるんじゃない!」のせりふは、ただ裏返しただけで何の意味も有していない)、愛すべき(?)はずの中間管理職トリオに明らかな公務員犯罪まで匂わせては、ここで描かれる官僚システムが実は批判の文脈でなくちょっと物珍しい風俗に過ぎないことが露呈されてしまう。中枢の<権力>と闘うそぶりの現場捜査陣が、結局、ヘリやSATや大捜査網といった権力装置を使って犯人を逮捕するクライマックスには鼻白むばかりだ。警察と犯人たちの間には、アメリカとイラクの間並みの戦力差があるのだもの。
 若い本広克行のおふざけとは違い、W@『スパイ・ゾルゲ』の装いは深刻だ。しかしそれは単に歴史をなぞって戦争や政治に論及しているだけで、これが2003年に作られなければならかった必然性など皆無に等しい。CGを駆使して本物らしい映像を作り出した「時代の進歩」は画面から読みとれても、共産主義と軍国主義が鬩ぎ合った過去をその後の歴史展開をふまえて総括する「時代の進歩」はどこにもないのである。あまりの無惨。自身の若き日共産主義に抱いたロマンから脱却できず古い図式に固執する篠田正浩を、自らの世代が生きた時代を次世代へつないで逝った深作欣二と対比するのが酷に思えてくる。
 現在の社会において自己主張するために、政治や歴史が必ず語られなければならぬわけではない。B@『ヴァイブレータ』は、男女二人の性愛を描いて同時にこの社会にたゆたっている気分を浮き彫りにする。ピンク映画時代から一貫して新しい時代の空気に敏感な廣木隆一と、決して「昔の歌」を忘れない荒井晴彦とが組み、廣木の感覚の側に敢えて傾斜したことが、2003年ならではの味がする性愛ドラマを生んだ。これを評するに四半世紀近くも昔のロマンポルノ『赫い髪の女』を持ち出すような後ろ向きの映画ジャーナリズムでは、現在に生きる日本映画への展望は語れない(映画に関する論考は、もうはっきりと映画研究ばかりに偏ってしまった。映画と社会とをつないで論じる映画評論は死に絶えかかっている)。
 B@の2本、W@の2本は、現在の日本映画の両極端を示すかのように存在感大きい。とくにW@に関しては、昨年の選評で『突入せよ! あさま山荘事件』を「十年に一本」のワーストと書いたのがいささか恥ずかしくなるくらいの「二十年に一本」もののひどさだと思う。くだらない映画や未熟な映画はいくらでもあるが、こうした超弩級の時代逆行作品が頻出するのは、日本映画の、というより日本社会の危機の兆しなのだろうか。
 その他の作品に駆け足で触れよう。BA『blue』は女子高生二人の愛憎という狭いところへいくらでも入り込んでしまいそうな題材を、彼女たちの後景にある大人たちの暮らしを明に暗にほのめかすことで広がりある青春ドラマにしてみせた。『超アブノーマルSEX 変態まみれ 』93で出発した安藤尋、ついに到達した会心の一作と褒めたい。
 会心といえば、『まぶだち』でなく、このBD『ロボコン』のような素直に進む集団劇の方に古厩智之の本領はあると見た。河瀬直美の奈良を舞台にした地方土着式映画も、BD『沙羅双樹』の生活感あってこそ<不思議>が生きる。BH『いたいふたり』の寓話性がすんなり受け取れるのは、個々に登場人物個々の造型が確かだからだろう。斎藤久志の成熟を感じる。BI『六月の蛇』こそロマンポルノの性愛一点集中ぶりを想起して論じられるべきだろう。塚本晋也の硬質な粘着性とでも呼びたいこだわりが見過ごせない。
 BE『蕨野行』は、恩地日出夫が老いと切実に向き合った潔い覚悟が好結果に結びついている。過去の映画経歴を振り切って改めて挑むかのように、ういういしい作りに仕上がった。逆にBE『赤目…』は、荒戸源次郎が二作目とは思えぬふてぶてしい作りで成熟した奥深いロマンを感じさせる。BH『ゲロッパ!』は井筒和幸映画の魅力の片鱗にとどまっているが、住基ネットをさりげなく笑い飛ばすような鋭い毒が健在だ。
 今年は、ベストよりもワーストの方に深刻な事情を感じる。例年のように、悪い悪いと皆は言うけど日本映画は決して衰えていない! とは主張しづらいのである。
 WB『1980』が映画に敬意を持つそぶりを見せつつ本当はナメきっている、この姿勢からは何も出てこない。むしろ『木更津キャッツアイ』の挑戦的態度の方から、まだしも新しい展開が生じるのではないかと思える。
 WC『スカイ・ハイ』は、気が遠くなってしまいそうな愚作。いくらひどいといってもこんなに出鱈目な映画は特筆ものだ。『あずみ』『ALIVE』『荒神』といい、この監督が日本映画の希望だなどという論評には呆然とさせられる。WE『ドラゴンヘッド』またしかり、思わせぶりな単発のムードを安易に持ち上げる映画記事が跋扈している。
 そうした安易な先物乗りの過剰評価が、WD『月の砂漠』やWG『ドッペルゲンガー』に感じてしまう、作家が自分を見失って周囲の評価に媚びかねない空気をもたらすのでなければいいのだが。青山真治、黒沢清のような非凡なものを持つクラスにしてそうだから、他はもっと安易に媚びの姿勢を露呈する。『ラヴァーズ・キス』『13階段』『卒業』『Short Films』『恋愛寫眞』『DUEL 2LDK』『マナに抱かれて』『g@me』『東京ゴッドファーザーズ』。ほんとにこんなのがいいの? 新人作品でも『福耳』『IKKA:一和』『蛇イチゴ』『花』そして『延安の娘』… 軽々しく褒めていいのかなあ。
大きな迷いが、日本映画全体に漂っていると思う。WG『オー・ド・ヴィ』そして『昭和歌謡大全集』の篠原哲雄、WG『MOON CHILD』の瀬々敬久、WG『星に願いを。』の富樫真、さらには『黄泉がえり』塩田昭彦、『陰陽師U』滝田洋二郎、『魔界転生』平山秀幸、『ぼくんち』阪本順治、『牛頭』三池崇史と、気鋭の監督たちの首を傾げたくなるような新作に次々と接すると、何がこれらの原因なのかを深く考えたくなる。
 

