都内鉄道各社/首都直下地震への対策強化/高架橋耐震補強や省エネ設備導入(日刊建設工業新聞)よりH24.05.15紹介
JR東日本と首都圏の大手私鉄各社は、鉄道施設の首都直下地震対策を強化する。いずれも線路構造物の耐震補強と、駅舎などへの省エネ設備の導入といった取り組みに力を入れる。JR東日本は、520億円を投じ山手線の線路などの耐震補強を実施。列車の停止時に発生する電気をためて広域融通できるようにする鉄道版スマートグリッドの構築も急ぐ。JR東日本、東京メトロ、京浜急行電鉄、東京急行電鉄、東武鉄道、小田急電鉄が14日までに発表した本年度の設備投資計画(東急電鉄は中期経営計画)に対策を盛り込んでいる。西武鉄道も近く計画を公表。京王電鉄は14年度までの中期経営計画の中で、駅舎や高架橋の耐震補強の推進を打ち出している。
耐震補強は、JR東日本が山手線や中央線といった首都圏9路線(約220キロ)の盛り土・切り土・橋梁などを対象に展開する。東京メトロは、高架橋約1200本を対象に耐震補強を進める。出入り口(235カ所)や換気口(102カ所)からの浸水対策として進めている止水板や防水扉の設置も継続する。トンネルの入り口部分(4カ所)でも防水扉を設けられるよう技術検証を行う。これらの対策に約100億円を投じる。小田急電鉄は、代々木八幡〜代々木上原間など小田原線の3区間と相模原橋梁、多摩線の高架区間で計画を推進する。東急電鉄は計画を前倒しして14年度までに高架橋の耐震補強を完了させる。
省エネ設備の導入では、JR東日本と東武鉄道が今夏以降、それぞれ列車の停車時に発生する回生電力をため有効利用できるようにする装置をき電区分所に導入。両社を含めほぼ全社が駅舎などへの太陽光発電の導入も推進する。このほか、都営地下鉄を営業している東京都交通局も、施設構造物の耐震補強や浸水対策の必要性について再検討する。
都が先月発表した首都直下地震の被害想定によると、東京湾北部と多摩地域をそれぞれ震源とするマグニチュード7・3規模の地震が冬の夕方6時に風速8メートルの風が吹く中で発生した場合、新幹線を除く鉄道施設の物的被害率は2〜0・8%と試算されている。各社は、大きな被害は発生しないとみているが、運転を早期に再開できるよう、耐震補強の前倒しや実施する規模を拡充したり、電源の多様化を図ったりする。
ゼネコン/外付け耐震補強の適用範囲拡大相次ぐ/震災で需要増、提案活動活発化(日刊建設工業新聞)よりH24.04.18紹介
既存建築物の耐震改修を狙い、外付け耐震補強技術の適用範囲を拡大する動きがゼネコン各社に広がっている。東日本大震災を契機に、建築物の耐震性に対する関心が高まる中、既存工法のメニューを増やすことで建物所有者の要望にきめ細かく対応し、受注獲得につなげる狙いがある。集合住宅や学校、病院などを主戦場に今後、各社の提案活動がより激化することも予想される。
震災後、既存建築物の耐震性を高める工法で建築技術性能証明を取得・再取得する動きが相次いでいる。今年に入り、外付けフレームによる耐震補強工法で建築技術性能証明を取得あるいは再取得した、と発表したのは西松建設と構造計画研究所、安藤建設と東亜建設工業、前田建設と東洋建設、戸田建設、矢作建設工業、青木あすなろ建設など。安藤建設は学校や病院が中心だった「Key Grid構法」の適用範囲を広げ、耐震補強の需要増が見込まれるマンションでも採用できるようにした。前田建設と東洋建設の「マスターフレーム構法」も、適用対象をバルコニーや供用廊下が外側にある集合住宅に広げる目的で、建築技術性能証明を再取得した。工期を短くしたり、コストダウンを図ったりといった技術面での改良を武器に、提案活動の強化と併せ、他社への技術供与も進める考え。
これらのほかにも飛島建設が1月、集合住宅向けに開発した「外付けトグル制震補強工法」の動的加振実験を行い、震度6クラスの揺れにも耐え得る性能があることを確認、公営住宅などをターゲットに普及拡大を狙っている。相次ぐ各社の動きの背景には、「新築工事が減少し、リニューアル工事が増加する中で耐震補強は需要拡大が見込める分野」(ゼネコン関係者)という業界の共通認識がある。受注競争で優位に立つにはより多くの選択肢を取りそろえて顧客に提案する戦略が必要になる。
