G-NET 最新厳選災害防災特集: 

 

 

台風災害への油断 −整備するほど、危険な場所に住む−

 

 1.始めに
 大型ハリケーン「カトリーナ」が米本土に上陸したのが8月29日で、丁度1週間が経とうとしていますが、本格的な救助がやっと開始されたばかりです。その実態は想像を絶する有様のようで、数千人規模の死者がでそうな状況です。
 これは頼りの堤防が切れて、周囲の湖や川の水が流れ込んだことによります。
 日本の堤防も古くなって強度が落ちていて、あちこちで切れる可能性が増えているようです。したがって、ちょっとした油断が命取りにもなりかねません。このブログで気を引き締めて頂ければ幸甚です。

 2.カトリーナ
 カトリーナに襲われ、人々に「まるで発展途上国のような有り様だ」まで呼ばせるほど無残な姿になったニューオーリンズ市は水に囲まれた都市です。北にポンチャートレーン湖があり、南にミシシッピ川が蛇行しています。市域の約7割は海面より低い土地で、町をぐるりと囲む堤防が命綱だったのです。日本にも同じような姿の街が意外と多いようにおもいます。他人事でないのです。
1)8月28日
 カトリーナ襲来前の8月28日、ネーギン市長は最大限の警告を発し、避難「勧告」よりも強い避難「命令」を48万人の市民に出しました。命令後、幹線道路は荷物を載せて市外へ向かうワゴン車などで数珠つなぎの渋滞に。ホテルの上の階の部屋を取って泊まる人も多く、どこも満室になりました。
2)8月29日
 カトリーナは米本土に上陸しましたが、わずかに東にそれて同市の直撃は免れました。最も低地である貧困層の住宅地はその頃からすでに冠水していましたが、観光地の中心街は無事だったのです。
 最も不安を募らせた一夜が過ぎ、カトリーナの勢力も、最大風速が毎秒60メートルを超える超大型から衰えました。避難所になったフットボール場のスーパードームにいた約1万人の間でも一安心のムードが漂いました。
3)8月30日
 30日朝、北側の湖の堤防の一部が決壊しました。まもなく東側の運河の堤防も崩れ、これらの2方向から市街地にあっという間に濁流が広がっていったのです。それ以降は、ご存知のように本格的な救助活動ができず、死者数だけが増え続けています。また、略奪などで治安も悪化しており、計約100万人が避難生活を強いられている有様です。

 3.戦後の台風被害
1)1945年;枕崎台風
 荒廃した国土に枕崎台風が9月に襲い、死者3756人を記録しています。
2)1947年;カスリーン台風
 これも9月、房総半島をかすめ、上流部で結果した濁流が5日後に東京の葛飾区や江戸川区に達し、濁流に飲み込まれた多くの人の救いを求める叫びが聞こえたそうです。死者は1930人に及んでいます。
3)その後、次のような台風被害が続きます。そのころまで、懸命に行われ続けた防災対策の効果が現れなかったのです。( )内は死者・行方不明者数です。
●1948年;アイオン台風 (838人)
●1950年;ジェーン台風 (508人)
●1951年;ルース台風  (943人)
●1953年;西日本水害 (1013人)
       南紀豪雨  (1124人)
●1954年;洞爺丸台風 (1761人)
●1958年;狩野川台風 (1269人)
       東京、横浜に都市水害
●1959年;伊勢湾台風 (5098人)
4)対策の効果出始める
○1960年;気象研究所に台風研究部誕生
○1961年;第二室戸台風 (202人)
 2年前の伊勢湾台風に匹敵する勢力で大阪を直撃したのですが、事前の対応も良く被害を抑えることが出来たようです。
・早めの警報を出す
・30万人近くが避難、学校は休校し、鉄道も事前に運転休止措置とした。
5)その後、被害少ない
○1964年;台風監視のため、
富士山レーダー設置
       東京都異常渇水
○1974年;台風16号 多摩川の堤防決壊
○1976年;台風17号 長良川破堤
○1977年;気象衛星ひまわり打ち上げ
       河川審議会 総合治水答申
○1982年;台風予報 扇形から予報円へ
       長崎豪雨
○1991年;リンゴ台風(台風19号)で史上最高の保険金5700億円
○1997年;河川法改正 河川環境の整備と保全など加わる
○2000年;東海豪雨
○2004年;台風が10個上陸、新潟、福井などで豪雨

 4.油断大敵
 1970年代末に掛けては、大型台風が減り、高度成長期の日本は水害からは難を逃れ、変わって渇水に苦しみました。
 ダムや堤防などの整備が進み、最近では伊勢湾台風並みのリンゴ台風や2004年の台風23号が上陸しても、かってのような被害はでなくなりました。
 ところが、次のような大きな不安が増しているのです。ここのところを良く理解していないと、米国南部「カトリーナ」被害と同じことが起きないとも限りません。
1)危険な領域に住む人増加
 国土交通省や地方自治体が河川整備をすればするほど、本来は危険な箇所に過去を知らない人などが住むようになる。その数・領域は増える一方なのです。国土の10%に当たる洪水氾濫区域に人口の50%、資産の75%が集中しているのです。皆さんあるいは皆さんの会社もその中に含まれているのではないですか。
 みなさん、30年前50年前のその場所の災害記録をご存知ですか。できれば、近くの年寄りなどに聞いておくと良いです。
2)水害への意識
 台風が来ても被害が出ないのが当たり前、自分だけはあるいは自分の住んでいるとこだけは大丈夫と勝手に信じきっている。水害への防災意識が低い。地震の方へ気が行っていると不意を突かれる。
3)堤防の機能低下
 堤防に草や木が生えて、ミミズが生息し、モグラが増えると、堤防が穴だらけになるという話を昔聞いた覚えがあるが、河川を管理する国や地方自治体は本気で心配している。また、桜の木を植えている箇所がありますが、木が風に揺すられただけでも堤防の強度が低下します。そこから決壊しないとも限らないので、国土交通省などは気を揉み撤去をしたりします。予算がない中を堤防の強度調査をやり始めている。
 昨年、国土交通省が直轄河川で行ったボーリング調査によると、約3割で強さが十分でない可能性があるそうです。
 埼玉県を中心とする利根川右岸50キロの堤防に関して、「首都圏氾濫区域堤防強化対策」として補強を開始した国土交通省利根川上流河川事務所では、「雨の降り方次第で、どこで堤防が切れても不思議ではない」とまでいっています。60年ほど前には5日かかった水は今ならば2日で東京に到達するそうです。それだけ、一端堤防が切れると、被害が早く広がるということですので、早め早めの避難が肝心ということのようです。

 5.最後に
 かって日本のいたるところで台風被害が生じて、台風を途轍もなく危険なものと思っていましたが、最近では台風の被害がなく、人の心に油断が生じているように思います。福岡では台風14号に伴う雨と風が強くなってきていますが、子供たちは雨の中大声をあげて、外を歩いていますし、車で行きかう人も普段と変わりません。
 この油断が恐ろしく思えます。私は米国南部の「カトリーナ」災害と同じようなことがこの日本でも置きかねないと不安さえ抱くのです。
 今、大型で非常に勢力の強い「台風14号」が西日本に接近しようとしています。戦後間もない頃の台風被害を思い起こし、本当に安全と思える場所へ早めの避難を心掛けて頂きたいと思います。

 <参考資料>

1)(asahi.com H17.09.02)ハリケーン、100万人が避難生活 貧困層直撃 
 http://www.asahi.com/special/050831/TKY200509020064.html
2)朝日新聞 H17.08.29 朝刊 オピニオン 台風の60年 <リンクなし>
 


 

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