2003年ベストテン

キネマ旬報 日本映画ベストテン
1ヴァイブレータ
2バトル・ロワイアルU 鎮魂歌【レクイエム】
3ジョゼと虎と魚たち
4blue
5ロボコン
6沙羅双樹
7赤目四十八瀧心中未遂
8蕨野行<わらびのこう>
9ゲロッパ
10六月の蛇

選評
 「ヴァイブレータ」は、演出、脚本、俳優の力が最大限に発揮され融合した稀有なアンサンブルである。深作健太が父の衣鉢を継いだデビュー作の2は社会的メッセージの鮮やかさで出色。3では犬童一心が甘さと苦さの同居する清らかな青春映画を仕上げた。4の安藤尋が大飛躍し、5古厩智之、6河瀬直美、10塚本晋也は自らの本領たる鉱脈を掘り当てたのではないか。他の有望若手監督低迷が目立っただけに印象的だ。8恩地日出夫の健在ぶり、7荒戸源次郎、9井筒和幸の強烈な個性もうれしい。

個人賞
○監督賞 廣木隆一 「ヴァイブレータ」
○脚本賞 荒井晴彦 「ヴァイブレータ」
○主演女優賞 寺島しのぶ 「ヴァイブレータ」「赤目四十八瀧心中未遂」
○助演女優賞 大楠道代 「赤目四十八瀧心中未遂」「座頭市」
○主演男優賞 大森南朋 「ヴァイブレータ」
○助演男優賞 内田裕也 「赤目四十八瀧心中未遂」
○新人女優賞 石原さとみ 「わたしのグランパ」
○新人男優賞 大西瀧次郎 「赤目四十八瀧心中未遂」

選評
 「ヴァイブレータ」と「赤目」でほぼ埋まってしまった。寺島しのぶの映画デビューは大事件。「ジョゼ…」の池脇千鶴もすばらしいが寺島の存在は断然だ。大森南朋が「化けた」のも収穫だ。大楠道代、内田裕也は、たたずまいだけで作品世界を左右する貫禄。他では「蕨野行」「牛頭」などの石橋蓮司が圧巻だった。新人はスケール大きい石原さとみとひさびさに性根の座った面魂を見せる大西瀧次郎が断然だが、今宿麻美、市川実日子の「blue」コンビ、「阿修羅のごとく」中村獅童もなかなか。