既存建築物の耐震補強では、東京都が災害発生時の輸送ルートを確保するために指定した緊急輸送道路に面した建築物の耐震診断・改修を促す制度を開始。国や他の自治体も関連予算を厚くし、取り組みを後押している。首都直下や東海・東南海・南海など大規模地震の発生懸念が高まる中、建築物の耐震補強もさらに拡大すると見込まれ、ゼネコン各社の提案活動も今後、一段と活発化しそうだ。
清水建設/靖国神社大灯籠を耐震改修/免震装置組み込み、柱脚部補強(日刊建設工業新聞)よりH24.03.16紹介 そうなんだ@為五郎
清水建設は15日、東京都千代田区の靖国神社で、大灯籠(とうろう)の笠石の設置作業を行った。大灯籠は高さが12・4メートルある日本一の規模。重さ26トンの笠石をはずすなど解体調査を行った上で、免震装置を組み込んだり、柱脚部を補強したりする耐震改修工事の一環で、現地では免震装置の設置などが既に完了。同日は、大型クレーンによって笠石を慎重につり上げ、火袋と呼ばれる部分の上に据え付けた。二つの大灯籠の耐震改修を行っており、もう一つの大灯籠の笠石は16日に設置する予定だ。
大灯籠は日本建築史の礎を築いた伊藤忠太氏の設計。竣工は1935年、基礎の径は7・2メートル。台座、竿、火袋、最上部の笠石で構成。笠石は幅3・5メートル、高さ3・1メートル。大灯籠は、11年3月11日の東日本大震災で笠石が大きく波打ち、火袋の天端が破損。大規模な地震が発生した際には、笠石の落下が懸念されるため、靖国神社は耐震改修を行うことを決めた。
清水建設は震災当日に靖国神社に急行。状況説明を受け、即座に対応を開始した。図面が残存していたものの、現物に一部異なる部分があったのに加え、石造の耐震対策というまれなケースなため、社内に構造などの専門家で構成するプロジェクトチームを設置。耐震診断や非破壊検査を行いながら、対策を検討し、関東大震災クラスの地震にも耐えられるよう▽笠石下部に免震装置を3台設置し、鉄骨心材で支持▽笠石への鋼製ピンの設置▽台座と基礎の間に直径38ミリ、長さ3・2メートルの補強鉄筋8本の追加挿入−といった措置を講じることにした。
具体的には、オイレス工業製の「滑り振り子型免震装置」を笠石と火袋の間に設置。火袋の中心には鉄骨心材を組み込んでおき、装置をその上部に固定する。地震時には装置内の滑り支承が揺れ動き、笠石に作用する地震力は10分の1に減る。免震装置と台座に組み込んだ補強鉄筋の効果などによって、大灯籠の構造性能は対策前の6倍に高まり、震度7程度でも損壊や笠石の落下を防止できるという。15日の作業では、大灯籠を覆う足場や仮囲いの外から、笠石をつり込んだ。計測作業を行いながら、作業員が据え付け位置を調整、クレーンのオペレーターと息を合わせ、効率よく作業を終えた。工事は28日に終える計画だ。
竹中工務店/免震化と同時に液状化対策/東京・江東区の庁舎耐震補強で(日刊建設工業新聞)よりH24.03.12紹介
竹中工務店は、設計・施工を担当している東京・江東区の庁舎耐震補強工事に、通常の業務を妨げず居ながら施工できる中間階免震改修工法を採用した。建物直下の地中に格子状の壁を構築する地盤液状化対策工事を同時に行っているのも特徴。防災拠点となる庁舎を地震の揺れと液状化被害から守るため、技術力を結集した。工事完了は13年3月末の予定。
同庁舎は建築後約40年が経過。09年の耐震診断で耐震性が不足していることが分かり、昨年10月から工事が始まった。免震装置は、駐車場として使用されている1階部分に設置する。中間階免震改修を実施する場合、設置階は工事期間中、使用できなくなることが多いが、工事エリアを6分割することで、駐車場の機能を残しながら施工を進める。
軟弱地盤に対応するため、免震化工事と同時に液状化対策工事も実施。計画段階から設計担当と施工担当が連携し、合理性を追求した改修を実現している。区庁舎の所在地は江東区東陽4の11の28。規模はSRC造地下1階地上9階建て延べ約2万4900平方メートル。
