俳諧菊の露』


安永3年(1774年)3月、菊図坊祖英追善のために刊行。

菊図坊祖英塚


南柳亭素山、半化坊闌更序。行脚俳人蝶阿跋。

   小 序

祖英法師亡てより撰集の志ありて三とせをまつ時に蝶阿風人東行行脚の杖を留て此撰をのそミ國々の發句を集るに、頗病身にして炎暑厳寒にさえられ徒にひととせをおくりいてや梓にちりはめむとセしを、亦吏用にいとまなき事ありてむなしく二とセを過す。所謂遅心をもつて形の役とするゆえなりと自歎息す。漸今年春三月中旬に小冊となして東西へおくる事となりぬ。

五斗米の捨やうゆかし華さかり
   素山

     序

 全身脱去して雲中に鈴をならし火裏に座して渇を唱えなと几をはなれたる知識も有しとなん僧菊図深谷の驛に杖を留ることとしありしかある日素山に對し我山中をのそます市中を好す世を去へき時来れり爰におゐて云事なしとて既に去んとするに山しきりに辞世を乞ふ僧笑なから

死事を知て死日やとしのくれ
   僧



何ゆへに身を隠セしそ華の春

   明和とらのとし

半化坊



蜘のとるや常にハ憎き蠅なれと
   吹上東阿

蝶々や提た花とは知らて寄
   橋志

菜の花爾長閑き大和河内かな
   東都蓼太

雉子啼や己か住野にあまりあり
   ゝ亡鳥酔

青柳や細き所に春の色
   太無

松風の吹こむ音や天の川
   門瑟


上州高崎

猫の戀ある夜ハ石をうたれけり
   雨什

鯉はねて水動けりかきつはた
   前橋素輪


信州上田

秋の雨炉をきる畳なかめけり
   雨石

藤棚に鮎賣眠る昼間かな
   左十


越中高田

行秋や碇ふまえて啼からす
    亡麻父


越前三国

むらむらと小魚浮立春田かな
   丸岡梨一

夕日さす長やの窓や唐からし
   京都蝶夢

夕涼ゆふ顔ひとつ見付たり
 勢州 亡麦林


尾州名古屋

行秋や碇ふまえて啼からす
   也有

秋の水古五器ひとつ流れけり
   安達冥々

      行脚之部

夏雲や冨士より晴て三保か崎
   似鳩

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