2002年ベストテン

日本映画ベストテン
1 ごめん
2 クロエ
3 実録・安藤組侠道伝 烈火
4 DEAD OR ALIVE FINAL
5 笑う蛙
6 KT
7 プウテンノツキ
8 ピーピー兄弟
9 いたいふたり
10 とらばいゆ

選評
日本映画は「たそがれ清兵衛」だけではない。若い作家達の斬新な作品が続出し、こらからに期待大。三池崇史の大活躍、利重剛、平山秀幸、阪本順治の90年前後デビュー組が安定し、1の富樫森、9の斉藤久志、10の大谷健太郎、「UNLOVED」万田邦敏、「ドッジGO!GO!」三原光尋、「ロックンロールミシン」行定勲の台頭、7の元木隆史、8の藤田芳康、「ピンポン」曽利文彦、「夜を賭けて」金守珍と新人も豊作だ。今年も奔走して百五十本近くを観たが、その甲斐十分あった。



個人賞
○監督省  三池崇史 「実録・・安藤組狭道伝 烈火」「DEAD OR ALIVE FINAL」など
○脚本賞  荒井晴彦 「KT
○主演女優賞 ともさかりえ 「クロエ」「AIKI
○助演女優賞 江波杏子 「KT」
○主演男優賞 竹内力  「実録・・安藤組侠道伝 烈火」「DEAD OR ALIVE FINAL」など
○助演男優賞 石橋凌 「AIKI
○新人女優賞 唯野未歩子 「いたいふたり」「さゞなみ」
○新人男優賞 中村獅童 「ピンポン」

選評
 監督・三池崇史の活動ぶりは断然。脚本は 「KT」で日韓の重い歴史に正面から挑んだ荒井晴彦の志高さを評価したい。女優は絵空事めく非現実的な恋愛譚「クロエ」にリアリティイを付与する透徹した存在感のともさかりえ、在日コリアンの母親の思いをわずかな登場場面で表現した江波杏子。男優では主演しまくる竹内力の働きを今年こそは推したい。助演は塚本晋也も光るが、「AIKI」石橋凌の重みを。新人は唯野未歩子の持ち味と 中村獅童の面構えに。
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2001年 ベストテン

