一茶関連俳書


『名なし草紙』

文化9年(1812年)刊。北越 諧仙竹里編。無辺法界俳士成美序。

(つくづく)と見て居ればちるさくらかな
   士朗

ちれかしとおもふは花のゆかり哉
   岳輅

出て行と言るゝまでを花の宿
   素檗

雪見にはころぶ所よちるさくら
   蕉雨

   上野にて

十日様九日さまのさくらかな
   一茶

  
ひとあらし世は美しき花の雨
   素月

どの牛もよう寝て居るぞさくらちる
   一白

花守が余所(よそ)の花見る月夜哉
   月船

花に白髪今年は隠しおふせたり
   兄直

  
花ちりて恥しいほど寝られけり
   他阿

むだ骨も花にせわ(は)しき世なりけり
   浙江

  
本坊の夜は鎮りて華の雨
   素廸

松風や花見る人の耳を吹
   近嶺

  上サ
麦畑のひくみのさくら咲にけり
   雨十

寝がへれば花に近寄る旭かな
   雨塘

咲ものに里はして置く桜哉
   翠兄

花ならば捨て咲せよ鱠皿
   杉長

世の中は月夜烏も花の中
   郁賀

暮の色は腹の中迄雨の花
   素郷

月夜かけて花の寿ぎ願ふなり
   平角

古里にくらぶれば散る桜かな
   乙二

咲初て裏なき一重ざくら哉
   春蟻

芋の子もまた梅に逢ふ祝かな
   護物

遠くから見てもおかれぬ桜かな
   巣兆

八重ざくらかひぬ一木もなかりけり
   道彦

なまなかにかへる家あり華盛
   成美



はる雨やあみ笠ごしの音羽山
   成美

二年子の大根の原やなく雲雀
   巣兆

花果て揃ひし樹々の気色哉
   みち彦

鶯やまさ木植れば啼に来る
   完来

踏込で雀も孕め水たまり
   一瓢

名月やこよひもこちの榎から
   一蛾



手の陰になるや夜寒のうつしもの
   対竹

うかうかと人に生れて秋のくれ
   一茶

潮させ水鶏の胆をつぶす程
   久藏

漣やうぐひすひとつ草の中
   諫圃

名月や質屋の松を鼻の先
   可良久

燕の来て口上のながさ哉
   一瓢

いつも来る鳩杖どのや初ざくら
   車両

   ○

干る汐や松の居所も遠くなる
   国村

  
雲の峰蟇の見はりて暮にけり
   至長

  
島山の茂りに入し潮かな
   星布

  下サ
万歳にうちむかへけり酒の酔
   雨塘

隠家や思ふ所にことし竹
   一白

秋の月親の建たる家に住
   月船

手に居ん暮の月夜の礒家哉
   双樹

木母寺に果しの付や雪見舟
   兄直

不二の根のあればぞ我も薬喰
   恒丸

   ○

  
小坐敷や入替りても秋の暮
   素廸

から鮭の師走がましき柱かな
   近嶺

  
花鳥の数に置たき生海鼠(なまこ)
   鶴老

いろいろに風はかわ(は)れど春の水
   素月



人の口に戸は立られぬ秋の風
   其翠

   ○

  ヒタチ
けふも赤しきのふも赤し烏瓜
   翠兄

鳰の子をそだてゝやれよ花真菰
   湖中

山影や苗代つくる小山伏
   松江

朝露や心のまゝに草の庵
   亀文



尾長鳴く夏山雨をふくみけり
   鷺白

   古人の部

月は月夜は短夜となりにけり
   暁台

人音の止時夏の夜明かな
   蓼太

影そゞろ地に落付ず朧月
   素丸

雛祭り盆三日よりあはれ也
   五明

  信濃
ひとりゐる仏も持ずけさの秋
   柳荘

  上総
冬枯や中(仲)よく見ゆる三軒家
   花嬌

「旅のあれこれ」のトップページへ