萩原朔太郎のゆかり地
新前橋驛


野に新しき停車場は建てられたり
| 便所の扉 風にふかれ |
ペンキの匂ひ草いきれの中に強しや。 |
烈烈たる日かな |
われこの停車場に來りて口の渇きにたへず |
いづこに氷を喰(は)まむとして賣る店を見ず |
ばうばうたる麥の遠きに連なりながれたり。 |
いかなればわれの望めるものはあらざるか |
憂愁の暦は酢え |
心はげしき苦痛にたへずして旅に出でんとす。 |
ああこの古びたる鞄をさげてよろめけども |
われは瘠犬のごとくして憫れむ人もあらじや。 |
いま日は構外の野景に高く |
農夫らの鋤に蒲公英の莖は刈られ倒されたり。 |
われひとり寂しき歩廊(ほーむ)の上に立てば |
ああはるかなる所よりして |
かの海のごとく轟ろき 感情の軋(きし)りつつ來るを知れり。 |
『純情小曲集』(大正14年)収録。 1987年11月1日、前橋ライオンズクラブ結成25周年記念に建立。 上越南線新前橋停車場 大正拾年六月開業 「旅のあれこれ」のトップページへ ![]() |