西行ゆかりの地

『山家集』
大師の生れさせ給ひたる所とて、めぐりしまはして、そのしるしの松のたてりけるを見て
あはれなり同じ野山にたてる木のかゝるしるしの契ありけり
岩にせくあか井の水のわりなきは心すめともやどる月かな
雜 歌
いにしへ頃、東山に阿彌陀房と申ける上人の庵室にまかりて見けるに、何となくあはれにおぼえて詠める
あづまの方へ、相知りたる人のもとへまかりけるに、さやの中山見しことの、昔になりたりける、思ひ出でられて
陸奥の國へ修行して罷りけるに、白川の關に留まりて、所柄にや常よりも月おもしろくあはれにて、能因が、「秋風ぞ吹く」と申しけん折何時なりけんと思出でられて、名殘り多くおぼえければ、關屋の柱に書き付けける
關に入りて、信夫と申邊、あらぬ世の事におぼえて哀れなり。都出でし日數思ひ續けられて、「霞と共に」と侍ることの跡辿り詣(ま)で來にける心一つに思知られて詠みける
武隈の松は昔になりたりけれども、跡をだにとて見に罷りて詠みける
陸奥の國にまかりたりけるに、野の中に常よりもとおぼしき塚の見えけるを、人に問ひければ、中將の御墓と申は是が事なりと申ければ、中將とは誰がことぞと、又問ひければ、實方の御事なりと申ける、いとかなしかりけり。さらぬだに物哀に覺えけるに霜枯れ枯れの薄、ほのぼの見えわたりて、のちに語らんも言葉なきやうにおぼえて
十月十二日、平泉に罷着きたりけるに、雪降り、嵐激しく、殊の外に荒れたりけり。いつしか衣河見まほしくて罷りむかひて見けり。河の岸につきて、衣河の城しまはしたる事柄、様變りて物を見る心地しけり。汀凍りて取り分き冱えければ
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伊勢の二見の浦に、さる様なる女(め)の童どもの集まりて、わざとのこととおぼしく、蛤をとり集めけるを、いふ甲斐なき蜑人こそあらめ、うたてきことなりと申ければ、貝合せに京より人の申させ給たれば、選りつゝ採るなりと申けるに
ふりたるたな橋を、紅葉のうづみたりける、渡りにくくてやすらはれて、人に尋ねければ、おもはくの橋と申すはこれなりと申しけるを聞きて
陸奥の國に平泉に向ひて、たはしねと申す山の侍に、異木は少き様に櫻の限見えて、花の咲きたりけるを見て詠める
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