東京都/木造住宅密集地域の不燃・耐震化を加速/都市計画道路整備を5年前倒し(日刊建設工業新聞)よりH24.02.08紹介
東京都は、木造住宅が密集する地域を不燃・耐震化するための取り組みを加速させる。区域を指定し、建て替え時の所有者負担を減らす仕組みを設けるほか、延焼防止効果がある都市計画道路を、従来計画を5年前倒しして整備。20年度までに、延焼をほぼ完全に防げる目安とされる「不燃領域率70%」の達成を目指す。都内の木造住宅密集地域は、主に区部のJR山手線外周部から都道環状7号線沿いにかけての地域に広がっている。都は、特に老朽化が著しい住宅が集まる地域を、建て替えや道路整備を優先する「整備地域」(28地域約7000ヘクタール)に指定。直下型地震の発生確率が高まっていることを踏まえ、対策を前倒しして不燃領域率(06年度時点で56%)の引き上げを図る。
対策の柱は二つ。まず整備地域の中でも対策を先行させる地域を特定し、住宅所有者に建て替えを促す特例措置を導入する。12年度にモデルとして3地区(1地区当たり約20ヘクタール)を選定する計画。特例措置として、固定資産税や不動産取得税を減免するのをはじめ、改築費用の助成制度も拡充する。現在地以外での改築に対しては、一戸建てとマンションのいずれの場合も都有地を有償で提供する。モデル3地区については今月中に区から申請を受け付け、8月に選定する。
延焼を遮断して避難や救援活動の空間をつくる都市計画道路整備は、対象区間を今春に公表する予定。整備地域内の都市計画道路は計画総延長が約66・8キロ、総事業費は約6600億円に上るとみられている。このうち現在までに約5割の整備を終えている。今後、従来計画を前倒しし、20年度までに整備率100%の達成を目指す。都市計画道路整備でも、優先整備区間を選定。沿道の地権者に移転を促すための特例措置を設ける。都有地や都営住宅などを紹介するのをはじめ、共同でのビル建設など土地の高度利用が可能になる用途地域変更を認めやすくする。
これらの特例措置は、今秋までに制度内容をおおむね固め、13年度から本格的に運用する。12年度予算案には制度構築の準備や、これまでも進めている都市計画道路の整備に必要な経費として78億円(前年度比19億円増)を計上した。
大阪府/12年度に津波耐力総点検/防潮堤・水門・鉄扉、延べ290カ所(日刊建設工業新聞)よりH24.02.07紹介
大阪府は、国の中央防災会議が3月か4月にも示す東海・東南海・南海地震の最大クラスの震度分布・津波高などの推計データを活用して、12年度に府管理の防潮堤(総延長74キロ)や防潮水門、防潮鉄扉などの津波耐力や耐震性の総点検に着手する。東日本大震災による津波被害を踏まえた取り組み。府では、最大クラスの南海トラフ巨大地震への防災対策を話し合う学識者らによる検討委員会を立ち上げ、主に沿岸部の土木施設の耐力・耐震対策を検証する土木系分科会も設ける方針だ。
総点検の対象になるのは、防潮堤のほか、防潮水門・防潮鉄扉など延べ290カ所。港湾の岸壁についても検証する。国防災会議が示す新地震動で防潮堤の耐震診断を行うとともに、想定津波波力などを使って各施設の耐力などを確認。また、新たな津波シミュレーションによって岸壁に係留している船舶がどのような挙動を示すかなどを検証する。さらに既設のダムなどのリスク点検も実施する方針だ。
府では、これまでに阪神・淡路大震災の被災状況を踏まえるとともに、国が策定した現行の東南海・南海地震の技術指針に基づいた、防潮堤などの耐震診断を05年度から06年度にかけて実施し、必要な耐力・耐震性向上策を講じてきた。今回、東日本大震災を踏まえた国防災会議の新データによって主に沿岸部の土木施設を総点検し、巨大地震対策を再構築することになる。府都市整備部と環境農林水産部では海岸の土木施設の総点検経費(総額約1億65百万円)の12年度当初予算案への計上を要望している。
免震建物の可動部、大震災で3割損傷 ビル主要部は無事(asahi.com)よりH24.01.26紹介
