|
宝島社の「このミス大賞」隠し球作品。つまり、賞に洩れた応募作から、それなりに読者が見込めそうなのを書籍化したものです。宝島系はしかし、これまでの経験上地雷率が高い。まして選外作品ともなれば、突っ込みどころ満載なのが相場でした。この作者も『ドS刑事』等、いかにも軽そうなイロモノらしきミステリーが売れているようですが、果たして読む価値はありや?トライしてみました。
主人公、陣内はしがないフリーライター。長いこと怪しい都市伝説系の雑誌でいかがわしい記事を書いてきたが、ついに雑誌の刷新に伴う連載の打ち切りを通告された。ここで部数倍増につながる特ダネを掴めば首はつながると言われ、いちかばちかで、正体不明の暗殺者「死神」についての調査を始める。ターゲットを24時間以内に、自然死か事故としか思えない方法で、確実に死に至らせるという恐るべき暗殺者。単なる与太話に過ぎなかったそれに対して、情報を仕入れ、その実在を確認し、死神本人とコンタクトを取れって、どんだけムチャやねん。それでも、高校時代の先輩本宮の協力のもと、必死で死神を追う陣内だったが…。 結論として、この作者は一冊読めば十分かと。地雷というほどでなく、一応ミステリーとして破綻してもいなかったですが、やはり作りのチープさはどうにもできなかったようです。登場人物は類型的で事件のコマにしか見えなかったし、オチはやはり、予想通りの脱力感。まあ、B級として楽しめたかな。 |
![]() |
||
「ガリレオ」シリーズ、久々の最新作。今回は長編です。
寂れ気味の景勝地「玻璃ヶ浦」に、大企業による海底資源の開発計画が浮上。湯川は今回、開発企業による現地調査に協力者として駆り出されることになったらしい。開発はしかし、環境保護の観点から、反対する住民も多かった。 そんな中、湯川が滞在している旅館で宿泊客の変死事件が発生。宿に滞在していた主人の甥の小学生の少年の目を通して、描かれる事件の謎とは。 いつもながらおもしろい。正直、事件解決に湯川はそれほど必要なかったかもしれませんが、事件の全体像が分かるまでは気になって、ほとんど一気読みでした。開発企業に協力することになり、そのことで反対派の住民に叩かれる立場になっても、ガリレオ先生は常に淡々とマイペースで、真っ向から正論を語るのみ。年相応にひねくれた小学生の少年にも、そのシンプルな態度を貫き通す湯川の大人げなさが、とても楽しかった。 久しぶりに、福山湯川の姿を見てみたくなりました。そろそろ、『聖女の救済』あたりを、ドラマ化してくれないかなあ。 |
![]() |
||
冲方さんのSFラノベシリーズ。ラノベ古参のスニーカーは、まだ年寄りが読んでもついていけるシリーズがあってありがたいです。「涼宮ハルヒ」とか。
2016年の近未来。舞台は昔のウィーン、現在はミリオポリスと呼ばれている古き都。しかし全世界的にテロや犯罪の激化した現在において、まだマシとはいえここも例外とはなり得ない。都市の治安を守るMPB(ミリオポリス憲兵大隊)は、治安の悪化に歯止めをかけるべく最高の人材を配置した。肉体を高度に機械化され、並外れた戦闘適性を持つ3人の「特甲少女」からなるチーム「ケルベロス」である。 と、いうわけで、少女達は平和のために、強盗で生活費を稼いでいる輩や、日常のささいな不満を銃で憂さ晴らしする若者や、世界の中心で自分の存在をアピールしたくなったバカといった、頭の痛くなるような中二病的な闘いを、しかし命がけで続けるのであった。 特務機関に所属する3人のキャピキャピ少女という設定は、『絶対可憐チルドレン』を思い出させましたが、そこはやはり冲方作品。彼女たちの過去に負った傷と闇は、かなり壮絶でした。彼女らは実親との確執で心身に深い傷を負い、身体の障碍を克服するために機械の体を与えられ、その代償として戦いを要請されている、という設定は少し『マルドゥック・スクランブル』とも通じています。闇に飲まれ人生を投げ出す寸前で、仲間の存在に支えられながら、馬鹿騒ぎ(オイレンシュピーゲル)で不幸を笑って跳ねのける。彼女たちの戦いをもう少し見ていたくなりました。 ただ一つ、読んでいて少し気になったのですが、この文体。体言止めが多く、疾走感はあるものの、それが誰の台詞で誰の行為なのかといった状況が分かりにくいところがありました。『マルドゥック・ヴェロシティ』の時も思ったけど、実験的な描写はそこそこでいいからね。 |
![]() |