一茶関連俳書


俳諧道中双六』

吉備中山の閑斎が諸国を俳行脚した記念集。

下総香取の太キョウの序、秋香庵巣兆の挿絵。

 『随斎筆記』に「文化八」と書き込みがある。

 松宇文庫藏果架珍書の一。同文庫本に「此書案ズルニ文化八辛未刊ト思ハル」という旨の朱書があるそうだ。

身ひとつや田螺の蓋も明の春
   一草

   關亭堂の奥ふかめて、芭蕉翁の肖像
   をやすらかにおき、かたはらにむす
   べる草の戸より生駒山見ゆる。

ゆく春や日和すはらば鶴居らず
   駝岳

霞ふむ鴎の口の乾き哉
   三津人

   このあたり夢つくる枕をうる。

音にその俤みゆるきぬた哉
   虎杖

   雲みづの心かよふ土鍋あり、この菴
   泊。

ぐるりから月夜になるや雲の峰
   雪雄

   奈良の松壽叟はこの業の手垂にて
   蕉翁の像をつくりて送るさちに、
   一宇をいとなみて俳諧堂と唱ふ。

野を燒や海のあかりは松の月
   耒耜

   鶴龜の齡にくらぶる年ふりしひさ
   ごと、西山の枇杷の木釖とは、常
   に愛するのふたつ也。

月と水とともゝたれする夏の夜や
   士朗

   東西百里まりを見わたす、いさほ
   しといふはるけき眼鏡あり。

三日月も御慶也けり墨田河
   蕉雨

寒かりし山をおへすや春の雪
   素檗

春の夜に細引を喰ふ鼠哉
   嵐外

糸竹の音に通ひけり天の川
   可都里

   鎌倉の代の今見ゆ 洞、

つれなしといはぬばかりに初櫻
   葛三

   十時菴に、魚つり草の花軒端に埋ミ
   てさく。

鶯の老ぬさぞかし梅田枇杷
   みち彦

下京や水鶏まちてもなぐさむ夜
   護物

   彌生の末よりふミ月はじめまで、
   子規なく空、蚊の遊ぶ藪あり。

なにゝこの袴きる世ぞ蝉の聲
   成美

これ見よといはぬばかりの一葉哉
   一瓢

どこまでも蜻蛉あがるや駿河町
   久藏

   獨樂寺みゆる。

鍬の柄に鶯なくや小梅むら
   一茶

   花峰月夕雪旦、この三人の猩々を
   愛す。

舟曳や五人見事に梅を嗅
   巣兆

虎杖の背戸もふさがぬ紺屋哉
   國村

五月雨のあすはひの木もたのミ哉
   成美

 おくれ子をなく乙鳥の親
   閑齋

麻染るさらさら小川さらさらに
   一茶



   何とかやいへる山人のめでたりし
   蟇、この扉をあるじとすれば、い
   づくまでも心かよはぬくまなし。

花の世や垣は結ずもあらまほし
   湖中

   筑波峰を窓蓋にもたのむ柴の戸。

八ツ迄の浦淋しくも心太
   翠兄

   佛頂禪師に身を隨へ給ふ時、此家
   を臥所にせしかバ、芭蕉翁の書跡
   樓をせばむ。

  五世
恙なく實をもつ芥子のひとへ哉
   松江

   葛齋坊の記念の松外山に殘る。

蓬莱も世界のうちや花菫
   由之

火桶抱けば柏の風もよいものぞ
   里石

礒の松浪こゆるかやきじの聲
   もと女

下總は小松の中よけふの月
   北二

   秩父路にて

この筋やきぬにくるまれ蟋蟀
   兄直

   葛飾の浦

碁にまけてさがし出しけり初霞
   雙樹

鶯にすゝめられたる草履かな
   月船

   椿の海

山清水釣がね草のあわたゞし
   さ彦

   成田山

    四條の納涼

加茂川につゝかけたりや心天
   素迪

素麺(さうめん)の細きはしより天の川
   至長

   千葉野

萬歳や道で逢ふても春のもの
   雨塘

   椿が丘にめぐり逢て

正月の羅漢さびしや松の霜
   對竹

  亡人
酒のまぬ日はなけれども神無月
   恒丸

 あすしらぬ命をはからで、ねがはしきことの
 ひとつふたつ、松嶋は先我戀の玉の緒なり。

投込で見たき家なり笹粽
   乙二

魚鳥の年もよるかよ十三夜
   雄淵

加茂の水もて來てひやせ粽五把
   巣居

烏さへ鳴ず人めも枯がしは
   雨考

秋の日の細きにならへ柿なます
   平角

白露やよき匂ひする山の中
   素郷

鹿の尾に短夜の月かゝりけり
   長翠

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