芭蕉関連俳書

『其袋』嵐雪編)


元禄3年(1690年)6月、自序。

其 袋 春之部

うつくしき顔かく雉子の距(ケヅメ)かな
   其角

   海 苔

ゆく水や何にとゞまる海苔の味
   其角

其 袋 夏之部

北国何トヤラいふ崎にとまりて、所の夷もおし入て、句をのぞみけるに

文月や六日も常の夜には似ず
   ばせを(う)

   その夜北の海原にむかひて

あらうみや佐渡に横ふ天川


   名月は敦賀に有て

名月や北国日和さだめなき


気比の宮へは遊行上人の白砂敷ける古例ありて、この比もさる事有しといへば

月清し遊行のもてる砂の露


浅水のはしを渡る時、俗にあさうづといふ。清少納言の橋はと有一条、あさむつのとかける所也

あさむつや月見の旅の明ばなれ


其 袋 秋之部

伊勢の国に修行しける頃、関の地蔵とかやにとまりたるに、宿に橘のさかりなりければ

宗長法師

橘のかにせゝられて寐ぬよかな

これらも猶俳諧のまくらにはあらずかしと、小野を過ける頃

角もじやいせの野飼の花薄
   其角

   おなじくいせの国出るとて

はまぐりの二見にわかれゆく秋ぞ
   芭蕉

其 袋 冬之部


  
落葉たく色々の木の煙かな
   宗波

   二月十七日神路山を出ルとて

はだかにはまだ衣更着のあらし哉
   芭蕉

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