『湖白庵集』(諸九尼)

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 明和4年(1767年)、諸九尼は京都岡崎の惟然坊旧庵「風羅堂」に「湖白庵」を結ぶ。『湖白庵集』上梓。

 明和四亥年五月十七日於湖白庵興行

花橘のにほひおほつかなく結ひ捨たる庵のありけるを、人々のもとめ給りけるにうつり侍りて

子規聞はや雨の世話もなし
  諸九

 名もあらたまる軒の若竹
   文下

五献目は波のたつほと引うけて
   蝶夢

 また夜は深いなんの明ふそ
   吟風



伊勢
  山田
陰日南なしに働く柳かな
   麦浪

駿河
  吉原
聞知た寺の鐘さへ秋のくれ
   乙児

江都

椎の木の下にあかるき椿かな
   秋瓜

物かけてつい寐た顔や朧月
   鳥酔

   烏明

鶯やしつまりかへる奈良の町
   蓼太

常陸
  水戸
髪ゆふた子共からまつころもかへ
   三日坊

加賀
  金沢
夜はついに明て只居る蛙かな
   麦水

薪にも足らて残るやかれ柳
   半化坊

近江
  粟津
六条に汐も焼かとおほろ月
   既白

ことことと水もいぬるや秋のくれ
   可風

あたゝめる硯も雪の朝かな
   文素



延享のはしめの秋、浮風難波に住ける頃ほひ、東の柳居、伊勢の麦浪、洛の風之なと尋来まして、ともにうちつれて、住よしの寶の市の月にうかれし風流の一巻ありしを、古皮籠の中よりもとめだして、その頃のしのはしく筆の序にかいつく、

  柳居
八合の月見はおかし升の市

 火縄ひへ行松原の中
   梅従

京の手も碪はおもふ響せて
   杜菱

 額はしらに眠る馬引
   浮風



市の升油は入れし後の月
   杜菱

何買に言の葉屑を升の市
   梅従

升買ふて松露拾はん十三夜
   浮風

後の月杖を寶の市人数
   風之

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