免震建物に取り付けられた可動部材の約3割が東日本大震災で損傷したことが、日本免震構造協会の調査でわかった。損傷で天井や壁に傷がついたり、けが人が出たりする恐れもあるうえ、設計通りに機能しないのは問題だとして、同協会は再発防止に向けた指針作りを検討する。26日に開かれる報告会で発表する。
マンションなどでも普及し始めた免震ビルは、建物と基礎の間に揺れを吸収する層を作り、地盤の揺れが建物に伝わるのを抑える。
同協会は、震災後から9月までアンケートを行い、追加調査を続けてきた。全国327の免震ビルで、免震装置の稼働状態などを尋ねた。いずれも、揺れを抑える効果は確認され、ビルの主要部は損傷しなかったが、28%にあたる90件で「損傷あり」と答え、可動部が設計通りに動かなかった。ほとんどが首都圏や宮城県だったが、震源から遠く離れた大阪府でも1件あった。全国に免震ビルは約2600あるが、大規模な地震後の調査は初めて。
東京都/12年度予算原案/インフラ整備に8422億円、建物の耐震化促進(日刊建設工業新聞)よりH24.01.23紹介
東京都は20日、12年度の予算原案を発表した。一般会計の規模は4年連続の縮小となる前年度比1・4%減の6兆1490億円。政策的経費に当たる一般歳出も2年連続減の4兆5231億円(前年度比1・3%減)となった。一方、インフラ整備などに充てる投資的経費は8年連続の増加となる8422億円(0・2%増)を計上した。直下型の大地震に備え、大規模都有施設や民間ビルなどの耐震化を推進。交通インフラの整備や新規電源設備の確保にも力を入れる。一般歳出では、投資的経費とは別に経常経費として3兆6809億円(1・7%減)を計上。うち、200億円を復活予算の財源にする。一般会計に特別会計と公営企業会計を合わせた総予算額は11兆7742億円(0・1%減)。27日に復活予算を発表した後、2月開会の定例都議会に予算案を提出する。国が建設再開を決めた八ツ場ダムの直轄事業負担金には43億円を計上した。
耐震化を中心に展開する建築物の防災対策には、総額1395億円を投じる。耐震化を急ぐ主な対象施設は、改築や改修を推進している庁舎などの都有施設と、所有者に耐震診断を義務付ける特定緊急輸送道路沿いの民間ビル。区部で狭い範囲に密集している木造住宅についても、建て替えを促す減税措置の内容を詰める。東日本大震災を教訓に沿岸部の災害対策も206億円を投じて強化。東京湾岸や東部低地帯にある水門・排水機場・堤防の耐震化を推進する。島しょ部でも津波・高潮対策として離岸堤の整備や漁港の耐震化を進める。
交通インフラの整備には2902億円を投じる。国が本体工事に着手する東京外かく環状道路都内区間の直轄事業負担金として102億円を計上。都が施行する西武新宿線中井〜野方間の連続立体交差(地下化)事業は、詳細設計に乗りだす。
災害時に電力を安定的に確保・供給できるよう、94億円を投じて電源の分散化を図る。東京湾岸で計画している出力100万キロワット級の天然ガス火力発電所の新設に向け、環境影響評価書の作成を始める。民間都市開発に自家発電設備の導入を促す補助制度も創設する。首都圏では当面の主力電源として活用が見込まれながら老朽化が目立つ火力発電所の更新を後押しするため、官民連携インフラファンドを創設する。都は民間の投資意欲を喚起するための独自負担額として30億円を計上した。6月末までに運用責任者を公募、選定して運用を開始する。
文科省/市区町村の体育館耐震改修を補助/旧耐震基準の施設、初年度100カ所(日刊建設工業新聞)よりH23.10.11紹介
文部科学省は、全国の市区町村が保有している体育館の耐震改修を促進するための補助制度を創設する。体育館は災害時に地域住民の避難所として機能することが多いため、補助制度によって耐震改修の実施を促すのが狙い。新耐震基準を満たさない施設が対象で、最大約2200カ所程度に上るとみている。12年度予算の概算要求に約30億円を計上した。初弾として100カ所程度を補助対象に指定する計画だ。
