桜井蕉雨

『松の炭』(蕉雨編)


寛政8年(1796年)5月、刊。朱樹叟士朗序。

   松 の 炭

くるゝ程松はこみたりほとゝぎす
    蕉雨

早苗の水を渡る菴の戸
    岱青

壷荷とく小簔の露を雫して
    士朗

月に兀たる山をかそへる
    素外

行秋の屏風おさへて居にけり
    壺伯

もりも盡さぬ玉垂の酒
    岳輅



   夏

先々や雨にうつりてほとゝぎす
    闌更

咲芥子の花の底まて一重哉
    素檗

   七夕の宮にまうて侍る道のほとにて

つかつかと見による冬の四月哉
   ヲハリ 臥央

蚊遣草紀の船乗かもて來り
    柳莊

   一句井に入んとするに夕
   皃の無門關、句なくは入
   へからすとあれは

夕顔の關をはからはほとゝきす
   ヲハリ 岳輅

   秋

萬代や山のうへよりけふの月
    士朗

名月や山ほと低きものはなし
    蕉雨

後の月長きことしの命哉   仙タイ 白居

秋たつや生死はなれて小手枕
   アハツ 重厚

稲妻のけはしくかゝる枯枝哉    丈左

蔭ありて日向ありて芭蕉靜也
   秋田 五明

立て行鴫のあと水渡りけり
   三川 卓池

草臥や杖にこたへて鴫のたつ
   カイ可都里

   冬

行時雨松の間はすゝき哉
   江戸 成美

冬の日の長閑に登るあふみ哉
   ムサシ 双烏

おもふかたに雪見えそめて明にけり
    如毛

花の戸に巻て立たる莚かな
   江戸 道彦

   月を左にす

菴の戸や月の中より梅の花
    蕉雨

人の柳うらやましくも成にけり
   ムサシ 長翠

柳見に行人ならは簑かさん
   江戸 宗讃

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