『通天橋』(雁山編)


素堂の一周忌追善集。

享保2年(1717年)8月、刊。

   悼

 素堂翁は近きあたりに軒を隔て、月雪花鳥のころは互に心を動し、句をつゞりけるに、時こそあれ、仲秋中の五日に世を去て筆の跡を残す。

枕ひとつ今宵の月に友もなし
   衰杖

深川の旧庵をおもへば、あるじはなし。文のたくみは人口にありて、おもひ出すに

簑むし簑むし錠に錆うき水の月
   祇空

素翁の夢は何夢ぞ。常ならぬ山風にて、武さし野の昔をきく。其夜は葉月中の五日

  
風月の夢人ふせり花すゝき
   言水

それの春野夫京師に侍りしに、ことの便りに此句にて心得よとていひ送られしか。猶その際迄も都の花をしたふこゝろいと浅からずや。実に今おもひ合すればとく其期を知れるにや。かの文の奥に

初夢や通天のうきはし地主の花
   素堂

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