新制度は「社会体育施設緊急改修事業」。本年度に制定したスポーツ基本法に基づき、安全に運動を楽しめる施設機能を確保するための施策の一つとして設ける。東日本大震災では体育館が地域住民の避難場所として活用されたが、一方で耐震基準を満たしていない施設は大きく損傷した事例も目立ったという。
総務省消防庁の調査(09年度時点)によると、区市町村が保有する体育館は全国に6575棟。うち1981年5月以前の旧耐震基準で建てられた施設数は2266棟。この2年間で耐震改修が進められた体育館もあるとみられ、今回整備する補助制度の対象数はこれを下回る見通しだ。
文科省が想定する制度のスキームは、新耐震基準に満たない公立体育館を保有する区市町村の教育委員会に対し、耐震改修費の3分の1を補助する。体育館1カ所の平均規模を延べ3000平方メートル程度と仮定し、補助額は1平方メートル当たり2万6000円と設定している。補助の上限額など詳細は未定で、早期に内容を詰める。
12年度予算:文科省、学校耐震化に2325億円−−概算要求(毎日新聞)よりH23.10.01紹介
文部科学省は30日、一般会計総額で11年度当初比2・9%(1609億円)増の5兆7037億円となる来年度予算の概算要求を発表した。これとは別に、復旧・復興対策に5684億円も要求。公立小中学校の耐震化には計2325億円(約2200棟分)を盛り込み、耐震化率の全国平均は今年度3次補正予算案までを加え、4月現在の80・3%から約90%に引き上げる。
35人以下学級の小学2年生までの拡大など義務教育費国庫負担金は1兆5675億円を計上した。低所得世帯などを支援する高校生向けの給付型奨学金の創設には、102億円を要求。13年度の全国学力テストについては全員参加方式を念頭に準備費を20億円とした。
国交省検討委/河川堤防の耐震対策で最終報告/「照査指針」の考え方は妥当(日刊建設工業新聞)よりH23.09.28紹介
東日本大震災を教訓に、河川堤防の耐震性の確保策の検討を進めてきた国土交通省の河川堤防耐震対策緊急検討委員会(委員長・東畑郁生東大大学院教授)は27日、都内で会合を開き、最終報告をまとめた。最終報告では国交省の「河川構造物の耐震性能照査指針」に規定された照査の考え方を妥当とし、そのまま適用して照査未実施区間の早急な調査を求めた。性能不足と評価された個所は優先区間を定め、地盤を圧密するドレーン工法など従来工法を基本に堤体地盤の耐震策を計画的かつ効率的に進めるよう提言した。今後の課題として低コストな対策技術の開発を盛り込んでいる。
国交省は、東日本大震災で2000カ所以上の河川堤防が被災したことを踏まえ、5月に有識者検討委員会を設置。河川堤防の耐震強化に向けて当面の対策と今後の課題を検討してきた。最終報告では、国交省が07年3月にまとめた、堤防の耐震性能を調べる際の判定方法などを示した「河川構造物の耐震性性能照査指針」の内容を検証。その結果、基礎地盤の液状化を判定するための手法はおおむね正しく、見直す必要はないと分析。同指針に沿って照査未実施区間で早期に調査を進めるよう求めた。
一方、これまでの性能照査は基礎地盤が主な対象で、堤体液状化を考慮した性能照査はほとんど行われていないと指摘。堤体液状化による沈下、変形の照査の必要性を挙げ、今後は堤体内部の液状化による被災現象を評価するために地下水位の適切な把握を求めている。これまで実施されてきた対策については、レベル1地震動を想定した対策工が東日本大震災でも一定の効果を発揮したとし、あらためる必要はないと分析。堤体内の水位を下げ、堤防裏側の強度も増加できるドレーン工法をはじめ、締め固め工法や鋼材を使った工法などで施工していた堤防は今回の大震災でも大規模な沈下や変形がなかったことから、これらを基本に具体的な設計方法を確立するよう要請している。
今後の課題として、照査では液状化強度に及ぼす地震動継続時間の影響の解明と液状化判定の高度化などに取り組むことを提案。対策については低コストで効果的な対策工法や耐震性向上を図る土工管理基準の開発、これまでに実施された耐震対策工と浸透対策工のレベル2地震動に対する効果の把握などを挙げている。