 例年のこと、わたしの2001年度日本映画ベストテンをお知らせします。
1 光の雨
2 非・バランス
3 あしたはきっと…
4 殺し屋1
5 天国から来た男たち
6 岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説 EPISODE1
7 少女
8 ウォーターボーイズ
9 GO
10 ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃
●1は渋谷シネ・アミューズ、池袋・新文芸坐など、4は渋谷シアター・イメージフォーラム、シネ・リーブル池袋、新宿ジョイシネマなど、8は新宿東映パラスなど、10は全国東宝系で上映中です。お正月休みに観ていただけるとうれしいです。
【ベストテン選評】
 実に豊饒な一年でした。『光の雨』は断然の傑作(『光の雨』評をご覧下さい)。
 他にも多数の秀作に恵まれ、日本映画を丹念に観ていく作業の喜びを感じさせられました。ゆえにベスト「テン」に絞るのは、はっきり言って不可能。二、三十本が横並びに近い状態で、ここに挙げた2位以下の九本と11位以下は紙一重のようなものです。
 量的に最も活躍した監督は三池崇史。『殺し屋1』の凄みはひとつの究極です(『殺し屋1』評をご覧下さい)。『天国から来た男たち』は、フィリピンを舞台に刑務所の塀の内も外もない善悪の混沌を人間臭く描き上げる。陥れられた商社マンの主人公が大統領になってしまう(!)突き抜けたピカレスク・ロマン。『ビジターQ』は遠藤憲一と内田春菊が怪演の限りを尽くすハチャメチャなホームドラマで、『FAMIRY』は自衛隊戦車(!)の出現するトンデモやくざ映画。それでいていずれもテーマは、「愛」という普遍的なものなのです。
 宮坂武志は、名作シリーズ『岸和田少年愚連隊』の外伝として強烈キャラクター・カオルちゃんの破天荒な行状を活写し、新進監督としての力量を示しました。竹内力に中学生を演じさせる超誇張描写をデタラメに終わらせず、甘酸っぱい青春物語に昇華させています。富樫森の本格デビュー作『非・バランス』は、孤独な女子中学生とオカマ中年の友情の深さをせつせつと訴える。街のたたずまいを話に生かした仙台ロケが効果的。
 関西インディーズから育った三原光尋も、『あしたはきっと…』で堂々の所業を見せる(『あしたはきっと…』評をご覧下さい)。奥田瑛二のデビュー作『少女』は、日本映画を代表する俳優としてのキャリアが監督業にいい形で生きたいかにも日本映画らしい力作(『少女』評をご覧下さい)。行定勲『GO』は、単館レイトショー級から全国東映系大公開のスケールへと飛躍したことが、それまでの悪い意味の自主映画臭さから脱却させ、作品内容をも大きくしました。新しいリズムの青春映画です。
 篠原哲雄は小品『張り込み』でロマンポルノを思わせる緊密な性愛サスペンスを組み立て、『女学生の友』では誇り高い老人の生活と意見を軽やかに綴っています。矢口史靖は『ウォーターボーイズ』で青春と爆笑を結びつける芸風を一層深めました。青山真治の追い求めている世界も、『ユリイカ』『路地へ』でその重みをまた一段と顕わにしたし、黒沢清は『降霊』、長崎俊一は『柔らかな頬』で自分の歌をうたいます。山本政志の逞しいボーダレス精神は『リムジン ドライブ』でも健在、おおらかに楽しめました。
 相米慎二を喪ったのは残念の極みですが、遺作となった『風花』はラストに混迷を残しつつこの気難しい監督が一貫して狙った人間関係の揺らぎを映し出しています。金子修介『ゴジラ…』は、期待に背かぬ特撮怪獣映画の快作です。松岡錠司『アカシアの道』は老いと家族を、平山秀幸『ターン』は孤独と自立を、静謐で着実な話法によって印象づけました。五十嵐匠が『みすゞ』で新境地を開いたのは、伝記の対象となる人物に過度に感情移入することなく客観視し、そのことでかえって鮮やかに実相を伝える妙技。
 李相日の清新なデビュー作『青 chong』は、まだ稚拙だが自らのアイデンティティを探る訴えかけの切実さで『GO』を上回るものがあります。山下敦弘『どんてん生活』は「ウマヘタ」調のとぼけたタッチで若者たちの無為を、石岡正人『PAIN』はアダルトビデオの虚実ないまぜの猥雑さを意識しながら若さの軽薄とその中の誠実を、それぞれ世に媚びない気骨で映画化しています。
 これら新人の二世代前に当たるベテラン陣の動きも活発で、小野田嘉幹『伊能忠敬・子午線の夢』の楷書の映画作りが本領を発揮します(『伊能忠敬』評をご覧下さい)。鈴木清順は『ピストルオペラ』で映像の奔放な遊びを、市川崑は『かあちゃん』で贅沢な人情劇志向を、今村昌平は『赤い橋の下のぬるい水』でファンタジックなエロばなしを、それぞれ「やりたい放題」やって楽しませてくれました。
 ドキュメンタリーも豊作で、野中真理子『子どもの時間』(評をご覧下さい)をはじめ、中田秀夫『サディスティック&マゾヒスティック』、藤原智子『夢は時をこえて』、小林茂『こどものそら』、桐野直子『ひなたぼっこ』、佐藤真『SELF AND OTHORS』、豊田利晃『アンチェイン』、四ノ宮浩『神の子たち』と、惹き込まれた経験は枚挙に暇ありません。
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  2000年度 日本映画ベストテン

とりあえずは、ベストテンとそれに続く十本の2000年度おすすめ日本映画を、タイトルのみ紹介します。いずれ、監督、出演者などのデータを加えて、もっと見やすいものに更新しますのでお待ち下さい。

     1 岸和田少年野球団
     2 顔
     3 はつ恋
     4 バトル・ロワイアル
     5 オーディション
     6 歯科医
     7 十五才・学校W
     8 スリ
     9 クロスファイア
    10 スイート・スイート・ゴースト
 

 これらに続く十本は「DEAD OR ARIVE2 逃亡者」「三文役者」「BULLET BALLET」「フリーズ・ミー」「東京ゴミ女」「花を摘む少女と虫を殺す少女」「ジュブナイル」「ブリスター!」「不倫妻 情炎」「新しい神様」
 なお、「バトル・ロワイアル」「学校W」「DEAD OR ARIVE2 逃亡者」「三文役者」は、2001年1月現在、まだ封切上映中ですので、お暇があればどうぞ。

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