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よくチェックしている書評ブログで絶賛されていたミステリー、というより、ヒューマンストーリーでした。主人公は15歳のアスペルガー症候群の少年クリストファー。ある晩、彼の近所の家の飼い犬が、農作業用のフォークで刺されて死んでいた。誰が何のために犬を殺したのか、クリストファーは思い立って、この奇妙な事件の謎を解くべく、捜査を開始するが…。 この「捜査」の経過のすべては、クリストファーの一人称によって語られますが、そこで描かれる自閉症者の世界観が凄い。彼の得意な数学的知識。先天的に苦手なこと、どうしようもなく怖いこと、理解できないこと、etc…。それらはあまりに常人と異なっているので、彼は日常で遭遇する1つ1つの事に対し、一見エキセントリックな反応を示します。それぞれの反応に、ちゃんと理由はあるので、たとえば彼の担当の教師や、父親がそれを理解し、なるべく彼に心地よい状況を用意してやることはできます。 それでも、初対面の人、初めての場所、体に触れられること、あいまいなニュアンスによるコミュニケーション等々、彼の苦手とするものは、外の世界には充ち満ちており、彼の感じる生きづらさを根本的に取り除いてやることは、誰にも出来ないのでした。 クリストファーの着手した「捜査」は、やがて思いもよらず、彼の父親が、彼に伝える方法を思いつけずに秘密にしてしまった、とんでもない事実を掘り当ててしまいます。父親の嘘に深く傷ついたクリストファーの行動により、事件は意外な方向に向かい出します。 読んでいてやはり、クリストファー以上に、彼の父親の視点で物語を追ってしまった気がします。息子が少しでも生きやすいように、がんばって心を砕いてきたものの、ついに力及ばずにうなだれる父親。その思いを決して知ることの出来ない、知る能力を持たない息子。ままならなさへのやりきれない思いと、わずかな救いとが、強烈に心に残ります。 | ![]() |
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帰省のお供に携帯した、宮部さんの江戸ミステリー。熟練した匠の技を堪能させていただきました。 本所深川にある通称鉄瓶長屋で、事件は起こる。八百屋の息子が未明に殺され、その場にいた妹は、「殺し屋が来た」と、口走る。以前長屋の差配人とトラブルのあったちんぴらが、逆恨みして来たのだ、と。町方役人の井筒平四郎は、その証言のおかしさに重々気づきながらも、敢えて妹を問いつめることなく、「殺し屋」の仕業でことを納めることにした。 しかし、その事件を皮切りに、鉄瓶長屋で立て続けに起こる奇妙な事件。いったいここで、何が起こっているのか。決して勤勉な質ではない平四郎ながら、柄でもなく事件の究明に乗り出したのだが…。 謎が謎を呼ぶ展開に、途中までは釘付け、でした。ただ、欲を言えば、風呂敷の閉じ方が尻すぼみな気がしたこと。あれほど大がかりな企ての理由が、単に嫉妬深いニョーボ1人をだますためってこたあないと思うのですが、どうなんだろう。あと、魅力的に登場した長屋の人々が、途中から用済みとばかりに放置されてしまうのも、残念でした。お徳さんは最後までカヤの外だったし、佐吉さんも、途中まで事件の鍵を握る人だとばかり思っていたのに、結局この話で一番報われなかった立場に思えます。こういう、いい人が必ずしも報われない、悪人が断罪されるとは限らない、現実的で微妙な結末というのは、宮部さんの現代ものにはつきものでしたが、江戸ものでも、そうなってきたのかと。なんだか、すっきりしない感じです。 | ![]() |
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米澤さんの、パラレルワールド青春SF。発売当初から苦い、痛いと評判だったので、リクエストをためらっていたのですが、たまたま図書館で見かけたので読んでみました。うーん、評判通り。救いがないというか、読み手を甘やかさないというか。 両親の不貞により崩壊してしまった家庭で成長した主人公、リョウ。ある日、東尋坊に出かけた彼だったが、ふと気づくと、自宅のある金沢に戻っており、それまでの記憶がすっぽり抜けていた。そして、気が付くと、自宅をはじめ、見知ったはずの人や環境が少しずつ違っている。どうやらここは、リョウの「姉」がいて、リョウは存在しなかったはずの世界、であるらしい。仕方なく「姉」のサキとともに、元の世界に帰る方法を模索するリョウだったが…。 自分が存在しなかった世界の方が、うまくいっていて、みんな幸せ、なんていう現実に気づいたところで、それこそ、どうなるわけでも、何が出来るわけでもない。だからどうだっちゅうねん!と、ちゃぶ台返すしかないよなあ。バッドエンドを提示しただけのラストで、作者が何を言いたかったのか、いまいち分かりません。 『山へ行く』(萩尾望都)収録の「ゆれる世界」ではないですが、世界の変動をすべて1匹の蝶の羽ばたきの責任にするにも限度があります。私としては、苦かろうが、痛かろうが、がんばって生きてください、とリョウ君に願うしかありませんでした。 | ![]() |
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