国交省/官庁施設の防災機能強化/11月に有識者検討会、基準類見直しへ(日刊建設工業新聞)よりH23.09.28紹介
国土交通省は、東日本大震災を踏まえ、官庁施設の防災機能の強化に乗りだす。現在、各施設の詳細な被災状況を調査し、各官署での業務継続に関する調査や復旧方針検討のためのケーススタディーを実施中。11月にも有識者による検討会を立ち上げ、一連の調査・分析の成果を基に、災害時の官庁施設の機能確保のあり方を探る。本年度末までに今後の施設整備の論点をまとめ、来年度以降に官庁施設の総合耐震計画基準など関連する技術基準の見直し作業に着手したい考えだ。
今回の震災によって被害を受けた官庁施設は370件に上り、調査対象全体の約3割に及んだ。政府が7月に策定した復興基本方針で、国の庁舎などについては耐震化をはじめ防災機能の強化が盛り込まれている。国交省は官庁施設の被災状況調査で、過去最大級の津波による建物被害などを詳細に把握し、業務継続のあり方や施設の復旧方針の具体化に取り組む。
今後設置する有識者検討会では、省内外の調査・検討業務の動きとの整合を図りながら、業務継続計画や建築の構造・非構造・設備など技術的事項に関する意見の整理・集約を進める。本年度末までに官庁施設の機能確保の方向性を明示し、来年度以降に基準類の見直しを行う。官庁施設の総合耐震計画基準は96年の制定以降、大幅な改定をしてこなかったことから、施設の安全性能を中心に抜本的に見直すことになりそうだ。
また、今回の震災を機に防災合同庁舎の定義を明確化し、大規模地震の発生時に防災拠点機能を十分に発揮できるように総合的な安全対策を推進する。構造体の耐震性能の確保や自家発電設備の新設・更新、津波対策などを柱に防災機能の強化を図る。地方の合同庁舎については、近い将来に大規模地震の発生が想定される地域を対象に優先的に整備を検討していく方針だ。
長谷工コーポ、東急建設ら/制振工法の性能証明取得/さまざまな揺れ軽減(日刊建設工業新聞)よりH23.09.27紹介
長谷工コーポレーション、東急建設、耐震診断や補強工事を手掛けるコンステック(大阪市中央区、中野米蔵社長)は26日、中高層から超高層建築物に適用できる制振工法の建築技術性能証明をビューローベリタスジャパンから取得したと発表した。粘弾性のある鋼製ダンパーユニットによって地震や風の揺れを減衰させるもので、「VESダンパー工法」という名称。既存建物への後付けが可能で、内装と外装の双方に設置できる。長周期地震動を含む揺れの対策技術としても積極的に提案する。
同工法では、VESダンパーという制振装置を上階と下階の梁の間に設置する。装置は、短周期から長周期までの幅広い周期帯域の振動や、強い振動、微弱な振動いずれに対しても高い減衰性能を発揮する。S、RC、SRCの各構造のほか、混合構造、新築、既存物件を問わず設置できる。装置の規模は幅430ミリ、高さ750ミリ、分割が可能で運搬を容易に行える。
装置の数量によって、減衰力を調整する仕組みとなっており、建物の形状や仕様によって数量を調節できる。部分的な設置も可能で、工期の短縮が見込める。装置は内装側、外装側のどちらにも設置でき、仕上げ材で覆えば内外装と一体化できる。VESダンパー工法を使った補強工事は、民間施設1件で完了しており、2件で施工を準備中。公共施設でも1件を設計し、現在工事を進めているという。
1981年の新耐震基準に適合しない建物の耐震対策が求められているものの、構造や内部からの眺望の確保、費用が課題となって、対応は遅れているのが実情。一方、長周期地震動をはじめ、揺れ対策の必要性も高まっており、3社は耐震性能と同時に建築物の揺れ止め対策としての有効性もPRしていく方針だ。
清水建設/明治神宮耐震改修で伝統技術復活/外観変えず耐震性を向上(日刊建設工業新聞)よりH23.09.13紹介
昨年鎮座90周年を迎えた明治神宮(東京都渋谷区)の外拝殿(げはいでん)で、木造建築技術を駆使した耐震補強工事が進んでいる。外観を一切変えずに震度7クラスの大地震に耐えられる耐震性能を確保するのが目的。社寺建築の隆盛期だった平安〜室町時代の木造技法を復活させ、現代の最新技術と融合して耐震性を高める挑戦が続いている。
明治神宮では現在、境内に配置された建築物の再整備が進んでいる。外拝殿は第2次大戦の戦火で焼失した後、1958年に再建。築50年以上が経過した現在でも、純木造建築の風格を見せているが、耐震性には大きな問題を抱えていた。今年2月に始まった耐震補強工事は、設計・監理を木内修建築設計事務所、施工を清水建設が担当。屋根裏を補強する1期工事を既に終え、6月中旬に着手した2期工事で耐震補強のハイライトとなる長押(なげし)と呼ばれる部材の補強を行っている。2期工事は9月中に完了する予定。長押は建築物の柱同士の上部を水平方向につないで構造を補強する日本独特の部材。平安〜室町時代は厚みのある木材が使われ、構造性能を高める上で大きな意味を持っていたという。だが時代を経るにつれて構造部材としての役割は薄れ、装飾的な意味合いを強めていった。
設計を担当した木内修氏によると、今回の工事では「外観を変えずに耐震性を高めるため、部材の中で強度向上の余地がある部分を探し、伝統技法で性能を高めることに挑戦した」といい、最も特徴的な工程が長押の改修だったという。具体的には、一部が柱に載っただけで構造的な役割を果たしていなかった長押を再加工し、断面形状を三角形から矩(く)形に変更。丸柱との接合部である仕口にも工夫を凝らし、柱と長押ががっちりかみ合うようにした。極めて高度な木材加工技術を駆使し、長押に構造材としての役割を持たせることで耐震性の大幅な向上につなげた。
工事ではこのほか、建物の側面などにある小壁や腰壁の改修に、鎌倉時代に建立された浄土寺浄土堂(兵庫県小野市)などで見られる伝統技法を採用。現代技術と融合させた耐震改修によって、外拝殿の耐震性能は「改修前と比較し7割増しになっており、震度6強から7程度の揺れにも耐えられる」(木内氏)という。
建研ら/大震災の天井落下被害調査結果/新耐震基準物件の発生多数(日刊建設工業新聞)よりH23.09.13紹介
建築研究所は、建築性能基準推進協会と共同で、東日本大震災での建築物の天井落下被害を調査した結果をまとめた。被害情報が報告された市町村にアンケート(一部現地調査)を実施した結果、新耐震基準が適用された1981年6月以降に着工した建物の占める割合が、それ以前の旧耐震基準の建物よりも高いことが判明。構造的な建物特性よりも天井を設置する非構造部材の問題が大きいことを指摘している。今後、より詳細な分析を行い、来年3月にも天井の耐震計画のための建築基準の整備に関する技術資料をまとめる。
東日本大震災では、地震による建物の構造自体への直接的被害は比較的少なかった一方、天井などの非構造部材での被害が目立った。今回、建研などが行った調査によると、天井落下が報告された建築物の所在地の震度(本震)はおおむね5弱から7だった。被害報告のあった151件(3件未回答)の建物のうち、新耐震基準の物件は106件と約3分の2を占める。施工時期を10年ごとに区分すると、81〜90年が48件、91〜00年が39件、01〜10年が19件だった。旧耐震基準の42件のうち、71〜80年が31件、61〜70年が11件で、新耐震基準への移行期である81〜90年の建物で天井落下の被害が最も多かった。
建物の用途別に被害状況を見ると、体育館(アリーナ、弓道場などを含む)・体育室が全体の5割弱を占めた。次に、エントランスホール、コンコース、展示場といった共有スペースでの被害が目立った。天井の下地材で分類すると、金属による在来工法が6割弱と最多。システム天井が2割弱で、この2種類の工法が大半を占めていた。
建研などは今後、今回の調査結果を踏まえ、天井の脱落要因の整理・分析を進めるとともに、天井の耐震性能検討のための計算方法や落下被害防止工法の検討に取り組む。建研の村上周三理事長は「新耐震基準の建物での天井落下被害が多く、個人的には(基準類の見直しなど)今後の対応を放っておくわけにはいかないと思っている」と話している。